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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
我レーザーと戦えり<その7> -内視鏡下のEr:YAGレーザーの歯内療法への可能性-
坂田 篤信

■目 次

■症例

前号に引き続き、症例を報告します。

症例5

部位
上顎左側1番
主訴
患歯近心側面の瘻孔及び腫脹
処置
穿孔部への侵入肉芽の除去

術前レントゲンにて根管内の穿孔の疑いがあるため、ポストコアを除去し、内視鏡にて根管内を観察することにしました。ポストコア除去後、2.5%次亜塩素酸ナトリウムにて洗浄後、内視鏡で見ました。根管内の根尖側1/3の近心壁に穿孔部()、そこから侵入している白色を呈している肉芽()が確認できました。()が根尖方向です(図5-1)。
患者が、どうしても歯牙の保存を望まれるため、Er:YAGレーザーを使用して肉芽()の除去を試みました。根管壁に沿わせるように内視鏡を挿入し、肉芽()を掃き取るように内視鏡とチップを操作してレーザー照射しました。注水下で表示値100mj・10PPSの出力にて行いました(図5-2)。
肉芽()が減少して根尖方向が薄っすらと確認できるようになってきました(図5-3)。さらに、レーザー照射をして肉芽()を削ぎ落としていきました(図5-3)。
肉芽()の減少に伴い根尖部が見えるようになってきました。根尖()部の肌色を呈したGPが確認できるようになりました(図5-4)。さらに、レーザー照射をして、肉芽の除去をしました。肉芽の大きさも減少して全体像がはっきり判るようになってきました。それに伴いGP()もはっきり判るようになってきました(図5-5)。
侵入していた肉芽の除去ができました。内視鏡の挿入角度を根管方向へ移動したために、穿孔部()の形態は、小さく見えます(図5-6)。
続いて、根尖部の清掃・デブリス及びGPの除去をします(図5-7)。根尖方向へレーザーのチップが到達しやすいように内視鏡とチップを操作して、レーザー照射しました。注水下で表示値100mj・10PPSの出力にて行いました(図5-8)。
内視鏡のカメラ部とチップのチャンネル部は、同軸上にはありますが、位置が少しずれます。よって、レーザー照射したい場所や見たい場所を鮮明にするためには、両手を使って内視鏡とチップをうまく操作する必要があります。チップが根尖方向へ容易に挿入できて、根尖のGPに先端が接触しています(図5-9)。
さらに、レーザー照射を行い、根尖()を目指します(図5-10)。まだ、根尖()が確認できません(図5-11)。さらに、内視鏡とチップを操作してGPやデブリスが除去しやすいようにします(図5-12)。
もちろん、内視鏡もさらに根尖方向()へ挿入していきます。よって、根尖部()のデブリスやGPが大きく見えるのはさらに内視鏡が深く入っている状態です(図5-13)。
レーザー照射を繰り返すことで根尖部のデブリスは減少してきました(図5-14)。赤の点状の根尖と周りに少量のデブリスが確認できるまでになりました(図5-15)。根尖周囲のデブリスを慎重にレーザー照射して除去しました(図5-16)。
水酸化カルシウムにて塗薬して、二重仮封してその日の処置を終了しました。1週間後、特に問題がなかったため根管充填をしました。

  • 術前。(◆)の左側:穿孔部。(●)の左側の白色の部分:肉芽。(▲)の右側:根尖方向。
    図5-1 術前。()の左側:穿孔部。()の左側の白色の部分:肉芽。()の右側:根尖方向。
  • 注水下でレーザー照射しているため、肉芽(●)は、水流で動くのでよく判る。
    図5-2 注水下でレーザー照射しているため、肉芽()は、水流で動くのでよく判る。
  • 穿孔部(◆)の輪郭も肉芽(●)の減少とともにはっきりする。
    図5-3 穿孔部()の輪郭も肉芽()の減少とともにはっきりする。
  • (▲)の右側:根尖方向の場所もはっきり見えるようになる。
    図5-4 ()の右側:根尖方向の場所もはっきり見えるようになる。
  • 根尖部に詰まっているGP(▲)が確認できる。
    図5-5 根尖部に詰まっているGP()が確認できる。
  • (◆)の左側:穿孔部。
    図5-6 ()の左側:穿孔部。

  • 図5-7 
  • 根尖方向(▲)の状態が把握しやすい。
    図5-8 根尖方向()の状態が把握しやすい。
  • 根尖方向(▲)とチップ
    図5-9 根尖方向()とチップ(
  • (◆)の上:穿孔部、(▲)の上:根尖方向。
    図5-10 ()の上:穿孔部、()の上:根尖方向。
  • (◆)の上:穿孔部、(▲)の上:根尖方向。
    図5-11 ()の上:穿孔部、()の上:根尖方向。
  • (▲)の上:根尖方向。
    図5-12 ()の上:根尖方向。
  • (▲)の上:根尖方向。
    図5-13 ()の上:根尖方向。
  • (▲)の上:根尖方向。
    図5-14 ()の上:根尖方向。
  • (▲)の上:根尖方向。
    図5-15 ()の上:根尖方向。
  • (▲)の上:綺麗な根尖。
    図5-16 ()の上:綺麗な根尖。
  • (◆)の上:術後の穿孔部。
    図5-17 ()の上:術後の穿孔部。
  • (▲)の上:術後の根尖。
    図5-18 ()の上:術後の根尖。
  • 術前レントゲン写真。
    図5-19 術前レントゲン写真。
  • ポストコア除去時のレントゲン写真。
    図5-20 ポストコア除去時のレントゲン写真。
  • 根管充填時のレントゲン写真。
    図5-21 根管充填時のレントゲン写真。
  • 術後1ヵ月のレントゲン写真。
    図5-22 術後1ヵ月のレントゲン写真。
  • 術後7ヵ月のレントゲン写真。
    図5-23 術後7ヵ月のレントゲン写真。
  • 術後10ヵ月のレントゲン写真。
    図5-24 術後10ヵ月のレントゲン写真。

症例6

部位
上顎右側6番
主訴
患歯頬側歯肉の腫脹
処置
曲タイプの内視鏡を使用しての根管処置

1)1日目:術前口腔内写真(図6-1)、術前レントゲン写真(図6-2)。
通法の根管処置を行い、根管内を10%次亜塩素酸ナトリウムで満たし1分間処理後精製水で洗浄し、注水下で根管内を確認します。白濁したデブリスが根 尖付近に確認できます。
デブリス除去を目的に内視鏡下で注水しながらEr:YAGレーザーを使用して、根尖が確認できるまで照射します(口蓋根:図6-3~4、頬側近心根:図6-5~6、頬側遠心根:図6-8~9)。
根尖方向 へチップを誘導できる位置で内視鏡を保持し、レーザー照射します。
各根尖が、レーザー照射で綺麗になったことを確認して水酸化カルシウムを塗薬して仮封して処置を終了します。

2)2日目(5日後):頬側の腫脹は、軽減してきました(図6-10)。
水酸化カルシウム除去後、10%次亜塩素酸ナトリウムを根管内に満たして各根管の号数で洗浄し、精製水を流しながら根管内を確認します(図6-11~13)。 根尖部付近のデブリスが気になるため、R300Tチップを使用し、歯面に沿って根管長マイナス1mmの長さを作業長として、4方向へのかき上げ照射を注水下で行いました(図6-14~16)。
綺麗な根尖が確認できました。水酸化カルシウムを塗薬して仮封して処置を終了します。

3)3日目(7日後):さらに頬側の腫脹は軽減しました(図6-17)。
綺麗な根尖が確認できたので根充することにしました。
エアーにて乾燥後ペーパーポイントで根管で5秒停止することを2回行う簡易乾燥をしました(図6-18~20)。
乾燥を目的にR300Tチップを使用し、歯面に沿って根管長マイナス1mmの長さを作業長として、4方向へのかき上げ照射を非注水下で行いました(図6-21~23)。
ガッタパーチャポイントとシーラーを使用しての加圧根充をしました(図6-24)。
上顎臼歯部においても内視鏡を使用することで、根管内及び根尖付近を見ながら処置することができました。
さらに、R300Tを使用することで、根管内洗浄や乾燥が可能だと思われます。

  • 術前口腔内写真。
    図6-1 術前口腔内写真。
  • 術前レントゲン写真。
    図6-2 術前レントゲン写真。
  • 口蓋根:白濁している有機質をEr:YAGレーザーを使用して除去する。
    図6-3 口蓋根:白濁している有機質をEr:YAGレーザーを使用して除去する。
  • 口蓋根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)7.6秒照射後。綺麗な根尖が確認できる。
    図6-4 口蓋根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)7.6秒照射後。綺麗な根尖が確認できる。
  • 頬側近心根:肉芽の中にチップを挿入しEr:YAGレーザーを使用して除去する。チップ(●)。
    図6-5 頬側近心根:肉芽の中にチップを挿入しEr:YAGレーザーを使用して除去する。チップ()。
  • 頬側近心根:肉芽が除去でき根尖が確認できるようになってきた。下部からチップが根尖方向へ挿入。
    図6-6 頬側近心根:肉芽が除去でき根尖が確認できるようになってきた。下部からチップが根尖方向へ挿入。
  • 頬側近心根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)13.5秒照射後。
    図6-7 頬側近心根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)13.5秒照射後。
  • 頬側遠心根:白濁しているデブリスをEr:YAGレーザーを使用して除去する。
    図6-8 頬側遠心根:白濁しているデブリスをEr:YAGレーザーを使用して除去する。
  • 頬側遠心根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)12.6秒照射後。
    図6-9 頬側遠心根:80mj/10pps(先端出力13.5mj)12.6秒照射後。
  • 2日目の口腔内写真。
    図6-10 2日目の口腔内写真。
  • 口蓋根:#45次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
    図6-11 口蓋根:#45次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
  • 頬側近心根:#30次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
    図6-12 頬側近心根:#30次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
  • 頬側遠心根:#40次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
    図6-13 頬側遠心根:#40次亜塩素酸ナトリウムを満たしての超音波洗浄後。
  • 口蓋根:30mj/20PPS 25.7秒照射後。
    図6-14 口蓋根:30mj/20PPS 25.7秒照射後。
  • 頬側近心根:30mj/20PPS 26.3秒照射後。
    図6-15 頬側近心根:30mj/20PPS 26.3秒照射後。
  • 頬側遠心根:30mj/20PPS 35.2秒照射後。
    図6-16 頬側遠心根:30mj/20PPS 35.2秒照射後。
  • 3日目の口腔内写真。
    図6-17 3日目の口腔内写真。
  • 口蓋根:簡易乾燥後。
    図6-18 口蓋根:簡易乾燥後。
  • 頬側近心根:簡易乾燥後。
    図6-19 頬側近心根:簡易乾燥後。
  • 頬側遠心根:簡易乾燥後。
    図6-20 頬側遠心根:簡易乾燥後。
  • 口蓋根:30mj/20PPS 16.1秒照射後。
    図6-21 口蓋根:30mj/20PPS 16.1秒照射後。
  • 頬側近心根:30mj/20PPS 15.2秒照射後。
    図6-22 頬側近心根:30mj/20PPS 15.2秒照射後。
  • 頬側遠心根:30mj/20PPS 11.8秒照射後。
    図6-23 頬側遠心根:30mj/20PPS 11.8秒照射後。
  • 根充後のレントゲン写真。
    図6-24 根充後のレントゲン写真。

■おわりに

今回は、6つの症例を報告しました。全ての症例が、その後臨床的特記事項はなく現在も予後観察をしています。
症例報告にあたり、内視鏡下での診断や処置は、全て動きの中で物事の変化や状況を診ながら処置をします。記録を保存するために、その処置を動画として録画し、さらにそれを静止画にするために報告できる画像が荒れて見難くなってしまいます。
内視鏡の開発は、先端部分だけでなく周辺機器の簡素化・コンパクト化もしています。近いうちに、先生方の臨床の手助けとなるべく機器として誕生すると思います。
是非、機会がありましたら、手にとって実際の根管内の世界を見てください。

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