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TRENDS
口呼吸・悪舌癖矯正器具「ヒットスポット」の特徴と使用方法
秋広 良昭

■目 次

■ヒットスポットの開発意義

口唇閉鎖力と舌筋を1つの器具で同時に筋肉トレーニングができることで、2つの難問が解決されます。
第1は口輪筋と舌筋のストレッチ方法が容易・確実に・誰にでも手軽にでき、そのストレッチ効果の素晴らしさに驚くとともに、歯科の重要性への再認識が患者さんに生まれます。
第2は口輪筋と舌筋を同時にストレッチすることで、障害者歯科診療といえども特別な教育を受けなくとも歯科医師が関われる領域であることが分り一般歯科医師の活動範囲が広がります。

■ヒットスポットの位置づけ

「ヒットスポット」(図13)の開発にあたっては、衛生性、取り扱い易さ、負荷の変更、モチベーションを得やすいこと、安価であることなどの様々な条件をクリアーするようにしました。
新製品「ヒットスポット」で患者さん自身の理解度が得られた暁には、より広範囲に効果がある「パタカラ」に移行することで、ステップアップをしていただきたいと考えています。

  • 図1
    図1
  • 図2
    図2
  • 図3
    図3

■表情筋認識の現状

表情筋の働きによる影響はとても広範囲に及び、未だ全てが解明したとはいえません。表情筋が衰えていることでおきる弊害は国民の健康維持にとっても重要であり、また、その解決方法を指導する歯科医師の将来にとっても活躍できる大切な領域です。
ただし、現在の医療現場では口輪筋と舌筋の同時ストレッチ器具が存在しなかったために、表情筋の働きがいかに大切なことであるかということに多くの医療関係者は気が付いていません。医療現場のそれも未だごく一部の歯科医師に普及しているに過ぎません。
一方、機会あるごとにマスメディアは多くの国民に面白おかしく表情筋の働きの重要さを知らせています。その影響で好むと好まざるとにかかわらず、少しずつ国民も歯科医師も共に表情筋の働きの大事さと、それが美と健康に密接に関係しているということを知るようになってきました。
まさに、MFT(口腔筋機能療法)を行うことで総合的な健康と美を確保できることを知る時代が到来したと言えるでしょう。

■MFTの歴史と背景

小児歯科や矯正歯科など口腔発育機能を研究している先生方の間では、舌の先が常に下顎前歯裏側に触れていると歯列に悪影響がおきるということが長らく経験的に知られていました。
また、摂食嚥下・構音障害の改善に取り組んでいる臨床施設でも、そのメカニズムはともかく、臨床的には舌の位置や機能が重視されてきました。
舌先が常に前方に押し続ける持続的な圧力は上下の前歯が触れて閉まらない開咬となるだけでなく、歯列全体の歪みや噛み合せ、摂食・嚥下・構音にまで悪影響を与えることが知られています。
従来からのMFTの臨床的手段としては、舌筋の強化のために割り箸などを口に咥え、舌で上方に押すなどの不確かな方法に頼るなどしてきました。臨床医はこれらによる改善の確実性という点には疑問を感じてはいましたが、他に適当な手段が見当たらず、結果的な消去法により、やむをえずに継続しているのが現状でした。
むしろ、審美的、咬合機能面で改善策が見当たらず、この点については放置・見て見ぬ振りをしていた傾向があったといっても過言ではありません。
期待する効果が出てくるまでは気の遠くなるような時間を要する非常識な試みが行われてきました。当然なことに、そのような長期間を要しては患者さんのモチベーションは維持できません。

■口輪筋と舌筋の同時強化の目的と重要性

矯正歯科においても、仮に長期間かけて歯列矯正が治癒・完了したとしても、依然として患者さんの舌の先が常時下顎前歯裏側を押し続けていると、時間の経過と共に審美的、咬合機能面で矯正治療前の状態まで後戻りを起こしてしまうことが良く知られています。
舌筋の力が強くなると自然に舌の先が上顎前歯裏側の口蓋位置に触れていることは周知のことです。
後戻りを起こさせないためにも口輪筋および舌筋を同時強化させることで、常時、舌の先は上顎前歯裏側口蓋に触れていることが望ましいのです。
矯正治療患者は潜在的に自分が美しくなりたいと希望しています。「パタカラ」で口唇閉鎖力を強化することで表情筋・舌筋が同時に強化でき、MFT効果のおまけで小顔になることはよく知られています。
しかし、そのことが真実であるかを疑い、調査すら躊躇する歯科医師も多いことも世の常です。その手軽な確認グッズとして「ヒットスポット」を使用してみて下さい。

■口コミで診療所の宣伝

今の世、なんでも速攻かつ確実な治療でないと「あそこの歯科医院は良い」という口コミはおきません。
この「ヒットスポット」や「パタカラ」を使ってMFTの効果を手軽に患者さんに知っていただければ、良い歯科医院との評判が広がり、それが宣伝手段となり、自己診療所PRの強力な武器になります。
今の時代の患者さんは治療よりもセルフ・ケアによる疾病予防と、さらに美容を含めたアンチ・エイジングのノウハウを歯科医院の診療に求めています。
そこで先生方の要望にこたえる器具「ヒットスポット」を開発販売することになりました。
これは、患者さんに口輪筋と舌筋の大切さを知ってもらうためのものです。既販の「パタカラ」と比較すると効能は限定的で、本来の広範囲なMFT効果を発揮する程ではありません。悪舌癖や摂食・嚥下、構音機能の改善だけを目的としており、初めてMFTを行う患者さんにとって取り扱い易く、安価なものになっています。
「パタカラ」も使いたいが、患者さんに口唇の大切さを知ってもらうきっかけになるようなもっと安価な器具があれば、未来の医院経営に光が見えるのに、と日頃から考えている先生方にお勧めしたいのです。

■国民の歯科受診目的の変遷

国民の歯科診療に対するニーズは、時代とともに虫歯の悩みに始まり、歯周病で、入れ歯で、歯並びの悩みで、口臭で、と微妙に変化しています。最近ではホワイトニングが世間の話題になりました。
多くの国民は多かれ少なかれ必ずいつも悩みをもっています。どこの国でも経済・IQレベルの向上に伴い、激しい急性症状から不要不急の悩み解決へと医療機関を訪れる目的も変わってきました。
生活レベルの向上に伴い、日常の生活に多大な悪影響であるとはいえないが無いに越したことはない悩み、例えば後述するような①~⑥までのような悩みは生死には関係ありませんが、あれば不快です。これらの不快がある人が歯科の診療所を訪ねて、歯科医師と相談をしているでしょうか。答えはノーです。
国民も歯科医師もそれが未だ歯科と、いや表情筋と密接な関係があるとは思ってもいないのですから、それはやむをえません。
ここに表情筋、特に口唇閉鎖力との関係とのキーワードを入れてみれば、これらの問題を解くにはさほど難しい方程式は必要ありません。すなわち、自分が病気とは自覚していない悩みが歯科と密接な関係があるのですが、そのことを知らない国民が多いという事実です。
例えば、睡眠時無呼吸症候群が最近話題になっていますが、これが口唇閉鎖力と密接な関係があるということを国民は全く知りません。それどころか、イビキ・無呼吸の悩み以前に眠れない、いわゆる導眠ができない悩み、導眠できてもすぐ目を覚ます悩みなど、睡眠で色々悩む人が多数います。
睡眠産業をご存知でしょうか。世間では何十万円もする布団や1万数千円もする無圧枕、これらがデパートで飛ぶように売れているそうです。睡眠産業が成り立つほど悩みが深刻で大勢の人が悩んでいるのです。
歯科の我々が解決して行かねばならない、また解決できる国民の悩みを列挙してみましょう。
① 睡眠の悩み
② 肥満の悩み
③ 美容の悩み
④ 肩こりとそれが原因の頭痛
⑤ 表情筋の悩み
⑥ アンチ・エイジング
が挙げられます。
どれ1つをとっても、歯科医院を必要とする人は数え切れないほど多く存在します。これらの悩みを同時解決してもらえるならば医院訪問だけでも憧れになります。

■歯科医院のイメージチェンジ

口唇の筋力、口唇閉鎖力の筋力ストレッチを継続することだけで様々な悩みが改善するということを納得された国民は、患者さんとして歯科医院に継続的に来院されることになると思います。
そこでいち早く従来の歯科診療に①~⑥までを守備範囲としていることをアピールし、総合的悩みを解決できる診療所に変身することは、患者さんにとっても来院しやすく、診療所経営に有利となります。
新しいシステムの導入に際してはとかく面倒な手間隙が必要となるのが世の常です。しかし、口唇閉鎖力の強化で①~⑥までが先生方の期待の有無と無関係に解決するとなれば話は大いに違います。口腔筋機能療法MFTは昔からありました。でもさほど効果があるものではなかったために、ごく一部の先生でマニアチックに続けられていました。

■ヒットスポットの長所

① 舌筋と口輪筋を同時にストレッチが可能。
② 外から口腔内に入れるので、扱いやすい。
③ 器具自体の材料および形態面で水切れがよく清潔に使える。
④ スプリング等の金属を使用しないので錆および傷などの問題がおきない。⑤ ストレッチのための負荷が使用する人の状態に合わせて変えられる。
⑥ 口呼吸・悪舌癖(図46)、摂食・嚥下・構音障害改善を目的とした。
⑦ 可能な限り安価な材料を用いて安価に提供。
⑧ 負荷時に口唇が圧縮されるが、その方向が上下に限定される。その補強のために舌先で板に圧力をかけて舌筋のストレッチが足りないことを補っている。
⑨ 口唇を閉じると同時に舌の先で舌圧板を押す行為を伴うので時間の経過を短く感じる。

  • [図] 悪舌癖の状態Ⅰ
    図4 悪舌癖の状態Ⅰ
  • [図] 悪舌癖の状態Ⅱ
    図5 悪舌癖の状態Ⅱ
  • [図] 悪舌癖の状態Ⅲ
    図6 悪舌癖の状態Ⅲ

■ヒットスポットの欠点

① 美容等の目的で「パタカラ」のようにロープで器具を引くことができないので効果範囲が限定的。
② 右側前頭葉脳血流の増加に関しても効果範囲が限定的。

■使用方法

図7のようにヒットスポットの舌面板が下方に位置する状態で軽くつまんで口腔内に装着してください。
口唇をつぐみながら同時に、舌面板の下面にある楕円形の凸部出っ張りを目安にして、舌先部を使って押し上げ続けて舌筋のストレッチを続けてください(図8)。
ロープが無いのでパタカラのように上下左右に引いての負荷はかけられません。

  • 図7
    図7
  • 図8
    図8

■ヒットスポットの適応症

口輪筋と舌筋を同時に強化することを目的としています。
1. 悪舌癖
2. 矯正治療中の口輪筋強化
3. 口呼吸
4. お口ポカン
5. イビキ
6. 摂食・嚥下・構音機能訓練

■パタカラとヒットスポットとの比較効果

ストレッチは筋肉に正しく負荷がかからねばストレッチ効果は上がりません。負荷が筋組織にかかっていれば、その効果はいずれ筋肥大として反応します。ストレッチをしてから筋肥大となって効果がでるまでには時間がかかります。
しかし、筋組織に正しい負荷がかかっていれば、その筋組織はエネルギー反応として発熱するので発熱をしっかりしているか否かの発熱状況をサーモグラフィーを使って確認できます(図911)。
パタカラは1分経過、3分経過で順調に発熱していること、すなわち表情筋に負荷が正しくかかっていることが確認できます。
一方、ヒットスポットの使用ケースでは使用感は結構負荷がかかっているように感じるのですが、サーモグラフで確認してみるとその効果はパタカラより若干弱いようです。

  • [写真] 使用前
    図9 使用前
  • [写真] ヒットスポット3分後
    図10 ヒットスポット3分後
  • [写真] パタカラ3分後
    図11 パタカラ3分後

■ヒットスポットの材質と清掃方法

材質はエラストマー系の合成樹脂です。食品衛生法をクリアーした材料ですが、プラッスチックは加熱で材質が劣化しやすくなります。できるだけ流水で洗うか、入れ歯洗浄剤などを使用して清掃してください。
毎日の使用回数により異なりますが、プラスチックは変形等の問題がありますので、半年程度の使用で新しい器具に取り替えてください。

■口唇は誰にでもあるだから歯科にとってはチャンス

表情筋はじめ口輪筋・舌筋は子供であれば発育不全、大人であれば老化が原因で筋力が弱くなります。そのため、常に鍛えることで強化しなければなりません。
老若男女どなたでも一生口唇は持っています。その口唇が身体の健康を左右します。口唇の健康度を知るためにも自分がどの程度の筋肉の状態か知りたくなるものです。口唇閉鎖力の計測をしてもらいたい、診断してほしいとの願いがどなたにも生まれ、再初診につながります。
現行の医療行政の下で、活況な歯科医院とは再新患が多いことが必須条件です。再初診の少ない歯科医院はどうしても衰退します。
口唇の健康に注目する診療所は半年後の来院が約束されているようなものです。
先生方にはどうぞ口唇の健康度、悪舌癖等の知識を患者さんにレクチャーすることで歯科診療の重要さを普及させていただきたいと願っています。