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126号 AUTUMN 目次を見る

TRENDS

微振動付与タイプ歯間ブラシ DENT.EX歯間ブラシ マイクロモーション

七浦 亨

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■目 次

■はじめに

DENT.EX 歯間ブラシマイクロモーション図1 DENT.EX 歯間ブラシマイクロモーション

歯間ブラシは単なる歯間清掃のみならず、歯周病の予防やメンテナンスに不可欠な用具として、今や口腔清掃用具の中でも重要な位置を占めるようなりました。
当初は歯ブラシによるブラッシングを補完する用具として、歯ブラシの毛先が届かない部位のプラーク除去に効果を発揮する用具とされていました。
しかし、歯間部が歯周病の好発部位であることから、歯周病の予防やメンテナンスなどに積極的に使用され、その効果が認識されるようになってきました。また最近は、専用の歯磨剤(図2)も登場し、ますます、この傾向に拍車がかかるものと推察されます(図3)。
しかしながら、この歯間ブラシも特に臼歯部では操作が難しく、その使用をあきらめているケースも多いとされています。そこで、歯間ブラシの操作が不得手な方にも手軽に使用できるよう、歯間ブラシの弱点克服を目的に、新たな歯間清掃用具の開発に着手しました。

  • システマ薬用歯間ジェル
    図2 システマ薬用歯間ジェル
    歯間ブラシと一緒に使用できる研磨剤無配合のジェルタイプ歯磨剤。殺菌剤と抗炎症剤が配合され、歯周病の予防に効果を発揮します。
  • 歯間清掃用具の使用状況
    図3 歯間清掃用具の使用状況
    「健康日本21」では、歯周病のリスク低減のため歯間清掃用具使用率の向上を具体的目標として掲げていますが、中間報告書では、初期(2000年)に比べ、2006年ではおよそ2倍の使用率となっています。

■歯間ブラシの歴史

いまや当たり前のように使用されている歯間ブラシですが、現在の形状に至るまでには様々な変遷がありました。
その歴史を振り返りながら、歯間ブラシの弱点について述べてみたいと思います。
当社の歯科用歯間ブラシは発売以来23年の歴史があります。当初はブラシチップをホルダーに取り付けるロングタイプのみでしたが、次いで手軽に使用できるショートタイプが導入されました。当時はいずれのタイプもブラシワイヤー素材に通常のステンレスが用いられていましたが、特にショートタイプは、臼歯部ではブラシネック部を曲げて使用していたことから、ワイヤーが金属疲労を起して折れやすいものでした(図4)。そこでネック部を柔軟性樹脂で被覆し(図5)、この部分を曲げることでワイヤーにかかる負荷を軽減しようとしました。
しかしながら、被覆部分が小さく、また樹脂が固いこともあって十分な角度に曲げることができなかったり、やはりワイヤー基部に負荷がかかってしまうなど、根本的な解決には至りませんでした。
これを受け、次にワイヤー素材そのものの見直しに着手しました。そしてステンレスの3倍の耐久性があり、かつブラシへの加工が可能な超合金素材を見出し、また、ブラシネック部には臼歯部に使用し易いようL字型ネックを採用することで、耐久性と使用性の向上を図りました(図6)。
これは当時の歯間ブラシ市場においては革命的な出来事であり、臼歯部での使用性が大きく改善されたことからショートタイプへの信頼性が飛躍的に向上し、従来ほぼ半々だったロングタイプとショートタイプの販売比率は徐々にショートタイプにシフトし、これと相まって歯間ブラシの普及率は急速に拡大していきました。
その後、さらなる使用性の向上等を目指してホルダーサイズの変更を行い、現在の仕様(図7)に至っております。

  • 初期の製品
    図4 初期の製品
    ショートタイプを臼歯部に使用する場合はネック部のワイヤーを曲げて使用していたため、繰り返しの曲げ伸ばしで金属疲労が生じ、ワイヤーがすぐに折れてしまいました。
  • 改良ショートタイプ①
    図5 改良ショートタイプ①
    ショートタイプのネック部を柔軟性樹脂で被覆し、この部分を曲げることでワイヤーにかかる負荷を軽減しました。
  • 改良ショートタイプ②
    図6 改良ショートタイプ②
    ワイヤー素材に超合金を採用し、さらにブラシネック部をL字型にすることで、ワイヤー耐久性と臼歯部での使用性の向上を図りました。
  • 現行製品
    図7 現行製品
    ロングタイプ、ショートタイプ共に、ホルダー仕様を再検証し、手指になじみやすい大きさと仕様に変更しました。

■現状の問題点

このように、歯間ブラシはより使いやすい形に向けて改良を重ねてきましたが、それでも臼歯部に使用する場合、まだまだ使いづらいと思われる方が多いようです。
それは、臼歯部の歯間はやや幅があり、歯牙の状態によってはブラシが真っ直ぐに挿入できず、さらにはブラシを細かく動かす(ストロークする)ことができないことに起因するものと考えられます。また、このような状況で無理にブラシを動かそうとすると、ブラシ部に負荷がかかり、ブラシが曲がったり、ブラシ基部が金属疲労で折れてしまったり、やがては歯肉を傷つけてしまう恐れがあります。
歯間ブラシの使用においては、歯頸部にブラシの毛先を的確に当て、毛先を細かく動かして付着したプラークを除去しますが、そのためには歯頸部に当てるブラシの向きや角度を微妙に調整しながら細かくブラシをストロークさせる必要があり、この操作が臼歯部では大変難しいと言われています。

■微振動の付与

この問題を解決したのが、「DENT.EX歯間ブラシマイクロモーション」(図8)です。
歯間ブラシの操作で難しいのは、目的とする部位にブラシの毛先をきちんと当ててブラシを前後にストロークすることです。
すなわち、ブラシの毛先を狙った部位にきちんと当てることと、ブラシを前後に動かしながらプラークを除去する操作を同時に行わなければならず、特に臼歯部では大変難しい操作となってしまいます。
マイクロモーションは、ハンドル中央部に偏芯モーター(7000回転/分)を内蔵し、これを回転させることで発生する微振動をブラシ部に伝達する機構となっています。
これによりブラシは細かく振動しながらプラークに接触し、これを浮き立たせていくことから、ブラシを大きくストロークする必要がなくなりました。
その結果、ブラシの向きや角度のコントロールに集中できるようになり、またブラシが曲がったり歯間部から外れにくくなったことから歯肉を傷めることもなく、誰でも簡単で的確なプラークコントロールが可能となりました。
さらにネック部には、歯間清掃の動きを徹底検証して生み出したアーチ型のフォルムを採用したことから、特に臼歯部舌側からの挿入性が飛躍的に向上し、またブラシ挿入部位を目視で確認しやすくなっています(図9)。

  • DENT.EX歯間ブラシマイクロモーション
    図8 DENT.EX歯間ブラシマイクロモーション
    ハンドル中央部に内蔵された偏芯モーターにより発生する微振動がプラーク除去に効果的に働きます。
    電源:DC1.5V(単4乾電池1本)
    外形寸法:W27×D25×H155mm
  • マイクロモーションを舌側から使用
    図9 マイクロモーションを舌側から使用
    アーチ型のネック部が、舌側からの使用を容易にしました。

■マイクロモーションの特長

「DENT.EX歯間ブラシマイクロモーション」の特長をまとめると以下のようになります。

特長①:ブラシに微振動を付与することで、プラークコントロールが容易になりました。
ブラシに偏芯モーター(7000回転/分)による微振動を与えることで、ブラシの毛先がプラークを浮き立たせ、ブラシを前後に大きくストロークしなくてもプラークが除去できます。また、ストロークが不要なのでブラシの向きや角度に集中でき、的確なプラークコントロールが可能となりました。

特長②:歯間清掃の動きを徹底検証して生み出した最適なフォルムを採用。
アーチ型のネック部は臼歯部に使用するときに煩を排除し、ブラシを挿入しやすくなりました。合わせてブラシ挿入部の目視確認が容易になり、特に舌側の歯間部において的確なブラッシングが可能となりました。また、手にフィットする適度な太さのハンドルなので、高齢者など手指機能がやや衰えた場合でも、ブラシの向きなど細かい調整が可能です。

特長③:操作しづらい臼歯部でも、誰でも安全に歯間ケアを行うことができます。
無理なストロークを行わなくて済むので、歯や歯肉に過度な負担をかけることはありません。また、スイッチ位置をハンドル中央部としたことで、振動のON/OFFに即座に対応でき、安全に歯間ケアを行うことができます。

■マイクロモーションの使用方法

本製品はブラシが微振動していることから、歯間部の歯肉などを傷めないよう、その使用にあたっては慎重な対応が必要となります。ポイントは歯間の大きさよりやや小さめのブラシを選択することです。
歯間空隙より大きいブラシを挿入したのではブラシの振動が抑えられてしまうばかりか、歯肉に無理な力が加わり、歯肉を傷めてしまう可能性があります。目的とする部位にブラシの毛先を順次当て、小刻みにプラークを除去していくのが効果的な使用法です。
なお、マイクロモーションには専用の替えブラシとして、6タイプが用意されています(図10)。
図11にマイクロモーションの使用法を示します。また使用時に歯間ジェルを用いたり、使用後にデンタルリンスを使用するとより効果的です。

  • 6タイプの替えブラシ
    図10 6タイプの替えブラシ
  • マイクロモーションの使用方法
    図11 マイクロモーションの使用方法

■臨床的評価

マイクロモーションを以下の症例に使用し、その効果を確認しました。

症例A:68歳 女性
全体的に歯ブラシの毛先が当たらない部位に軽度の発赤、腫脹が認められる症例です。
使用前は歯肉辺縁に発赤や腫脹が認められましたが(図12)、一日1回、2週間継続してご使用頂いたところ、歯周ポケットの改善は認められませんでしたが、発赤や腫脹の改善が認められました(図13)。
またプラークが除去しにくいブリッジの支台歯周辺のプラークが除去されています(図1415)。

  • マイクロモーション使用前 歯肉辺縁 発赤(+) 腫脹(+)
    図12 マイクロモーション使用前
    歯肉辺縁 発赤(+) 腫脹(+)
  • マイクロモーション使用2週間後 歯周ポケットの改善は認められないものの、発赤(-) 腫脹(-)に改善しました。
    図13 マイクロモーション使用2週間後
    歯周ポケットの改善は認められないものの、発赤(-) 腫脹(-)に改善しました。
  • マイクロモーション使用前 ブリッジ支台歯周辺にプラークが付着
    図14 マイクロモーション使用前
    ブリッジ支台歯周辺にプラークが付着
  • マイクロモーション使用後 マイクロモーションの使用により、除去しにくいブリッジの支台歯周辺のプラークが除去されています。
    図15 マイクロモーション使用後
    マイクロモーションの使用により、除去しにくいブリッジの支台歯周辺のプラークが除去されています。

症例B:38歳 女性
繊維性歯肉で、顕著な発赤は認められませんが、臼歯部を中心に深い歯周ポケットが点在する症例です(図16)。
歯列不正のため歯間形態が複雑になっており、普段はブラッシングとフロッシングを行っていました。
一日1回、2週間継続してご使用頂いたところ、歯周ポケットの深さは変わりませんでしたが、全体的に出血や炎症の改善が認められました(図17)。

  • マイクロモーション使用前 歯肉辺縁 発赤(+) 腫脹(+)
    図16 マイクロモーション使用前
    歯肉辺縁 発赤(+) 腫脹(+)
  • マイクロモーション使用2週間後 歯周ポケットの深さは変わりませんが、全体的に出血と炎症の改善が認められました。
    図17 マイクロモーション使用2週間後
    歯周ポケットの深さは変わりませんが、全体的に出血と炎症の改善が認められました。

■おわりに

今回開発したマイクロモーションは、微振動を付与したことでブラシを大きくストロークする必要がなくなったことから、歯間ブラシがうまく使えず、その使用をあきらめていた方に大変有用であることがお分かり頂けると思います。
また、ハンドルやネック部の形状も加味すると、次のようなケースにも大変効果的であると考えられます。

  1. ①歯列不正部位など、歯間ブラシの挿入が難しい部位での使用。
    目的とする歯間にブラシを挿入することができれば、あとは振動を加えながら、ブラシの向きや角度を調整するだけで、歯間部をケアすることができます。
  2. ②歯周病の予防や、歯周病治療後のメンテナンスで、歯間ブラシを長時間使用する場合。
    ブラシが振動するので、短時間でのプラークコントロールが可能になります。
  3. ③歯間ブラシによる口腔ケアが効果的な場合。
    介助者が要介護者の口腔内で歯間ブラシを使用する場合も、ブラシを大きく動かす必要がないので、安全に効率よくケアを行うことができます。

このように、微振動と特長的な形状を兼ね備えたマイクロモーションは、歯間ブラシの口腔ケア用具としての可能性を大きく広げたものといえます。

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