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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
我レーザーと戦えり<その6>-内視鏡下のEr:YAGレーザーの歯内療法への可能性-
坂田 篤信

■目 次

はじめに

内視鏡を使用しての歯内療法についての可能性について話したいと思います。
日々の臨床の中で、自分がこれならば大丈夫と考え根管充填をした症例が、後日疼痛があると言われたこと。また、何度も根管治療を試みても思うような成果が出せないこと。そんな時、根管内が見れたら、その根管を見ながら処置ができたらと思われたことはないでしょうか。そんな期待に少しでも応えることができる機器が内視鏡です。
シンプルでフレキシブルな内視鏡の先端構造は、カメラ部・光源部・レーザーチップ/注水チャンネル部から構成されているにもかかわらず、直径1mmの太さに抑えられています。さらに、根管内という閉鎖的な硬組織で覆われている環境でも使用が可能なようになっています。
また、内視鏡先端を回転・上下させることで、さらにはレーザーのチップを上下させることで、内視鏡で患部を見ながらEr:YAGレーザー照射することが可能です。

  • 内視鏡を使用しての治療風景。
    図1 内視鏡を使用しての治療風景。
  • 内視鏡下でファイリングを試みている。
    図2 内視鏡下でファイリングを試みている。
  • 先端の構造図。
    図3 先端の構造図。

症例

今号から2回にわたって症例を紹介いたします。
なお、内視鏡の画像は、動画を落とし込んでから静止画にしていますので、実際より粗くなりますがご理解ください。

症例1

部位
下顎右側4番
主訴
物を噛むと何となくおかしい
診断
歯根破折

レントゲン写真にて根尖病巣は確認できない歯牙でしたが、不良な根管充填の疑いがあり、冠を外して根管内を内視鏡で見ることにしました。
レジンコア除去後、2.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液にて洗浄後、内視鏡にて注水下で観察しました(図1-1)。
内視鏡の挿入角度を歯面に沿わせるように入れることで青色を呈した破折部()が、帯状に認められ、破折状態を的確に観察できます(図1-2)。
内視鏡の挿入角度を歯管方向へ振ることで、根尖方向のガッタパーチャ/GP()と破折部()との位置関係も正確に観察できます(図1-3)。

  • 根管を歯管側から根尖方向へ内視鏡を移動させる。(◆)の左側が破折部。
    図1-1 根管を歯管側から根尖方向へ内視鏡を移動させる。()の左側が破折部。
  • 根尖方向へ青色を呈した破折部(◆)の左側が、確認できる。
    図1-2 根尖方向へ青色を呈した破折部()の左側が、確認できる。
  • 下方に根尖部で、GP(▲)が確認できる。
    図1-3 下方に根尖部で、GP()が確認できる。
  • 術前レントゲン破折が疑われる根管のレントゲン写真。
    図1-4 術前レントゲン破折が疑われる根管のレントゲン写真。

症例2

部位
上顎左側2番
主訴
根尖部の疼痛
診断
複根尖

通常の根管拡大・根管形成を#60までして交互洗浄後、レントゲン(図2-5)上に根尖部に透過像が認められるため内視鏡で根管内を見ることにしました。
根尖付近のデブリス()を除去するために注水して根尖付近を観察していたところ、デブリスの直ぐ下に見える根尖孔の左側に水流によって動く箇所を見つけました(の右側)(図2-1)。
Er:YAGレーザーの200μの太さのチップを根管内へ挿入し、内視鏡下で動きのある箇所()へ非接触にて先端出力29mjにてレーザー照射をしました(図2-2)。
隠れていた複根尖が認められました。()の右側(図2-3)。
その後、さらに数分間内視鏡下にて、根尖付近の状況の変化を観察しました(図2-4)。
根管充填後、5ヵ月は経過しました。レントゲン写真上で根尖部の透過像の減少も認められ臨床上特記事項はありません。

  • デブリス(▼)。水流によって動く箇所(◆)。
    図2-1 デブリス()。水流によって動く箇所()。
  • Er:YAGの200μのフラットチップ(●)。
    図2-2 Er:YAGの200μのフラットチップ()。
  • 照射後。隠れていた複根尖が認められる。
    図2-3 照射後。隠れていた複根尖が認められる。
  • 観察後、デブリス(▼)を除去する。
    図2-4 観察後、デブリス()を除去する。
  • 術前レントゲン写真。
    図2-5 術前レントゲン写真。
  • 根管充填時のレントゲン写真。
    図2-6 根管充填時のレントゲン写真。
  • 術後5ヵ月のレントゲン写真。
    図2-7 術後5ヵ月のレントゲン写真。

症例3

部位
上顎左側3番
主訴
根尖部に違和感
処置
レジン及びガッタパーチャ/GPの除去

金属コアの除去後、内視鏡とレントゲン写真で根管内にレジン()とレジンを通して下部にあるGP()が透けて見えました(図3-1)。
内視鏡下でレジンとGPの除去をEr:YAGレーザーを使用して行いました。注水下で出力は表示値100mj・10PPSです(図3-2)。
容易にレジンを除去しながら穿孔することができました(図3-2)。
レジンの除去後、レーザーチップをさらに深く挿入し注水下で出力は表示値100mj・10PPSにてGP()を除去しました(図3-3)。
内視鏡下でレジン及びGPの位置を確認しながら除去が行えるため、正確に安全にストレスなく処置が行えます(図3-4)。

  • 術前。レジン(■)とGP(▲)
    図3-1 術前。レジン()とGP()。
  • レジン(■)と穿孔して見えてきたGP(▲)。
    図3-2 レジン()と穿孔して見えてきたGP()。
  • レントゲン写真からもわかるように簡単にGPも遊離してきた。
    図3-3 レントゲン写真からもわかるように簡単にGPも遊離してきた。
  • 術後。
    図3-4 術後。
  • 術前レントゲン写真。
    図3-5 術前レントゲン写真。
  • 根管充填時のレントゲン写真。
    図3-6 根管充填時のレントゲン写真。

症例4

部位
上顎右側3番
主訴
根尖部の圧痛
処置
狭窄根管の拡大

レーザー顕微鏡にて、表示値・先端出力・切削深さを調べたところ、内視鏡下で使用するEr:YAGレーザーチップは、表示出力で100mjで118.38μmの切削能力が確認できました(図4-1~3)。この切削能を利用して狭窄根管の拡大をしました。
根尖方向()が狭窄し、根尖を確認することができない症例です(図4-44-11)。
内視鏡下でEr:YAGレーザーを使用して、根管拡大を試みました。注水下で出力は表示値100mj・10PPSにて行いました(図4-5)。
切削していくと、新たなデブリス()が根尖方向()並びに周囲に確認できました(図4-6)。
根尖方向()周囲のデブリスを除去しても、根尖は確認できません(図4-7)。
さらに、Er:YAGレーザーにて拡大をしてくと、新たなデブリス()が確認できました(図4-8)。
デブリスの中心部(根尖方向と思われる部分)をレーザーにて拡大・除去を行うと、根尖()が確認できました(図4-9)。
根尖()周囲のデブリス()を除去し根尖周囲もデブリスがない根管拡大ができました(図4-104-12)。

今回は、4つの症例を報告しました。
次回は、穿孔部への侵入肉芽の除去などの症例を報告いたします。

  • 表示値・先端出力・切削深さ50mj・14mj・81.41μm
    図4-1 表示値・先端出力・切削深さ50mj・14mj・81.41μm
  • 75mj・20.25mj・105.21μm
    図4-2 75mj・20.25mj・105.21μm
  • 100mj・29.0mj・118.38μm
    図4-3 100mj・29.0mj・118.38μm
  • 術前。根尖方向(▲)
    図4-4 術前。根尖方向(
  • 100mj・10ppsの出力にて照射。
    図4-5 100mj・10ppsの出力にて照射。
  • 新たなデブリス(▼)が根尖方向に見られる。
    図4-6 新たなデブリス()が根尖方向に見られる。
  • デブリス除去後。
    図4-7 デブリス除去後。
  • 新たなデブリス(▼)を確認。
    図4-8 新たなデブリス()を確認。
  • (▲)の右側に根尖。根尖周囲にデブリス(▼)。
    図4-9 ()の右側に根尖。根尖周囲にデブリス()。
  • 術後。
    図4-10 術後。
  • 術前レントゲン写真。
    図4-11 術前レントゲン写真。
  • 術後レントゲン写真。
    図4-12 術後レントゲン写真。