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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
“エンドウェーブ”を用いた根管拡大・形成
畠 銀一郎

■はじめに

ニッケル・チタン合金(以後、Ni-Ti)製ファイルが市販され約10年経過した。Ni-Tiファイルが市販された当初は、手用のK型ファイルのみであったが、減速コントラに装着して使用できるロータリー・ファイルが開発されると多くのメーカーから種々なロータリー・ファイルが市販されるようになった。
この種のファイルは、超弾性を示すことから、彎曲根管の拡大・形成時には追従性の良いファイルとして認められ、専門医制度の確立した米国においてはほとんどの歯内治療専門医が臨床に応用している。
わが国においても、Ni-Tiロータリー・ファイルの根管拡大・形成能に関わる研究論文も多くみられ、拡大・形成後の根管形態にはほとんど根管偏移を認めないことが報告されている。それゆえ、この種のファイルの有用性が一般開業医の間においても認識されはじめてきた。
Ni-Tiロータリー・ファイルの刃部テーパー度は従来の根管用インスツルメントと比べ大きく増大しているため、根管拡大・形成時には歯冠側から根尖部方向へ拡大を進めるクラウン・ダウン法に従う(図1)。このテクニックはファイル・サイズの大きなものから小さなものへと変えながら根管拡大を根尖部付近まで進めた後に作業長の確認を行うため、拡大・形成時に見られる根管内容物の根尖孔外への溢出の危険性も少なく、また彎曲根管の拡大・形成終了時にみられる根管長の短縮化もほとんど見られないため、極めて安全な根管拡大・形成法といえる。
最近市販された第4世代となるNi-Tiロータリー・ファイル・システムの“エンドウェーブ”には数本の異なったテーパー度を示すファイルがセットされており、テーパー度の異なったファイルを2、3本使用するのみで根尖部付近までの拡大・形成が終了できる。それゆえ、根管の拡大・形成に要する作業時間も明らかに短縮されるようになってきた。

  • クラウンダウン拡大形成法の図
    図1 クラウンダウン拡大形成法。
  • アソートキットの画像と構成内容の表
    図2 アソートキットと構成内容。

■ファイルのテーパー度を替えながら行う根管拡大・形成

従来までのNi-Ti製ロータリー・ファイルによる根管拡大・形成法では、根管口部の拡大を数本のゲイツ・グリデン・ドリルあるいは各システムに付属の拡大用ファイルを使用して行っていた。この操作によって根管内へのファイル挿入方向が直線的になり、ファイルの回転操作に無理が生じにくくなる。しかし、“エンドウェーブ”のシステムには刃部テーパー度の大きなインスツルメントが取り揃えられているため、根管口部から根尖1/3部までの形成が僅か2、3本のファイルの使用によって達成できる。
“エンドウェーブ”には拡大・形成する根管によって2つのタイプのものが用意されており、一つは基本的な根管拡大・形成用としてのアソートAで、他のものは狭窄根管に適したアソートBである(図2)。これらのシステムの中で、アソートAではファイル刃部のテーパー度が8%、ファイル先端径がISO規格の#35、アソートBでは、テーパー度6%でファイル先端径がISO規格の#25のロータリー・ファイルが根管口部から根管中央部付近までの拡大・形成に適している。図3は筆者が好んで臨床応用している“エンドウェーブ”システムのファイルである。左から#35/08、#30/06、#25/06、#20/06を示す。
このファイルを用いて、透明模型根管に対する拡大・形成の手順を示す。
根管口部の拡大・形成には、#35/08を挿入し、5~6秒間回転操作を加えるのみで根管口部から根管中央部付近にかけてのフレアー形成が終了できる(図4、5)。
根管中央部付近までの拡大・形成が終了すれば、次にテーパー度が1サイズ小さなファイルを用いてさらに根尖端寄りの拡大を行う。この操作は根管口部から根管中央部付近までがすでに拡大されているため、ファイルの根管内挿入も容易で、僅か4~5秒の操作時間で根尖1/3~1/4部までの根管拡大が終了できる(図6)。
根尖部付近までの根管拡大が終了すれば、作業長の測定を行う(図7)。この時点では例え拡大・形成前の根管が彎曲を示していても、根管の直線化傾向がすでに終了しているため、根管の拡大・形成後に根管長の短縮化をみることはほとんどない。それゆえ、根尖部根管の拡大・形成では測定した作業長通りにファイル・サイズを小さなものから大きなものへと替えながら拡大・形成を進めるだけでよい(図8)。

  • エンドウェーブシステムのファイルの画像
    図3 筆者が好んで臨床応用している“エンドウェーブ”システムのファイル。
    左から#35/08、#30/06、#25/06、#20/06。
  • 拡大・形成前の模型根管画像
    図4 拡大・形成前の模型根管
  • 根管口部から根管中央部までの拡大画像
    図5 #35/08を用いて、根管口部から根管中央部までの拡大。
  • 根管中央部から根尖1/3までの拡大画像
    図6 #35/06および#30/06を用いて、根管中央部から根尖1/3までの拡大。
  • 作業長の測定画像
    図7 #10/02 Kファイルを用いて、作業長の測定。
  • 根管の拡大・形成の画像
    図8 作業長測定後、#25/06、#30/06を順次用いて、根管の拡大・形成を終了する。

■Ni-Ti製ロータリー・ファイルだけでの根管拡大・形成は不可能

Ni-Ti製ロータリー・ファイルは柔軟性に富むファイルであるが、根管内を自ら穿通しながら根尖方向へとは進んでくれない。それゆえ、髄室開拡が終了し根管口部の確認ができれば、必ず#10~15の手用K-ファイルを用いて根管口部から根尖部方向へ可及的に挿入可能な位置までの根管穿通を終了しておかねばならない。このような操作によって、Ni-Ti製ロータリー・ファイルは根管内を根尖方向へと拡大しながらスムーズに進んでくれる。
特に、初心者は髄室開拡後、根管口部の確認を終えると同時にファイルを根尖方向へ押し付け使用する傾向がある。このような場合、根管が狭窄しておれば、必ずファイル先端部が根管内にかみ込み、容易に破折する。しかし、根管拡大の前準備として根管の可能な範囲までの穿通が行われておれば、ファイル破折は防止できる。

■根管拡大・形成時に破折しないファイルはない

根管拡大・形成時における最大の心配事は、使用中のファイルが破折してしまうことである。これは術者が細心の注意を払ってファイルを使用していても、何の前触れもなくファイルが破折することがある。このようなファイル破折は、明らかに金属疲労とファイル刃部にかかる過度なトルクが原因する。
この2つの原因は、ファイルの使用回数にも大きくかかわるため、ファイルの使用回数を限定し使用することでファイルの破折を予防することができる。しかし、根管の狭窄が顕著な症例に関して根管内で無理にファイルを操作すれば、必ずファイルが根尖方向へ引き込まれるような動きを示し(スクリューイング現象)、そのまま放置すれば過度なトルクがファイルにかかり、ファイル刃部が破折する。

■“エンドウェーブ”刃部にみられるアンチ・スクリューイング・デザイン

従来の手用ファイルおよびリーマーの刃部構造は、一定のピッチ幅およびヘリカルアングルを示す螺旋形状の溝のため、根管内で回転操作を加え続けると必ずスクリューイング現象がみられる(図9)。
それゆえ、Ni-Ti製ロータリー・ファイル使用時には根管内でファイルを歯冠側へ細かく引き戻しながら拡大・形成を進める操作、すなわちペッキング・モーションによって根管拡大・形成を行わなければならない。特に、拡大・形成を行う根管の石灰化傾向が顕著な場合には、頻繁にペッキング・モーションを繰り返し行わなければ、ファイル先端部は根管内に食い込み、容易に破折してしまう。このような現象は、Ni-Tiファイルを使用したことのある臨床家には苦い経験となっているはずである。
このようなスクリューイングを少しでも軽くするため、各製造業者は様々な工夫を刃部に施している。その中に、刃部のピッチ幅およびヘリカルアングルを一貫して一定にせず、ファイル先端部からハンドル部にかけ多少変化を持たすことでファイルのスクリューイングを防止する試みがみられる。さらに彎曲根管の拡大・形成時にファイル先端部が根管内から逸脱し、根管壁をあらぬ方向へと進むことのないように多くのNi-Ti製ファイルの先端部はノン・カッティング・チップに加工されている。このような多くの安全対策がNi-Ti製ロータリー・ファイルにみられるが、根管内で回転操作を加え、ファイルを根尖方向へ少しでも押し付ければどのようなファイルでもスクリューイングが生じる。
しかし、“エンドウェーブ”にみられるアンチ・スクリューイング・デザインでは刃部全てが根管内で壁面に接しない特殊な構造を示すため、根管内でのスクリューイングはほとんど感じられなくなっている(図10)。それゆえ、根管拡大・形成時にはファイル刃部に過度なトルクがかからず、刃部破折が生じにくくデザインされている。さらに、刃部表面には、機械研磨処理後に電解研磨も施されているため、過度なトルク負担によっても刃部に微細なクラックが生じにくく(図11)、安心して使用できるファイルであると思われる。

  • スクリューイングの起こるデザインの画像
    図9 スクリューイングの起こるデザイン。
  • アンチスクリューデザインの画像
    図10 アンチスクリューデザイン。ファイルに過度なトルクがかかりにくく、根尖方向への食い込みや破折が生じにくくなっている。
  • 機械研磨処理後、電解研磨後の画像
    図11 刃部表面には、機械研磨処理後に電解研磨も施されているため、過度なトルク負担によっても刃部に微細なクラックが生じにくくなっている。

図12、13の症例※は“エンドウェーブ”を用いて行った再治療例である。患歯の歯根は彎曲を示し、彎曲部手前までポストコアが装着されている。しかし、コア先端部から根尖部にかけての根管処置が不十分なため根尖部に明らかなエックス線透過像が認められる。コア除去後、根尖部根管の穿通を従来のステンレス・スチール製K-ファイルによって行った後、根管拡大・形成を“エンドウェーブ”の06テーパー#30のファイルで終了した。その後の根管充塡には、根管用シーラーを併用したObtura-Ⅱ(図14)による加熱軟化ガッタパーチャ注入法を応用した。
“エンドウェーブ”の刃部横断面の形状は従来の手用リーマーと同様のシンプルな正三角形である。それゆえ、柔軟性が他のファイルと比べ明らかに優れているため、今回のような彎曲根管に対してもスムーズに根管拡大・形成が終了できた。
※クインテッセンス出版:「グローバルエンドドンティクス」から抜粋

    • 術前の画像
      図12 術前
    • 術後の画像
      図13 術後
    “エンドウェーブ”を用いて行った再治療例。根尖部にエックス線透過像が認められる。コア除去後、Kファイルを用いて根尖部根管の穿通を行った後、“エンドウェーブ”#30/06のファイルで終了した。
  • Obtura-Ⅱの画像
    図14 Obtura-Ⅱ。