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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
我レーザーと戦えり<その8> -歯周病におけるレーザー治療の一つ- メンテナンスでの関わり
長瀬 隆之

■目 次

■はじめに

(今回の保険改正では、Er:YAGレーザーの硬組織蒸散能に対して認可されたことは非常に喜ばしいことです。できれば、これまでにもEr:YAGレーザーの歯周病に対する有効性が明らかにされてきているので、歯周病治療においても認可されるとよかったのですが…)Er:YAGレーザーが日本において認可され、モリタより発売されてからすでに12年以上になり、これまでに硬組織、軟組織におけるさまざまな症例に応用されるに至ってきています(図12)。また、それぞれの治療においてのエビデンスも確立されてきています。
私においては、モリタのアドベールの発売と同時に導入を行い、短い時間ではありますが、まさに「我レーザーと戦えり」の臨床の日々です。
皆さんも日常の臨床の中でよく遭遇すると思いますが、ブラッシング指導を一生懸命すればするほど患者さんが来なくなる、あるいは、お年を重ねるとブラッシングがうまくできなくなる、そんな患者さんに囲まれたときに、歯周治療として押し付けになりがちなブラッシング指導からの進め方でなく、全身的にも安全かつ患者さんに優しい治療は無いものかと考えたことはありませんか?
今回は、私の日々の臨床においてのレーザーによる歯周治療、またメンテナンスにおけるレーザーの関わりを、私なりの患者さんに対する医療のフレキシビリティな選択肢の一つとして提案させていただきます。

  • モリタ製のEr:YAGレーザーはチップが豊富に揃っている。
    図1 モリタ製のEr:YAGレーザーはチップが豊富に揃っている。
  • 使用症例の幅が広い。
    図2 使用症例の幅が広い。

■歯周ポケットの殺菌

う蝕も歯周病も細菌が原因であることは、周知の通りです(図3)。さらに、歯周病と全身疾患の関係も確立された事実です。つまり、我々の扱う疾患は感染症です。
私のクリニックでは、感染予防のため、より一層の院内改革を行っていますが、決してお口の中の殺菌はできません。ブラッシング、含嗽などでできるだけ口腔内をきれいにすることは可能かもしれませんが、歯周ポケット内部までをきれいにすることはなかなか簡単にはいきません。
『歯科なるほどホント学』(井上 孝/デンタルダイヤモンド社)という本の中にもありますが、口腔内の清掃が不良な中での乱雑なプロービング、スケーリングは治療とは逆行して人為的に菌血症を起こしてしまうのではないかと思ってしまいます。だからこそプロービング後、スケーリング後にレーザーによる歯周ポケット内の殺菌を行うことは、治療においても効果的であると考えます。
ブラッシングが一番大切なことは我々歯科医療に携わるものにとっては当たり前の事実です。しかし、歯周ポケットの殺菌がコントロールできれば、ブラッシングがうまくできない場合においても歯周治療をうまく進めることが可能になるのではないでしょうか?
そうすれば、歯周治療の方法として、①基本的な歯周治療、②抗菌薬を用いた歯周治療、③レーザーを用いた歯周治療、この3つを用意することで、さまざまな症例においてフレキシブルに対応できるのではと考えました。
今回はレーザーによる歯周治療の一つとして位相差顕微鏡(図4)により比較検討した症例を紹介いたします。
これまでに、臨床において基本治療後の治療にアドベールを用いて歯周ポケット内の細菌の殺菌を行ってきました。さらに、初診時よりアドベールを用いた歯周治療も行い、検討しています。
また、これまでにも歯科用レーザーにおける歯周ポケット内の細菌の殺菌、滅菌効果のエビデンスが確立されています(図5)。しかしながら、臨床家にとって安全かつ殺菌だけでなく、超音波的な洗浄効果を持ち合わせたEr:YAGレーザーアドベールは歯周病治療における歯科用レーザーの第一選択となり得ます。
次に示す症例では、C400F、P400T、S600Tのチップを使い分けています。
また、位相差の画像は動画から起こしているので見づらい点はご了承ください。

下のチャートエリアは横スクロールできます
  • 歯周病の原因菌、進行した歯周病には嫌気性桿菌・スピロヘータが多い。
    図3 歯周病の原因菌、進行した歯周病には嫌気性桿菌・スピロヘータが多い。
  • 観察には、オリンパス製の位相差顕微鏡を使用。
    図4 観察には、オリンパス製の位相差顕微鏡を使用。
  • 歯周病に対するEr:YAGの効果のエビデンスは確立されている。
    図5 歯周病に対するEr:YAGの効果のエビデンスは確立されている。

■症例供覧

<症例1>
初診時から口腔清掃状態が悪く、位相差顕微鏡下においても、歯周ポケット周囲の歯垢の細菌状態は、図3に示すように嫌気性桿菌やスピロヘーターが多く存在していました。
基本検査およびTBIを行い、基本歯周治療を行いました。一部の領域において改善傾向が少ない部位にEr:YAGレーザーアドベールをポケット内に30mj/10pps、P400Tにおいて照射を行い改善しました。
3ヵ月後には、口腔清掃状態の不良により再度ポケット周囲の細菌像は悪化しましたが、PMTCとレーザー照射により改善を図ることができました(図6-1~2)。
一つの処置で進めるよりも、より効果的に進めることができるのではと考え始めたときの症例です。

  • <症例1>初診時
    図6-1 <症例1>初診時
  • <症例1>レーザー照射後
    図6-2 <症例1>レーザー照射後

<症例2>図7-1~6
TBIがうまくいかないケースです。初診時より、歯肉周囲の歯垢、歯石の付着があり、位相差顕微鏡下においても歯周ポケット周囲の歯垢の中に桿菌、球菌、スピロヘータの存在が多く、活動も盛んであり、ブラッシングの習慣があまり無い症例です。ポケット内を40mj/20pps、P400TもしくはC400Fにてマイクロエクスプルージョン(図8)を利用した歯周ポケット内の超音波的な洗浄とレーザー照射を1週間に1回の回数で全歯牙に行いました(マイクロエクスプルージョンの効果により縁下の歯石も出てくる)。
3週目には歯垢の付着の低下および歯肉縁炎症の軽減と縁上歯石との境の明瞭化が生じたので、歯石除去をエアーソルフィー(図9)にて行い、さらにアドベールにより再度歯周ポケット内照射を同様に行うことにより、ブラッシングがうまくできない患者さんの歯周治療を進めることが可能になりました。
*すべての症例という訳ではありませんが、HYSがあり、初めからエアースケーラーを用いることが難しい患者さんにおいて、症例2のような治療の進め方を行うことにより、エアースケーラー時のHYSの症状を軽減するように感じています。

  • <症例2>初診時
    図7-1 <症例2>初診時
  • <症例2>初診時
    図7-2 <症例2>初診時
  • <症例2>レーザー照射後
    図7-3 <症例2>レーザー照射後
  • <症例2>Sc後
    図7-4 <症例2>Sc後
  • <症例2>終了時
    図7-5 <症例2>終了時
  • <症例2>終了時
    図7-6 <症例2>終了時
  • マイクロエクスプルージョン効果により歯石除去効果も期待できる。
    図8 マイクロエクスプルージョン効果により歯石除去効果も期待できる。
  • 衛生士からの評価も高いエアースケーラー(参考:dental magazin No.115)
    図9 衛生士からの評価も高いエアースケーラー(参考:dental magazin No.115)

<症例3>図10-1~4
症例2と同様に、あまり治療に前向きでなく、かつブラッシングもうまくできない患者さんです(ややうつ状態も感じられます)。
症例2と同様に、全歯牙のポケットに40mj/20pps、S600Tでレーザー照射を行いました。他の症例とあわせても平均すると2~3週の照射において口腔内の細菌叢の改善がみられます。そこで、再度衛生士による歯石除去とドクターによるレーザー照射によって歯周治療を進めると、なぜか歯垢の付着が少なくなるのを経験します。何度か細菌叢に後戻り的な位相差画像がみられることがありますが、肉眼的には歯肉の炎症が着実に改善していきます。
その後は、定期的なメンテナンスの必要性を説明することが大切です。なぜならば、ブラッシングによる歯垢の除去が歯周病治療の基本であるため、一時的にアドベールにより歯周状態が改善されてもブラッシングがうまくできない場合はメンテナンス(PMTC)が必須となります。

  • <症例3>初診時の口腔内
    図10-1 <症例3>初診時の口腔内
  • <症例3>初診時の位相差<br />歯磨きの習慣が無いようである。
    図10-2 <症例3>初診時の位相差
    歯磨きの習慣が無いようである。
  • <症例3>症例2と同様にレーザーによるポケット周囲および内にレーザー照射を2週行う。その後エアースケーラーにて歯石除去と照射。
    図10-3 <症例3>症例2と同様にレーザーによるポケット周囲および内にレーザー照射を2週行う。その後エアースケーラーにて歯石除去と照射。
  • <症例3>終了時口腔内はある程度きれいになっているが歯垢の付着はある。細菌叢は安定しているので、ブラッシング指導と定期的管理で維持を図る。
    図10-4 <症例3>終了時口腔内はある程度きれいになっているが歯垢の付着はある。細菌叢は安定しているので、ブラッシング指導と定期的管理で維持を図る。

<症例4>メンテナンス
予防に勝る治療は無いというように、現在我々の業界は、予防への取り組みが盛んに行われています。私のクリニックも同様であり、開業時には歯も磨いてこない患者が多く、予防、メンテナンスなんてことは考えませんでしたが、5~6年前より、クリニックの方針を変えて、患者のデンタルIQを上げ、メンテナンスの重要性を少しずつ浸透させていきました。そのなかでも活躍しているのがモリタのデントハイジェイア(図11)と歯科衛生士、そしてアドベールです。
極力苦痛を与えず、心地良さときちんとした管理の中でも患者の免疫能力、食生活、生活態度により歯周病は日々変化します。根分岐部の病変の変化やP急発がメンテナンス中も起こることがあります(図12-1~2)。その場合はレーザーによる処置の効果によって、患者の気持ちに、より一層メンテナンスへの重要性を植え付けます。
また、根分岐部、深いポケットなどのメンテナンス時の歯石除去、ポケット内の殺菌(図13-1~2)と効果を示すため、アドベールは衛生士からも高い評価を受けています。

  • モリタ製デントハイジェイアによって、定期的な管理を行う。
    図11 モリタ製デントハイジェイアによって、定期的な管理を行う。
  • <症例4>根分岐部の病変が変化したP急発症状がでてもEr:YAGにより局所の炎症を早期に改善できる。
    図12-1 <症例4>根分岐部の病変が変化したP急発症状がでてもEr:YAGにより局所の炎症を早期に改善できる。
  • <症例4>Er:YAGレーザーにより、局所の炎症を早期に改善できる。
    図12-2 <症例4>Er:YAGレーザーにより、局所の炎症を早期に改善できる。
  • <症例4>メンテナンス時の細菌叢の一時的悪化。
    図13-1 <症例4>メンテナンス時の細菌叢の一時的悪化。
  • <症例4>Er:YAGレーザーの照射とPMTCにより早期に改善可能。
    図13-2 <症例4>Er:YAGレーザーの照射とPMTCにより早期に改善可能。

■おわりに

今回はEr:YAGレーザーアドベールの歯周病治療への一つの方法と考えてください。まだまだ、アドベールには、歯石除去、歯周外科、など歯周病領域においてもさらに応用できるレーザーであるからです。
また、メンテナンスにおいてはインプラントへのメンテナンスに応用できるレーザーであることも付け加えておきます(我レーザーと戦えり<その3>参照)。

参考文献
  • 1)一からわかるレーザー歯科治療. 医歯薬出版.
  • 2)Er:YAGレーザーの歯周病原性菌に対する殺菌効果. 日歯周誌 第35巻2号.
  • 3)レーザーの歯周治療への応用. クインテッセンスVol17. No3.
  • 4)Er:YAGレーザーの歯周組織への応用. 歯科ジャーナル.
  • 4)プログレッシブテクニック臨床医のための歯周治療. 永末書店.