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WORKING GUIDE SERIES

義歯床補修用レジン「マックスフィット」の特徴と臨床術式

打田 年実

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■目 次

■はじめに

直接リベースは適合が不十分となった義歯を改善する有効な方法であり、新しく義歯を製作するのと比較して、以下の利点を有する。

① 即日完成

患者の口腔内にて直接操作を行うため、当日、しかも比較的短時間にて完了する。このことは患者にとっても大きな利点となる。また、術者にとっても技工所等に依頼することなくでき、負担は少ない。

② 患者の満足

なんと言っても患者にとって、今まで慣れ親しんできた義歯には愛着があり、その義歯を引き続き使用できることは好ましいことである。また、人工歯の位置など、患者にとって慣れのある部分をそのままにできることは、患者の使用感にとって大きなプラスである。

③ 操作が簡単

義歯を新しく製作する時のような印象採得、咬合採得のごとき困難な操作の必要がない。すなわち、旧義歯は理想的な個人トレーであり、理想的な咬合床なのである。また、前歯部排列などに微妙な神経を使う必要がない。

④ 保険点数

新しく義歯を製作するのと比較して、時間的および材料的経費を考慮するなら、リベースの保険点数は若干の不満は残るものの、リーズナブルなものと言えよう。

  • [写真] 義歯床補修用レジン「マックスフィット」
    義歯床補修用レジン「マックスフィット」

■マックスフィットの特徴

さて、今回紹介する義歯床補修用レジン「マックスフィット」の特徴について述べてみよう。何人かの使用経験者に聞いてみると、皆ほぼ同じ項目を挙げたが、その順位においてはかなり相違があるように思われた。臨床上の立場の違いにより、求めるものがそれぞれ異なるのであろう。
筆者は1,000床を超える総合病院の歯科に勤務しているが、自力で歯科外来に来れない患者も多く、病室へ出向しての処置が多くなる。そのような立場の者として、あえて自分の実感で特徴を挙げさせていただくと

① 流れ(flow)があって腰(consistency)がある

義歯用印象材料もそうであるが、この種の材料に必要なのは、この相反する2つの性質を備えていなくてはならないことである。本材料で一番ありがたく感じる点は、この「流れ」と「腰(粘り)」が共存することである。そのため、粘膜面の精度プラス良好な辺縁形態を得ることができる。

② 刺激・不快なモノマー臭が少ない

直接リベースの欠点として、リベース材による刺激が挙げられる。最近は刺激の少ない材料も市販されているが、本材料は刺激が少ないのはもちろん、不快な臭いもほとんどなく、患者に不快感を与えることがない。

③ リベース面が清潔に保たれる

加熱重合レジンに比較して、直接リベース材は汚染の面での欠点が指摘されてきた。本材料はリベース面が比較的長期にわたり清潔に保たれる(図12)。

④ 義歯との接着が良好である

付属の接着材を使用することにより、良好な接着が得られる。反対に接着材の塗布されていない部分では比較的簡単にはがすことができる。このため、人工歯面にはみ出した余剰レジンをエバンスなどで簡単にはがすことができる。

⑤ 高度な研磨が可能

通法の研磨により、滑沢な面が得られる。

  • [写真] リベースされた上顎義歯
    図1 リベースされた上顎義歯。経過観察時、リベース面の清潔さは保たれていた。
  • [写真] リベースされた上顎顎補綴(皮膚移植にて再建)
    図2 リベースされた上顎顎補綴(皮膚移植にて再建)。経過観察時、リベース面は比較的清潔に保たれていた。

■基本術式と症例

以下に、基本術式<症例1>(図319)、及び<症例2>(図2025)、<症例3>(図2629)を供覧する。

  • [写真] 口腔内 上顎
    図3 <症例1>口腔内 上顎。
  • [写真] 口腔内 下顎
    図4 <症例1>口腔内 下顎。
  • [写真] 適合状態を確認する
    図5 適合状態を確認する。
  • [写真] 裏装を行う面全体をカーバイドバーなどで一層削除し、新鮮面を出す
    図6 裏装を行う面全体をカーバイドバーなどで一層削除し、新鮮面を出す。
  • [写真] 付属の小筆を用いて接着材を裏装面より広めに塗布する
    図7 付属の小筆を用いて接着材を裏装面より広めに塗布し、エアーにて乾燥させる。
  • [写真] 液材の入ったラバーカップに粉材を加え、スパチュラで10~15秒間混和する
    図8 液材の入ったラバーカップに粉材を加え、スパチュラで10~15秒間混和する。
  • [写真] 混合開始から約15秒するとレジンが盛り上げに適した流動性になるので、スパチュラを用いて義歯粘膜面に盛り上げる
    図9 混合開始から約15秒するとレジンが盛り上げに適した流動性になるので、スパチュラを用いて義歯粘膜面に盛り上げる。この時、レジンを糸が引くように垂らしてやると気泡が入らない。
  • [写真] レジンを盛り上げた義歯を口腔内に挿入し、中心咬合位で咬合させる
    図10 レジンを盛り上げた義歯を口腔内に挿入し、中心咬合位で咬合させる。
  • [写真] 十分に咬合させたところで、口角牽引・口唇突出などの一連の機能運動を行う
    図11 十分に咬合させたところで、口角牽引・口唇突出などの一連の機能運動を行う(作業は混合終了~3分30秒)。
  • [写真] 辺縁部の余剰レジンはハサミでトリミングする
    図12 口腔内挿入後、約2分30秒経過するとレジンはゴム状となるので、口腔内より取り出し可能となる。辺縁部の余剰レジンはハサミでトリミングする。
  • [写真] 細部の余剰レジンはメスでトリミングする
    図13 細部の余剰レジンはメスでトリミングする。
  • [写真] 人工歯面に流れたレジンはエバンスなどで除去する
    図14 接着材が塗布されていない部分ではレジンは比較的簡単にはがれる。人工歯面に流れたレジンはエバンスなどで除去する。
  • [写真] 50~60℃の温水に浸漬することにより硬化が促進される
    図15 50~60℃の温水に浸漬することにより硬化が促進される。
  • [写真] 通法に従って形態修正を行う
    図16 通法に従って形態修正を行う。
  • [写真] 通法に従って研磨を行う
    図17 通法に従って研磨を行う。
  • [写真] 完成
    図18 完成。
  • [写真] 口腔内に装着
    図19 口腔内に装着。
  • [写真] 自力にて歯科外来に来れないため、病室で直接リベースを行った
    図20 <症例2>脳梗塞症例。自力にて歯科外来に来れないため、病室で直接リベースを行った。
  • [写真] 旧義歯粘膜面
    図21 旧義歯粘膜面。
  • [写真] 下顎リベース直後
    図22 下顎リベース直後。本材料は「流れ」があって「腰」もある。そのため、粘膜面の精度プラス良好な辺縁形態を得ることができる。
  • [写真] 頬側、舌側共、床縁が適切に延長されている
    図23 頬側、舌側共、床縁が適切に延長されていることに注目。
  • [写真] 余剰レジンはメス、ハサミなどでトリミングできる
    図24 余剰レジンはメス、ハサミなどでトリミングできるため、病室での研磨も比較的短時間にて行える。
  • [写真] 口腔内に装着
    図25 口腔内に装着。失われた機能が回復した。
  • [写真] 金属床のリベース
    図26 <症例3>金属床のリベース。
  • [写真] 金属面にサンドブラスト処理を行い、アロイプライマー(金属接着性プライマー)を塗布する
    図27 金属面にサンドブラスト処理を行い、アロイプライマー(金属接着性プライマー)を塗布する。
  • [写真] 基本術式に従い、レジンを盛って口腔内に挿入する
    図28 基本術式に従い、レジンを盛って口腔内に挿入する。
  • [写真] 金属との接着は良好である
    図29 金属との接着は良好である。

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