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127号 WINTER 目次を見る

TECHNICAL HINT

各種症例に対応した ノリタケ カタナ ジルコニアフレームについて / インプラント間の分割を必要としない カタナジルコニアフレームの製作方法

株式会社ノリタケデンタルサプライ

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■目 次

各種症例に対応した
ノリタケカタナジルコニアフレームデザインについて

■はじめに

近年、各社のCAD/CAMシステムの進歩も著しく、歯科業界でのジルコニア市場は成熟期に入ってきた感があります。確かにジルコニアという素材は、いろいろな可能性を秘めたすばらしいマテリアルであり、有効に活用するためにはジルコニアを取り巻く他のマテリアルの特性を十分に理解しなければならず、特に気をつけるべき点は、ジルコニアフレーム上に焼付けたポーセレンの破折・脱離などのトラブルです。
従来のメタルセラミッククラウンでも起こっていたこれらの問題は、以下に列記したようなデザインをメタルフレームに付与することによって可及的に防止・排除してきました。

  1. 1)十分な陶材築盛層がある。
  2. 2)陶材築盛層を可及的に均一にする。
  3. 3)築盛面は鋭利・角張ったりしないよう、なめらかな曲面に形成する。
  4. 4)可能なかぎりフレームは厚くする。
  5. 5)フィニッシュライン部はサポーティングエリアを確保し、バットジョイント形態を付与する。
  6. 6)咬合接触部に陶材-フレーム接合部を設けない。

しかし、ジルコニアの抗折強度が1,000~1,200MPaに対して、レイヤリング・ポーセレンの強度は従来のメタルセラミックス用ポーセレンと同程度のため、臨床応用するためにはメタルセラミックフレームと同様な適切な形状のフレームデザインが必要であると考えます。
そこで、ノリタケカタナシステムでは、ジルコニアの特性を十二分に生かして「安全」「確実」に日々の臨床に使用できるような4タイプのデザインフレームの選択が可能となっています。

コーピングデザイン

1)ならい形状
支台歯形状に均一な厚み(前歯部0.4mm 以上、臼歯部0.5mm以上)で製作したフレームです(図13)。

  • トリミング後の支台歯の状態:レーザー光の乱反射による計測エラーを防ぐため、セメントスペーサー、表面硬化剤等の使用不可。またマージンラインも印記しない。
    図1 トリミング後の支台歯の状態:レーザー光の乱反射による計測エラーを防ぐため、セメントスペーサー、表面硬化剤等の使用不可。またマージンラインも印記しない。
  • 設計画面:スキャニング後CAD画面上でマージン・セメントスペース・フレームの厚み設定を行う。
    図2 設計画面:スキャニング後CAD画面上でマージン・セメントスペース・フレームの厚み設定を行う。

  • 図3 実際にならい形状デザインで製作したカタナフレーム:前歯部0.4mm以上、臼歯部0.5mm以上での製作が可能。

2)サポート形状
従来のメタルボンドの舌側メタルカラーと同様に、隣接~舌側にかけてジルコニアカラーを付与したデザイン。
特に臼歯部においての対合歯の垂直的咬合圧による近遠心・舌側付近の破損・脱離の防止に有効です。
また、従来のメタルセラミックスクラウンの舌側カラー部における金属色の露出も、ノリタケカタナシステムのカラージルコニアを使用することにより、審美的にも改善すると思われます(図46)。

  • レーザーによる光学印象前の支台歯:上顎臼歯部での舌側口頭隣接歯・支台歯間に大きくスペースがあり、陶材築盛量が多くなると推測できる支台歯形成。
    図4 レーザーによる光学印象前の支台歯:上顎臼歯部での舌側口頭隣接歯・支台歯間に大きくスペースがあり、陶材築盛量が多くなると推測できる支台歯形成。
  • 設計画面:光学印象及びマージン・スペーサー設定後のサポート形状デザインのカタナCAD画像。
    図5 設計画面:光学印象及びマージン・スペーサー設定後のサポート形状デザインのカタナCAD画像。

  • 図6 隣接~舌側にバンド状のリンガルサポートを付与したフレーム:隣接・舌側にサポーティングエリアを付与することで、咬合圧による陶材へのせん断応力の軽減が期待できる。また、カラージルコニアを使用してメタルセラミックの金属色よりリンガルサポートを目立たなくすることができる。

3)シュリンク形状
CADソフトの自動設計により最終形態をデザインし、ジルコニア用ポーセレンに必要なスペース分(1.2~1.5mm)を全体的に均一にシュリンク(収縮)させたデザイン。
陶材築盛量が多くなる(1.5mm以上)と推測される「短い」・「細い」形成の支台歯に有効です。
ただし、最低厚み(前歯部0.4mm、臼歯部0.5mm)以下のシュリンクデザインは不可になります(図711)。

  • 上顎中切歯補綴の症例:このような削除量の多い、細く・短い形成の場合、シュリンクデザインがたいへん有効である。※模型に描記されているマージンラインはスキャニング終了後に記入する。
    図7 上顎中切歯補綴の症例:このような削除量の多い、細く・短い形成の場合、シュリンクデザインがたいへん有効である。
    ※模型に描記されているマージンラインはスキャニング終了後に記入する。
  • ならい形状で設計した画面。支台歯が細く、短いためポーセレン築盛スペースが多くなってしまう。
    図8 ならい形状で設計した画面。支台歯が細く、短いためポーセレン築盛スペースが多くなってしまう。
  • 設計画面上で予想される最終補綴形態を設計した状態:隣接歯・対合歯を合わせてスキャニングすることにより、より正確な最終補綴形態を設計することができる。
    図9 設計画面上で予想される最終補綴形態を設計した状態:隣接歯・対合歯を合わせてスキャニングすることにより、より正確な最終補綴形態を設計することができる。
  • 設計画面上で最終形態より設定数値(1.2~1.5mm)で全体的に均一にシュリンク(収縮)した状態。
    図10 設計画面上で最終形態より設定数値(1.2~1.5mm)で全体的に均一にシュリンク(収縮)した状態。
  • シュリンクデザインで製作したジルコニアフレーム:全体的に均一な厚みで陶材築盛をおこなえるフレームデザインになっている。
    図11 シュリンクデザインで製作したジルコニアフレーム:全体的に均一な厚みで陶材築盛をおこなえるフレームデザインになっている。

4)Dスキャン
ユーザー製作によるワックスフレームをスキャンし、可能な限り忠実にジルコニアフレームを製作します。インプラント症例等の複雑な形状のブリッジフレームやジルコニアのみで咬合接触面の一部を再現するベニアタイプのフレームに有効です(注:ノリタケではジルコニアが露出する箇所にグレージングパウダーでの被覆を推奨しています)。これらのフレームは広範囲にわたって陶材が被覆されないため、その色調に合ったカラージルコニアを使用することにより、審美的にも有効です。また、カタナジルコニアフレームはジルコニアパウダー自体に色付けされていますので、調整・研磨を行っても色調変化なく使用することができます(図1215)。
インプラントアバットメント上へのジルコニアフレームを製作する際、本項で用いている非分割式の作業模型での製作については、次項をご参照ください。

  • インプラント症例等の多数歯補綴でのデザインフレームにはワックスパターンを使用したDスキャンが有効である。
    図12 インプラント症例等の多数歯補綴でのデザインフレームにはワックスパターンを使用したDスキャンが有効である。
  • ワックスアップ:インプラントアバットメント上にフレーム形状のワックスアップを行い、反射防止処理(スプレー)を施した後スキャニングを行う。
    図13 ワックスアップ:インプラントアバットメント上にフレーム形状のワックスアップを行い、反射防止処理(スプレー)を施した後スキャニングを行う。
  • 設計画面:ワックスフレームとほぼ同形のスキャニングデータが読み込まれる。この後、マージン・セメントスペーサー設定をおこない、加工ステップへと移行する。
    図14 設計画面:ワックスフレームとほぼ同形のスキャニングデータが読み込まれる。この後、マージン・セメントスペーサー設定をおこない、加工ステップへと移行する。
  • Dスキャンデザインで製作したジルコニアフレーム:ワックスパターンと比較しても、ほぼ同形同大のジルコニアフレームになっていることがわかる。
    図15 Dスキャンデザインで製作したジルコニアフレーム:ワックスパターンと比較しても、ほぼ同形同大のジルコニアフレームになっていることがわかる。
  • カタナジルコニアフレーム カラーバリエーション
    カタナジルコニアフレーム カラーバリエーション

■おわりに

ジルコニア・オールセラミッククラウンは、高強度であるが故に多岐にわたる臨床例への対応が可能です。
そのため、従来のメタルセラミッククラウン製作時に技工作業上、考慮していたフレームデザインの基本的なルールについて今一度見直していただき、ジルコニアフレームを使用する際にも細部に渡り考慮し、破損や脱離等のトラブルを可及的に回避することによって、口腔内において長期的に安定したジルコニア・オールセラミッククラウンの製作が可能になると確信します。

インプラント間の分割を必要としない
カタナジルコニアフレームの製作方法

■はじめに

カタナジルコニアフレームの適合精度向上を目指し、新たにインプラントアバットメント上へのジルコニアフレーム製作に関し、以下の規定に沿い非分割式の作業用模型への対応を開始させていただきます。
ノリタケカタナジルコニアフレームはカタナプロダクションセンターに模型をお送りいただき、製作を行い、お届けします。
ご発注いただくためには事前登録が必要となります。登録についてはお出入りの歯科商店様、または最寄りの(株)モリタにご連絡いただき、登録用紙をご請求ください。

■サービスの概要

  1. ①非分割式(アバットメント間)の作業用模型でのジルコニアフレームの製作が可能。
  2. ②フレームデザインは「D-スキャン」のみの対応可能(料金はD-スキャンの料金を適用させていただきます)。

■作業手順(諸注意)

  1. ①作業用模型は分割復位式模型(ダウエルピン模型)を製作してください。
  2. ②インプラント部位(ブリッジもしくは連結冠単位で)は、2次模型に固定して頂いて結構ですが、隣在歯列部及び残存歯牙にはダウエルピンを植立し、2次模型から取り外せるようにしてください。
  3. ③アバットメント上(上部構造体)のマージン部が歯肉縁下に設定される場合は、ガム模型などの処置を施すか、もしくは周辺の石膏を必ず削除しておいてください(スキャニング時に干渉する部分は、プロダクションセンターにて削除する場合があります)。
  4. ④当社が指定する方法にて、各自にて製作したジグインデックス(リポジショニングインデックス)を同封願います。
  5. ⑤アバットメント形状の条件として
    • ・テーパーは4°以上を付与すること。
    • ・シャンファー形態にマージン部を形成すること(ショートマージンの防止)。
    • ・回転防止面の付与(できるだけ大きめの面を付与)。
    • ・切端(先端)部は、できる限り丸めた形態とすること。

模型製作方法例
インプラント(アバットメント)間の分割は必要ありませんが、隣在歯との分割はお願いします。インプラントサイド、隣在歯サイドのどちらかが二次模型に固定されていても構いません。



ジグインデックス(リポジショニングインデックス)の製作方法例
プロダクションセンターにてアバットメントを取り外す必要があるため、正確な位置に戻す際に使用します。過不足が生じている場合はセンターにて修正する場合がありますので、あらかじめご了承ください。

  • ①アクセスホール部分を除いて、マージンから全周にレジンを築盛します。硬化後、レジンコーピングが着脱できることを確認してください。
    ①アクセスホール部分を除いて、マージンから全周にレジンを築盛します。硬化後、レジンコーピングが着脱できることを確認してください。
  • ②レジンコーピングを連結します。出来れば、隣在歯へ延長し、固定元にすると更に精度が向上します。
    ②レジンコーピングを連結します。出来れば、隣在歯へ延長し、固定元にすると更に精度が向上します。
  • ③Dスキャン用ワックスフレームの製作。
    ③Dスキャン用ワックスフレームの製作。
  • ④Dスキャン通りに完成したカタナジルコニアコーピング。
    ④Dスキャン通りに完成したカタナジルコニアコーピング。

※記載した諸条件以外で、模型の状態やアバットメントの形成状態などによっては製作できない場合もございます。

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