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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

TRENDS
硬質リライン材「クラリベース」
村田比呂司/黒木唯文/加納 拓

■ はじめに

義歯を長期にわたり使用すると、顎堤の吸収により義歯床粘膜面と床下粘膜との適合性は低下する。このことは義歯の維持・安定性を低下させ、また咀嚼圧が義歯床下に均等に分布しないため、褥瘡性潰瘍やさらなる骨吸収を引き起こす。
このような症例では義歯床粘膜面の適合性を改善する目的で、直接法によるリライン(裏装)がしばしば行われる1)。硬質リライン材は義歯治療では必須の材料である。
2003年、クラレメディカル社より耐汚染性を高めた硬質リライン材「マックスフィット」が開発され、良好な臨床成績を収めてきた。
今回、さらに操作性に工夫を凝らした硬質リライン材「クラリベース」(図1)が開発されたので、特長および使用方法を述べさせていただく。

■ 「クラリベース」の特長

①耐汚染性の向上
クラリベースの特筆すべき特色は、液剤の成分にフッ素系メタクリル酸系モノマーを採用している点である(表1)。リライン材は一般の義歯床用レジンよりも吸水などにより次第に汚れ、材質が劣化していく傾向を示す。しかしながら、クラリベースはフッ素系モノマーを液の主成分としているため、吸水性が低く(図2)、食物色素や臭気物質などの材料内部への侵入が少ない(図3)。つまり、耐汚染性に優れた製品と言える。

  • クラリベース「ファースト」ライブピンクの写真
    図1a クラリベース「ファースト」ライブピンク
  • クラリベース「ノーマル」ライブピンクの写真
    図1b クラリベース「ノーマル」ライブピンク
  • クラリベース「ノーマル」ピンクの写真
    図1c クラリベース「ノーマル」ピンク
  • クラリベースの組成の表
    表1 クラリベースの組成
  • 耐水性のグラフ
    図2 耐水性
    直径50±1mm、厚さ0.5±0.1mmの試験片を、37±1℃の蒸留水中に7日間浸漬し、吸水率を測定した。
  • 耐汚染性のグラフ
    図3 耐汚染性
    試験片をターメリック水溶液に7日間浸漬し、着色性を測定した。ターメリックとはカレーなどに使用されるスパイスの一種で、カレー独特の黄色はこれに含有されているクルクミンという色素による。

②操作性の向上
リラインの操作はチェアサイドで行う直接法と義歯を預かり技工室で行う間接法に分類される。
実際の臨床では利便性などを考慮し、チェアサイドで行う症例が多いと思われる。そのため硬質リライン材の硬化挙動は、操作性や義歯床下粘膜との適合性に直接影響を及ぼす。
クラリベースには硬化速度の違いにより、ノーマルとファーストが製品化されている。
今回開発されたクラリベースの硬化速度をオシレーティングレオメーター(図4)で測定した。
本製品の粉剤用計量カップは、採取量に上限・下限と許容幅を持たせてある(図5)。
図6に示すように、クラリベースのファーストはノーマルに比べ、スピーディに硬化が進行する。また、粉が多いほど硬化時間は短縮し、粉を少なくすれば操作時間を延ばすことができる。本製品は付属の粉剤用計量カップで幅広く硬化時間や流動性をコントロールすることができる。
なお、クラリベース(ノーマル)はマックスフィットと同様の硬化時間を示す。
クラリベースの操作性と硬化挙動との関係を詳細に解説するため、硬化進行中の動的粘弾性を図7に示す。図7を見てわかるように、クラリベースはノーマルとファーストの各操作ステップのタイミングは異なるが、各ステップに適した粘弾性は同じ値であるため、本材は取り扱いやすい材料といえる。
また、ノーマルとファーストの硬化挙動が明らかに異なっているため、症例や術者の技量による使い分けがしやすい。
ノーマルでは患者に機能運動を行わせている間、粘弾性の変化は比較的緩やかで十分な操作時間を確保することができる。一方、ファーストでは粉と液を混和後直ちに機能運動を行わせることができ、短時間で完了させることができるメリットがある。
他社製品に比べ、両タイプとも機能運動を終了させた後はスピーディに材料の粘弾性値が上昇するため、硬化完了の判断がしやすい。

  • オシレーティングレオメーターの写真
    図4 オシレーティングレオメーター
    歯科材料の硬化挙動を測定する装置である。
  • クラリベースの粉剤、液剤の計量の図
    図5 クラリベースの粉剤、液剤の計量
    硬化時間と流動性の調整を、粉剤用計量カップの上限・下限の範囲で行うことができる。
  • クラリベースのレオメーターのトレースの図 クラリベースのレオメーターのトレースの図
    図6 クラリベースのレオメーターのトレース
    振幅が減少するほど、硬化が進行していることを示す。測定温度23℃。
  • クラリベースの硬化進行中の動的粘弾性のグラフ X線写真 図7 クラリベースの硬化進行中の動的粘弾性
    G’(貯蔵弾性率)の値が高くなるほど、硬化が進行していることを示す。測定周波数1.0Hz、測定温度37℃。

③ペースト硬化度の視覚的把握
他の製品にないクラリベースの特長として、粉と液を混和後の硬化の進行をペーストの色調変化で把握できることがあげられる。
混和直後はホワイトピンクであるが、次第に義歯床になじむピンク色へと変化する(図8)。
なお、粉末はマックスフィットと同じピンク色に加えて、繊維入りの義歯床になじみやすいライブピンク色が今回追加されている。
④良好な物性
クラリベースの表面硬化性は良好で(図9)、そのため硬化促進材を必要としない。また、義歯床用レジン(ポリメチルメタクリレート)および金属床(コバルトクロム合金)への接着性も優れている(図10)。
なお、金属床へリラインする際は、アロイプライマー(金属接着性プライマー)(図11)を塗布する必要がある。

  • クラリベースの硬化進行中の色調変化(23℃)の写真 クラリベースの硬化進行中の色調変化(23℃)の写真
    図8 クラリベースの硬化進行中の色調変化(23℃)
    粉と液を混和した直後では、流動性の高いペースト状で色調はホワイトピンクである。ペーストが硬化するに伴い、色調は次第に赤みが濃くなり硬化終了時には義歯床に近似したピンク色となる。なお実際の口腔内ではこれよりも速く硬化し、色調変化も早く進行する。
  • 表面硬化性のグラフ
    図9 表面硬化性
    ヌープ硬度(JIS T6521;2005)によりレジン表面の硬度を測定した。
  • 義歯床用材料に対する接着性のグラフ
    図10 義歯床用材料に対する接着性
    リライン1日後、レジン床(ポリメチルメタクリレート)および金属床(コバルトクロム合金)に対する接着力(ISO-TS11405)を測定した。
  • アロイプライマーの写真
    図11 アロイプライマー
    金属接着性プライマーで、金属床義歯のリラインには必須である。

■ 臨床術式

リラインを行うに際し、義歯床粘膜面と床下粘膜との適合試験、咬合関係などのチェックを行う。
適合試験では、ホワイトシリコーンやPIP(PressureIndicating Paste)などを応用する。ホワイトシリコーンによる適合試験(図12、13)の判定の目安は以下のとおりである2)
まずシリコーン被膜が30~130μmで義歯床の約70%以上均等に分布していれば、適合状態が良好であると診断する。被膜厚さが130μm以上の部位が多く存在する場合、本義歯は不適合と判断しリラインを行う必要がある。
シリコーン被膜により床の色が透けて見えない程度で、被膜がほぼ130μm以上である。被膜厚さが30μm以下では床が露出しているか床の色が透けて見える程度であるが、このような部位は義歯床下粘膜に圧が強く加わっている。同部をバーでリリーフした後、リラインを行う。
義歯床縁が不足している症例では、その不足範囲が狭い場合はリライン材により延ばすことができる。しかしながら、範囲が広い症例では、義歯床延長用のレジンや即時重合レジンにより、適切な範囲まで延ばす。不適合義歯を長期間装着し続けると、義歯床下粘膜にひずみや褥瘡性潰瘍が生ずる。リラインにさきだち、ティッシュコンディショナーにより床下粘膜の変形を取り除き、できるだけ正常な状態に回復させておく必要がある。
上述した検査および前処置を行ったのちリラインの処置を行う。まずカーバイドバーなどで義歯床粘膜面の新鮮面を出す(図14)。ついでリライン面に付属の接着剤を塗布し、エアーで乾燥させる(図15)。
なお金属面をリラインする症例では、無処理のままでは金属との接着性は期待できないため、サンドブラスト処理後、アロイプライマーなどの金属接着性プライマー(図11)を塗布する。
クラリベースの操作手順を図16に示す。
粉液比は当然のことであるがメーカーの指示に従う(図17)。粉と液を計量せず、目分量であるいは混和時の感触で使用している例も見受けられるが、本来の物性を発揮させるには紛液比を守ることが大切である。クラリベースの粉剤用計量カップには、調整可能な粉の量がわかりやすく示されており(図5)、初期の流動性と硬化時間を症例に応じて調整することができる。また、この粉液比の範囲であれば硬化後の物性も良好である。
混和後約15秒でペーストの粘度がいくらか上昇し、義歯床に盛ることができる(図18)。この時点では本材の色調はホワイトピンクである。
盛り上げの作業は診療室の温度や粉液比により異なるが、ノーマルで混和開始後15秒~1分半、ファーストで混和開始後15秒~1分で行う。あまりに早く盛った場合、義歯床よりペーストが垂れたり、口腔内に挿入後ペーストが患者の咽頭に流れることがある。逆にあまりに流動性が低下し粘土状になった時点で盛った場合、咬合高径が高くなり、また不適合の原因となる。このあたりの操作に関しては、何度か使用すれば慣れてくるものと思われる。
口腔内にクラリベースを盛った義歯を挿入し十分に圧接後、咬合させる。口唇突出、口角牽引、開口、舌運動などの機能運動を患者に指示し、辺縁形成を行う(図19)。この操作は粉と液の混和を開始してノーマルで1分半~4分位、ファーストで1~2分位の間で行う。
義歯を口腔内に入れてから、ノーマルの場合2分半位経過後、ファーストの場合1分位経過後、トリミングのため義歯を取り出す。辺縁からの余剰部分や鉤歯のアンダーカット部分に入り込んだ材料をエバンスやハサミなどで除去する(図20)。この処置では材料が流動体からゴム状になった時点で口腔内から取り出すことが重要で、完全硬化したため義歯の取り出しができないというトラブルを起こさないよう注意を払わなければならない。
辺縁の余剰のリライン材の硬さを指先で押し、また、数回義歯を少し着脱させることにより確認することが必要である。総義歯であっても上顎前歯部顎堤に強いアンダーカットが存在する症例も多く見受けられるので注意を要する。
トリミング後、義歯が着脱できることを確認し、約3分間口腔内に保持し完全硬化を待つ(図21)。また、口腔外で完全硬化させる場合は、義歯を50~60℃の温水に3分間浸漬させておく。
硬化後、カーバイドバーなどで形態修正を、シリコーンポイント、ルージュなどで研磨を行い(図22)、完成とする(図23)。
本製品は前述したように液剤にフッ素系モノマーを採用しているため、吸水性が低く、高い耐久性を有している(図24)。

  • 下顎総義歯の写真
    図12 下顎総義歯。患者は咀嚼時の疼痛を訴えている。
  • ホワイトシリコーンで義歯床粘膜面と床下粘膜との適合試験を行う写真
    図13 ホワイトシリコーンで義歯床粘膜面と床下粘膜との適合試験を行う。骨隆起や骨の鋭縁が存在するため義歯床粘膜面をかなり削除したことが伺えるが、結果的に不適合の程度がかなり増したようである。
  • カーバイドバーなどで義歯床粘膜面を一層削除し、新鮮面をだす写真
    図14 カーバイドバーなどで義歯床粘膜面を一層削除し、新鮮面をだす。
  • 付属の小筆でリライン面に塗布する写真
    図15 付属の小分け用カップに接着剤を入れ、付属の小筆でリライン面に塗布し、エアーで乾燥させる。
  • クラリベースの操作手順
    図16 クラリベースの操作手順
  • 付属のスポイトで液剤をラバーカップに入れ、粉剤用計量カップで粉剤を計量し加える写真
    図17 付属のスポイトで液剤をラバーカップに入れ、粉剤用計量カップで粉剤を計量し加える。スパチュラで気泡が入らないように10~20秒間混和する。
  • 義歯床粘膜面に、スパチュラを用い盛り上げる写真
    図18 混和を開始し約15秒経過後、少し粘度が増した時点で義歯床粘膜面に、スパチュラを用い盛り上げる。盛り上げの作業はノーマルの場合は混和後1分半以内、ファーストの場合は混和後1分以内に終わらせる。この時点でのペーストの色調はホワイトピンクである。
  • 口唇突出の写真
    図19 クラリベースを盛った義歯を口腔内に挿入し圧接する。口唇突出、口角牽引、開口などを指示し、辺縁形成を行う。口腔内挿入、辺縁形成は混和開始からノーマルで1分半~4分間、ファーストで1~2分間で行う。
  • 余剰部分をエバンスやハサミなどで除去する写真
    図20 口腔内へ義歯を挿入してノーマルの場合は約2分半後、ファーストの場合は約1分後、義歯を取り出し、余剰部分をエバンスやハサミなどで除去する。
  • 口腔内で着脱できることを確認し、口腔内に3分程度保持する写真
    図21 口腔内で着脱できることを確認し、口腔内に3分程度保持しておく。
  • 最終研磨を行う写真
    図22 カーバイドバーなどで形態修正を行い、シリコーンポイント、ルージュなどで最終研磨を行う。
  • リライン後約6ヵ月のクラリベースの写真
    図24 リライン後約6ヵ月のクラリベース。劣化はほとんど認められず、経過は良好である。
  • 増歯を行い、ついでクラリベース(ファースト)で唇側の床を延長した写真
    図2 52の増歯を行い、ついでクラリベース(ファースト)で唇側の床を延長した。この場合、粉を粉剤用計量カップの上限とし、硬化時間を短くし流動性を抑えて材料を追加する。

クラリベースノーマルとクラリベースファーストの使い分け

基本的にはノーマルとファーストの使い分けは術者の慣れと好みによるところが多いと思われる。ただ、リラインする面積が広い上顎総義歯や強いアンダーカットおよび鉤歯を有する症例では、それぞれ浮き上がりや誤操作による義歯の着脱困難などを防ぐため、操作時間に余裕のあるノーマルタイプをお薦めする。
また、床面積の狭い症例ではファーストタイプが使いやすいと思われる。
硬質リライン材は本来の目的である義歯床粘膜面の改善のほか、床縁の延長にも応用される(図25)。鉤歯や他の歯を抜歯した症例で増歯を行う際、人工歯を追補し床を延長する。床の延長はクラリベースの場合ファーストを用い、さらに粉を多くし材料の硬化時間を短くかつ流動性を低くすれば床縁の形態を与えやすい。

■ まとめ

新規に開発されたクラリベースの特長と使い方について述べさせていただいた。
『耐久性と使いやすさを向上させたクラリベース』は、先生方の義歯臨床に有用なリライン材であると確信する。本稿が先生方の臨床にお役に立てれば幸いである。

参考文献
  • 1) 村田比呂司:義歯裏装材.QDT 32(12): 82-88, 2007.
  • 2)細井紀雄,森戸光彦,椎名順朗,水野行博:義歯機能の回復 リライニング&リペアー.医歯薬出版,東京,9-88,1997.

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