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第72回 (185号)

退職金を準備する際のポイント

デンタル・マネジメント・コンサルティング 門田 亮

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歯科医院経営講座185

デンタル・マネジメント・コンサルティング
門田 亮

Question
採用面接を行う際に、たびたび求職者から退職金の有無について尋ねられることがあります。現在、当院では退職金に関して規定していることはありませんし、過去に支給をしたこともありませんので、退職金がないことを伝えざるを得ないのですが、現在勤務するスタッフにとっても働く上でのメリットになるのであれば、今後退職金について検討を進めてみたいと思います。退職金を準備する上でポイントとなることがあればご教示ください。
Answer
退職金については、スタッフの頑張る気持ちを引き出すことや、ある一定年数以上勤務した場合に退職金の対象者になれることなどもモチベーション維持につながります。また、人材を採用する際に退職金規定があることは、人材確保のための歯科医院の強みの一つとなり、社会保険の加入や退職金規定の有無などは、労働環境の整備について意識が高い求職者に対するアピールポイントとして捉えることができます。一方、一度退職金制度を整備した場合は継続する必要がありますので、将来の退職金原資をどう確保するかを考えておく必要があります。退職金を準備することのメリット、デメリットを考えながら、医院の方針に基づいて整備するかしないかを決定することが大切です。
退職金の規定は任意で行うことが可能

退職金については労働基準法上においては支給しなければならないという定めはありません。したがって退職金制度を整備しなければならないという義務もありませんが、整備する場合は退職金制度がある旨を就業規則へ記載する必要があります。
就業規則で定める内容としては、まず退職金が適用される労働者の範囲を定める必要があります。支給対象者となるスタッフを正社員だけにするのか、あるいは同一労働同一賃金ということを意識した上で、一定以上勤務するパートスタッフにまで広げて支給するのかを検討してください。
次に退職金の支給時期、計算および支払いの方法について規定します。入職して1 年目は先輩スタッフからトレーニングを受けながら医院の仕組みや方針になれることに精一杯になるでしょうし、2 年目は先輩スタッフから離れて自らが考えて行動できるようになるかというところだと思います。歯科医院としては、入職後3 年目以降から退職金の支給対象とするところが多いようですが、いつから退職金の支給対象者とするのかを明示することが必要です。
また、退職理由が自己都合なのか定年なのか、あるいは解雇や希望退職、死亡なのかによって退職金の計算や支給額を変えるのであれば、それも規定として整えておく必要があります。

退職金の支給水準は長期的な視点で考える

退職金制度を規定した場合は毎年の業績に引きずられて支給水準を変更することは控えた方がよいでしょう。また、歯科医院の都合で退職金制度を途中でやめてしまうことも好ましいことではありません。
若くして開業したのち、雇用するスタッフは院長とともに年齢を重ねていきますが、中には院長が引退するまで勤め続けるスタッフが現れるかもしれません。そうすると、20 年や25 年と長きに亘り勤務することになります。途中で結婚や出産を迎える可能性もありますが、近年は産前産後休業制度や育児休業制度を活用して、退職することなく継続して在籍することが可能です。休業中は退職金の対象年数から除外できるとはいえ、復帰して勤務を継続することも考慮した上で検討を進めるようにしてください。
退職金の支給水準についてはそれぞれの歯科医院ごとに様々ではありますが、一例としてみると勤続年数10 年で基本給の5ヵ月分、20 年で10 ヵ月分とすることがあります。一人のスタッフのみならず、複数のスタッフが支給対象となればかなり大きい金額となりますから、医院で準備できると考えられる水準で整備することが大切です。どれぐらい勤務すればいくら退職金をもらえるかという支給水準については、長期的な視点で慎重に決めていくことが望まれます。

将来に亘る退職金原資の準備

最近では、一度入職したスタッフに対しては長く勤めてもらうよう働きかけることが多いと思います。慢性的な人材不足に対して、優秀なスタッフをいかに確保するかということに経営者である院長は四苦八苦している状況です。
そうして年数を経て長く勤めるスタッフが増えてくると、退職金の支給基準を満たすスタッフが多くを占めるようになります。その時のためにどのように退職金を準備しておくかを考えておくことは大切なことです。
利益の中から毎期一定額を退職金の準備金として積み立てることや、個人型や企業型の年金制度を活用して運用と併せて管理をする方法、あるいは国の制度となる中小企業退職金共済制度(中退共)を活用する方法などがあります。医院で積み立てる場合は課税対象となりますが、企業型の年金制度や中退共を活用すると、退職金となる掛け金を損金もしくは経費として計上しながら準備をすることが可能です。その一方で従業員全員が加入することが必要という要件がありますから、活用する際は注意が必要です。医院で整備しようとする退職金制度および支給基準等と照らし合せた形で、退職金原資を準備する方法を検討してください。

Advice
退職金を規定した場合はスタッフへ周知することと同時に、求職者に対しては面接時に退職金があることをアピールすることができます。近年、多くの業種で法令遵守の取り組みが進んでおり、労働者の働く環境が大きく改善されています。残業に対する適切な処理や、有給休暇の正しい付与と取得促進への対応は欠かせない事項のほか、社会保険への加入および産前産後休業、育児休業等への対応も歯科医院で勤務するものにとっては気になる点です。その上で退職金の規定が整うことにより、スタッフの労働環境は万全のものとなり、労務に関する医院の優位性を維持することが可能です。人材確保や長期に亘る人材育成対策の一つとして、退職金規定の整備が医院の強みとなることを期待します。

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