DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

TRENDS
セルフケア用フッ化物配合ジェル剤 Check-Up gel
ライオン歯科材株式会社 統括部 諸星 裕夫

■目 次

■はじめに

カリオロジー(う蝕学)の進歩にともない、フッ化物応用により表層下脱灰部分の再石灰化が促進されるという事実が示され、積極的な初期う蝕へのフッ化物応用による再石灰化療法が日常診療で実践されるようになりました。さらに、う蝕リスクを簡便に判定できる唾液緩衝能測定セット『チェックバフ<製造:(株)堀場製作所、販売:(株)モリタ)』(図2)など客観的に患者様にう蝕リスク情報を提供できる手段や『ポスカム(製造:江崎グリコ(株)、販売:(株)モリタ)』(図3)などフッ化物以外で再石灰化環境を強化するデンタルガムが登場しています。
これからは、リスクに対応したソリューションとしてのセルフケアをどのように指導するかが課題です。
とくに日本ではセルフケアに使用できるフッ化物はフッ化物配合歯磨剤であり、配合濃度は1000ppmF以下との薬事規制があることから、欧米のように、う蝕ハイリスクにはフッ化物高濃度の歯磨剤をアドバイスするというバリエーションを用意することが困難な状況です。したがって、現状ではう蝕リスクによるセルフケアの対応に幅がなく、フッ化物配合歯磨剤の使用頻度を変える程度でした。
このような状況は、医科学がヒトゲノム全配列の解明からオーダーメード医療へ進んでいこうという現代において前時代的であり、また現代の歯科医療が患者様の口腔の健康を生涯に渡り維持することを目的としていることからも、患者様一人一人のリスクに対応したセルフケアソリューションを提供することができるフッ化物製剤が必要であると考えました。
このような考えから、とくにう蝕ハイリスクの方のセルフケアソリューションとして『Check-Up gel』を開発しました。

  • [写真] Check-Up gel
    図1 Check-Up gel
  • [写真] Check-Buf
    図2 Check-Buf
  • [写真] POsCAM
    図3 POsCAM

■フッ化物配合ジェルとは

フッ化物配合ジェルとはいわゆるフッ素ジェルのことです。フッ素ジェルと聞くと院内で使用する高濃度フッ化物歯面塗布剤(フッ素濃度9000ppmF)を思い浮かべられる方も多いことかと思いますが、ここでは歯磨剤タイプのセルフケア用の製剤を指します(したがって1000ppmF以下のフッ素濃度)。
このフッ化物配合ジェルは、一般的に研磨剤を含有せず発泡もほとんどしない透明のジェル剤で、フッ素を口腔内に供給することに特化した製品といえます。このようにできるだけフッ化物以外の成分を配合しない組成であり、使用後に吐き出しをすればそれ以上の洗口を必要としないため、フッ素の口腔内保持には有利な製剤となっています。
その反面、研磨剤や発泡剤といった歯磨剤としての基本成分を必要量含有しないため、プラーク除去の効率化や口腔内を清浄にする機能は低下するというハンディがあり、フッ化物配合歯磨剤とは一線を画する製剤になっています(図4)。
日本ではフッ化物配合ジェルも医薬部外品歯磨剤として薬事的には区分されますが、むしろフッ素を口腔内に供給し保持させることに特化した機能から院内で使用するフッ化物歯面塗布剤に極めて近い製剤といえます。

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  • [図] Check-Up gelの使用法
    図4 Check-Up gelの使用法

■従来のフッ化物配合ジェルの課題

このようなフッ化物配合ジェルは主に米国で多く製品化され、その一部が日本にも歯科用として輸入されています(図5)。この米国製のフッ化物配合ジェルはフッ化第一スズ(S n F 2)を配合したものが多く、香味も米国人の嗜好に合わせた製品になっています。
米国製のフッ化物配合ジェルに対する日本の歯科医師・歯科衛生士の不満点を調査すると、香味、使用性(チューブからの出し易さ、歯ブラシへの乗せ易さ)に多くの不満を感じている実態がわかりました。それと同時に、日本人に合った香味、使用性の高いフッ化物配合ジェルの要望が強いこともわかりました(図6)。香味、使用性は患者様にコンプライアンスの高い指導を実践する際に重要なファクターであり軽視できないものです。

  • [写真] フッ化物配合ジェル
    図5 フッ化物配合ジェル
  • [グラフ] フッ化物配合ジェルの不満点
    図6 フッ化物配合ジェルの不満点

■Check-Up gelの特徴

そこで従来のフッ化物配合ジェルの不満点を改良し、日本人が好む香味で、歯ブラシでの使用性が高いフッ化物配合ジェルを創ることができれば、う蝕リスクに応じたソリューションとして有力な武器になると考え、開発に着手しました。
フッ化物はフッ素がイオン化しやすく着色の心配もないフッ化ナトリウム(NaF)とし、Check-Up歯磨剤で好評のキシリトールはCheck-Up歯磨剤と同じ9%の配合としました。
開発を進める中で、歯科医院のフッ化物配合ジェルへの要望から、う蝕リスクの高まるライフステージである①乳歯でのう蝕多発児②矯正治療開始時期のティーンエイジャー③歯根面露出歯を多く有する成人の患者様に適切なフッ化物配合ジェルが必要であることを強く感じ、う蝕リスクの高まる3つのライフステージをコアターゲットとして開発することになりました。
その結果、下記の3種類のライフステージ対応のフッ化物配合ジェルを開発することに成功しました(図7)。

1)Check-Up gel バナナ

○コアターゲット:6歳未満の幼児用
○香味:バナナ
○フッ化物:NaF 500ppmF
○甘味剤:キシリトール

2)Check-Up gel レモンティー

○コアターゲット:ティーンエイジャー
○香味:レモンティー
○フッ化物:NaF 950ppmF
○甘味剤:キシリトール

3)Check-Up gel ミント

○コアターゲット:成人
○香味:ミント
○フッ化物:NaF 950ppmF
○抗菌剤:塩化セチルピリジニウム(CPC)
を有効成分として配合
○甘味剤:キシリトール

  • [図] Check-Up gelの品種とコアターゲット
    図7 Check-Up gelの品種とコアターゲット

■Check-Up gelの使用性

上記の3製品と、代表的な米国製のフッ化物配合ジェルとの使用比較を調査したところ、香味や歯ブラシへの乗せ易さなどCheck-Up gelの高い使用性が確認されました(図8)。
なお、使用後のうがいの水の量も調査しましたが、Check-Up standardやkodomoのソフトペースト剤が使用後1回の吐き出しと25mLによる2回の洗口で満足したのに対し、Check-Up gelでは25mLによる1回の洗口で充分との結果を得ています。

  • [グラフ] Check-Up gel使用テスト結果
    図8 Check-Up gel使用テスト結果

■Check-Up gelの組成に関するFAQ

ここで、とくに質問の多い以下の配合組成についての考え方を述べておきます。
Q.なぜティーンエイジャー用のフレーバーはレモンティーか?
欧米のフッ化物配合ジェルには、バブルガムやコーラなど毎日のオーラルケアが楽しくなるような非常にバラエティーに富んだフレーバーが使用されています。その香味が日本人にも好まれれば、毎日の楽しい使用はもとより、患者様の継続性などのコンプライアンスにとってメリットがあると思います。そこで、特に矯正治療の入門者が多く、日本でう蝕が急激に増加するティーンエイジャーに楽しくフッ化物を使用して頂きたいと考え(図9)、ティーンエイジャーを対象とした嗜好調査を行いました。その結果、スポーツ飲料と並んで紅茶に高い人気があることがわかりました。紅茶は近年ボトル入タイプが急激にティーンエイジャーに支持されているようで、ティーンエイジャーをターゲットとしたテレビCFも多く目にします。一方、スポーツ飲料はう蝕原性飲料として認識されていることもあり、オーラルケア製品にはやや相応しくないと判断し、紅茶しかも無糖のレモンティーのイメージでティーンエイジャー用のフレーバーを開発しました。
Q.なぜミントにCPCを配合したのか?
フッ化物配合ジェルはフッ化物を口腔内に供給することに特化した製剤であり、うがいも少量とする製剤であるため、フッ化物以外の成分は配合しないことを基本にしました。ところが、成人に多く使用されることを想定したCheck-Up gel ミントは歯根面う蝕予防も使用目的として想定されるため、歯根面露出の原因である歯周病リスクの高い患者様に必要な抗菌剤セチルピリジニウム(CPC)を有効成分として配合し、マルチ効果を期待しました(図10)。
Q.なぜ500ppmFを用意したのか?
フッ素ジェルはう蝕リスクの高い方に推奨されることが多く、他のフッ素プログラム~例えば将来的に水道水にフッ化物が添加される地域でフッ化物配合歯磨剤やフッ素洗口剤と併用使用されることが考えられます。そのため、過量のフッ素を飲み込んだ場合に「歯のフッ素症」が発現する恐れのある6歳未満の幼児用として「歯のフッ素症」リスクを低減するためのフッ素濃度500ppmFとしました。しかし、フッ素濃度500ppmFは950ppmFより再石灰化促進作用が低いため、「歯のフッ素症」が前歯部に発現する恐れがない6歳以上や吐出しがきちんとできる6歳未満の幼児では、より再石灰化促進作用が高い950ppmFのフッ素濃度のCheck-Upgelレモンティーまたはミントを推奨すべきと考えます。低濃度フッ素配合歯磨剤が入手可能な英国でも、6歳未満のう蝕リスクの高い幼児には1000ppmFが推奨されています(図11)。
海外では幼児用歯磨剤で500ppmF、250ppmFなどの低濃度フッ素歯磨剤が発売されていますが(図12)、これは日本と異なり、水道水フッ化物添加やフッ化物添加食塩などフッ化物の全身応用が行われ、歯磨剤使用後にうがいをきちんとせずに飲み込み量も日本人に比べて非常に多いことから、「歯のフッ素症」のリスクを軽減するため低濃度フッ素歯磨剤が発売されているのです。

  • [グラフ] 年齢とDMF歯数
    図9 年齢とDMF歯数
  • [図] CPCとSnF2の抗菌力比較
    図10 CPCとSnF2の抗菌力比較
  • [図] 英国でのフッ化物配合歯磨剤推奨例
    図11 英国でのフッ化物配合歯磨剤推奨例
  • [写真] 海外の低濃度フッ化物配合歯磨剤
    図12 海外の低濃度フッ化物配合歯磨剤

■Check-Up gelの使用法と口腔内フッ素保持

Check-Up gelを使用した際の口腔内フッ素濃度の推移を調査しました。成人を対象に歯科用大人歯ブラシ(DENT.MAXIMA)を使用してCheck-Up gelを0.3g使用し、使用後の洗口が25mL1回の場合と、Check-Up standardを0.5g使用し、使用後の洗口が25mL2回の場合は、ほぼ同等の口腔内フッ素濃度の推移でした。ジェル剤はソフトペースト剤に比較して洗口量が少なくて済むため、より少ない使用量でも同等の口腔内フッ素濃度を維持できることがわかりました。
さらに、ソフトペーストの使用後に、30秒間で歯全体にジェルを塗布するようにブラッシングするダブルF法をおこなうと、口腔内フッ素濃度をさらに高めるブースター効果が見られました。これを利用すれば、口腔内でのフッ素の保持をさらに長時間維持できるため、う蝕リスクの高い方に適した使用法と考えられます(図13)。

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  • [図] Check-Up gelの口腔内フッ素濃度推移
    図13 Check-Up gelの口腔内フッ素濃度推移

■さいごに~カリエスリスクソリューションとしてのCheck-Up gel

う蝕リスクの高い方のセルフケア用フッ化物製剤として最適のCheck-UpgelがCheck-Upシリーズに加わることにより、う蝕リスクに応じたフッ化物製剤のセルフケア指導が可能になります。以下に具体的な推奨使用例を紹介します(図14)。

○う蝕リスク高度(High Risk)

①毎食後にCheck-Up standard/kodomoを少量洗口で使用
②就寝前にCheck-Up gelをダブルF法(Check-Up standard/kodomo+Check-Up gel)またはシングル法(Check-Upgel単独使用)で使用

○う蝕リスク中等度(Moderate Risk)

①朝夕食後・就寝前にCheck-Up standard/kodomoを少量洗口で使用
②矯正治療中は毎食後にCheck-Up gelシングル法で使用

○う蝕リスク低度(Low Risk)

①朝食後・就寝前にCheck-Up standard/kodomoを少量洗口で使用
Check-Up gelを加えたCheck-Upシリーズが患者様のリスクに対応した質の高い医療の一助となり、患者様の高い満足度を得られる医療に繋がれば幸いです。

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  • [図] Check-Up シリーズの臨床ポジショニング
    図14 Check-Up シリーズの臨床ポジショニング