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TECHNICAL HINT

『支台築造用ファイバーポスト・コア『i-TFCシステム』を用いたレジン支台築造』

邑田 歳幸

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■目 次

■1. はじめに

ファイバーポスト併用レジン支台築造は歯根破折の防止効果が高いことや、歯肉縁周辺の審美性が高いことなどから臨床に多く用いられるようになってきている。
2007年6月に日本国内で第5番目に薬事認可を受けたファイバーポストとして「i-TFCシステム」(サンメディカル)が発売された。
「i-TFCシステム」は、すでに発売されているファイバーポストやそれに用いる支台築造用コンポジットレジンと同様に、①築造体の曲げ弾性率を象牙質に近似させたことにより、歯根内部の応力集中を軽減できる、②審美性に優れているため、特にオールセラミッククラウンを用いた症例に有用である、などの特長を有するが、さらに③ファイバーポストにスリーブを装着することで太い根管や漏斗状の根管孔にも対応でき機械的強度の向上を図ることができる、④ファイバーポスト中心部にステンレスワイヤーを有する設計により再根管治療時のアクセスのガイドになる、など従来にはない特長をもっている。
本稿では、本誌ですでに紹介した「スピーディに作るファイバーポスト併用レジン支台築造」(2007/120号)の製作術式を「i-TFCシステム」に応用し、その技工の要点を紹介する。

■2.「i-TFCシステム」の概要

本システムはin-situ Treatment Filling and Core Systemの頭文字からネーミングされたもので、根管治療から根管充塡、支台築造を一度で行うシステムとして考案された支台築造用材料である。
システムセットには、フィラーの含有率を変えることにより、弾性率と圧縮率が異なる光重合型のコアレジンとポストレジンの2種類のコンポジットレジンがある。ファイバーポストはステンレスワイヤーを内蔵するi-TFCポストと円筒状のi-TFCスリーブがあり、両者ともMMA系モノマーを含浸硬化させたグラスファイバー編込み繊維束である。
このシステムを用いて製作する場合の重要な点は、ポスト及びスリーブには必ずポストレジンを一層コーティングした後、コアレジンを築盛して一体化を図ることである。
ポストレジンをコーティングすることで、ポストとコアレジンとの界面に集中する応力を拡散する効果があり、コアレジンを築盛する際にも、その未重合層によりなじみやすく、操作性も優れている(図14)。
製作に際しては、まず口腔内で採得したテンポラリークラウンの唇側面シリコーンコアを参考に支台築造の概形を回復する。次にワックスパターンの唇側及び隣接面のシリコーンコアを採得し、その陰型内にi-TFCポストとスリーブを位置させ、コアレジンを圧接して完成するのが本術式の概要である。経験の浅い術者であってもスピーディに製作することができる術式である(図56)。

  • i-TFCシステムのセット。①コアレジン、②ポストレジン、③ i-TFCポスト、④ 同スリーブ。分離材として⑤スーパーボンセップも用意されている。
    図1 i-TFCシステムのセット。コアレジン、ポストレジン、 i-TFCポスト、 同スリーブ。分離材としてスーパーボンドセップも用意されている。
  • 太い根管やテーパーを有する根管にはi-TFCポストにi-TFCスリーブを併用することで機械的強度を有するレジン支台築造を作することができる。
    図2 太い根管やテーパーを有する根管にはi-TFCポストにi-TFCスリーブを併用することで機械的強度を有するレジン支台築造を製作することができる。
  • ポスト孔内に注入するポストレジンは流動性に優れ気泡の混入がなく、光透過性の高い透明色のため光重合時の硬化にも優れている。
    図3 ポスト孔内に注入するポストレジンは流動性に優れ気泡の混入がなく、光透過性の高い透明色のため光重合時の硬化にも優れている。
  • 築造体部を形成するためのコアレジンは前装用レジンと似たペーストタイプで、インスツルメントでの付形性に優れ、シリーンコアを用いた圧接もできる。
    図4 築造体部を形成するためのコアレジンは前装用レジンと似たペーストタイプで、インスツルメントでの付形性に優れ、シリコーンコアを用いた圧接もできる。
  • 口腔内で採得したシリコーンコアを参考に支台築造のワックスアップを行う。築造体部のみワックスアップして外形を回復すればよい。
    図5 口腔内で採得したシリコーンコアを参考に支台築造のワックスアップを行う。築造体部のみワックスアップして外形を回復すればよい。

  • 図6 ワックスパターン完成後、両隣接面を含むシリコーンコアを採得する。隣接面形態を再現することで舌側凹面形態を付与する際の目安とすることができる。

■3.「i-TFCシステム」の製作術式

1)i-TFCポストとスリーブの試適と固定

作業用模型への試適を終えたi-TFCポストとスリーブは必ずスチーム洗浄またはアルコール清拭を行い、リリーフワックスや手指の油脂分を完全に取り除くことが重要である。
編込み繊維束にはMMA系モノマーが含浸しているため、特にシランカップリング処理は不要である。
図6のシリコーンコアにi-TFCポストを固定するためのガイドグループを、フィッシャーバーを用いて形成しておく。
まずポスト孔内に付属のニードルチップを用いてポストレジンを注入する。その際、ポストレジンがポスト孔から溢れすぎると築造体外表面に露出するおそれがあるため控えめに注入することが大切である。
i-TFCポストとスリーブを併用して用いる場合、スリーブ内にポストレジンを注入後、ゆっくりと回転挿入してポストとスリーブの界面にポストレジンがむらなく満たされた状態で一体化すべきである。ポストを直線的に一気に挿入するとポストレジンを押し出してしまう危険性がある。
シリコーンコアを用いてポスト孔内で位置関係を決定し光照射した後、前述したようにポストレジンをポストとスリーブに薄くコーティングする(図711)。

  • ポスト孔と開口部をワックスで一層リリーフした後、シリコーンコアのガイドグルーブにi-TFCポストを試適し位置関係の確認を行う。
    図7 ポスト孔と開口部をワックスで一層リリーフした後、シリコーンコアのガイドグルーブにi-TFCポストを試適し位置関係の確認を行う。
  • ポスト孔内にポストレジンを注入する。ニードルチップ先端をポスト孔底部まで挿入した後、レジンを押し出しながらゆっくりと引き上げれば気泡の混入がない。
    図8 ポスト孔内にポストレジンを注入する。ニードルチップ先端をポスト孔底部まで挿入した後、レジンを押し出しながらゆっくりと引き上げれば気泡の混入がない。
  • 試適後にスチーム洗浄もしくはアルコール清拭を行う。スリーブ内にポストレジンを注入した後、ポストをゆっくりと回転挿入する。
    図9 試適後にスチーム洗浄もしくはアルコール清拭を行う。スリーブ内にポストレジンを注入した後、ポストをゆっくりと回転挿入する。
  • i-TFCポストとスリーブをポスト孔に挿入する。スリーブの浮き上がりをピンセットで修正し、シリコーンコアを適合させ光照射して固定する。
    図10 i-TFCポストとスリーブをポスト孔に挿入する。スリーブの浮き上がりをピンセットで修正し、シリコーンコアを適合させ光照射して固定する。
  • i-TFCポストとスリーブに一層のポストレジンをコーティングし光照射する。ニードルチップをそのまま使用できるため、短時間で適量のレジンをコーティングすることができる。
    図11 i-TFCポストとスリーブに一層のポストレジンをコーティングし光照射する。ニードルチップをそのまま使用できるため、短時間で適量のレジンをコーティングすることができる。

2)コアレジンの圧接と築盛

コアレジンは既存する築造用レジンとは異なり、前装用硬質レジンと似た粘性を有するため、シリコーンコア等を用いた圧接による成形法が適している。
また、ペーストタイプのため、シリコーンコアと作業用模型の隙間などから漏れ出ることがなく、光重合方式を採用しているため、操作時間にゆとりがあり、作業効率も優れている(図1214)。

  • 次いでシリコーンコアに盛り付けておいたコアレジンを模型とガイドグルーブに適合させて位置関係を決定した後、舌面形態を付与し光照射を行う。
    図12 次いでシリコーンコアに盛り付けておいたコアレジンを模型とガイドグルーブに適合させて位置関係を決定した後、舌面形態を付与し光照射を行う。
  • シリコーンコアを撤去すると築造外形がほぼ完成している。舌側から最深部にあたる唇側マージン付近の未重合を防止するため、唇側面からも光照射を行う。
    図13 シリコーンコアを撤去すると築造外形がほぼ完成している。舌側から最深部にあたる唇側マージン付近の未重合を防止するため、唇側面からも光照射を行う。
  • 試適後にスチーム洗浄もしくはアルコール清拭を行う。スリーブ内にポストレジンを注入した後、ポストをゆっくりと回転挿入する。
    図14 ポストレジンは光透過性に優れ、ポスト深部まで重合硬化しているが、作業用模型から撤去した後、再度ポスト部にも光照射して確実に重合させる。

3)追加修正時の表面処理

本症例の製作過程で唇側マージンにわずかに溢れたポストレジンを見落としてコアレジンを圧接し光重合した結果、築造体部の表面にポストレジンが露出してしまった(図13矢印)。ポストレジンはコアレジンに比べ、機械的強度と弾性係数が異なることから削除して修正する必要がある。
まず、露出したポストレジンをカーボランダムポイントで削除し、新鮮面をスチーム洗浄する。次にスーパーボンド表面処理材レッド(サンメディカル)を用いてエッチング処理後、ポーセレンライナーM(サンメディカル)によるシラン処理を行い、コアレジンを追加築盛して完成する(図1516)。

  • コアレジンの修正を必要とする場合は新鮮面を形成しエッチング処理した後、ポーセレンライナーMでシラン処理を行いレジンを追加する。
    図15 コアレジンの修正を必要とする場合は新鮮面を形成しエッチング処理した後、ポーセレンライナーMでシラン処理を行いレジンを追加する。
  • 完成したi-TFCシステムによるレジン支台築造。築造体切縁にワイヤーが位置している。中心部にはi-TFCポストとスリーブが透過して認められる。
    図16 完成したi-TFCシステムによるレジン支台築造。築造体切縁にワイヤーが位置している。中心部にはi-TFCポストとスリーブが透過して認められる。

4)レジン支台築造の口腔内接着

完成したレジン支台築造は口腔内試適後、スチーム洗浄もしくはアルコールによる清拭をして清浄な接着面とすることが重要である。根管内壁を接着処理後、支台築造のポスト部には、追加修正時と同様にエッチング処理とシラン処理を行った後、スーパーボンド(サンメディカル)を用いて接着した(図1718)。

  • 歯面処理後、築造体ポスト部にはエッチング処理とシラン処理を行い、スーパーボンドを用いて接着し再形成を行った( 2 1:i-TFCシステム)。
    図17 歯面処理後、築造体ポスト部にはエッチング処理とシラン処理を行い、スーパーボンドを用いて接着し再形成を行った( 21 :i-TFCシステム)。
  • 最終補綴物として装着されたオールセラミッククラウン。
    図18 最終補綴物として装着されたオールセラミッククラウン。

■4. おわりに

「i-TFCシステム」はファイバーポストとスリーブを二重構造にして、レジン支台築造により高い機械的強度を付与し、ワイヤー内蔵による再根管治療時の対応までを考慮した新しいコンセプトに基づいている。
シリコーンコアを用いてレジン支台築造をスピーディに製作する術式は、i-TFCポストとスリーブの位置関係を決定する際やコアレジンを圧接したりする際に効果的で作業効率の面からも優れていると言える。被着面の清浄化や表面処理など接着の基本を遵守して日常の臨床に試みていただきたいと思う。

参考文献
  • 1) 邑田歳幸:スピーディに作るファイバーポスト併用レジン支台築造.デンタルマガジン, 120 spring, 60~62, 2007.
  • 2) 真坂信夫:i-TFCシステムの誕生とその臨床1.i-TFCシステムの完成まで, 日本歯科評論, vol.68 NO.1, 125~134, 2008.
  • 3) 真坂信夫:i-TFCシステムの誕生とその臨床2.i-TFCシステムの臨床, 日本歯科評論, vol.68 NO.2, 109~120, 2008.
  • 4) 邑田歳幸、坪田有史、福島俊士:ファイバーポストを用いたレジン支台築造の製作術式. QDT, 29(4), 21~29, 2004.

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