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クリアフィルファイバーポストの特徴
絹田 宗一郎/矢谷 博文

■目 次

■はじめに

グラスファイバー製の既製ポストとコア用のコンポジットレジンを併用した支台築造は、金属による支台築造と比較して審美性に優れているうえに、金属ポストに比べて抜歯につながる歯根破折が予防できるといわれており、その使用頻度は増加している。現在、国内でもいくつかのグラスファイバー製ポストが発売されているなか、ポストの先端に円周状の溝を付与した新しい形態のクリアフィル®ファイバーポスト<製造販売:クラレメディカル(株)>(図1)が発売された。
本稿では、ファイバーポストを用いた支台築造法を紹介するとともに、クリアフィル®ファイバーポストの特徴について解説する。

  • 図1 クリアフィル®ファイバーポスト スターターセット
    図1 クリアフィル®ファイバーポスト スターターセット

■なぜファイバーポストを用いるのか?

① 歯根破折の防止
ファイバーポストは曲げ弾性率が約30Gpaと象牙質(約20GPa)に近似しているため、咬合力が加わった際に歯根とともにポストもたわむことで歯根部への応力集中をさけることができる。一方、鋳造メタルコア(タイプ4金合金)や既製メタルポスト(ステンレススチール)の曲げ弾性率はそれぞれ約100GPa、約200GPaであり、これらで支台築造した場合、応力はより軟かい象牙質に集中する。
当教室の中村らは有限要素法を用いて歯根部象牙質に加わる応力解析を行い、ファイバーポストを用いることで、鋳造金属ポストと比較してポスト先端周囲の歯根部への応力が12~34%減少することを明らかにしている1)図2)。
また、林ら2)は抜去歯に荷重をかける実験的研究を行い、ファイバーポストを用いた場合、たとえ歯根破折が起こったとしても、その破折は再治療可能な歯頸部付近で生じることが多いのに対して、鋳造金属コアや既製金属ポストとレジンコアを併用した場合はポスト先端周辺で歯根破折に至ることが多く、再治療が不可能になる可能性の高いことを報告している。
ポスト先端付近の象牙質への応力集中を避けるためには、支台築造体と歯質が一体化している必要がある。すなわち、ポストとコア用レジン、コア用レジンと象牙質がそれぞれ強固に接着していることが重要であるので、支台歯の保存に致命的な歯根破折を防ぐためには後に述べる接着操作を遵守することが必要である。
② 高い審美性
鋳造メタルコアや、既製金属ポストとレジンコアで支台築造した歯にオールセラミッククラウンを装着する場合、金属が光を透過しないため、クラウン装着後に歯頸部付近が暗く見えるという審美的な問題が生じやすい。しかし、ファイバーポストは適度な光透過性を有するため、金属を用いた支台築造と比較して歯頸部付近が不自然に暗くなることがなく、天然歯に近似した審美性の高い補綴歯科治療が可能である(図3)。
③ 金属アレルギーへの対処
ファイバーポストとレジンコアを用いた支台築造とオールセラミッククラウンやハイブリッドセラミッククラウンとを組み合わせることで、まったく金属を用いない歯冠補綴治療が可能となるため、金属アレルギーに苦しんでいる患者の治療にも適している。
④ コア用レジンやレジンセメントとの高い接着性
ポスト本体をシラン処理することにより、コア用レジンや接着性レジンセメントと強固に接着させることができる。また、コア用レジンや接着性レジンセメントと根管象牙質も近年の接着システムの技術向上により強固に接着させることが可能となっている。そのため、ポストコア部と歯質の一体化により脱離や歯根破折を予防できるうえに、歯内療法を施した失活歯の予後に大きく影響を与えると言われるコロナルリーケージ3)を防ぐことが期待される。
ポスト表面の前処理の詳細な手順については後述するが、前処理を行わなかった場合、期待通りのレジンとの接着が得られず、引き抜き抗力が低下するので注意が必要である(図4

  • 図2 有限要素法を用いた歯根部象牙質の応力解析
    図2 有限要素法を用いた歯根部象牙質の応力解析
  • 図3 歯頸部付近の光透過性
    図3 歯頸部付近の光透過性
  • 図4 前処理の違いによるファイバーポストの引き抜き抗力の比較
    図4 前処理の違いによるファイバーポストの引き抜き抗力の比較

■クリアフィルファイバーポストの特徴

① ポストの形態図5
図5に示すようにクリアフィル®ファイバーポストは、ポスト自身の強度を考慮して胴体部分をストレートな形状とし、ポストの根管への適合性を高めるために先端部分をテーパー形状としている。さらに、コア用レジンとの強固な接着に加えて引き抜き抵抗を高めることをねらって根尖部分に溝が付与されている。
引き抜き試験の結果、先端に溝2本を付与することで、溝なしのものにくらべて、引き抜き抗力は高い値を示した(図6)。また、引き抜き後のポスト先端部を強拡大すると、溝部分が引き伸ばされて消失しており、溝部分へのレジンの嵌合が引き抜き抵抗増大に貢献しているものと考えられた(図78)。
有限要素法の解析による結果、応力の分布は溝を付与しない場合と同傾向にあった。すなわち、溝部分に応力が集中することはなく、わずかに細くなった溝部分でポストが破折する危険性は低いと考えられる(図9)。
② 4種類の直径ラインナップ
本品は胴体部分の直径が1.04mmの#3、1.24mmの#4、1.44mmの#5、1.64mmの#6の4種類がラインナップされている(図10)。これらはそれぞれ、#3~#6のピーソーリーマーに対応しており、各ピーソーリーマーの直径(1.10mm、1.30mm、1.50mm、1.70mm)から全周にわたって接着材のスペースとなる0.03mmのクリアランスを確保している。
③ 高耐久性
ファイバーポスト自身の耐久性を調べたサーマルサイクル3万回後の曲げ試験では、他の製品に比べて曲げ強さ(保持率)の低下が少なく、長期間にわたって物性を維持できることがわかった(図11)。同様に90℃水中浸漬試験後の曲げ強さの劣化も少なく、耐久性に優れている(図12)。これは、クラレ独自の表面処理技術により、グラスファイバーの細繊維と繊維間をうめる樹脂の結合が強化されていることによるものであると考えられる。

  • 図5 ファイバーポストの形態の特徴
    図5 ファイバーポストの形態の特徴
  • 図6 溝付与による引き抜き抗力の増大
    図6 溝付与による引き抜き抗力の増大
  • 図7 溝を2本付与したポスト先端部の強拡大
    図7 溝を2本付与したポスト先端部の強拡大
  • 図8 引き抜き試験後のポスト先端部の強拡大
    図8 引き抜き試験後のポスト先端部の強拡大
  • 図9a 有限要素法を用いた応力解析(溝あり)
    図9a 有限要素法を用いた応力解析(溝あり)
  • 図9b 有限要素法を用いた応力解析(溝なし)
    図9b 有限要素法を用いた応力解析(溝なし)
  • 図10 クリアフィル®ファイバーポストのラインナップ
    図10 クリアフィル®ファイバーポストのラインナップ
  • 図11 サーマルサイクル3万回後の曲げ強さ
    図11 サーマルサイクル3万回後の曲げ強さ
  • 図12 90℃水中浸漬試験後の曲げ強さ
    図12 90℃水中浸漬試験後の曲げ強さ

■使用方法

<直接法の場合>
① 支台歯の仮封を除去し、根管口を明示したあと、通法に従ってピーソーリーマーを用いてポスト孔の形成を行う(図13)。
② クリアフィル®ファイバーポストを試適する(図14)。
③ ファイバーポストの表面処理
1)試適時に付着した唾液等をアルコール綿で清拭する。
2)KエッチャントGEL(クラレメディカル)を塗布し5秒後に水洗・乾燥させる(図15)。
3)クリアフィル®セラミックプライマー(クラレメディカル)を接着面に塗布し、弱~中圧のマイルドなエアーブローで均一な層に乾燥させる(シラン処理)(図16)。
④ 根管象牙質の表面処理
1)根管をよく水洗、乾燥する。ポスト孔先端には水分が残存しやすいので注意する。
2)クリアフィル®DCボンド(クラレメディカル)のA液、B液を混和し、スポンジで根管内に塗布する(図17)。
3)20秒後に強めのエアーブローを5秒以上行い、しっかり乾燥させる。
⑤ クリアフィル®DCコアオートミックス(クラレメディカル)のレジンペーストをポスト孔に塡入する(図18)。このとき、ポスト孔先端部分に気泡を作らないように注意を払ってしっかりとレジンペーストを塡入させる必要がある。
⑥ クリアフィル®ファイバーポストをポスト孔先端までしっかりと挿入し、光照射を行う(図19)。筆者はホウプライヤー等でポストを保持して10秒間仮照射したのち、照射器をさらにファイバーポストに近づけて十分な光照射をするようにしている。
⑦ さらにDCコアオートミックスを盛り足した後、概形成を行う(図20)。
<間接法の場合>
間接法は、歯質の削除量が多くなるうえに来院回数が増えるデメリットがあるものの、レジンの重合収縮の影響を少なくすることができる。また、残存歯質が一部歯肉縁下にあるような場合にも、間接法の方が直接法と比較して短時間に確実に接着操作を行えるため適している。 ① 通法に従って支台築造のための形成、印象を行う。直接法と異なるのはアンダーカット部が許されないことである。そのため歯質削除量は多くなる。
② 作業用模型上で、コア用レジンと直接法③で述べたのと同様の表面処理を施したクリアフィル®ファイバーポストを用いてレジン築造体を製作する。
③ 完成したレジン築造体の被着面をサンドブラストし、続いてリン酸処理、シラン処理を施す。これらの処理は接着反応性を低下させないように必ず接着直前に施すことが肝要である。
④ 支台歯の仮封を除去し、水洗乾燥後、EDプライマーⅡにて被着面象牙質の表面処理を行ってから接着性レジンセメント(例えばパナビアF2.0)を用いてレジン築造体を接着させる。

  • 図13 ピーソーリーマーによる根管形成
    図13 ピーソーリーマーによる根管形成
  • 図14 ファイバーポストの試適
    図14 ファイバーポストの試適
  • 図15 リン酸エッチング処理
    図15 リン酸エッチング処理
  • 図16 セラミックプライマー塗布(シラン処理)
    図16 セラミックプライマー塗布(シラン処理)
  • 図17 DCボンドによる象牙質被着面処理
    図17 DCボンドによる象牙質被着面処理
  • 図18 DCコアオートミックスの根管内への塡入
    図18 DCコアオートミックスの根管内への塡入
  • 図19 ファイバーポストの植立
    図19 ファイバーポストの植立
  • 図20 支台歯の概形成
    図20 支台歯の概形成

■症例

下顎右側第2小臼歯の補綴装置が脱落後、再根管治療を行い、経過良好であることから歯冠補綴治療に移行した。支台築造のための根管形成を終了し(図21)、クリアフィル®ファイバーポストとDCコアを用いて直接法により支台築造を行い(図22)、ただちに支台歯形成を行った(図23)。
通法に従って印象採得,咬合採得を行い、クリアフィル®エステティックセメント(クラレメディカル)を用いてオールセラミッククラウンを接着し、補綴治療を終了した(図24)。

  • 図21 下顎右側第2小臼歯の支台築造のための支台歯形成
    図21 下顎右側第2小臼歯の支台築造のための支台歯形成
  • 図22 DCコアオートミックスによるレジン支台築造(支台歯形成前)
    図22 DCコアオートミックスによるレジン支台築造(支台歯形成前)
  • 図23 DCコアオートミックスによるレジン支台築造(支台歯形成後)
    図23 DCコアオートミックスによるレジン支台築造(支台歯形成後)
  • 図24 オールセラミッククラウン装着後
    図24 オールセラミッククラウン装着後

■まとめ

クリアフィル®ファイバーポストは、先端に付与した2本の溝の機械的嵌合により引き抜き抗力が高く、耐久性にもすぐれる新しいファイバーポストである。
本稿で述べたようにファイバーポストは金属ポストにくらべて多くの利点があり、今後ますますその使用頻度は増加するであろう。

参考文献
  • 1) Nakamura T, Ohyama T, Waki T, Kinuta S, Wakabayashi K, MutobeY and Yatani H:Stress analysis of endodontically treated anterior teethrestored with different types of post materials. Dent Mater J2006;25(1):145‑150.
  • 2) Hayashi M, Takahashi Y, Imazato S, Ebisu S:Fracture resistance ofpulpless teeth restored with post‑cores and crowns. Dent Mater.2006;22(5):477‑485.
  • 3) 森重恵美子,石垣尚一,矢谷博文:見過ごされているコロナルリーケージ.日歯評論 2005;75(3):167‑169.