DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
「クリアフィルマジェスティ」の理工学的特性と臨床応用
山田 敏元/宇野 滋/杉崎 順平/森上 誠

■目次

はじめに

クラレメディカル社における歯科材料の開発は1973年に開始され、その初めての製品は1978年の1月にモリタ社より発売されたクリアフィルボンドシステムFとして結実した。この製品は世界で初めて歯質接着性を有するボンディング材をキットの中に含んだコンポジット修復システムであり、このボンディング材の中には、その後のレジンボンディング材の開発の走りともなる接着性機能性モノマーであるフェニールPが含有されていた(トータルエッチングシステム)。
次いで3年後の1981年4月には、クリアフィルFⅡが販売され、次年の1月には、日本で初めてとなる臼歯部咬合面用のクリアフィルポステリアが同様にモリタ社より販売された。これらは日本の歯科臨床に大きな変革をもたらし、これまでアマルガムやインレー修復が主流であった歯科保存修復の臨床を接着性レジンボンディング材と審美的なコンポジットレジンに次第に置き換えていくこととなった。1984年には、クリアフィルシリーズのコンポジットレジンのボンディング材はニューボンドとなって、機能性モノマーにMDPが採用され、さらに高い歯質接着性を獲得した。次いで1985年には光硬化型のフォトクリアフィルAコンポジットレジンが販売され、その後の光硬化型コンポジットレジン開発の口火を切ることとなった。またここまでのクラレメディカル社により開発されたコンポジットレジンは、マクロフィラー型に分類されよう。
次年の1986年10月に有機質複合フィラーを用いた前歯用の化学重合型のクリアフィルF3と光硬化型コンポジットレジンであるフォトクリアフィルブライト(いずれもハイブリッド型)が、1987年の6月には臼歯用のクリアフィルフォトポステリア(高密度充塡型)が、またトータルエッチングシステムとしては世界で初めての光硬化型レジンボンディング材であるクリアフィルフォトボンドが販売された。
1991年の2月には、トータルエッチングレジンボンディングをさらに確実にした3ステップのクリアフィルライナーボンドが開発販売され、低粘性コンポジットレジンを修復ステップに含む考え方が提案された。また同時にブライトの改良になるクリアフィルフォトアンテリアが、1993年11月には、世界で初めて歯面処理後に水洗乾燥を必要としないセルフエッチングプライマーを用いたクリアフィルライナーボンドⅡが開発販売され、この後世界の歯科材料メーカーはセルフエッチングレジンボンディングシステムの開発改良に凌ぎを削ることとなる。
次いで1994年3月には、現在においても日本の修復用コンポジットレジンのシェア第一位であるクリアフィルAP-X(高密度充塡型)が販売され、前歯・臼歯に共用されるユニバーサルタイプのコンポジットレジンの第一号となった。その後ライナーボンドⅡを金属、ポーセレンなどの補修修復などにも用いやすくした多用途型のライナーボンドⅡΣが1998年2月に、さらに1999年2月にはライナーボンドⅡΣを改良して2ボトルタイプにしたクリアフィルメガボンド(諸外国においてはクリアフィルSEボンド)が販売された。
2000年10月には、研磨特性を改良した前歯用のクリアフィルSTコンポジットレジンが、2001年10月には、セシードを改良し、さらに審美的な特性を持たせて操作性を改良した光硬化型前装用コンポジットレジン(従来は硬質レジンと呼称)のエプリコードが販売された。
以上のような約30年に亘るクラレメディカル社におけるレジン系材料の開発改良のもと、本年メガボンドの改良版ともいえるワンボトル/ワンステップのセルフエッチングレジンボンディングシステムクリアフィルトライエスボンドが開発販売された。
現在欧米先進国においては、前歯部のみならず臼歯部においても接着性コンポジット修復によって歯牙のう蝕などによる実質欠損を、口腔内の天然歯と区別のつかないように色調、透明度などを回復させる審美修復が広く行われ始めており、イタリアにおいては歯科大学の学生実習にも取り入れられている。今後メタルボンドやポーセレンを用いた歯冠修復に併せて、この接着性審美コンポジットレジン修復は益々広く臨床に取り入れられていくことが予想され、このため審美的直接修復を可能にするコンポジットレジンの開発が待たれていた。
今回クラレメディカル社により開発されたクリアフィルマジェスティは、まさにこのために開発されたコンポジットであり、ブライト、STに続く前歯用レジンの特性と、フォトポステリア、AP-Xに続く臼歯用のレジンの特性を併せ持ち、さらに審美修復を可能にする多様なシェード構成を有して、単独修復にも、またレイアリングテクニックにも対応可能な設定となっている。
本論では、このクリアフィルマジェスティの特性を概説し、臨床応用について症例を用いて説明しようと思う。

1. クリアフィル マジェスティの基礎的特長

このクリアフィルマジェスティは、単シェード充塡にもレイアリングテクニックにも用い得るように設定されているため、そのシェード構成は従来のクラレメディカル社の製品とは異なっており、ここに大きな特長がみられる。
すなわち、通常の修復には、A1,A2,A3,A3.5,A4,B2,B3,C3,XL(以上がボディシェード)が用いられ、HO,OA2,OA3,OA4(以上がオペークシェード)が従来と同様に変色歯やブリーチング歯などに用いられる。これらに加えるに、E,OC(以上がエナメルシェード)がそれぞれ前歯部の切縁や、臼歯部咬合面に、T(トランスシェード)がレイアリングの際の最表層の修復に用いられる(図1)。
クリアフィルマジェスティの機械的性能は、圧縮強さが374MPa、曲げ強さが116MPa、曲げ弾性率が9.8GPa、硬さは60Hvとなっており、従来のAP-Xよりは若干劣るものの、現在販売されている他社の製品よりは同等か若干勝っている。
さらに大きな特長としてあげられるのは、より審美的な修復を可能にしている新規開発のフィラーおよび高い屈折率を持ったマトリックスレジンの適切な配合といえよう。
図23にみられるように、配合されているフィラー粒子は2種類であり、高い透明性を有しながら光拡散性を付与する有機質複合フィラー(図中の比較的大きなフィラー)と、それらの周りに非常に密に配合されている造影性を持ったバリウムを含有する無機フィラーである。これらフィラーの充塡率は78.0wt%であり、この無機フィラーは非常に細かなサイズであり、さらに高密度に充塡されているため、高い研磨性を有し、有機質複合フィラーと相俟って易研磨性のコンポジットを生み出している(図45)。
研磨面の光沢度は60%前後を示し、ポイント類、ジスク類によって容易に光沢ある研磨面を得ることができる。
このような新規開発の技術によって生み出されたクリアフィルマジェスティは、エナメル質と象牙質よりなる天然歯の色調再現に際して最も重要な光拡散と透過性に大きく寄与することとなる。すなわち、エナメル質は殆ど光を透過させる性質を持っているのに対し、象牙質はかなりの拡散性を有している(図6)。
クリアフィルマジェスティのボディシェードは、象牙質に近い光拡散性を有し(図7)、3級、4級窩洞の修復に際し、より目立ちにくく周囲の歯質に溶け込んだ色調再現を可能としている。また、重合前後の色調変化は極力小さく抑えられており、研磨面の着色変色も殆ど認められない。さらに高い耐摩耗性を有し、2万回の歯ブラシ摩耗試験の後でも光沢度はそのまま60%を維持している。
操作性に関して、これまでのSTにみられたようなペーストの軟らかすぎるために起こる付形時のタレを排し、適度な硬さを持たせ、充塡器へのベタ付きを極力抑えたため良好な付形性を有している。また審美修復時には比較的長時間無影灯下にレジンペーストがさらされるため、途中で硬化してしまう事態に往々にして遭遇することがあるが、適度な光感度を与えることにより無影灯の影響を受けにくく、より操作性が向上している。
以上によりクリアフィルマジェスティは優れた理工学的特性と良好な臨床操作性を有していることが明らかとなった。

  • クリアフィル マジェスティ
    クリアフィル マジェスティ
  • クリアフィル マジェスティのシェード構成。
    図1 クリアフィル マジェスティのシェード構成。
  • クリアフィル マジェスティ硬化物研磨面のSEM像(アルゴンイオンエッチング、x3,000)、有機質複合フィラー(図中の比較的大きなフィラー)と、それらの周りに非常に密に配合されている造影性を持ったバリウムを含有する無機フィラーがみられる。
    図2 クリアフィル マジェスティ硬化物研磨面のSEM像(アルゴンイオンエッチング、x3,000)、有機質複合フィラー(図中の比較的大きなフィラー)と、それらの周りに非常に密に配合されている造影性を持ったバリウムを含有する無機フィラーがみられる。
  • クリアフィル マジェスティ硬化物研磨面のSEM像(アルゴンイオンエッチング、x5,000),有機質複合フィラーの周りに無機フィラーが非常に密に配合されている。
    図3 クリアフィル マジェスティ硬化物研磨面のSEM像(アルゴンイオンエッチング、x5,000),有機質複合フィラーの周りに無機フィラーが非常に密に配合されている。
  • クリアフィル マジェスティ硬化物の構造の模式図。
    図4 クリアフィル マジェスティ硬化物の構造の模式図。
  • クリアフィル マジェスティの開発と特性。
    図5 クリアフィル マジェスティの開発と特性。
    • 天然歯(象牙質)の光拡散性
      天然歯(象牙質)の光拡散性
    • Goniophoto Meter
      Goniophoto Meter
    図6 天然歯(象牙質)の光拡散性。
  • 材質の光拡散性。
    図7 材質の光拡散性。

2. クリアフィル マジェスティの臨床応用

虎の門病院本院歯科外来を訪れた外来患者の各種症例に、ボンディング材としてワンボトル/ワンステップのクリアフィルトライエスボンドを用い、このクリアフィルマジェスティの各種シェードを用いて修復した。図8以下にそれらの症例を示す。

図810の症例は、上顎右犬歯から第一大臼歯の頬側楔状欠損にA3.5を用いた。
図1113の症例は、上顎左側切歯の切縁の破折にA2とEを用いた。
図1416の症例は、上顎左側切歯の近心の3級窩洞にA3を用いた。
図1720の症例は、上顎右中切歯のダイレクトレジンベニアにOA2を用いた。
図2123の症例は、上顎左第一大臼歯の1級窩洞にA2を用いた。
図2426の症例は、上顎左第一大臼歯の2級窩洞にOCを用いた。

いずれの症例も極めて審美的な修復が完成し患者の満足度も大きかった。

  • 上顎右犬歯から第一大臼歯の頬側楔状欠損の術前。
    図8 上顎右犬歯から第一大臼歯の頬側楔状欠損の術前。
  • 窩洞完成。
    図9 窩洞完成。
  • 修復終了(シェード:A3.5)。
    図10 修復終了(シェード:A3.5)。
  • 上顎左側切歯の切縁の破折の術前。
    図11 上顎左側切歯の切縁の破折の術前。
  • 窩洞完成。
    図12 窩洞完成。
  • 修復終了(シェード:A2+E)。
    図13 修復終了(シェード:A2+E)。
  • 上顎左側切歯の近心の3級症例の術前。
    図14 上顎左側切歯の近心の3級症例の術前。
  • 窩洞完成。
    図15 窩洞完成。
  • 修復終了(シェード:A3)。
    図16 修復終了(シェード:A3)。
  • 上顎右中切歯のダイレクトレジンベニアの症例の術前。
    図17 上顎右中切歯のダイレクトレジンベニアの症例の術前。
  • 窩洞完成。
    図18 窩洞完成。
  • 光重合終了。
    図19 光重合終了。
  • 修復終了(シェード:OA2)。
    図20 修復終了(シェード:OA2)。
  • 上顎左第一大臼歯の1級症例の術前。
    図21 上顎左第一大臼歯の1級症例の術前。
  • 窩洞完成。
    図22 窩洞完成。
  • 修復終了(シェード:A2)。
    図23 修復終了(シェード:A2)。
  • 上顎左第一大臼歯の2級症例の術前。
    図24 上顎左第一大臼歯の2級症例の術前。
  • 窩洞完成。
    図25 窩洞完成。
  • 修復終了(シェード:OC)。
    図26 修復終了(シェード:OC)。

まとめ

今回開発販売されたクリアフィルマジェスティは、極めて審美的な接着性レジン修復を可能にするコンポジットレジンであり、これまでのもののように窩縁に意図的にロングベベルを付与することなく色調適合の良好な修復物を得ることができる。
また、研磨操作は容易で、スーパーファインのダイヤモンドポイントによる仕上げの後ダイヤモンド研削粒子を含有するシリコンポイントによる研磨のみで滑沢な表面を得ることができる。
シェードの構成は、各種の色調、透明度を有する天然歯に調和するような16種が用意され、一括充塡にもレイアリングテクニックにも用い得るよう設定されている。
今回は誌面の都合で多くの症例をお見せすることができなかったが、またの機会にレイアリングテクニックや各種ティントを用いた審美修復の症例についても報告しようと思っている。
いずれにしても、臨床家の皆さんが、このクリアフィルマジェスティを手に取られてより容易に審美的な接着性コンポジットレジン修復を行われること願って筆をおく。

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