会員登録

歯科医院経営講座 一覧を見る

第70回 (183号)

歯科医院の体制を柔軟に変えていくためのポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

PDFダウンロード

Office

Business
Management

歯科医院経営講座183

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
40代後半の歯科医師です。歯科医師は私一人でスタッフは5名在籍しています。医療法人への移行はあまり考えておらず、自分の目が届く範囲で診療を続けていきたいと考えています。自分の年齢に応じて歯科医院体制の構築を図ってまいりたいと思いますが、どのような意識を持っておけばよいでしょうか。
Answer
個人形態での診療所の場合は、院長の年齢に応じて診療収入に影響が表れる傾向が強くなります。歯科医院の人員構成をみますと、診療に従事する歯科医師が院長一人の場合が多く、つまり院長の状態如何によって診療収入が左右されるということです。全体の約半数の歯科医院が歯科医師一人で診療を行っているという調査資料がありますから、そういった歯科医院では院長の影響は非常に大きくなります。また、複数の歯科医師が勤務する歯科医院でも、院長の意向が大きく反映されることから、歯科医院での一般的な診療収入の推移をみると、60歳代までは年代が上がっても増加傾向にありますが、60歳を超えると年代ごとに診療収入は徐々に減少に転じる傾向があります。しかし、少し見方を変えていくと、院長自身の変化を受け入れ、それに合わせる形で診療体制の取組みを変化させることができれば、ライフサイクルに合わせてよりよい歯科医院の継続が可能になるということです。
診療体制を柔軟に変えられるか

ご自身の年齢に合わせて、体の動きやその時々の判断力が変化します。したがって、その変化を受け入れながら、歯科医院の体制を柔軟に変えていけるかどうかが問われるところです。状況に合わせて変化をしていくために、設備投資については将来を見据えた形を考えておきたいところです。
体力的にも精神的にもまだ充実している現在は、設備についても人材についても積極的な投資が可能ですから、チェアを増設し、スタッフも増員して、多くの患者さんの期待に沿っていきたいものですが、その際、診療所を拡張することなどがある場合は、土地を購入して拡げることから、賃借することに変えて対応することや、テナントの場合でも、拡張部分は別契約として、将来の変化に対応して切り離すことが可能な形とするなど、柔軟に対応できるように検討しておきます。
年齢を重ね、規模の縮小等を考える段階になったときに、状況に合わせて解約しやすい形を維持しておくとよいでしょう。スタッフが確保できなくなり、人数的に小規模にならざるを得なくなったとしても、経営内容が盤石であれば強い歯科医院を維持することができます。
変化に対して身動きを取りやすくするために、固定的なものへの投資はできるだけ小さい単位にしておくことを検討しておくとよいと思います。

多くの選択肢を持つ

診療環境を柔軟に変えられるようにしておくことと同時に、院長自身も柔軟に変化できることが大切です。たとえば、設備投資に対する事業用借入金の返済負担が軽減し、資金的にある程度余裕を持てるようになると気持ちにも余裕が生まれますが、同時に院長のモチベーションを維持していくことが難しい年齢にも到達します。地域の信頼や認知を十分に得られ、歯科医院自体が盤石な体制であっても、院長の関わり方如何によって患者さんは敏感に反応します。院長のふとした言動が、患者さんやスタッフに対してプラスにもマイナスにも大きく影響することを考えると、院長自身が常に高い意識を維持することは大切なことです。
実際に患者数の減少を目の当たりにし、収入にも影響が出始めるとどう対応してよいかわからないものです。その時になってはじめてこの先どうすればよいかと考えるのではなく、あらかじめ辿ると思われる道筋を予測して準備を進めておきたいところです。いろいろな選択肢を想定し、それぞれにシミュレーションを作成することもよいでしょう。今後どのような状況になっても対処できるという安心につながりますし、歯科医院をこれから先どう導くかという高い意識にもつながります。一つの考えに固執するあまりにかえって身動きが取れなくならないよう、日頃から情報収集を行い多くの選択肢を持つようにしてください。

経営効率化と同時に収入規模の維持が可能

現在は、省力化に向けた機器やシステムが発達しており、極端に言えば院長一人でも診療所を維持できる時代といえるでしょう。診療の予約を受けるにはインターネット予約サイトを活用すれば可能ですし、受付についても自動受付機により来院受付は可能です。次回の診療予約は、診療終了後にチェアサイドで行えば効率よく行うことができますし、会計は、自動精算機の導入により対面で行う必要がなく金銭授受のミスも防げるでしょう。
スタッフの管理については、出勤・勤怠・有給管理システムと社会保険労務士等を活用すれば、給与計算までストレスなく完結することができます。診療設備や材料・薬品等は日々性能が向上しているため、院長は診療に集中して携わることができるでしょう。
つまり、以前と比較して診療規模が小さくなったとしても、予約の取り方や診療の進め方を整えることで、患者さんとの時間も増え、むしろ今よりも患者さんとのコミュニケーションが活発になることが期待できます。
以前であれば、スタッフの人数に応じて収入の面でも小規模にならざるを得なかった歯科医院でも、人に代わるシステムを上手に融合し体制を整えることにより、効率化を図りながらも患者さんとの関りを増やし収入規模を維持することが可能となります。

Advice
厚生労働省が発表する医療施設調査の結果によると、歯科医院総数は平成28年を境に減少に転じています。一方で、医療経済実態調査による一歯科医院あたりの医業収益をみると、個人診療所においては2019年調査では44,699千円から2021年調査時点で45,748千円となっており、また、医療法人についても、2019年調査94,477千円→2021年調査104,330千円と、いずれの経営形態も増加傾向を示しています。人口減少等により歯科医院経営は厳しいと言われる側面はありますが、予防歯科への意識の高まりや高齢者歯科医療の増加などに柔軟な姿勢で対応することで、歯科医院の環境をよりよいものに変える要素は数多く存在します。この後、年齢を重ねたとしても、その時々に応じて変化しながら、積極的な取り組みを進めていきたいところです。

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。