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TECHNICAL REPORT

新世代のオールセラミックス「プロセラ」/ノリタケ・セラビアンとその臨床応用

山田 和伸

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目 次

はじめに

1990年代に入り、多くの研究者は歯列弓のすべての部位に使用可能なオールセラミックスを模索し続けてきた。そこに求められる要件は、優れた強度と適合精度、色調安定性、適度な摩耗性と耐久性、生体親和性などである。さらに、臨床において応用しやすいよう、システムの簡便さや製品の均質さ、また高品質であることも要求された。
昨年の1月から日本において稼働し始めたプロセラシステム(ノーベルバイオケア社)は、上記のような要件をみたすべく開発され、世界規模では1994年からすでに200万本以上の修復物が製作されている。
このシステムでは、従来のセラモメタルクラウンのメタルフレームにあたる酸化アルミニウムのフレームのみがコンピュータ支援により、設計/加工(CAD/CAM)される。プロセラシステムにより製作されたフレームはラボに送られ、専用のポーセレンが歯科技工士の手によって焼き付けられ、修復物として完成される。
本稿では、日本で初めてプロセラシステム用に開発されたノリタケ・セラビアンの特徴とその使用上の要点について解説したい。

Ⅰ.セラビアンの商品構成

基本色20種類(NW0、NW0.5、NP1.5、NP2.5を含む)により20シェードの色調再現が可能で、それぞれにシェードベースポーセレンとボディポーセレンが用意されている。これらは、従来のオールセラミッククラウンのように色調が暗くならず、明度、彩度のバランスに最大限の工夫がなされており、術者を問わず自然感にあふれた色調を得ることが可能となっている。
また、エナメル、トランスルーセント、サービカル、モディファイアー、オペーシャスボディ、ステインが用意され、症例に応じて使い分けることができる。
図1は、セラビアンのカラーテーブルで、豊富な色調であることがよくわかる。さらに、アルミナフレームの特性を最大限に発揮すると同時にマージン部などの形態補正にも有効なマージンポーセレン(図2)、天然歯エナメル質の色調および表面性状を簡単に再現できるラスターポーセレン(図3)、個性的な色調表現を容易にするインターナルステイン(図4)が独自の商品として加わっている。これらのうち、特徴的な商品について詳細を述べる。

  • [写真] セラビアンのカラーテーブル
    図1 セラビアンのカラーテーブル。それぞれのシェードにシェードベースおよびボディポーセレン、明るさや透明性の異なるエナメル、トランスルーセント、そしてセラビアンの特徴であるマージンポーセレンとラスターポーセレンなど豊富な色調であることがわかる。
  • [写真] マージンポーセレンキット
    図2 マージンポーセレンキット。アルミナフレームの特性を最大限に発揮すると同時にマージン部などの形態補正にも有効である。
  • [写真] ラスターポーセレンキット
    図3 ラスターポーセレンキット。天然歯のエナメル質の色調および表面性状を簡単に表現できる。
  • [写真] インターナルステインキット
    図4 インターナルステインキット。ポーセレンの表層以外の内部に用いて、個性的表現をおこなう。
1.シェードベースポーセレンについて

プロセラシステムによるアルミナフレームの色は1、ないし2色であり、既存のシェードガイドのように複数の色は用意されない。
そこで、セラモメタルクラウンのオペークのように、目標とするシェードのベース色をつくる目的でアルミナフレーム上にまず1層目に使用する。ただし、オールセラミックスという光を通す特性を有効に利用するため、セラモメタル用のオペークに比べて透過性を与えられている。
また、セラモメタル用のオペークと決定的に異なるのは、焼成温度の位置づけである。セラモメタル用オペークは、セラモメタル用ポーセレン群のなかで最も焼成温度が高いのが普通であるが、セラビアンにおいてはシェードベースポーセレンをボディやオペーシャスボディの一部と考え、焼成温度を同じに設定している。むしろ、次に説明するマージンポーセレンの焼成温度のほうが高い。
図5はセラモメタル用のオペークとセラビアン・シェードベースポーセレンの透過性の比較である。実際にはアルミナフレーム全体にごく一層ペイントする要領であつかうため、非常に薄い層になる(図6)。

  • [写真] AAAのオペークとセラビアンのシェードベースの透過性の比較
    図5 AAAのオペークとセラビアンのシェードベースの透過性の比較。色調はA3。シェードベースには、メタル色を遮蔽する、という役目はないためオペークに比べやや透過性がある(透過光にて撮影)。
  • [写真] シェードベースをアルミナフレーム上に築盛しているところ
    図6 シェードベースをアルミナフレーム上に築盛しているところ。ごく一層、ペイントする要領であつかう。
2.マージンポーセレンについて

基本色16色(NW0、NW0.5、NP1.5、NP2.5を含む)と希釈用陶材(MDL)によって20シェードに対応可能となっている。
先に述べたようにセラビアンのマージンポーセレンは焼成温度が1,030℃/係留時間2分であり、シェードベースやボディポーセレンに比べて高く設定されている。すなわち、カラーレス修復物を製作する場合にはまず最初に築盛・焼成をおこなうことになる。
また、このマージンポーセレンの焼成温度は決して設定より低く、あるいは係留時間を短くしてはならない。焼成が不完全だと、強度の面で不十分なだけでなく、透過性にも悪影響を及ぼす。
そして、透過性自体はシェードベースポーセレンよりやや高い程度に設定されている。これは、暗いメタルや強い変色がマージン部におよぶ支台に対応するためであるが、逆に透過性が必要な場合にはマージンポーセレンのなかのM-Clearを混ぜて使う必要がある。
図7はA3シェードのマージンポーセレンに比率を変えてM-Clearを混合したものである。M-Clearの比率が高くなるにしたがい、透過度は増すが、彩度は低くなる。
よって、実際にはAシェードの場合、適宜M-Peachを加えておいた方がよい(図8)。

  • [写真] 左より、①セラビアンのマージンポーセレン(MA3)、②セラビアンのマージンポーセレン(MClear)、セラビアンのマージンポーセレンのMA3とM-Clearを③1:1、④1:2で混合したもの
    図7 左より、①セラビアンのマージンポーセレン(MA3)、②セラビアンのマージンポーセレン(MClear)、セラビアンのマージンポーセレンのMA3とM-Clearを③1:1、④1:2で混合したもの。
  • [写真] 左より、①セラビアンのマージンポーセレン(M-A3)、⑤はマージンポーセレン(M-Peach)、⑥、⑦はそれぞれ図7の③、④に対してM-Pearchを混合したもの
    図8 左より、①セラビアンのマージンポーセレン(M-A3)、⑤はマージンポーセレン(M-Peach)、⑥、⑦はそれぞれ図7の③、④に対してM-Pearchを混合したもの。⑥は③とM-Peachを1:1、⑦は④とMPeachを1:1。ちなみに、⑦がAAAのMA3に近い。
3.オペーシャスボディポーセレンについて

基本色18色(NP1.5、NP2.5を含む)とそれぞれに混ぜて使用するOB-White、OB-Orange、OB-PailPinkから構成される。セラモメタルの場合と同じくポーセレンの明度・彩度をコントロールして、より深みのある色調を再現するために用いる。
また、シェードベースポーセレンと同じ焼成温度なので、各々を混合することもでき、症例に応じてシェードベースポーセレンの透過度を調整するような使用方法も考えられる。

4.ラスターポーセレンについて

ラスターポーセレンは天然歯のエナメル質の色調および表面性状を正確に再現するためのポーセレンで、臨床的によくみられる色調が厳選されている。
・天然歯と同様な緻密な表面性状と光沢を再現できること。
・微粒子の配合とそれらが焼成によって消失しにくいために光の選択的な拡散が生じてオパールセンスをもつこと。
・切端および咬合面を、明るい透明感をもって再現できること。
等が特徴で、8色が用意されている。

5.インターナルステインについて

トリプルAと同様、天然歯の象牙質部分の色調表現用としてポーセレン層内部に使用するステイン材である。
・熱膨張係数が歯冠色ポーセレンとほぼ一致しており、ポーセレン内部に使用しても気泡発生の心配がないこと。
・歯冠色ポーセレンと同様、蛍光性が付与されており、ステイン材を塗布した部分の自然感をそこなうことがない。
・臨床的によくみられる色調がそろっており、特別な場合を除いて数色を新たに混ぜる必要がないこと。
・ステイン材をプロセラのフレーム上に塗布・焼成することにより、最も薄い層で反射(歯冠表層への浮き上がり)を抑制できること。
等が特徴である。

Ⅱ.セラビアンの物性的な特徴

われわれ歯科技工士が作業を進める工程において、気泡の発生やクラックといった主に材料の問題によるトラブルのないことことが必要とされる。もちろん、指定された焼成スケジュールは術者自身の責任においてプログラムしなければならない。
トリプルAでセラモメタルクラウンを製作する場合、指定の焼成最高温度で十分に焼結されるため、その表面の状態が艶のある状態になる。これは、フレームが熱伝導率に優れるメタルであることが大きな要因のひとつでもあるが、アルミナフレームは熱伝導性が低いため、セラビアンでは焼成最高温度で係留時間をとらなければならない。
そして、焼成後の表面の艶を確認することが大切である。係留時間の設定はセラビアンの各ポーセレンについて非常に重要な部分であり、気泡やクラックの発生はもとより、物性面にも影響をおよぼすので注意したい。

1.耐クラック性について

先に述べたように、焼成条件に注意すれば、作業工程のなかでの冷却条件の変化や繰り返し焼成によるポーセレンの熱膨張の変動が少なく、またアルミナフレームとの焼き付け強度が優れているため、焼成後にクラック発生の心配がほとんどない。

2.耐チッピング性について

セラビアンはアルミナフレームに焼き付けるポーセレンであるから、トリプルAや他のセラモメタル用のポーセレンのようにリューサイト結晶を含有させて熱膨張係数を大きくする必要がない。
しかし、リューサイト結晶は熱膨張係数を左右するだけでなく、ポーセレン自体の強度にもかかわっている。
セラビアンでは強度の低下をふせぐため、リューサイト結晶に代わる特殊なフィラーを配合し、ポーセレンの形態修正時のチッピングの心配も少なく、口腔内での信頼性も高い。
図910は各社のビッカース硬さ試験の状態を観察したものである。セラビアンは周波状の亀裂やめくれが明らかに少ない。

  • [写真] セラビアンのビッカース硬さ試験の状態
    図9 セラビアンのビッカース硬さ試験の状態。周波上の亀裂やめくれがほとんどない。
  • [写真] D社の状態
    図10 D社の状態。

Ⅲ.セラビアンを応用した臨床の実際

これまで述べてきたように、セラビアンはプロセラシステムによるアルミナフレームへの適応を主眼において開発された商品である。
もちろん、酸化アルミニウムと熱膨張係数をあわせてあるため、他のアルミナ焼結体にも使用可能である。例えば、ノーベルバイオケア社のブローネマルク・セラダプトアバットメント、アスパック社のF2・セラベースなどがそれにあたる。
図1112はセラダプトアバットメントに直接セラビアンを築盛、焼成したものである。一般的にインプラントのアバットメントに直接ポーセレンを焼き付ける場合、歯頸相当部が分厚くなるが、クラックなどは一切発生していない。

  • [写真] ノーベルバイオケア社のインプラント用セラダプトアバットメントにセラビアンを直接築盛したところ
    図11 ノーベルバイオケア社のインプラント用セラダプトアバットメントにセラビアンを直接築盛したところ。
  • [写真] グレーズ完成したところ
    図12 グレーズ完成したところ。歯頸相当部が分厚くなるが、クラックなどは一切発生していない。
1.プロセラスキャナーによる支台模型のスキャニング

フィニッシングライン(マージンの位置)が明確にトリミングされた支台模型をホルダーに把持させ、決められた設定をおこなうとスキャナープローブにより、模型の表面形態が実測される。
図13は支台模型をスキャニングしているところである。ホルダーが固定せれているステージが回転するときに、支台模型の周囲を1°ごとに全周360°までデータポイントが入力される。最終的には約50,000ポイントの計測データによって支台形態が描画される。

  • [写真] 支台模型のスキャニング
    図13 支台模型のスキャニング。サファイア球でできたスキャナープローブの先端が、支台模型の表面を接触しながらその形態を読みとる。
2.プロセラシステムによるアルミナフレームの調整

約1週間後、ラボにアルミナフレームが届く。届いたフレームの内面にはスウェーデンのプロセラセンターでの製作過程上、耐火模型材の微粉末が付着していることがあるので、図14のようにアルミナサンドブラスト処理する(50μ、4気圧)。
次に、手指による汚れを除去するため、有機溶媒による超音波洗浄をおこなう。
続いて、ポーセレンファーネスにてヒートトリートメントに移る。本フレームは1,000℃以上の高温域で焼成するとその色調が明るく変化する特質があるため、セラビアンのマージンポーセレンなどを使用する場合はフレームの色調を事前に知るためにも特に必要な行程である。
図1516はそれぞれヒートトリートメント前・後の状態である。ヒートトリートメント後、やや色調が明るく変化していることがわかる。ポーセレンの築盛時には、この色調を考慮してベースとなるポーセレンを選択する。
ヒートトリートメントのスケジュールは650℃から1,050℃まで、ヒートレート50℃/分、最高温度にて係留2分、減圧を設定する必要はない。
適合については、スキャナーの取り扱いに若干の慣れを要するものの、基本的に機械加工であるから大きく狂うことは考えられない。
注意したいのは、マージン以外はあらゆる部分において均一に60μのセメントスペースが設けられたフレームである(これは任意に変えることができない)ことと、エマージェンスアングルと称してマージンからある角度をもって立ち上がりが存在する(20°から40°の間で任意に与えることができる)ことである。
通常、この立ち上がりはラボ側で限りなくゼロに近く調整するか、カラーレスを想定のうえ任意の幅で削るか、どちらかになる。
調整は、マイスターポイント・SC51(ノリタケ社)でおこなうとよい。
図17は調整をおこなっているところであるが、内側の赤いラインがマージン、外側の黒いラインが立ち上がりのフィニッシュラインである。なるべくチップしないように、歯根側からみた場合、ホイールは逆回転で扱う。

  • [写真] ラボに届けられたアルミナフレームの内面をサンドブラスト処理しているところ
    図14 ラボに届けられたアルミナフレームの内面をサンドブラスト処理しているところ。50μ/4気圧のアルミナサンドでフレーム内面の耐火模型材の微粉末を取り除く。
  • [写真] ヒートトリートメント前
    図15 ヒートトリートメント前。650℃から1,050℃まで50℃/分で昇温し、係留時間を2分とる。
  • [写真] ヒートトリートメント後
    図16 ヒートトリートメント後。やや色調が明るく変化している。
  • [写真] マイスターポイント・SC51(ノリタケ社)でマージンの調整をおこなっているところ
    図17 マイスターポイント・SC51(ノリタケ社)でマージンの調整をおこなっているところ。歯根側からみて調整するときは、ホイールは逆回転であつかう。赤ラインがマージン、黒ラインが立ち上がりの角の部分。
3.セラビアンの築盛・焼成

ここでは、マージンポーセレンを用いたカラーレス修復物については割愛し、ごく一般的な築盛方法を述べる。
①ウオッシュベイク
再度フレームをスチームクリーナー等で洗浄した後、まずウオッシュベイクをおこなう。このときに使用するポーセレンはシェードベースポーセレンかオペーシャスボディを使用する。
筆者の場合、明るいシェードを再現する必要があり、かつ両側にわたる2歯以上の場合はオペーシャスボディから築盛を始める。単歯修復で隣在歯に合わせる必要がある場合は、目標となる歯牙の色調に近いシェードベースポーセレンから築盛を始める。
図18は、フレーム表面に薄く一層築盛(ウオッシュ)しているところである。このあと、減圧下で960℃、係留1分の焼成をおこなう。
先に述べたように、セラビアンでは、シェードベースポーセレンとオペーシャスボディの焼成温度が同じであるため、術者が症例に応じて適宜混合することができる。ここでは、オペーシャスボディをそのまま使用した。
②第2次築盛・焼成
シェードベースポーセレンをそのまま使用した場合は約0.2mm、オペーシャスボディをそのまま使用した場合は約0.3mmの厚さで第2次築盛をおこなう。両者を混合した場合は、0.2~0.3mmの間で築盛するとよい。
図19は、オペーシャスボディを築盛したところである。
このあと、ウオッシュベイクと同じスケジュール、減圧下で最高温度960℃、係留1分の焼成をおこなう。
③ボディ、エナメル、トランスルーセント、ラスターポーセレンの築盛・焼成
必要に応じてボディポーセレンと混合したサービカルポーセレンを歯頸部に、その上からボディポーセレンを築盛する。
ボディポーセレンによる天然歯の象牙質様の築盛は、一旦歯冠外形を回復したのちにカットバックして象牙質様の構造を作るカットバック法、または築盛のみで象牙質様の構造を作るビルドアップ法のどちらでもよい。
図20はボディポーセレンの築盛が終了したところである。
図21は側方からみたところであるが、切端1/3は、平坦かやや凹面がよい。
エナメルポーセレンの築盛は、基本的に切端より1/3の部分におこなうが、ここではまず両隣接のラインアングル部に築盛した。
続いて切縁の透明度を強調したい部分にトランスルーセントT0やTxを築盛しておく(図22)。
ラスターポーセレンを表面に一層築盛していく。ここでは図23のようにLT1をT0やTxの上から、また透明度を下げたい部分にはエナメルポーセレンやクリーミーエナメルを築盛する(図24)。
図25にボディ、エナメル、トランスルーセント、ラスターポーセレン築盛後の状態を示す。このあと、減圧下で最高温度960℃、係留1分の焼成を行う。
④形態修正・グレーズ
形態修正時、追加が必要であれば③と同じスケジュールで追加焼成をおこなう。グレーズ焼成のスケジュールは形態修正時のポーセレン表面の仕上げ方によって少しづつ変更する。
マイスターコーン(ノリタケ社)やパールサフェスC(同社)を用いた場合は指定の焼成最高温度より10~15℃下げ、係留時間もやや短くする。
図26は模型上での完成、図27はノリタケ・シェードガイドとの比色の状態である。
適度な透過性をもつプロセラ・アルミナフレームとセラビアンにより、明るく自然感に富むオールセラミックスクラウンの製作が可能である。

  • [写真] オペーシャスボディでウオッシュしているところ
    図18 オペーシャスボディでウオッシュしているところ。ごく薄く均一に築盛して、600℃から960℃まで45℃/分で昇温し、係留時間を1分とる。
  • [写真] オペーシャスボディの築盛
    図19 オペーシャスボディの築盛。基本的な厚さは約0.3mm以下とする。この後、600℃から960℃まで45℃/分で昇温し、係留時間を1分とる。
  • [写真] ボディポーセレンで、象牙質様の形態に築盛したところ
    図20 ボディポーセレンで、象牙質様の形態に築盛したところ。
  • [写真] 側方よりみたところ
    図21 側方よりみたところ。切端1/3は平坦かやや凹面にしておく。
  • [写真] エナメル、トランスルーセントの築盛
    図22 エナメル、トランスルーセントの築盛。エナメルは切端1/3に、トランスルーセントのうち、T0やTxなど透明度の高いものを透明感を強調したい部分に築盛してもよい。
  • [写真] ラスターポーセレンの築盛
    図23 ラスターポーセレンの築盛。表層に築盛していく。
  • [写真] あまり透明感を強調したくない部分
    図24 あまり透明感を強調したくない部分にはエナメルやラスターポーセレンのなかのクリーミーエナメルを築盛してもよい。
  • [写真] ボディ、エナメル、トランスルーセント、ラスターポーセレンの築盛後の状態
    図25 ボディ、エナメル、トランスルーセント、ラスターポーセレンの築盛後の状態。この後、600℃から960℃まで45℃/分で昇温し、係留時間を1分とる。
  • [写真] プロセラ・アルミナフレームとセラビアンによるオールセラミッククラウンの完成
    図26 プロセラ・アルミナフレームとセラビアンによるオールセラミッククラウンの完成。
  • [写真] ノリタケシェードガイドとの比色
    図27 ノリタケシェードガイドとの比色。適度な透過性をもつプロセラ・アルミナフレームとセラビアンにより、明るく自然感に富む色調を再現できる。
4.セラビアンの臨床応用

図2846にプロセラによるアルミナフレームとセラビアンの臨床例を示す。
これまで述べてきたように、クラウン自体の色調や適合は術者の術式によるところが大きい。
従来、オールセラミックス修復における臨床で懸念されたことは、口腔内という特殊な環境下で耐えうる強度かどうか、そして術後の色調が支台歯の色調に左右されるか否かの2点であると思う。
特にプロセラシステムを応用したオールセラミックス修復は、わが国の臨床に導入されてからまだ日が浅い。この点に関しては、導入時期も早く何と言っても圧倒的に本数の多い欧米諸国の評価を参考にする以外ない。
強度に関しては、Zengらによるフレーム材の曲げ破壊応力試験1)、およびWagnerとChuによる2軸曲げ試験2)で他の2種類のフレームを有するオールセラミックス・システムより有意に高い強度をもつことが実証されている。
また、使用するセメントによってもクラウンの生存率が左右されることが言われているが、Dwanらによると、リン酸亜鉛セメント、ハイブリッドグラスアイオノマーセメント、レジンセメントの3種のセメントではハイブリッドグラスアイオノマーセメントとレジンセメントがともにリン酸亜鉛セメントより有意に高い破折抵抗を示すものの、すべてのセメントの破折抵抗は臨床的に許容できるものとしている3)
ただし、筆者らの臨床ケースでは、支台歯にナイフエッジに近いマージンの形態があると、クラウンの厚みが不足すると同時に適合精度に悪影響があるため、レジンセメントとシランカップリング剤を用いて歯質と一体化すべきと判断している。
術後の色調と支台歯の色調との関係については、Odenらによるフレームの遮蔽性に関する報告から、暗い支台歯、例えば象牙質の着色・ポストコアに使われる合金などの影響をさけるための付加的な材料、すなわちオペーク材は必要ないともしている4)

  • [写真] 単歯修復症例
    図28 単歯修復症例。下段が術後であるが、セラモメタルクラウンに起こりがちな歯頸部付近の暗い影はみられない。特徴的な色調の再現には、セラビアンのインターナルステインを使用した。(カナレテクニカルセンター/中村繁己氏製作)
  • [写真] 術前
    図29 術前。歯列のほとんどを修復する症例。
  • [写真] 術後
    図30 術後。側切歯を残し、他は修復。右側のブリッジはノリタケAAAによる通法のセラモメタル、それ以外はセラビアンによるオールセラミックスクラウン。(カナレテクニカルセンター/福島光高氏製作)
  • [写真] 歯列補正を目的とした3~3 の単冠修復
    図31 歯列補正を目的とした3~3の単冠修復。術前の状態。両側犬歯のみメタルによるポストコアを適用。
  • [写真] 術後の状態
    図32 術後の状態。歯列は審美的に補正され、歯周組織にも影響はみられない。シェードガイドを比色としてみたが、希望した色調の再現はもちろん、内在するメタルの有無による色差も問題ない。(カナレテクニカルセンター/中村繁己氏製作)
  • [写真] 術前、硬質レジンによる前装冠が装着されていた
    図33 術前、硬質レジンによる前装冠が装着されていた。
  • [写真] 支台歯形成の状態
    図34 支台歯形成の状態。明瞭なシャンファー、ショルダーが確認できる。
  • [写真] 正中を左方向に移動するため、個々のクラウンカウンツァーに違いがでる
    図35 正中を左方向に移動するため、個々のクラウンカウンツァーに違いがでる。
  • [写真] 術前の口元
    図36 術前の口元。平面のゆがみ、正中のずれ、各歯のアンバランスの修正と色調改善が主訴。
  • [写真] 術後の口元
    図37 術後の口元。可能な範囲で修正を試みた。若々しいスマイルラインをつくりだすことができた。(筆者製作)
  • [写真] 術前
    図38 術前。2~2を修復予定。歯間のバランスをとりながら修復する。
  • [写真] 模型の状態
    図39 模型の状態。右側中切歯がクラウン、左側中切歯がセラダプトアバットメント上にクラウン、両側側切歯にAAAによるポーセレンラミネートベニアのコンビネーションケース。
  • [写真] 術後
    図40 術後。右側は有髄のままの形成、左側はセラダプトアバットメントのため、歯周組織の色調も自然である。(筆者製作)
  • [写真] 審美障害を主訴とした3~3 のブリッジの症例
    図41 審美障害を主訴とした3~3のブリッジの症例。模型上でシュミレーションをおこなってみる。
  • [写真] 支台歯の状態
    図42 支台歯の状態。便宜上、メタルによるポストコアの適応とした。また、ポンティックの形状もオベイドタイプとして審美性の向上を図った。
  • [写真] アルミナフレームとポンティックパーツを連結しているところ
    図43 アルミナフレームとポンティックパーツを連結しているところ。現在のプロセラシステムでは、3本ブリッジの場合、2個のフレームと1個のポンティック間2カ所を専用の材料で連結固定し、焼結して一体化する。
  • [写真] ブリッジの完成
    図44 ブリッジの完成。製作時にクラックなどのトラブルの発生はない。
  • [写真] 口腔内装着4週間後
    図45 口腔内装着4週間後。経過を観察するため、テンポラリーセメントによる仮着にしてある。ただし、ノーベルバイオケア社ではブリッジケースの仮着は禁忌としている。(筆者製作)
  • [写真] 術後の顔貌写真
    図46 術後の顔貌写真。自然で健康的なスマイルに生まれ変わった。

おわりに

従来のシステムでは、セラミックフレームの技工操作に多大な時間を要することが問題であったが、コンピュータのテクノロジーを活用したプロセラ・システムはこの点を解決した。
熟練したセラミストの手が面倒なフレーム製作のステップなしに審美的なクラウンの製作に集中できるメリットは大きい。
そして、セラビアン/オールセラミック修復は現在のところ、十二分に機能している。
このことは、今後のオールセラミック修復の中心的な存在になることを示唆している。
今回の症例をご提供、ご助言をいただいたスワンデンタルオフィス栄・山川雅之先生、玉置篤志先生、日野歯科医院・日野年澄先生、松下歯科・松下至宏先生、JUN歯科クリニック・吉田淳一先生はじめ諸先生方に厚く感謝いたします。
また、常に文献や技術のサポートを惜しまないカナレテクニカルセンターのスタッフに心から謝辞を述べたい。

参考文献
  • 1) Zeng K,Oden A,Rowcliffe D;Flexure tests on dental ceramics.IJP,9:434-439,1996.
  • 2) Wagner WC,Chu TM;Apparent flexural strength and indentation fracture toughness of three dental core ceramics.J Prosthet Dent,76:140-144,1996.
  • 3) Dwan A,Yaman P,Razzoog ME,Wang RF;Effect of cement on fracture resistance of allceramic crowns[ abstract 2136] .J Dent Res,75:284,1996.
  • 4) Oden A,Razzoog ME;“Masking ability”of Procera AllCeram copings of various thickness [abstract 2376].J Dent Res,76:310,1997.

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