125号 SUMMER 目次を見る
■目 次
■はじめに
インプラントの日本での普及は欧米、隣国の韓国などに比べるとまだ途上であるのが現状です。弊社調べでは、開業医院様(n=72)での月平均症例は1.9例という結果でした。しかし、関連市場は毎年2桁成長を続け、患者様の関心も着実に高まってきており、今後急速に普及が進んでいくのは間違いないと思われます。
インプラントは治療後のメンテナンスが非常に重要であるのは言うまでもありません。インプラント寿命を伸ばすにはプロケアはもちろん、患者様ご自身のセルフケアも大変重要な役割を果たすと思います。そこで専用の歯ブラシが必要ではないかとの質問を前述の医院様にしてみたところ、約60%の先生方から「必要」との回答が得られました(図1)。
そこで弊社は専用歯ブラシの需要があると確信し、開発に着手しました。
図1 歯科医院調査結果(2007年7月弊社調査)
対象:首都圏、近畿圏開業医院、n=72
■製品開発 DENT.EX ImplantCare(インプラントケア)
専用歯ブラシとして、治療ステップに対応した3品をラインナップしました(図2)。
①DENT.EX ImplantCare-US (ウルトラソフトタイプ)(図3) ●使用時期:一次手術抜糸後から二次手術終了後まで
太さ0.1mmの非常に細い毛を10mmという長めの毛丈で植毛した歯ブラシです。そのためインプラント部隣在歯の歯頸側面が磨きやすくなっています(図4)。コンパクトヘッドで口腔内での操作性にも優れています。
インプラントを入れた口腔内のケアにはインプラント部はもちろん、隣在歯及び周辺の天然歯のケアが非常に重要であると考えています。手術後の患部に毛が当たるのを怖がるあまり、周辺の天然歯のケアが疎かになってしまうケースが非常に多いのが現実です。
USは患部に毛が当たっても問題ないような軟らかさを持たせながら、周辺の天然歯のプラークコントロールができる硬さとなっています。
なお、抜糸前の歯ブラシの使用は患部に悪影響を与える恐れがありますので、本品は一次手術抜糸後からの使用を推奨しております。術後のみならず、ボールアタッチメントなど義歯固定インプラント部の歯肉に近い症例にもかなり有効です。ジンジバルフォーマー(二次手術時)周辺を磨くのにも適しています。
図2 DENT.EX ImplantCare パッケージ-
図3 DENT.EX ImplantCare-US
図4 DENT.EX ImplantCare-USの使用法
●使用時期:一次手術抜糸後から治療後のメンテナンスまで
ハンドルネックが内側に5°傾斜していることにより、最後臼歯遠心、遊離端症例などの清掃に適しています。ワンタフトブラシは点で当てる必要があるため、毛が軟らかくて毛丈が長いと、狙った部位に毛先が当てるのが難しくなります。そこでインプラントに適した仕様として、毛の軟らかさを保ちながらやや短めの植毛とし、狙った部位に毛先を当てやすくすることを意図しています。小型ブラシのため、ほんの少し植毛長が異なるだけで、口腔内での使用感、位置付けのしやすさに違いが出ます。
磨き方としては歯と歯肉の境目に先端を押し込むように当て、歯頸部をなぞるように細かく振動させながらプラークを浮き立たせて除去します(図6)。
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図5 DENT.EX ImplantCare-OT -
図6 DENT.EX ImplantCare-OTの使用法
●使用時期:治療後、及びメンテナンス期
インプラント治療後、メンテナンス時に使用する歯ブラシです。一般的な幅の広いヘッドの歯ブラシでは毛先が歯頸部に届くより先に歯冠部に当たってしまい、うまく歯頸部に毛先を当てるのが難しくなります。
TRは特長的な細いヘッド、二列植毛の毛先がしっかりと歯頸部に入り込み(図8)、その感覚を患者様が体感できる歯ブラシです。
メンテナンス期において、通常の歯ブラシに移行する前のセルフケア・トレーニング用としても最適です。
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図7 DENT.EX ImplantCare-TR -
図8 DENT.EX ImplantCare-TRの使用法
■製剤と組み合わせての使用を推奨
もちろんインプラントのケアには歯ブラシだけでは不十分であり、より丁寧なケアが必要です。そこで殺菌剤・抗炎症剤を配合したジェル剤、低刺激のデンタルリンスなどの製剤や歯間清掃用具と組み合わせてのケアを提案いたします(図9)。
図9 インプラント治療ステップと推奨する予防用品
■臨床例
日本歯科大学新潟病院口腔インプラントセンターでの本品の使用症例をご紹介いたします。
症例①埋入手術・抜糸後(図10~12、USを使用)●症例解説
術野への積極的なブラッシング指導は行っていないが、縫合糸には汚染されにくい製品を使用。術後1週間の口腔内所見である。切開創の治癒は良好ではあるが、隣在歯歯頸側にプラークの付着が認められる(図10)。
●US使用による改善点
抜糸後1週間、歯肉の回復はほぼ良好(図12)。
図10 術後1週間-
図11 USで指導 -
図12 抜糸後1週間
●症例解説
歯肉移動術を併用して行った二次手術から1週間後抜糸時。術野隣在歯及びジンジバルフォーマーへのプラークの付着が認められる(図13)。
●US使用による改善点
ジンジバルフォーマー直上・辺縁部に対し、刷毛部先端(断端)が当たるよう指導する(図14)。抜糸後1週間、歯肉の回復はほぼ良好、清掃性の向上が認められた(図15)。
図13 術後1週間-
図14 USで指導 -
図15 抜糸後1週間
●症例解説
2 2を支台とした、インプラントブリッジ形態の上部構造である。ポンティック下部、舌側歯頸部へのプラーク付着(一部石灰化)及び出血を認める(図16)。以前は従来品EX onetuftを使用。
●OT使用による改善点
患者様より「安定が良くしっかり当たる感じ」との感想が得られた。清掃効果の向上は認められるが、上部構造、欠損の状況などによってはプロケアによるフォローが必要となる(図18)。
図16 上部構造装着後1週間-
図17 OTで指導 -
図18 指導後4週間
●症例解説
上部構造装着6年経過症例である(リコール期間は6ヵ月)。全顎的に歯頸部のプラーク残存が認められる。若干歯頸線の後退はあるものの健康歯肉を保っている。歯肉の炎症は認められない(図19)。
●TR使用による改善点
インプラント歴も長いことから、歯垢染色によりポイントを指摘、理解することにより歯頸部へのブラシのポジショニングが良くなった(図20)。また、OTを併用することにより、さらに清掃効果は向上した(図21)。
図19 リコール来院時-
図20 TRで指導 -
図21 指導後
■さいごに
今後もインプラントは材料、術式ともに進化を続けていくと思われます。弊社は今後もそれに対応したより使いやすい用具、効果のある製剤等の開発を進めていきたいと思います。本品が少しでもインプラントを埋入した患者様のお役に立てれば幸いです。
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