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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
我レーザーと戦えり<その1> -Erwin AdvErl Q and A-
篠木 毅

■目 次

■はじめに

レーザーは、頭で考えることも必要ですが、手を動かすことも大切です。
日々臨床において、症例は同じでも病態は全てが異なります。レーザーには照射表があり、標準照射エネルギーが記載されています。これを用いて診療に応用した時、上手くいく時と効果がなく痛みだけが残るケースがあります。この時に何が悪かったのだろうとその原因を考える時から、スキルはあがります。
問題が生じる時には、レーザーのハード自体と術者のテクニック(ソフト)のどちらかが絡んでいます。したがって、いい結果を得るには、常に自分の所有しているレーザーがどういう特徴(長所、短所)をもっているか、そして、レーザーを使用する際の自分のテクニックはどの程度なのか認識している必要があります。
今回はレーザー(ハード)に絡むファクターとテクニックに関するものに分けて考えました。

■レーザー(ハード)に関係するファクター

1. 出力
旧機種Erwinの時代は、パネル上の表示値とチップ先端での出力が異なり、チップ先端の出力が大きく落ちているケースがありました。私たち一般の臨床医は、パネルに表示された設定で照射するしかないので、パネル表示にしたがい使用すると、切れない、削れないという結果になってしまいました。
現在のAdvErlではこの点はかなり改良されてきています。またチップによっても切削力が異なります。つまり、同じ出力では、広径の方が単位面積当たりのエネルギーが低くなりますから、細径チップに比べて切削力が落ちます。したがって、同じ出力設定でも両者を使用する際の照射イメージが異なります。
現在学会等で発表されている照射条件は、パワーメーターを使用してのチップ先端での出力などですから、私たちが臨床で同じ処置をするには、現行のAdvErlでもパネル表示での出力の補正が必要になってきます。
また、硬組織においては、出力が大きくなれば、切削力は上がりますが無麻酔下での治療は難しくなり、本来のストレス(痛み)の少ない治療からはずれるような気がします。ただここにはテクニックが介在します。
最近では高出力の機械が出回ってきましたが、出力の点からも、もう一度Er:YAGレーザーの位置づけを考える時が来たようです。

2. パルス数
Er:YAGレーザーを使用する際のパルス数の標準として、10ppsが広く使用されています。加わる熱と緩和時間が安定しており、照射しやすい条件です。
最近では、高パルス数が出せるレーザーが登場してきました。繰り返しパルス数が高くなりますと、当然熱の蓄積が増えてきますので、痛みが出てくる可能性があります。
10pps80mjと20pps40mjと総エネルギーは同じ0.8Wですが、臨床では同じ0.8Wでも硬組織での破砕量、軟組織の蒸散量・切れ味が大きく異なってきます(図12)。
高パルス数になると、今までの実験や臨床から得られた照射表の内容に変化がでてきますので、注意深く使用することが大切です。
使用上で注意することは、音に敏感な患者さんや今までの治療(10pps)に慣れている患者さんは高パルス数の条件では、音によって痛みを誘発することがあるので、術前にパチパチという音が頻繁に聞こえることを話しておく必要があります。

  • 左:10pps 80mj 右:20pps 40mj
    図1 左:10pps 80mj 右:20pps 40mj
  • 左:10pps 250mj 35s 右:20pps 150mj 56.5s
    図2 左:10pps 250mj 35s 右:20pps 150mj 56.5s

3. 水量
Er:YAGレーザーと水は切っても切れない関係にあるのは、皆さん御存知だと思います。
図3はアクリル板に注水、非注水でレーザーを照射したものです。アクリル板には水分が含まれていませんが、非注水でも熱の影響で溶けています。注水下では表面の水に反応することにより、アクリル板が削れています。このことから、Er:YAGレーザーに使用する際の水は、微細爆発とクーリングに役立っていることが理解できます。
痛みに関しては、水量が多いと痛みは出ませんが、仕事効率は落ちます。水量が少ないと、軟組織においては、止血をコントロールできますが、痛みが出ることもあります。硬組織においては、エナメル質に対しては、炭化が起こる場合もありますので、上手に水の皮膜を作ることが肝要です。水量が多い場合は、仕事量は落ちますが痛みに対しては、コントロールしやすくなります。特に縁下歯石の除去の場合、直接照射ではなく、間接的に水の爆発で起こる振動を利用すると上手くいきます。
水量は水量調節つまみの最適な位置に印をつけておけば、症例に合わせて水を変化させても、容易に元に戻すことができます(図4)。私自身は1分間4cc弱ぐらいに調整しています。高パルス数での使用時には、水量を変化させています。特にメラニン色素沈着症の場合は、照射方法も今までの10ppsと異なり注水下で行いますので、水量を多くして使用しています。あまり乾燥させすぎると、術後疼痛を招く場合があるので、注意を要します(図5)。
また、バキュームの位置によって、水量は大きく影響されます。水量を調整する時にはスタッフの協力も必要となってきます(テクニック編)。より微細に水量を変化させたいということであれば図6に示すような装置も使用可能です。

  • 左:注水 右:非注水
    図3 左:注水 右:非注水

  • 図4 
  • これは10pps 80mjで注水非注水の条件です。①:注水 ②:非注水
    図5 これは10pps 80mjで注水非注水の条件です。①:注水 ②:非注水

  • 図6 

4. エアー量
まず、水量を調整してから、徐々に水量を多くしてゆき霧状に近い所で合わせます。この時もバキュームの位置によっての変化を考えておかなければなりません。エアー量もエアー量調節つまみの最適な位置に印をつけています。
無注水で、メラニン色素沈着症を治療している場合、痛みを避ける意味合いもありエアー量を多くしたい場合がありますが、エアーと水は連動しており、エアーのみを出すことができないので、3wayシリンジのエアーを使うこともあります。
臨床において、皮下気腫は嫌なものですが、組織からエアー抜きするところを考えていれば起こるものではありません。バイパスを作るという方法もありましたが、チップを入れながら大きく円を書くようにして、チップの周りからエアー・水が出るように動かしてゆきます。その時は急がずに確認しながらゆっくりと、チップを挿入することが肝要です。それでも怖いということであれば、エアーと水を切ることもできます(図7)。


  • 図7 

5. メモリースイッチ
現在メモリースイッチには、30mj非注水・50mj注水・80mj注水・150mj注水・250mj注水に設定されています。この設定の基本はチップの保護のために、チップ最大設定値の出力より低めに設定してあり、コンタクトでの使用が標準です。知覚過敏・口内炎などは、非接触で使用しています。
最大公約数で設定されていますので、どうしても上手くいかない時には微調整が必要かと思いますが、テクニックが上達してからでも遅くはないと思います。
高パルス数の設定は、エネルギーはそのままでppsを変化させて水とエアーは調整して使用していますが、問題はないようです。
最初に器械を立ち上げた時には、100mjと表示されます。第6のメモリースイッチとして使用できますので上手く利用してみてください(図8)。


  • 図8 

6. チップ種類
チップの種類は、AdvErlになり多くなりましたが、基本はC600FとC400Fだと思います(図9)。この二本のチップがあれば、全ての症例が可能です。ER:YAGレーザーを上手く乗りこなそうと考えるのであれば、まず治療をこの二本で考えてゆくことが大切です。症例集には、使用したチップが紹介されていますがそれを鵜呑みにするのではなく、チップ先端からどのようにレーザー光が出ているのかを考えると、他のチップでの応用も考えることもでき、またどこの患部に照射しているかも読むことができます。
レーザー治療でもっとも必要なのは、今までの歯科用器械と違い、触れた感覚が薄く光で仕事をするのでイメージングが大切です。ここまでが読めればもうレーザー治療は見えてきます。
テーパー型のチップを使用する場合、先端の破損に気をつけないと本来のチップの性能が発揮できません。フラット型においても、過度な高出力での斜め照射はチップの片べりをおかすので、目で見えるほど減るようであれば他の照射法に切り替えることも考えられます。チップ先端が小さくかけた時は、研磨紙等で先端部をフラットにするように研磨することもできます。大切なことは、チップ先端を傷めないような照射方法を行うことです。特にRタイプ・S600T、P400Tなどのチップは汚れが照射出力に大いに関係するので、照射し終わるとすぐに水中下で照射し汚れを速やかに取ることをルーチンの一つに入れておくとチップの損耗は、軽減されると思います(図10)。

  • C400F
    図9a C400F
  • C600F
    図9b C600F

  • 図10 

7. ドラムレンズ
汚れがついてからでは清掃が難しくなりますので、毎日の行うことが正確な出力を維持するには、この部分の清掃が大切です(図11)。
臨床において、いつもと使用感が異なる時には手にガイド光を照射し円形が見えることを確認します。もし円形にレーザー光がでていないようでしたら原因はドラムレンズの汚れです。

  • Oリングへのグリス塗布とアルコールに浸した綿棒でのドラムレンズの清掃です。
    図11a Oリングへのグリス塗布とアルコールに浸した綿棒でのドラムレンズの清掃です。
  • ドラムレンズの汚れで照射出力は大きくおちます。
    図11b ドラムレンズの汚れで照射出力は大きくおちます。

■まとめ

7項目において、ハードから起こりうる原因で症例がうまくいかない場合を挙げていきましたが、考えてみれば当たり前のことばかりです。しかしいざ臨床を行っている時には、案外見えていないことも確かです。
まずハードを完調に維持し、チップの清掃と管理を行えば次回に紹介するテクニックが正確に使用できるようになります。
レーザー治療は先生が一人で行うのではなく、スタッフ・患者・メーカーと上手く組んでいくことができれば、日々の診療が楽しくなるのではないかと思います。
次回は、テクニック編として下記の項目について書かせて頂きます。
・接触、非接触
・バキューム
・操作速度
・操作角度
・照射面の含水量
・チップ距離
・照射方向 等

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