直接リベースは適合が不十分となった義歯を改善する有効な方法であり、新しく義歯を製作するのと比較して、以下の利点を有する。
患者の口腔内にて直接操作を行うため、当日、しかも比較的短時間にて完了する。このことは患者にとっても大きな利点となる。また、術者にとっても技工所等に依頼することなくでき、負担は少ない。
なんと言っても患者にとって、今まで慣れ親しんできた義歯には愛着があり、その義歯を引き続き使用できることは好ましいことである。また、人工歯の位置など、患者にとって慣れのある部分をそのままにできることは、患者の使用感にとって大きなプラスである。
義歯を新しく製作する時のような印象採得、咬合採得のごとき困難な操作の必要がない。すなわち、旧義歯は理想的な個人トレーであり、理想的な咬合床なのである。また、前歯部排列などに微妙な神経を使う必要がない。
新しく義歯を製作するのと比較して、時間的および材料的経費を考慮するなら、リベースの保険点数は若干の不満は残るものの、リーズナブルなものと言えよう。
さて、今回紹介する義歯床補修用レジン「マックスフィット」の特徴について述べてみよう。何人かの使用経験者に聞いてみると、皆ほぼ同じ項目を挙げたが、その順位においてはかなり相違があるように思われた。臨床上の立場の違いにより、求めるものがそれぞれ異なるのであろう。
筆者は1,000床を超える総合病院の歯科に勤務しているが、自力で歯科外来に来れない患者も多く、病室へ出向しての処置が多くなる。そのような立場の者として、あえて自分の実感で特徴を挙げさせていただくと
義歯用印象材料もそうであるが、この種の材料に必要なのは、この相反する2つの性質を備えていなくてはならないことである。本材料で一番ありがたく感じる点は、この「流れ」と「腰(粘り)」が共存することである。そのため、粘膜面の精度プラス良好な辺縁形態を得ることができる。
直接リベースの欠点として、リベース材による刺激が挙げられる。最近は刺激の少ない材料も市販されているが、本材料は刺激が少ないのはもちろん、不快な臭いもほとんどなく、患者に不快感を与えることがない。
加熱重合レジンに比較して、直接リベース材は汚染の面での欠点が指摘されてきた。本材料はリベース面が比較的長期にわたり清潔に保たれる(図1、2)。
付属の接着材を使用することにより、良好な接着が得られる。反対に接着材の塗布されていない部分では比較的簡単にはがすことができる。このため、人工歯面にはみ出した余剰レジンをエバンスなどで簡単にはがすことができる。
通法の研磨により、滑沢な面が得られる。
以下に、基本術式<症例1>(図3~19)、及び<症例2>(図20~25)、<症例3>(図26~29)を供覧する。