DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

TALK
ノリタケCAD/CAM カタナシステム その可能性を探る
山田 和伸/坂 清子/山﨑 長郎/森田 晴夫

■目 次

  • [写真] 山田和伸 有限会社カナレテクニカルセンター/坂清子 株式会社ノリタケデンタルサプライ/山﨑長郎 原宿デンタルオフィス/森田晴夫 株式会社モリタ

■オールセラミックスのトレンドはアルミナからジルコニアへ

森田 昨今、メタルフリー修復治療分野でジルコニアを応用したCAD/CAMシステムが各社より発売され、歯科治療に臨床応用されるようになってきています。本日は、ジルコニアを臨床の中に積極的に採り入れられておられます山﨑先生、ノリタケデンタルサプライの坂社長、そして、歯科技工士の立場から臨床に日々活用しておられるカナレテクニカルセンターの山田先生という夢の顔合わせで、ジルコニアの市場性、ノリタケカタナシステムの特長、臨床評価、今後の展望などについて、お伺いしたいと思います。
 世界的にオールセラミックスの市場を見ますと、アメリカでは現在25%だそうです。そして今後5年ぐらいの間に50%ぐらいまでいくのではないか、とおっしゃる先生もいらっしゃいます。そのきっかけになったのが、ジルコニアの登場ということは間違いないと思います。今までは、オールセラミックスと言ってもアルミナが中心で、大きなケースだと強度的に不安がありましたが、ジルコニアは6本ブリッジでも強度的に問題がなく、色々なケースに対応できるようになりましたから、症例数が急速に拡大したようです。もう一つは、経済的な問題です。ヨーロッパの技工料金はかなり高いところが多く、特にスウェーデン、ノルウェー、フィンランドのスカンジナビア三国を中心に、金属焼付けポーセレンのようなものは価格の安い中国へのアウトソーシングが多くなってきました。そういう中国の技工に対して、設備投資がいるものや技術的にも高度なもので対抗しようとしています。
[写真] 山﨑 長郎山﨑 そして、急激な勢いで酸化アルミナからジルコニアに移ったというわけですね。では、ヨーロッパはどのくらいかというと17%。日本ではすべてのオールセラミックスを合わせてもわずか3%ぐらいですね。日本でも、オールセラミックスがいいということは、もう皆さん分かっているはずですが、金額のバリヤーがありますので、どうしてもイマイチ伸びていないというのが私の現状認識です。プロセラなどの高強度の酸化アルミナも当初の予想からはかなり下回る数字のままです。低迷の原因の大きな要因は金額的な面です。コーピングのフレームワークのお金がかかって、その上に技工料が上乗せされる。そうすると、やっぱりメタルボンドの大体倍ぐらいになってしまいます。もう1点は、すべての会社が共同でプロモーションして、その素晴らしさを打ち出し、マーケットを広げていく努力をしていないという点です。ジルコニアの市場を拡大していくためにも、メーカーには積極的な宣伝を期待したいですね。
 ただ、私が意外に思ったのは、単冠はアルミナ、ブリッジはジルコニア、という感覚があったのですが、アメリカでは単冠もほとんどジルコニアに変わったということです。これには驚きました。世の中はそういう流れになっているようです。
山﨑 私も基本的にジルコニアが出るまでは単冠はアルミナという考えでした。ジルコニアはやはり欠損歯列だ、と思っていました。ところが、アメリカではほとんど酸化アルミナはなくなってしまいました。
 ところで、山﨑先生も以前は金属焼付けポーセレンをされていたと思いますが、オールセラミックスと比較して、どちらがいいとお考えですか?
山﨑 私は今はもうメタルセラミックスを使う必要性はほとんどないと感じています。単冠であれば、酸化アルミナを使うチャンスがこれからも少しはあると思いますが、欠損歯列に関してはもう圧倒的にジルコニアになる可能性は高いと思います。特にマーケットとして日本人は欠損が多いですからね。
山田 山﨑先生が今までされたジルコニアブリッジで割れたというような経験はございますか。
山﨑 資料を読んでみると、5年ぐらいで最初のジョイント・ファティーグがある程度はあるだろうということでしたが、今、最長で5年ぐらいになりますが、1本も割れていません。逆にお聞きしたいのですが、酸化膜とセラミックスはその接着は何十年の歴史があって信頼性がありますが、ジルコニアとポーセレンとの結合能力に問題ないのでしょうか?

■世界で一番ポピュラーなジルコニア用ポーセレン「セラビアンZR」

 結合に関しては全く問題ないですね。というのは、ジルコニア用ポーセレンとして、世界中で一番好まれて使われているのはノリタケなのですが、今までジルコニアとポーセレンが剥がれたというクレームは1件もありません。化学的結合なのか機械的結合なのかと言われたら、正直分からないのですが、断面を電子顕微鏡で見ると、本当にきれいにくっついています。
山﨑 ジルコニアとメタルボンドでは、技工操作上の違いがあると思いますが、ジルコニアの技工で注意すべき点は何でしょうか?
山田 メタルボンドを手掛けている人がたぶんそのままオールセラミックスに移行していくと思うのですが、フレームができ、オペークを焼き付け、上へポーセレンを盛る、という工程においてはほとんど変わりません。ただ、メタルの場合は削れば色が変わるし、当然粉も飛びますから、やっているという認識があるのですが、ジルコニアのように白いものを削るとなると、どこを削ったのか、削っていないのか、分からないのです。また、メタルボンドの場合は、サンドブラストとか、洗浄とかがありますが、ジルコニアでもそれをやらなければいけないと思います。でき上がってきたジルコニアフレームは白くてきれいなので、ひょっとしたら何もしなくていいのでは、と勘違いされることを私は心配しています。やはり表面がツルツルしていて水をはじくようであれば、ぬれ性を高めるためにサンドブラストするなり、洗うなり、そういった細かな注意点というのはあると思います。
山﨑 世界で一番ポピュラーなのがノリタケのジルコニアポーセレンパウダーということですが、まだ学習すべき点がけっこうあるということですね。
[写真] 坂 清子 あります。理論的に考えると、ジルコニアの焼結温度は1,400度とか1,350度でしょう。ポーセレンの焼成温度はせいぜい高くて1,000度ですから、温度差があまりにもありすぎて、本当にぬれているのか疑問に思うことはありますよね。だけど、一番肝心なのは口腔内に入れた状態です。それで何か問題があったかといえば、長年の間に何もないわけです。酸化物同士だからいいのか? ぬれがいいのか? 機械的なものなのか? 分かりませんけれども、現状としては、世界中で多くのケースが実績として積み重ねられて、なおかつトラブルがないということは、やはり何らかの力が働いて結合しているということだと思います。
山﨑 焼成時のマイクロチップを防止するとか、コーピングをアジャストしたりするときに、何か特別な注意はありますか?
山田 焼成温度を急激に上げない、急に冷却しない、コーピングをアジャストするときは回転数を抑える、ということですね。
山﨑 焼成の頻度というのはメタルセラミックスと同じぐらいでいいのですか? 何回も焼けるのですか?
山田 まずコーピングを焼成し、セラミックスを盛り上げてからまた焼成します。
山﨑 何回も焼けるということは、物性的にはかなり優れているということですね。では、光の透過性はどうですか?
 先日、ドイツでデンタルショーがありまして、質問されたときのために透過性を調べました。他のメーカーも全てが部分安定化ジルコニアを使っているのですが、メーカーによってかなりの差が出ました。
山田 オールセラミックスは光の透過性が一番の利点ですからね。数年前に最初に認可を取った他社のものは透明度が低いと同時に、反射率も高い。その上、白です。そこに色を決めるためのベースになるポーセレンを敷くのですが、ダブルで反射が来るんですね。そうすると、何色をつくっても真っ白になります。やはり透過性の高いもののほうが技工士はコントロールしやすいのです。低いものは上げられないんですが、高いものを低くするのは簡単ですから。
山﨑 だから、多色の品揃えになったほうがいいわけですね。やっぱり中にはリアルな天然歯の色調が欲しいと。A2やA3シェード、B2・B3をシェードを望んだときに、やっぱり単色だと技工士さんがコントロールするのはちょっと難しいですね。
山田 はい、難しいです。カタナシステムの場合は、今、9色あります。
 すでにパウダーの時点で着色してあります。着色してあると何でいいかというと、マージン辺縁にホワイトのラインが残らないのです。
山田 カラー・コーピングの場合はホワイトマージンが出ないということと、光を透過させても均一なんです。当然なんですが、ムラがないわけです。その点は大きなアドバンテージじゃないかなと思います。
山﨑 ジルコニアフレームを多数のメーカーが出している中で、カタナシステムの一番特長的なことって何ですか?
 まず色ですね。ノリタケはもともとセラミックスメーカーですから、食器の経験で色については非常に詳しいのです。最初からパウダーに色がつけてあって、コーピング自体、均一な色が出るということが一番の特長です。それと、きちっとフィットさせるということです。ノリタケとしてはもう20年前からジルコニアの素材の研究をしていて、今回デンタルに使う際に、これを改めて全部見直し、今、このパウダーがあるわけです。だから、このCAD/CAMで使うブロックの収縮値をいかに安定させるかに力を注いだところがカタナシステムの他にはない特長だと思います。
山﨑 もう一つ言えば、今、世界でデリバリーされているメジャーなシステムは、みんなパウダーはOEMじゃないかと…。
 ドイツのデンタルショーで、全メーカーに調査したところ、全て焼成温度が一緒なんです。みんなOEM、一つのメーカーなんです。名前を変えているだけで。例えば一つのジルコニアに合うポーセレンをつくろうと思うと、100色の着色が必要なんです。この色合わせとか、素材開発は大変です。だから、ほんとに真面目にポーセレンをつくろうという会社は、私は世界に2、3社しかないんじゃないかなと思っています。
山﨑 ノリタケは真面目にポーセレンをつくっているわけですね。
 はい。そこでテクニシャンの人にお願いしたいのは、ジルコニアとポーセレンの組み合わせがとても大事だということです。例えば金属とポーセレンを焼き付けたときに熱膨張係数が合わないと、ポーセレンにクラックが入ります。ところが、ジルコニアにポーセレンを焼き付けて、熱膨張が合わないとパーン!とジルコニア全体が割れるんです。
山﨑 うちでも、ジルコニアで「これ」という時はノリタケのポーセレンを使っています。新しいポーセレンパウダーに対しての評価というのはまだできていない。そういう評価をきちっとしているのは日本でもノリタケぐらいですから、安心して使えます。
[写真] 森田晴夫/坂清子/山﨑長郎/山田和伸 金属でもオールセラミックスでも、焼き付けたときに何キロの応力がどこにかかるか、という分析を必ずしています。これはノリタケ独自の測定方法です。熱膨張を測っただけでは分からないんです。それは実際の歯冠でもやるし、テストピースでもやるし、いろんな角度から、このマッチングがいいかどうか、というのを試して発売しています。カタナシステムを出す前から、ジルコニア用ポーセレンとしてノリタケのセラビアンZRが使われたということはどういうことかというと、ノリタケを使えば安全だということで、けっこうジルコニア・メーカーが宣伝してくれたんですね。そんなことで、ノリタケのパウダーが広がったんだと思います。
山﨑 ジルコニア・メーカーの完成された製品というのは、世界中で使われていますが、全てのジルコニアが臨床成績はいいですよね。
 ジルコニア自体がほとんど日本製品ですし、研究を尽くされて、最高のものとして、世界中が日本から買っているわけです。

■形成・印象採得の精度、接着がポイント

山﨑 次にミリングとスキャニングですが、ミリングはしっかりした設備がある会社でやってもらったほうがいいけれども、スキャニングぐらいは自分でしたいと思う人もいるでしょうね。
 これは国によって好みが全然違っていまして、アメリカはモデルを送るからスキャニングはしたくないと。一方、ヨーロッパになると、設計をやりたいから、スキャナーを買って、自分でデザインして、データを送ってつくってもらうという考え方ですね。
山﨑 例えばアメリカでは、コンピュータを使える技工士じゃない人が、スキャンしているようですが、弊害はないのでしょうか?
 私もアメリカのそういうラボを回りましたが、やはり最終的にはテクニシャンじゃないとダメだそうですよ。クオリティをどの位置に置くか、ですよね。
山﨑 実際にコンピュータに自分の支台歯形成とかが出てくると、けっこうドキッとするときありますよね。ほんとにちゃんとうまくやっている人だったらいいけど、今後ジルコニアをミディアム層の人たちが手掛けた場合、クオリティを均一にコントロールするというのは非常に難しいですね。
山田 だから、模型づくりの方法、トリミングの仕方、そのあたりのセミナーや研修会というのは必要になってくると思います。
山﨑 オールセラミックスをやるのに一番必要なのは何かというと、きちっと歯を形成できるということですね。やはりオールセラミックスのコーピングを装着するときには形成のデザインの特長があるはずです。あまりシャープな面を取らないとか、過剰マージンにしないとか、それなりのクリアランスが欲しいしとか…。そういうところはメタルセラミックスよりもより厳密に教育していかないとダメですね。」
 コーピングの精度も、形成があまりにもアンダーカットが多いと、アンダーカットがないように今度はスキャニングしながら調整するわけです。そうすると、できたコーピングはどうしても緩くなってしまいます、緩くないと入らないのです。で、「適合が悪いんじゃないか」と言われても、「あなたの形成が悪いのよ」と。
山﨑 歯科医の立場として、形成をしっかりしなきゃいけない、印象採得もきちんとしなきゃいけない。それから、もう一つはセメンテーションですね。ジルコニアに関しては、内面処理はもちろんプロセラと一緒で効かないですから、今までだったらシリカでやっていたわけです。だけど、私は最近クラレが出したレジンセメントで接着することを推奨します。内面をどう処理していいか、なかなか確答が出ていないときに、ほんとにガチッとついて取れないものといったら、やはりレジンセメントだと思うのです。
 ノリタケでもアルミナとの接着のときに、グラスアイオノマーとクラレのレジンセメントとで接着強度をやってもらったことがあるのです。やはり全然違いました。
山﨑 レジンセメントはある程度手数もかかるし、それなりのステップがあります。だから、それをクリアさせるための教育システムが大事だと思います。
山田 今、技工士の講演会なんかでも、最終的に「質問ありますか」と言うと、やっぱりセメンテーションを聞いてきます。
山﨑 それだけ接着は大変なのですね。お恥ずかしいけれども、私も昔、例えばグラスアイオノマーでプロセラをかなりセットしたし、6年前はそれで講演していたわけです。ある米国の先生は「any cement can be use」と言っていたんですから…。
山田 硬いものに対しては、セメント自体の強度が強くて、セメントとセラミックスとがきっちりくっつくもので一体化させるのが基本だと思うのと、もう一つは、すべてのCAD/CAMはセメント・スペースがありますから、隙間が今までより大きいはずで、そこには強いものを入れておかないと…。
山﨑 酸化アルミナも数百本やったと思いますが、数本あった破折は、すべてグラスアイオノマー。レジン系のセメントでくっつけたものに関しては破折は一つもありません。
 他に、技工の立場から、ドクターにこうしてもらいたい、というようなことはありますか?
[写真] 山田 和伸山田 いわゆるロングスパンの適合というのは、私たちは模型上でしか判断できないんです。ジルコニアとなると、例えば一つのブロックをフレームにして、試適で送って、それがダメなときはどうするか…。だから、試適する前の段階で、本当にこの模型で口腔内に合うのかどうか、というワンステップを入れるべきだと思うのです。もしくは、印象、模型づくりの方法をもっと何かシステム的にしていかないと…。
 金属だと、合わなきゃ切って、鑞着をやりますけれども、ジルコニアはできませんからね。
山田 インプラントの場合はもっとシビアだと思うのです。多数歯にわたるインプラントの模型をつくったときに、インプラントのインプレッション・コーピングにねじ込んで、そして、1つ1つをつないで石膏を流したものと、それを全くしないで石膏をドーンと流したものと2つ試しました。前者は合いますが、後者はというと、全然合わないですね。

■レベルの高い臨床に必要な「新三種の神器」

山﨑 だから、先生方も技工士さん達も、あらゆる過程を全部、より厳密にストイックにきっちりやっていかないと、最終的にいい結果は出せません。私は長年研修をやっていますが、日本の歯医者さんがみんな適合は大事だとわかっていながら、それを本当にクリアしている先生はまだ少ないと感じています。そういう人たちが安易にジルコニアを手掛けると、非常に厳しい結果になる可能性があります。やはり最高のマテリアルを使う時は、診療と技工の内容も向上させないといけないということですね。
山田 本当にそう思います。
[写真] 森田 晴夫山﨑 最近、私の持論として、クオリティの高い臨床をするためには、歯医者さんの「新三種の神器」がポイントになってくると思っています。まず第一にCAD/CAM、第二にマイクロスコープ、第三にジルコニア対応のインプラント。この3つが「新三種の神器」で、これが全部揃っていたら、かなりレベルの高い歯科医院だと言えるでしょう。ラボも同じです。この「新三種の神器」を日常の臨床の中で使いこなすためにも、診療と技工のレベルをより向上させるという努力が必要になってくるでしょうね。
[写真] 森田 晴夫森田 ただいま、お三方の話をお伺いし、ジルコニアという素材の市場性、ノリタケカタナシステムの特長、臨床評価、今後の展望について改めて認識することができました。モリタは、今後、ジルコニアの市場拡大に向けて、このノリタケカタナシステムを日本国内に広くご案内して参ります。必ずや、多くの先生方にご利用いただき、多くの患者さんに喜んでいただけるものと確信いたしております。本日は、興味深いお話をお聞かせいただき、誠に有難うございました。