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123号 WINTER 目次を見る

TECHNICAL REPORT

SPIシステムの技工<3> -各種補綴パーツによる上部構造体の製作法-

鶴巻 春三

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■目 次

■はじめに

本稿ではSPIシステムの技工の連載第3回目として、各種補綴パーツを使用した上部構造体の製作方法について図説を中心に紹介する。

■精密で使い易いSPIシステム

SPIシステムはインプラント体とアバットメントの安定した結合のため、深いインターナルHEX(内部六角)の回転防止機構が採用されており、その精度は腕時計で知られるスイスの高い精密加工技術と非常に厳格な品質管理により、マイクロギャップは最大5μm、回転方向のマイクロムーブメントは最大で1.8°という高い適合精度を実現している(図1)。これにより精密な印象採得が可能となり、繁雑な作業工程や口腔内試適が増えず、非常にスムーズで正確な上部構造体の製作がおこなえるシステムとなっている。
また補綴パーツにおいてはクラウン、ブリッジ、デンチャー修復のための多種の既製パーツが用意されており、簡単な修復を可能としている。また審美的要求など、症例に応じてカスタマイズ可能なアバットメントも用意されており、歯科技工士にとっても非常に使い勝手の良いシステムとなっている。

  • [写真]アバットメントとの安定した結合のため、内部六角構造による嵌合様式を採用し、マイクロギャップは最大5μm、回転方向のマイクロムーブメントの角度は最大で1.8°と高い適合精度を実現している
    図1 アバットメントとの安定した結合のため、内部六角構造による嵌合様式を採用し、マイクロギャップは最大5μm、回転方向のマイクロムーブメントの角度は最大で1.8°と高い適合精度を実現している。

■簡単、ニューイージー焼成キャップを使用した症例

ニューイージーアバットメント(様々なサイズが用意されている)をカスタマイズせずそのまま使用できる場合、精密に適合するニューイージー焼成キャップという既製パーツが用意されており、技工作業を簡便にしてくれる(図211)。基本的にこの適合の維持力状態はセメント合着(仮着)タイプに適している。アバットメント頂部の削合などカスタマイズの量が少ない場合は、ニューイージー焼成キャップを削りパターンレジンで修整し、使用することもできる。

  • [写真]ニューイージーアバットメント、ショートとそれに適合する既製のニューイージー焼成キャップ(クラウン用)
    図2 ニューイージーアバットメント、ショートとそれに適合する既製のニューイージー焼成キャップ(クラウン用)。ニューイージーアバットメントはコーンの高さは2種類、カラー高さは3種類あり、それぞれの組み合わせのサイズから選択できる。
  • [写真]アバットメントをカスタマイズする必要があるかどうかシリコーンインデックスで確認する
    図3 アバットメントをカスタマイズする必要があるかどうかシリコーンインデックスで確認する。不必要もしくは少しの削除量の場合、既製のニューイージー焼成キャップを使用することができる。
  • [写真]ニューイージーアバットメントにニューイージー焼成キャップ(クラウン用)を装着した状態
    図4 ニューイージーアバットメントにニューイージー焼成キャップ(クラウン用)を装着した状態。パターンレジンによるレジンコーピングを製作せずに済み、とても便利である。
  • [写真]ガムモデルを装着し、ニューイージー焼成キャップの上に直接WAX-UPを行う
    図5 ガムモデルを装着し、ニューイージー焼成キャップの上に直接WAX-UPを行う。
  • [写真]シリコーンインデックスを使用しメタルフレームのWAX-UPを行う
    図6 シリコーンインデックスを使用しメタルフレームのWAX-UPを行う。
  • [写真]アナログロングにアバットメントを装着し、実体顕微鏡下で埋没前の微調整とチェックを行う
    図7 アナログロングにアバットメントを装着し、実体顕微鏡下で埋没前の微調整とチェックを行う。焼却時のプラスチックキャップの膨張を保障するため、表面をWAXで一層コーティングする。
  • [写真]鋳造後、オクルード(モリタ)を使用し適合調整する
    図8 鋳造後、オクルード(モリタ)を使用し適合調整する。内面左上に当たりが見えるが、ニューイージー焼成キャップには作業中の維持のため、小さな固定用突起(スナップ)が付与されている。この固定用突起は鋳造後削除する。
  • [写真]研削が終わり完成したメタルフレーム
    図9 研削が終わり完成したメタルフレーム。
  • [写真]ポーセレンを築盛し完成した上部構造体
    図10 ポーセレンを築盛し完成した上部構造体。
  • [写真]仮着セメントにより合着された上部構造体
    図11 仮着セメントにより合着された上部構造体。アバットメントはトルクラチェットを使用して、しっかりとスクリュー固定する。

■ピックアップ印象にニューイージーインプレッションキャップを使用した連結修復の症例

ブリッジなど咬合面にアクセスホールを出したくない連結修復の場合、適合精度をより確実なものとするために、実際使用するアバットメントを口腔内に装着しピックアップ印象する。これによりワンピースキャストによる正確なメタルフレームの製作が可能となり、適合精度を難しくする前ロウ着の工程をはぶくことができる。
SPIシステムではニューイージーアバットメントが使用できる症例においては、既製のニューイージーインプレッションキャップが用意されておりピックアップ印象時にとても便利である(図1220)。

  • [写真]印象コーピングで印象採得する
    図12 ピックアップ印象が必要な連結修復の症例で、アバットメントを技工サイドで選択する場合、初めは通法どおり印象コーピングで印象採得する。
  • [写真]セレクトアバットメントを使いサベーヤーにて平行性を確認し使用アバットメントを選択する
    図13 セレクトアバットメントを使いサベーヤーにて平行性を確認し使用アバットメントを選択する。近遠心共に同サイズのニューイージーアバットメント、ショートを選択した。
  • [写真]選択されたニューイージーアバットメントとニューイージーインプレッションキャップ
    図14 選択されたニューイージーアバットメントとニューイージーインプレッションキャップ。回転防止の面と固定用突起により精密に適合する。
  • [写真]作業模型に装着した状態。この状態で口腔内からピックアップ印象する
    図15 作業模型に装着した状態。この状態で口腔内からピックアップ印象する。実際に上部構造を製作するアバットメントで直接印象するため誤差は最小限に抑えられる。
  • [写真]採得されたピックアップ印象。内面に印象材が入っていないか必ず確認する
    図16 採得されたピックアップ印象。内面に印象材が入っていないか必ず確認する。メタルクラウン内面はパターンレジンを筆盛りし、インプラント部はアナログにアバットメントを装着し挿入する。
  • [写真]石膏注入しでき上がったピックアップ印象による作業模型
    図17 石膏注入しでき上がったピックアップ印象による作業模型。インプラントの位置がニューイージーインプレッションキャップにより精密に再現されている。サベーヤーにて再度平行性を確認する。
  • [写真]ニューイージー焼成キャップを使用しワンピースキャストのメタルフレームを作製する
    図18 アバットメントをカスタマイズする必要がなかったのでニューイージー焼成キャップを使用しワンピースキャストのメタルフレームを作製する。
  • [写真]完成した連結修復の上部構造体
    図19 完成した連結修復の上部構造体。
  • [写真]術後のX線画像
    図20 術後のX線画像。ピックアップ印象により精密に適合している。

■カスタマイズ用、鋳接タイプのヴァリオアバットメントを使用した症例

20°以上の角度補正が必要な場合や、急なサブジンジバルカントゥアを付与したい時など既製アバットメントで対応しきれない場合、自由設計のアバットメントを製作するために用意されているのが鋳接タイプのヴァリオアバットメントである(図2138)。
<次号に続く。なお参考文献については最後に一括して掲載する。>

  • [写真]ヴァリオアバットメント
    図21 ヴァリオアバットメント。既成アバットメントで対応しきれない症例などで、アバットメントに自由な形態を付与できる鋳接タイプのカスタムメイド用アバットメント。
  • [写真]ヴァリオアバットメントを装着した作業模型
    図22 ヴァリオアバットメントを装着した作業模型。大臼歯の自然なsubgingival contourをアバットメントに付与し、アバットメントと上部構造体の接合部を歯肉縁下1mmに設定した症例。
  • [写真]クリアランスを考えプラスチックスリーブを削合調整する
    図23 クリアランスを考えプラスチックスリーブを削合調整する。
  • [写真]アバットメントの形態をWAX-UPした状態
    図24 アバットメントの形態をWAX-UPした状態。サベーヤーもしくはミリングマシーンを使用しWAX形成すると簡単である。この症例ではテーパー2°でWAX形成してある。フリーハンドで研磨する場合はWAX段階でなるべくきれいな軸面に仕上げておく。
  • [写真]アナログロングに装着し、実体顕微鏡下で仕上げる。特に金属とWAXの接合部はWAXがオーバーしすぎないに注意する
    図25 アナログロングに装着し、実体顕微鏡下で仕上げる。特に金属とWAXの接合部はWAXがオーバーしすぎないに注意する。これは鋳造時、大切なインプラントとの接合部にメタルがまわりこまないようにするためである。
  • [写真]アズキャストの状態
    図26 アズキャストの状態。接合部は適合を損ねるためサンドブラストしてはならない。
  • [写真]歯肉縁下1mmの部分をマジックで印記し削合の目安にする
    図27 歯肉縁下1mmの部分をマジックで印記し削合の目安にする。
  • [写真]テーパー2°のバーでマシーンミリングする
    図28 テーパー2°のバーでマシーンミリングする。ミリングによって石膏とアナログにかたつきが生じることがあるので瞬間接着剤を流して補強しておく。
  • [写真]研磨し完成したアバットメントの頬側面観
    図29 研磨し完成したアバットメントの頬側面観。単冠修復のため頬側上部に回転防止のグルーブを付与してある。
  • [写真]完成したアバットメントの舌側面観
    図30 完成したアバットメントの舌側面観。上部構造体との接合部には適合性向上のためシャンファーベベルが付与してある。
  • [写真]レジンコーピングを製作しメタルフレームのWAX-UPを行う
    図31 レジンコーピングを製作しメタルフレームのWAX-UPを行う。
  • [写真]メタルフレームを研削しポーセレンを築盛する
    図32 メタルフレームを研削しポーセレンを築盛する。
  • [写真]ビスケットベイクでの口腔内試適
    図33 ビスケットベイクでの口腔内試適。ジンジバルフォーマーよりかなり大きい上部構造体となる場合、粘膜の圧迫が強すぎるためプロビジョナルレストレーションでの段階的な粘膜の押し広げが必要となる。
  • [写真]研磨操作は接合部保護のため、必ずアナログロングに装着して行う
    図34 研磨操作は接合部保護のため、必ずアナログロングに装着して行う。粘膜と接する部分は必要以上に研磨しグレーズ焼成する。
  • [写真]完成した上部構造体
    図35 完成した上部構造体。自然なsubgingivalcontourとなっている。
  • [写真]ガムモデルを装着した状態
    図36 ガムモデルを装着した状態。下部鼓形空隙の量を最小限にしている。
  • [写真]術後の頬側面観
    図37 術後の頬側面観。上部構造体の形態により歯冠乳頭を押し上げる。
  • [写真]術後のX線画像
    図38 術後のX線画像。ヴァリオアバットメントを使用することにより自然なsubgingival contourの立ち上がりとなっている。

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