DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
アーウィン・アドベールを使った臨床
小嶋 壽

■目 次

■1. 歯周外科処置後にアーウィンを使う

歯周処置、特に歯周外科をしたあとは、誰でも痛みなどの不愉快な状態が出やすいものである。できればやらなくて済ませたいものであるが、患者様の歯を活かすためにどうしても避けられないときもある。そのような時、少しでも患者様の不快な感覚を和らげる目的で、歯科用レーザーアーウィン・アドベールを使用する。この症例では、#23、#25、#26支台歯のブリッジが入っていたが、ブラッシングの難しさも手伝ってそれぞれのクラウン歯頸部からカリエスが進行し、あるときいきなりブリッジの支台歯が三本とも歯頸部から折れて、外れてきたのである。もともとは有髄歯で支台歯にしたようで、X 線的にはどれも歯内療法をした形跡がない。またこれら三本とも、歯頸部からカリエスが進行し、歯肉縁下、骨縁下まで達している。しかも、歯肉息肉が歯頸部辺縁を隠し状況の把握を大変難しくしている。そこで骨の根尖側移動を行い、抜糸後に痛みの緩和と治癒促進、感染象牙質除去のためにアーウィン・アドベールを使用し、レーザー照射した。

  • ブリッジが一体で外れた、初診時左上の写真
    図1 ブリッジが一体で外れた、初診時左上。
  • #26のX線像
    図2 #26のX線像。全体に歯肉縁下カリエス、遠心根は骨縁下カリエス。

■2. C800Fのチップをまんべんなく当てる

当初、C400Fを使って照射したが4歯分の範囲であるため、C800Fに切り替えてまんべんなく照射した。メモリー番号は「2」を使い、10pps・50mjで15分間小さな円を描くよう歯肉表面より軽く離した状態で、しばらく照射した後に水洗、またしばらくレーザー照射した後に水洗を繰り返し行っていった。この抜糸後のレーザー照射が良く、本来骨に関係する外科処置を行うと、患者様の苦痛も大きくなることが予想されるものだが、今回は患者様にも大きな苦痛が加えられることなく、大過なくすごすことができたようである。このことは、日常臨床にとって大変重要なことであり、一般的に歯科というイメージは「痛い」ということが大きなものになっている。そのため、ペインレスの治療をできる限り行うことで、少しでも患者様の不安や恐怖感をなくすことができるよう、努力と時間を惜しまず積極的に実践することが必要であろう。注射なしの無麻酔で何の痛みも伴わず、レーザーで歯肉切除したり、痛みを和らげたりできる現実を、知ってもらいたい。

  • 歯槽骨の根尖側移動後、抜糸時の写真
    図3 歯槽骨の根尖側移動後、抜糸時。
  • 抜糸直後に、アーウィン・アドベールを使用した写真
    図4 抜糸直後に、アーウィン・アドベールを使用し、痛みの軽減を図る。
  • アーウィン・アドベールを使用後の写真
    図5 その後痛みも無く、治癒傾向も早いように思われる。
  • #26遠心部のみ再びレーザーを当て、肉芽除去する写真
    図6 #26遠心部のみ再びレーザーを当て、肉芽除去。

■3. 治癒を待つ間に、#26歯内療法

歯周外科処置をすると、どうしても歯肉の治癒に大変時間がかかるものである。その治癒を待つ間、何もしないのではお互いに疲れてしまう。そこで、この症例では治癒を待つ間に、#26、#27の歯内療法をしようと計画していたのである。頭がまったく無くなっているのだから、それぞれの根管口が見えても良さそうなものだが、かろうじて近心頬側根管口しか見えない。X 線像を頼りに各根管を探し出し、ファイルで入るところまでを診査・確認した後、入り口の規制する壁である、いわゆるエンド三角を専用のバーを使い、特定的に削除していく。歯頸部からカリエスでいじめられてきたため、それぞれの根管口が圧迫され、天蓋と髄床底が薄紙一枚の隙間しかないくらい接近しており、根管口を窓の上のひさしのように覆っていてなかなか根管口が見つからないところに、この歯の根管形成の難しさがある。ひさしを除去して根管口が見つかれば、あとはこちらのものだ!各根管をデンタポートで根管長測定し、X 線で確認する。デンタポートでは、単に作業長を測定するのではなく、根尖を突き抜けない太さのファイルで測定することが必要である。つまり根尖狭窄部の幅を知ることにより、作業長測定後に使う水先案内役をするパイロットファイルの、太さの番手を新たに決めるのである。

  • デンタポートで根管長測定する写真
    図7 歯周組織の治癒の間に、#26歯内療法。デンタポートで根管長測定。

■4. エンドウエーブで規格形成の後、根管充塞

デンタポートとX線像により作業長と根尖幅が確認されたら、ニッケルチタンのエンドウエーブを使って、根尖付近の規格形成をしていく。一般的に、ニッケルチタンファイルは非常にしなやかであるため、どんなに曲がったところへでもズズッと入っていくというような錯覚があるが、入り口部分にある規制する壁であるエンド三角を、充分除去してからでないと使ってはいけない。欧米人の歯は大変長い歯根を持っているが、日本人の歯は非常に短く、短い中で彎曲などがあるため、その分欧米人の歯に比べて彎曲の度合いが強くなる。そのため、入り口のエンド三角を除去せずに、彎曲の修正をしてその度合いをゆるくすることを考えないでニッケルチタンファイルを使ったら、すぐに折れてしまうだろう。そのため、先に充分エンド三角を削除してからエンドウエーブを使うのである。また、ニッケルチタンファイルを使うときにはパイロットファイルが根尖まで届いてから使うように、つまり道のできているところで使い、同時に必ず注水しながら使うことを薦める。0.08テーパー、#35から減速コントラに付け、毎分250回転以下で注水下で使用する。私は222回転で使っている。次に0.04テーパー、#25で根尖まで形成したあと、0.06テーパー、#25で形成した後、根管充塞で終了する。

  • エンドウエーブを使って規格形成する写真
    図8 長さが決まったらエンドウエーブを使って規格形成。
  • エンドウエーブで根管形成した位置を確認する写真
    図9 エンドウエーブで根管形成した位置を確認する。
  • X線像により、根尖までの形成の様子を確認する写真
    図10 X線像により、根尖までの形成の様子を確認する。
  • ガッタパーチャでの根管充塞の様子を確認する写真
    図11 それぞれの根管の、ガッタパーチャでの根管充塞の様子を確認。
  • 遠心のマージンの写真
    図12 そのころには遠心のマージンも明瞭に見えるようになっている。

■5. #24遠心部からの歯肉息肉除去にアーウィンを使う

OD 窩洞のインレーが外れたことが主訴で来院したものであるが、遠心部形成限界からカリエスがまわっており、その上に歯の遠心部から歯肉息肉が這い上がってきている。インレーが外れてからの日数が経過していないため、インレーのマージンと遠心部の形成限界との適合が良くなかったため、カリエスになり息肉が上がってきたものと思われる。X線像で診査すると、無髄歯で歯内療法のあとが見られるが、根尖までの治療がうまくできていないため、根尖部に病変ができている。#25が近心に少し傾いて寄ってきていることも、歯肉がせり上がって乗り上げている原因になっているようである。この#24は、歯内療法から始めなければならないことを患者様によく理解してもらった後、歯内療法を行うのであるが、歯内療法の基本として目に見える歯冠部のカリエスを徹底的に除去してから、かからなければならない。歯冠部のカリエスからの微小漏洩により、根尖部に影響することが解っているからである。そのカリエスを除去するために、遠心部に乗り上げている息肉は非常に邪魔で厄介だ。今までの治療であれば、浸潤麻酔を行いエレクトロサージェリーで切除するところであるが、このような小さな少しの場所に対応するため、痛い麻酔をすることの無益さを考えなければならない。

  • #24の術前の様子
    図13 #24の術前の様子。カリエスの上に息肉が上がっている。
  • 初診時の#24X線像
    図14 初診時の#24X線像。

■6. アーウィン・アドベールは無麻酔で使うのが基本

歯科用レーザーの臨床的な利点の中に、無麻酔で軟組織に対する施術ができること、がある。患者様には「何かあったら、いつでも麻酔をしますよ」と言ってから、無麻酔でレーザーを使う。C800Fのチップで「2」のメモリー、10pps・50mjでチップ先端を歯肉に当て、こするように使い除去する。無麻酔で歯肉を切除しており、麻酔をしたときのような感じではなく出血があるため、止血に対する処置をしなければならない。止血の後、遠心部のカリエスを徹底的に除去する。これはマイクロモーターに増速コントラを付け、ダイヤモンドバーで除去するか、カーバイドのラウンドバーで除去する。レーザーで歯肉を切除したときは、最後にガッタパーチャで包帯をするように傷口をふさがなければならないのだが、この症例では今後歯内療法をする用意があるため、あらかじめテンポラリークラウンを作っておく必要がある。このテンポラリークラウンは、歯内療法時に二重仮封をする際、テンポラリーセメントが仮封の役目をするためのものとなるのである。しかもそのテンポラリークラウンは、特に先ほど歯肉切除をした遠心部でクラウンのマージンと、歯の形成限界がピッタリあっていることが要求される。なぜなら、そのマージン部で再度肉芽が上がってくるのを抑えられるからである。

  • レーザーを使用する写真
    図15 レーザーは無麻酔で気軽に使うことができ、いらない苦痛を与えない。
  • 息肉除去直後の写真
    図16 息肉除去直後。マージン部のカリエスが充分露出するようにしておく。
  • テンポラリークラウンを作る写真
    図17 すぐにテンポラリークラウンを作り、歯肉が再び上がらないようにする。
  • レーザー使用1週間後の写真
    図18 レーザーを使えば、1週間後には歯肉も大変改善している。

■7. #37遠心部の歯肉切除にアーウィンを使う

左下最後臼歯の#37遠心頬側部の大きなカリエスの中に、遠心からその穴を塞ぐように多量の歯肉が入り込んでいる症例である。もともとこの歯は、遠心頬側の歯質が欠けたか、カリエスで穴が開いたかしてセメントで充填してあったものが、今回はその充填物が脱落し内部ではカリエスが進行して大きな穴が開いており、その穴を埋めるようにすぐ後ろの歯肉が入り込んで、このような状態になったものである。パルプテスターで歯髄の生活反応を診査すると、正常な歯髄反応が認められたので生活歯としての治療を始めようと思う。また、この歯の問題点が頬側遠心であることから咬合に問題があると見て、咬合診査をした。そのため咬合器を使用して中心位で下顎模型を付着し、中心位からの出発点で咬合を診査した。そうすると、この#37が対合歯の#27との間で、左側方運動時に強くバランシングコンタクトを起こしていることが解った。右側方運動時のバランシングコンタクトといえば、上顎の口蓋側咬頭が嵌合位から右側方運動する際、#37の窩から遠心頬側方向へすり抜けていくときに、すり抜けることができずにまともに当たってこすれてしまうことをいう。そのため、#37遠心頬側部では大変強烈な力を受けることになるが、それが顆頭に一番近い#37では一番大きな力を受ける。

  • #37遠心頬側の大きなカリエス部の写真
    図19 #37遠心頬側の大きなカリエス部に、思い切り歯肉が入り込んでいる。
  • 初診時のX線像
    図20 初診時のX線像。

■8. C800Fチップは万能!

ハサミを使うとき、硬いものを切るときにはできるだけ支点に近い場所を使う。これは支点に近いほど強力な力を加えることができるから使うのだが、顆頭と歯の関係もまったく同じで、奥の歯ほど大きなダメージを与えられるため、この#37の遠心頬側部分の問題ができたものである。今回の場合、遠心頬側歯頸部のカリエスの辺縁が見えるように、またカリエスの進行度合いを確認できるようにするために、アーウィン・アドベールを使うのである。レーザーを使っているときは、歯科アシスタントにスリーウエイシリンジからのウオータースプレーをかけてもらい、同時に強力なバキュームと排唾管で吸引してもらう。当然、チップの先端は切断する歯肉表面に接触させて、少しずつずらすように使う。切るというより、こそげ落とすようにチップ先端を動かしていくのである。後で、プレパレーションの際歯肉縁下にならないよう、歯頸部では歯肉を充分に切除しておくことが大切である。また、歯頸部での軟組織処置をしたときは、そのままにしておくと、次の瞬間にすぐ歯肉が再び上がってきてしまうので、根管充塞に使うガッタパーチャを少々軟化し、遠心頬側部から切除歯肉面までを覆うように付けておくと、次回には大変創面がきれいになっているという臨床事実も知っておきたい。

  • アーウィン・アドベールを使用する写真
    図21 この歯肉を切除するため、アーウィン・アドベールを使用する。
  • レーザーを使った直後の歯肉の様子
    図22 レーザーを使った直後の歯肉の様子。
  • 施術部をガッタパーチャでパックした写真
    図23 施術部にはガッタパーチャでパックしておくと、後の治癒が良好となる。
  • 11日後にガッタパーチャを取った際の写真
    図24 11日後にガッタパーチャを取ると、大変きれいに治癒している。