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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
Ⅱ級窩洞コンポジット充塡時によく直面する 諸問題に対する臨床的解決策
Robert A. Lowe

■緒言:Ⅱ級窩洞修復の課題

臼歯部隣接面が関与している直接コンポジット修復物は現在でも多くの患者さんでみられる。歯科用アマルガムは技術的に非常に柔軟な材料であり、マトリックスバンドに対して塡塞させることにより隣接面コンタクトを形成できるが、このような歯科用アマルガムとは異なり、コンポジット修復材を正しく充塡するためには、他の材料にはみられない課題を臨床医は克服しなければならない。
ほとんどの臨床医は、接着過程そのものについては隔離や実施(execution)と同程度によく理解している。しかし、充塡過程の手順の中には、困難を伴うため最終的な結果が望ましいレベルに達しない事態を招くものがある。
本稿では具体的に以下の3つの事項を取り上げる。
(1)隣接歯間領域における軟組織のマネジメント
(2)隣接面の豊隆および隣接面コンタクトの形成
(3)修復物の仕上げと研磨

■隣接面歯肉組織のマネジメント

接着過程が最もよく失敗する領域は、隣接面の歯肉縁である。この問題は、当該の修復物全体を取り外さずに、修理に影響を及ぼす隣接面の歯肉領域へのアクセスが不可能であることが原因である。
Dr. Ron Jacksonが述べているように、ボンディング材で接着された修復物は、マージン部での軽微な異常(う蝕や微小漏洩)を、う蝕や漏洩が生じている歯牙の修復物を取り除いた後、追加のコンポジット修復材で修理することによって「元通りにできる」または「修理できる」という点で他の材料とは異なる。つまり、修復材はエナメル質や象牙質と接着するため、再発しても通常は自然に治癒する。これは、歯の構造物と接着しない金属修復材料にはあてはまらない。しかし、このような異常が隣接面の歯肉縁や隅角(ラインアングル)に生じた場合には、その異常領域にアクセスするのは不可能である。
したがって、直接コンポジット修復材の充塡後に辺縁を正確に合わせ、その辺縁部を水分や歯肉滲出液による汚染がない状態で封鎖することは、極めて重要である。ただし、う蝕や歯肉炎症が歯肉縁下で発現しているかどうかによって、血液の存在下でマトリックスシステムを用いて歯肉辺縁部を封鎖することは困難な作業となり得る。

■隣接面の豊隆およびコンタクトの形成

隣接歯とのコンタクトを回復させると同時に、従来のマトリックスシステムの限界を考慮しながら、隣接歯間の解剖学的形状を正しく修復することは、これまで常に、歯科医にとってのもうひとつの課題であった。
マトリックスバンドが厚いことと、修復対象の歯とその歯に隣接するもう1本の歯との歯周靱帯をともに圧迫してしまうことにより、隣接歯コンタクトの回復が困難になることがある。解剖学的には、臼歯部隣接面は、咬合部は凸面であり、歯肉部は凹面である。隣接面コンタクトは、頰舌方向に楕円形で、辺縁隆線の高さから約1mm根尖側に位置している。歯の表面は、歯肉に関しては、コンタクトポイントからセメントエナメル境に向かって移行しているため、歯間乳頭を巻き込んだ窪みが存在する。従来のマトリックスシステムは薄く平らな金属製ストリップで製作されており、修復対象の歯の周りにこれらの金属ストリップを挿入して、何らかの保持装置を用いて固定させるというものである。
従来のトッフルマイヤーを用いれば隣接歯とのコンタクトを形成できるが、これらのシステムに固有の限界があるため、臼歯部隣接面の自然な凸面/凹面の回復は実際には不可能である。楕円形のインスツルメントを使用することによってマトリックスバンドをバーニッシュし、形状的に適合させようと試みることは、非解剖学的コンタクトを作り出す一助となるかもしれないが、所詮はそのバンドを「ゆがめる」もしくは「へこませる」結果となるにすぎず、自然な隣接歯面の豊隆を完璧に回復させることはできない。
歯牙のカントゥアの支えがなければ、歯間乳頭は、歯肉の鼓形空隙を完璧に埋めることはできず、そこに食べ物が詰まったり余分なプラークが蓄積する可能性が生じる結果となる。
ダイレクトⅡ級窩洞コンポジット修復は、臨床医が挑戦すべき課題として最も困難なものの一つといえる。何故ならば、コンポジットレジンは、アマルガムと同様にマトリックスに対して圧接されることはないため、隣接面コンタクトの形成が困難だからである。

■コンポジット修復物の仕上げ・研磨

ダイレクトコンポジット材料はアマルガムのようにカービングできないが、多くの臨床医はそうできればよいのにと思っているのではないだろうか。
このため、残念ながら、ほとんどの臼歯部コンポジットは、バーで形態を修正することになる。この作業は、修復物の仕上げ・研磨作業の一環ではない。咬頭の形状は凸面であり、修復材の表面を凹面にするダイヤモンドバーではカービングできないことを覚えておかなければならない。コンポジットは、積層充塡し、正しい咬頭形状に形態修正してから、光重合すべきである。
仕上げ・研磨過程は、辺縁を正確に合わせ、微細な咬合調整を行うために実施する。ゴム性研磨剤でコンポジットレジンの表面をさらに研磨した後、修復物とのマージンの境をなくすために、表面シーラント材を用いてさらに辺縁封鎖を行う。

■症例報告:ダイレクトⅡ級コンポジット修復

図1に示す症例は、X線写真で第一大臼歯の近心隣接面上にう蝕が確認された。手術領域を、ラバーダムシートを用いて隔離する。次に、特殊なメタル付ウェッジを近心隣接面に挿入し、その後にカーバイドバーを用いて窩洞を形成する。
う蝕は軽微であるため、窩洞形成を極めて保存的なものとする手術計画を採用する。つまり、隣在歯の隣接面がバーによって誤って傷つくことがないようメタル付ウェッジで保護しながら、隣接面にボックス状窩洞を形成することとする。
う蝕を除去して、隣接面および咬合面の窩洞形成が完了後、手術領域をラバーダムシートで隔離し(図2、3)、修復処置の準備を整える。
図4には、窩洞形成中に隣接面の歯肉組織が摩滅されたことが明らかに示されており、出血がはっきりとみられる。この出血を水で洗い流して、マトリックスバンドをすぐに装着しようとするのは得策ではない。たとえそれが成功したとしても、形成した窩洞の歯肉領域内に血液が滲出することにより、象牙質のボンディング接着材のエッチングと充塡は汚染されてしまう。

  • コンポジタイト/ウェッジワンド/マルチファンクションの画像
  • 右上:
    コンポジタイト 3D システム
    右下:
    コンポジタイト 3D
    リングフォーセップス
    左上:
    ウェッジワンド
    左中:
    コンポジタイト
    マトリックス フォーセップス
    左下:
    マルチファンクション
    コンポジット充塡器TN009
  • 上顎大臼歯の咬合面観の術前写真
    図1 これは、上顎大臼歯の咬合面観の術前写真であり、X線写真では近心隣接面上にう蝕がある。
  • 窩洞形成中の咬合面の写真
    図2 窩洞形成中の咬合面。
  • メタル付ウェッジ/カーバイドバーでの利用シーン
    図3 メタル付ウェッジで隣在歯の隣接面を保護しながら、カーバイドバーで隣接面ボックス状窩洞をさらに調整している。
  • 隣接面領域での出血の写真
    図4 窩洞形成完了後に、隣接面領域に出血がみられる。

隣接面組織の出血を迅速かつ完全に管理する良い方法は、止血剤を当該領域に充塡し、綿球で止血剤を軽く叩きながら挿入し、1~2分待つという方法である(図5)。
次に、止血剤を3wayシリンジを用いて洗い流すが、このとき少量の止血剤を隣接面組織に、ただし形成した窩洞の歯肉辺縁部の下に残しておく(図6)。
止血剤が隣接面組織を窩洞辺縁部から圧排して止血を維持するため、手術領域における汚染リスクを伴わずに隣接面マトリックスを容易に挿入できる。
修復のためにマトリックスバンドを必要とするⅡ級窩洞形成には、辺縁隆線、隣接面コンタクトが必ず必要であり、また、隣接歯間面の大部分を必要とすることが多い。
コンポジット充塡の最終目標は、カントゥアの調整および仕上げのための回転型器具の使用が最小限ですむように充塡を行うことである。このことは特に、隣接歯間面については重要である。隣接面領域への臨床的アクセスには制限があるため、修復物の隣接歯間面の形態修正および正しいカントゥアの調整は極めて困難であるからだ。修復物の隣接歯間面を正しく回復できるかどうかは、使用するマトリックスバンドの形状と、その挿入の正確さに大きく依存している。
カリエスと古い修復材を除去した後、窩洞形成の輪郭形状を確認する。隣接面コンタクトが少しでも残っている場合には、必ずしもそれを取り除く必要はない。歯牙の侵襲はできる限り最小限にすることが望ましい。残っているコンタクトを活用してマトリックスバンドを容易に挿入できない場合には、Fine Diamond Stripを用いてそのコンタクトに隙間を形成してもよい。
この上顎第一大臼歯の近心隣接面歯形態を解剖学的に修復するためにコンポジタイト 3D マトリックス システム(ギャリソン デンタル ソルーションズ社)を選択した。また、解剖学的に見て修復対象の歯に最もよく合致し、さらに隣接面の幅と高さにも最もよく合致する適切なマトリックスバンドを選択した。
マトリックスバンドの高さは、正しく挿入したときに隣在の辺縁隆線よりも高くならないようにすべきである。解剖学的に凹面形状であるため、隣接面コンタクトは、辺縁隆線の高さに対して約1ミリ根尖側に位置することになる。
コンポジタイト マトリックスフォーセップスを用いて、選択したマトリックスバンドを隣接面領域に正しい向きで挿入する。このフォーセップスは把持力に優れているため、マトリックスバンドを損傷したり曲げたりしてしまうおそれのあるコットンプライヤーよりも正確に挿入できる。
コンポジタイト マトリックスフォーセップスを用いて、6番の歯の近心隣接面領域に、コンポジタイト 3D マトリックスバンド(ギャリソン デンタル ソルーションズ社)を挿入する(図7)。このマトリックスバンドの3次元的な形態と30ミクロンの極薄形状によって、アクセスが厳しい臼歯部であっても、正確に挿入することができる。

  • 止血剤を塗布した写真
    図5 止血剤を塗布する。
  • 隣接面組織を圧排したシーン
    図6 辺縁下に残った少量の止血剤で隣接面組織は圧排させられ、マトリックスバンドが挿入しやすくなる。
  • コンポジタイト マトリックスフォーセップスでつかんだマトリックスバンドの写真
    図7 マトリックスバンドを変形させることなく正確に挿入することができるコンポジタイト マトリックスフォーセップスでつかんだマトリックスバンド。

次に、適切な大きさのウェッジワンド(ギャリソン デンタルソルーションズ社)を用いて、このバンドの歯頸部分を形成窩洞の辺縁に押しつけて安定させ、隔壁とする(図8、9)。
使用するウェッジワンドの大きさは、隔壁としたマトリックスバンドの歯頸部を十分に押さえつけながら、隔壁となるように十分幅広いものを選択する。
ウェッジの挿入に際しては、まずウェッジ部を90度に曲げてから歯間部に挿入する。このとき、扱いにくいことが多いコットンプライヤーを使用しなくても、程よい力で容易に挿入できる。ウェッジを正しい向きに挿入した後、ワンド部(持ち手部分)をねじってウェッジ部と切り離す。
次に、コンポジタイト 3D リングフォーセップスを用いて、コンポジタイト 3D リテーナー ソフトを所定の位置に挿入する。3D リテーナーの両脚部をウェッジワンドの上部に置き、ウェッジを押さえ込むように設置する。
3Dリテーナー ソフトの離開力で、歯周靱帯圧迫による歯牙のわずかな解離が生じるが、3D リテーナー ソフトのシリコン製の脚部により、隣在する歯牙の頰側および舌側表面の隣接面形態が保持されると当時に、マトリックスバンドと歯牙の窩洞表面辺縁とが、ほぼ自然な形態で適合する(図10)。
完璧な隣接面マトリックスの最終目標は、適合不良のマトリックスによるレジンのはみ出しを取り除くために回転型器具を使用しなければならないという事態を回避することである。マトリックスバンドが正しく挿入されて隔壁をなし、3D リテーナー ソフトを所定の位置に挿入すると、修復過程に移る。
まずプライマーを塗布し、20秒間放置しHEMAの象牙細管内への初期浸透を行った後、形成窩洞にマイルドエアーブローを行い、確実に乾燥させる。メガボンドFAのプライマーには抗菌性モノマーMDPBが配合されており、重合前に抗菌性を発現する。
次にボンディング材を窩洞に塗布する。マイルドエアーブローでボンディング層を均一化させ、その後10秒間光照射する。メガボンドFAのボンディング材には表面処理フッ化ナトリウムが配合されており、フッ素イオンを放出して安定した構造を長期にわたり維持する。
フロアブル(低粘性)コンポジットレジンを用いて、コンポジットレジンの最初の層を、約0.5mmの厚さで充塡する。このフロアブルコンポジットレジンは、形成窩洞のあらゆる不整な表面の中に流れ込み、酸素に阻害された層(oxygen‑inhibited layer)を形成して、その後の複数のマイクロハイブリッド層を形成する。
20秒間の光重合が終了すると、次の手順は、マイクロハイブリッド層を積層していくことである。まず、C‑Rシリンジを用いて、マイクロハイブリッドコンポジットレジンの最初の積層分を、形成窩洞の隣接面ボックスの中に充塡する。マルチファンクション コンポジット充塡器を用いて、マトリックスバンドおよび形成窩洞の内側に修復材を適合させる。最初の積層の厚さは2mmを超えないよう注意する。最初の積層を光重合させた後、次の積層分を、隣接面間コンタクトの底部に充塡する。ゴールドスタイン フレキシシン ミニ4(ヒューフレディ社)を用いて、頰側および舌側に複数の積層を築盛し、形態を付与する。

  • ウェッジをハンドルに当たるまで90度曲げている写真
    図8 臨床に使用しているウェッジワンド:ウェッジをハンドルに当たるまで90度曲げている。
  • ウェッジワンドにより歯頸部の良好な封鎖が得られた写真
    図9 ウェッジワンドにより歯頸部の良好な封鎖が得られる。
  • コンポジタイト 3Dリテーナー ソフトを所定の位置に置いた写真
    図10 コンポジタイト 3Dリテーナー ソフトを所定の位置に置いたところ。マトリックスバンドが窩洞表面と辺縁部を正確に封鎖していることに留意する。

図11は、エナメル層の修復完了後でマトリックスバンドを取り外す前の写真である。ウェッジワンドと3D リテーナー ソフトを取り外した後に、コンポジタイト マトリックスフォーセップスを用いてマトリックスバンドを取り除く(図12)。
仕上げと研磨は、フィニッシング用カーバイドバーを用いてコンポジット修復材の仕上げを行う。
小さくて、先のとがったフィニッシングバーを用いて、必要に応じて修復材の表面に対して軽微な咬合調整を行うとともに、修復材のマージン領域についてはアクセス可能なところを滑らかにして、さらに精密に調整する(図13)。細いウルトラファイン(超細)の仕上げバーを用いて、隣接面領域をさらに正確に精密に仕上げる(図14)。次に、研磨ポイントを用いて、修復材の表面を研磨し、最終仕上げを行う(図15)。
研磨が完了したならば、最終段階は、表面シーラントを塗布することである。修復材のマージン界面において顕微鏡でしか見えない不完全領域が残されている場合があるかもしれないが、これは、ミクロンのレベルではこのような領域にアクセスできない結果であると思われる。最終段階の表面シーラントの塗布によって、このような不完全領域を封鎖し保護する。
エキスプローラーではせいぜい30ミクロンのマージンギャップを「感じる」ことができるだけであることを覚えておくこと。細菌は直径1ミクロンである。表面シーラントの目的は、これらの領域を満たして封鎖することである。
図16に、完成したII級コンポジット修復の咬合面観を示す。

  • コンポジットレジンによる修復が完了写真
    図11 コンポジットレジンによる修復が完了:マトリックスバンドを取り外す前。マトリックスの挿入により、隣接面の歯の形状が正確に復元されている。
  • マトリックス除去直後の修復物の写真
    図12 マトリックス除去直後の修復物。コンポジタイト 3D リテーナーが、バリを最小限度に抑えている。
  • 先のとがった仕上げ用カーバイドバーを用いたシーン
    図13 先のとがった仕上げ用カーバイドバーを用いて、微細な咬合調整を行い、修復物マージン部をさらに精密に調整する。
  • 先のとがったウルトラファイン(超細)のコンポジット仕上げバーを用いたシーン
    図14 先のとがったウルトラファイン(超細)のコンポジット仕上げバーを用いて、修復部と隣接する領域をさらに精密に調整して仕上げる。
  • ダイヤモンドコンポジット研磨器で隣接領域を滑らかにするシーン
    図15 ダイヤモンドコンポジット研磨器で隣接領域を滑らかにする。
  • シーラント塗布後の直接MOコンポジットレジン修復の咬合面の写真
    図16 シーラント塗布後の直接MOコンポジットレジン修復の咬合面観。

■結論

本稿では以下の処置について述べた。

  • (1)マトリックスを設置する前に、止血剤を用いて隣接面組織の出血を止める。
  • (2)コンポジタイト 3D マトリックスシステム、ウェッジワンド(ギャリソン デンタル ソルーションズ社)とコンポジットレジンを用いて、解剖学的に精密な隣接表面を作成する。
  • (3)フィニッシングバーによる2段階のコンポジット仕上げシステムを用いて仕上げた後、ダイヤモンドコンポジット研磨材で研磨し、解剖学的な咬頭の形状を破壊せずに、マージン部の統合性をさらに精密に調整する。

隣接歯間面は、自然の解剖学的形態に沿って回復し、隣在歯とは、予測可能な楕円形のコンタクトを有する。
この「目に見えない」ダイレクトコンポジットレジン修復は、正しい咬合および隣接面の形状を有することから、患者さんは何年にもわたって審美的な白い歯を維持できる。