会員登録

歯科医院経営講座 一覧を見る

第71回 (184号)

自医院の周辺に新たな歯科医院が開業したら経営環境の変化に対応する際のポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

PDFダウンロード

Office

Business
Management

歯科医院経営講座184

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
当院の周りはもともと歯科医院が多かったのですが、最近、さらに周辺に新規開業の歯科医院が増えてきました。今のところ、来院する患者さんの数に大きな変化はありませんが、新たな参入が相次ぐ中で、医院として対応することはあるでしょうか。先を考えると不安な気持ちが大きくなりますが、今後考えておいた方がよいことや取り組むべき課題などがあればご教示ください。
Answer
厚生労働省の調査による歯科医院数の推移を見ますと、平成28年を最多として徐々に減少に転じていますが、一方で全歯科医院に占める医療法人の比率は増加の一途をたどっており、今や4軒に1軒が医療法人となりつつあります。メインテナンスを中心に医院の大型化が進み、個人対応から組織的な取り組みへとシフトしているのだろうと思います。したがって、周辺に新たに開業する歯科医院もある程度の規模になることが予想されますが、自医院としては現状を正確に把握した上で、現在通院している患者さんが継続して来院できる取り組みに全力を注いでください。スタッフとの意思疎通を図り、患者さんとのコミュニケーションを強化して、医院の方針を新たにする機会と考えるようにしてください。
歯科医院の経営環境は変わる

歯科医院の立地を考える際は、周辺の環境に大きく左右されるため、立地の良し悪しは常に相対的なものとして考えておく必要があります。開業される際は歯科医院も少なく、それが立地がよいと判断された要因だったとしても、新規開業が進む現在もまだ歯科医院が増えるということは、他の要因により環境がよいと判断されているということでしょう。
その判断理由として、周辺に多くのマンションや商業施設が建設されて人口が増えているということがあるかもしれませんし、一方で、以前から開業している歯科医院の高年齢化が進み、周辺との競争力を考えた場合に勝負できると判断して参入してきているのかもしれません。そのため、一概に歯科医院の軒数が多いから立地が厳しいということではなく、どのような状況になっても、周辺の患者さんを十分に獲得できているかどうかということが重要な要素となるでしょう。
歯科医院の立地条件は不変のものではありません。周辺施設による人口増加要因の他、周辺地域の年齢層の変化によっても環境は変わります。
競合歯科医院の変化によるものもあれば、自然災害等の甚大な影響による変化もあります。いずれも自医院にとってみると年々変化するものであるため、立地は絶対的な条件ではないと考える方が、次に積極的な対策を取ることにつながります。

医院設備は絶えず更新する計画を

立地条件を相対的なものとして考えると、自医院の取り組み方次第で十分に競争力を確保することが可能です。そのためには、診療用設備や医院建物あるいは院内什器等に関しては、絶えず設備投資をして更新を行うことを心がけてください。患者さんにいつまでも気持ちよい空間と感じてもらえるように、設備の老朽化を感じさせない取り組みが必要です。新規開業時には多額の投資を行いますが、そこから次の投資に向けた準備が始まります。銀行借入金の返済計画と次の設備投資計画のバランスが取れる形での資金計画を準備するようにします。
ビルテナント開業の場合は建物外壁等に対する投資は不要ですが、戸建ての診療所の場合には、経年変化による屋根や外壁への対応を行う必要があります。内装についても、年数が経過すればするほど色の変化や剥がれが目立つようになりますので、適切な時期に対応を検討しておく必要があるでしょう。
これらはすべて、患者さんが快適に過ごせるようにとの意識からくるものですが、他にも新たな診療設備の導入や看板のデザイン変更や架け替えなど、医院をいつまでもきれいに維持するためにはどれも大切なことです。

患者さんへのきめ細かな対応を

患者さんからの支持を多く集める歯科医院は、あらゆる方面に気を配り、きめ細かな対応をしています。医院の看板一つをとっても、その場所やデザインあるいは大きさに拘ります。ホームページについても、記載している内容や表現、記事のボリュームも意識して、訪れる患者さんが読みやすいことを第一に配慮した作りを目指しています。院内で患者さんに告知したい内容は、待合室のモニター等を通じてしっかりと患者さんとの情報共有を図っていますし、掲示物や配布物などの管理も適切に行われています。つまり、医院から発信するものが単なる情報提示ではなく、患者さんの理解を伴うものかどうかまで気を配っているものなのです。
その姿勢は診療中にも表れており、たとえば、ちらりと時計に目を向けた患者さんのしぐさを見逃さず、すかさず「このあと何か予定がありますか?」といった声掛けをするなど、患者さんのふとした行動にも細かく目配りをしています。時計を見たしぐさから、予定があるのではないか、診療を長いと思っているのではないかなど、常に患者さんの意識を気にかけているのです。
こうしたきめ細かな対応は、患者さんとの自然なコミュニケーションを生むことにつながります。自然な会話から信頼関係が築かれ、患者さんからの支持を集めることにつながるのです。

Advice
自医院の周辺に新たな歯科医院が開業すると、一時的な影響は免れないかもしれません。しかし、それよりもむしろ、来院している患者さんとの強固な関係づくりに重点をおいた対策を取りたいところです。周辺の環境は、時を経るにつれて必ず変わるものですから、医院としては変化に合わせた対応を図ると同時に、患者さんとの関係は変わらないように維持し続けることを重視します。患者さんが何度来院しても同じように感じる温かさや、安心して診療を委ねることができる雰囲気や環境をどう維持するかを、周囲の変化に左右されずに常に徹底して行うことが大切です。患者さんから得られる信頼は自らの関わり方にあることを意識していれば、周辺に歯科医院が開業しても慌てることなく患者さんとのよりよい関係を維持できるものです。

他の記事を探す

モリタ友の会

セミナー情報

セミナー検索はこちら

会員登録した方のみ、
限定コンテンツ・サービスが無料で利用可能

  • digitalDO internet ONLINE CATALOG
  • Dental Life Design
  • One To One Club
  • pd style

オンラインカタログでの製品の価格チェックやすべての記事の閲覧、臨床や経営に役立つメールマガジンを受け取ることができます。

商品のモニター参加や、新製品・優良品のご提供、セミナー優待割引のある、もっとお得な有料会員サービスもあります。