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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
我レーザーと戦えり<その5> -内視鏡下でのレーザー治療-
坂田 篤信

■目 次

はじめに

内視鏡下のレーザー治療は、10年目を迎えます。1mmという細い先端に導光できるフレキシブルなレーザーは、当時はNd:YAGレーザー以外は困難でした。組織深達性並びに色素選択性の特長を有するNd:YAGレーザーを根管内で内視鏡で確認しながら照射することで、より良き臨床結果を残せると感じたものです。
内視鏡を使用するには、動きの中で何が診えているのか、何がそこで起こっているかを判断する必要があります。モニターに見えている視野は直径で5mmくらいありますが、通常の診療では、見逃してしまいそうな1mmの大きさの物でも画面一杯の大きさに映ります。少量の出血でもピントのあっていない画像のように見えてしまいます。さらに、実際に診えるモニター下の画像は鮮明ですが、動画に録画した時点で画像の劣化が発生します。そして、その動画から静止画を抜き取るとさらに劣化します。よって先生方に臨床報告できる画像が見にくくなることをご了承ください。

症例1
1999年に上顎右側1番の疼痛で来院された63才の女性で1ヵ月後に根充しました。術後1年ではなんら問題はありませんでしたが、術後7年後に根尖先端部が破折していることがレントゲン上で確認できました。
臨床症状には、特記すべきことはありませんが、Nd:YAGレーザー照射による歯質の劣化を疑える症例であり考えさせられました。歯周組織への影響を考えると、Nd:YAGレーザーによる長時間照射は避けたいものです。

  • 根尖から侵入している肉芽(★)で根管内が満たされてる。■は200μのファイバー3000画素で多目的チャンネル付きの内視鏡(MS-611)を使用。
    図1 根尖から侵入している肉芽()で根管内が満たされてる。は200μのファイバー3000画素で多目的チャンネル付きの内視鏡(MS-611)を使用。
  • 200μのファイバーを使用して注水下(4cc/分)にて100mj / 15PPSの出力にてNd:YAGレーザー照射を行い肉芽除去する。
    図2 200μのファイバーを使用して注水下(4cc/分)にて100mj / 15PPSの出力にてNd:YAGレーザー照射を行い肉芽除去する。
  • 肉芽が綺麗に除去でき根尖(▼)が確認できる。
    図3 肉芽が綺麗に除去でき根尖()が確認できる。
  • 術前レントゲン。
    図4 術前レントゲン。
  • 根充時のレントゲン。根管内への肉芽の侵入は無くなり、臨床所見に問題が無かったため根充。
    図5 根充時のレントゲン。根管内への肉芽の侵入は無くなり、臨床所見に問題が無かったため根充。
  • 術後1ヵ月のレントゲン。
    図6 術後1ヵ月のレントゲン。
  • 術後1年のレントゲン。根尖部の透過像もなくなり、臨床所見にも問題ない。
    図7 術後1年のレントゲン。根尖部の透過像もなくなり、臨床所見にも問題ない。
  • 術後7年のレントゲン。レントゲン上で根尖部が、破折して遊離している以外は、臨床所見に特記事項はない。
    図8 術後7年のレントゲン。レントゲン上で根尖部が、破折して遊離している以外は、臨床所見に特記事項はない。

症例2
ガッタパーチャポイント(GP)が根尖付近から根管壁にかけて付着している症例で、注水下でのNd:YAGレーザー照射にてGP除去を行ったところ時間ばかり掛かってしまい、Er:YAGレーザーによる除去を試みました。
内視鏡下での照射は困難なため、可求的単発照射(P60のロングチップ/透過率43%・50mj/5PPS)をしては内視鏡で確認するという方法でしたが、想像していたよりも簡単にGPが除去できたことで、是非とも内視鏡下でのEr:YAGレーザーを使用したいと考えるようになりました。
2006年にEr:YAGレーザー用の内視鏡の開発が始まり、表在性のレーザー特性を活かした治療が、根管内でもモニターで確認しながら行えるようになりつつあります。
適応症として①根管内の不良肉芽・デブリス・根充材等の除去②根管内のパーフォレーションの診断及び処置③根管内の歯折の診断④副根管の診断⑤ポケット内の歯石の有無と除去等が挙げられます。
治療部位を診ながらさらに安全性に配慮し処置が行えるという期待が持てる治療法です。少しテクニックは必要ですが、是非多くの先生方に使用していただき、内視鏡下のレーザー治療の素晴らしさを体感してください。

  • MS-611を使用して根尖部付近を観察している画像。多くのガッタパーチャポイント(GP)で覆われ根尖が確認できない。◆が根尖から根管壁に付着しているGPと根充材。■が径200μのファイバー。
    図9 MS-611を使用して根尖部付近を観察している画像。多くのガッタパーチャポイント(GP)で覆われ根尖が確認できない。が根尖から根管壁に付着しているGPと根充材。が径200μのファイバー。
  • 100mj / 20PPSの出力にて注水下(4cc/分)でNd:YAGレーザー照射を行う。
    図10 100mj / 20PPSの出力にて注水下(4cc/分)でNd:YAGレーザー照射を行う。
  • ある程度GPは減少したが、根尖を確認できるまでには至っていない。Er:YAGレーザーを使用して、P60ロングチップ(透過率43%)にて、50mj/5PPSの出力で、可求的短時間照射を行う。
    図11 ある程度GPは減少したが、根尖を確認できるまでには至っていない。Er:YAGレーザーを使用して、P60ロングチップ(透過率43%)にて、50mj/5PPSの出力で、可求的短時間照射を行う。
  • Er:YAGレーザーの2回照射後の根尖付近の画像。中心部分が陥没して短時間照射でもGPが除去できることを確認した。
    図12 Er:YAGレーザーの2回照射後の根尖付近の画像。中心部分が陥没して短時間照射でもGPが除去できることを確認した。
  • Er:YAGレーザーの4回照射後の根尖付近の画像。中心部分の根尖付近にのみGPが残っているが、壁面に付着していた根充材は除去できた。これ以上は、内視鏡で確認しならがEr:YAGレーザーを照射する機器がなかったため、Nd:YAGレーザーに切り換えて内視鏡下で根尖明示を行う。
    図13 Er:YAGレーザーの4回照射後の根尖付近の画像。中心部分の根尖付近にのみGPが残っているが、壁面に付着していた根充材は除去できた。これ以上は、内視鏡で確認しならがEr:YAGレーザーを照射する機器がなかったため、Nd:YAGレーザーに切り換えて内視鏡下で根尖明示を行う。
  • 前記同様、100mj/20PPSの出力にて注水下(4cc/分)でNd:YAGレーザー照射を行い、▼の下に根尖明示ができた。
    図14 前記同様、100mj/20PPSの出力にて注水下(4cc/分)でNd:YAGレーザー照射を行い、の下に根尖明示ができた。

症例3
冠脱離で来院された58才男性で、外れる前に疼痛があり、根尖部圧痛並びに打診痛がある上顎右側1番の感染根管です。通法の根管拡大・形成をEDTA・次亜鉛素酸ナトリウム・過酸化水素水の薬剤を使用して行い、内視鏡にて根管内を確認するとデブリス、根充材、不良肉芽で根管が一杯に満たされている画像に出会いました。
Er:YAGレーザーを使用して内視鏡下にて注水(4cc/分)して照射部位を洗い流しながら根尖が確認できるまでレーザー照射をしました。根充時には、乾燥を目的にR300チップも使用しました。

  • 初診時(1日目)。多くの肉芽(★)で満たされている。1mmの径の中に6000画素のカメラを入れ込んだことで多くの情報を得ることができる。
    図15 初診時(1日目)。多くの肉芽()で満たされている。1mmの径の中に6000画素のカメラを入れ込んだことで多くの情報を得ることができる。
  • レーザー照射して肉芽を除去し、根管内の視野を確保する。出力100mj/20PPSにて注水下(4cc/分)で43.8秒、内視鏡用チップ(200μ)にて照射。
    図16 レーザー照射して肉芽を除去し、根管内の視野を確保する。出力100mj/20PPSにて注水下(4cc/分)で43.8秒、内視鏡用チップ(200μ)にて照射。
  • 肉芽が減少したことで根尖方向の位置が確認できるようになってきた。
    図17 肉芽が減少したことで根尖方向の位置が確認できるようになってきた。
  • 根尖から肉芽の侵入が確認できるが、根管壁はファイリングにより綺麗な形態をしていることが判るまでになる。
    図18 根尖から肉芽の侵入が確認できるが、根管壁はファイリングにより綺麗な形態をしていることが判るまでになる。
  • 根尖方向に少しの肉芽が確認できる。
    図19 根尖方向に少しの肉芽が確認できる。
  • 一度内視鏡を根管から出して、交互洗浄をし、さらに内視鏡を根尖部へと移動させるとファイリングによって押し込んだと思われるGP(◆)が詰まった状態が確認できる。デブリス(▲)。150mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で74.3秒照射する。
    図20 一度内視鏡を根管から出して、交互洗浄をし、さらに内視鏡を根尖部へと移動させるとファイリングによって押し込んだと思われるGP()が詰まった状態が確認できる。デブリス()。150mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で74.3秒照射する。
  • 照射によるスパークした時の状態。注水していても狭い場所でのレーザー照射は短時間だが視野を診難くする。チップ(■)。
    図21 照射によるスパークした時の状態。注水していても狭い場所でのレーザー照射は短時間だが視野を診難くする。チップ()。
  • 根尖方向のデブリス等が除去できた。
    図22 根尖方向のデブリス等が除去できた。
  • さらに、内視鏡を根尖方向へ進め、根管長から根尖付近でのレーザー照射のため100mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で10.5秒照射する。
    図23 さらに、内視鏡を根尖方向へ進め、根管長から根尖付近でのレーザー照射のため100mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で10.5秒照射する。
  • アピカルシート部にデブリス存在と根尖にGPが詰まっているのが確認できる。
    図24 アピカルシート部にデブリス存在と根尖にGPが詰まっているのが確認できる。
  • さらに根尖部位が確認できるまで慎重にレーザー照射をする。根尖(▼)。
    図25 さらに根尖部位が確認できるまで慎重にレーザー照射をする。根尖()。
  • 断続的な出血を根尖から湧き出てくることで確認できる。3分ほど注水下で洗い流したが出血が減少するも治まらない。水酸化カルシウム単品を塗薬して仮封して処置を終了する。
    図26 断続的な出血を根尖から湧き出てくることで確認できる。3分ほど注水下で洗い流したが出血が減少するも治まらない。水酸化カルシウム単品を塗薬して仮封して処置を終了する。
  • 6日後(2日目)。水酸化カルシウムを除去すると、肉芽の侵入が確認できる。出力100mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で24.3秒照射。
    図27 6日後(2日目)。水酸化カルシウムを除去すると、肉芽の侵入が確認できる。出力100mj/10PPSにて注水下(4cc/分)で24.3秒照射。
  • 根尖付近が確認できるまで肉芽減少。
    図28 根尖付近が確認できるまで肉芽減少。
  • チップを除去したい肉芽に接触させるように動かし0.5秒以内の短時間照射を繰り返す。
    図29 チップを除去したい肉芽に接触させるように動かし0.5秒以内の短時間照射を繰り返す。
  • 根尖内部に肉芽の付着が確認できることと断続的な少量の出血が認められる。3分間の洗浄後簡易乾燥、水酸化カルシウム単品塗薬、仮封処置する。
    図30 根尖内部に肉芽の付着が確認できることと断続的な少量の出血が認められる。3分間の洗浄後簡易乾燥、水酸化カルシウム単品塗薬、仮封処置する。
  • 4日後(3日目)。交互洗浄後、根管内を診ると水酸化カルシウムで覆われていた。出力100mj/20PPSにて注水下(4cc/分)で53.8秒照射。
    図31 4日後(3日目)。交互洗浄後、根管内を診ると水酸化カルシウムで覆われていた。出力100mj/20PPSにて注水下(4cc/分)で53.8秒照射。
  • チップで突っつきながらレーザー照射し水酸化カルシウムを除去する。
    図32 チップで突っつきながらレーザー照射し水酸化カルシウムを除去する。
  • 根尖は確認できたが、根尖周囲の輪郭が鮮明でない。さらにレーザー照射して肉芽の残査を確認する。
    図33 根尖は確認できたが、根尖周囲の輪郭が鮮明でない。さらにレーザー照射して肉芽の残査を確認する。
  • 新たに根尖から肉芽の侵入が認められ、レーザー照射して除去する。
    図34 新たに根尖から肉芽の侵入が認められ、レーザー照射して除去する。
  • 出血もなく綺麗な根尖が確認できる。
    図35 出血もなく綺麗な根尖が確認できる。
  • 簡易乾燥(滅菌ペーパーポイントを根管内に5秒停滞させる)を2回行った根尖部。
    図36 簡易乾燥(滅菌ペーパーポイントを根管内に5秒停滞させる)を2回行った根尖部。
  • R300チップを使用し出力40mj/20PPSにて根管長マイナス1mmを作業長として根管壁にチップを接触させて乾燥を目的に非注水下で掻き上げ照射を61.4秒する。
    図37 R300チップを使用し出力40mj/20PPSにて根管長マイナス1mmを作業長として根管壁にチップを接触させて乾燥を目的に非注水下で掻き上げ照射を61.4秒する。
  • 内視鏡専用チップにて40mj/20PPSの出力にて根尖部付近の乾燥を目的に非注水で短時間照射(2.5秒)を繰り返しする。
    図38 内視鏡専用チップにて40mj/20PPSの出力にて根尖部付近の乾燥を目的に非注水で短時間照射(2.5秒)を繰り返しする。
  • 根尖部の光沢がなくなる。
    図39 根尖部の光沢がなくなる。
  • 最後に根尖部に限りなく近づき単発照射(0.3秒)を非注水で行い白濁するのを確認して根管充(#70・21mm)する。
    図40 最後に根尖部に限りなく近づき単発照射(0.3秒)を非注水で行い白濁するのを確認して根管充填(#70・21mm)する。
  • 術前レントゲン。
    図41 術前レントゲン。
  • 根充時のレントゲン。
    図42 根充時のレントゲン。
  • 術後1ヵ月のレントゲン。
    図43 術後1ヵ月のレントゲン。
  • 術後3ヵ月のレントゲン。根尖部の透過像もなくなり良好。
    図44 術後3ヵ月のレントゲン。根尖部の透過像もなくなり良好。
  • 術後3ヵ月の口腔内写真。臨床症状に特記事項はない。
    図45 術後3ヵ月の口腔内写真。臨床症状に特記事項はない。

おわりに

今回は、一般的な感染根管処置への応用について話しました。次回は、内視鏡を用いた診断や通常の治療法では対応し難い症例について話したいと思います。また、仙台で臨床フォーラム『Er:YAGレーザーの大いなる可能性』が、ハーネル仙台において10月28日に開催されます。Er:YAGレーザーおよび内視鏡に興味を持たれた先生方の参加をお待ちしています。内視鏡の可能性に是非、触れてみてください。

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