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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
再生療法での高度医療機器 (3D診断とEr:YAGレーザー)活用法
吉野敏明

■目 次

■はじめに

1980年代にNymanらによってミリポアフィルターによるバリアーメンブレンとしてのGTR法が発表されて以来、様々な方法の再生療法が開発されてきた。
GTRは主に再生の“場”を作る術式であるが、これに加え、再生をおこすためには“細胞”とこれを分化増殖させるための“シグナル因子”の3つが必要である(図1)。
このように、再生療法は“無”の空間に細胞や組織を“有”の状態に戻す術式であるため、従来の歯科治療の概念の適用では奏功せず、生物学的・生理学的・生化学的、また疾病の原因除去因子としての病理学的・細菌学的知識が必要となるのはいうまでもない。
もちろん、座学としての知識だけでなく、手を動かすための技術はもちろんのこと、歯科衛生士や歯科技工士といったスタッフの力に負うところも大きく、チーム医療としての総合力が問われる分野である(図2)。
さて、このようにグロースファクターの発売開始や各種外科治療機器の発展により、術式や概念が高度に発達してきた再生療法であるが、近年新たな局面を迎えつつある。それが3次元画像診断による診断と、回転切削器具に依存しないデバイスの出現である。
前者はコーンビームCTとそれに付随する画像診断ソフト、後者はレーザー、なかでも骨組織を含む硬組織処置が可能なEr:YAGレーザー治療の発達である。さらに、顕微鏡を含む拡大視野装置を併用することで、10年前では考えられないような治療が行えるようになりつつある。この3つの機器は現代歯科治療の“三種の神器”と言われているが、これらを使いこなすためには治療概念の転換、即ち我々歯科医療人としてのパラダイムシフトが不可欠である。
今回、症例を通じて概念の転換についても触れていきたい。

  • 再生の三角の概念図
    図1 再生の三角の概念。赤は阻害するもの、黄色は阻害も促進もする可能性のあるもの、青は促進する因子。
  • その再生の三角を取り囲む環境因子の図
    図2 その再生の三角を取り囲む環境因子。再生の三角そのものは患者の持つ因子であり、これを施術者の才能、治療用器具・器械・薬剤、そしてスタッフを含めたチームパワーが取り囲む。

■再生療法の術前診断としてコーンビームCTを用いた症例(症例1:図3~6

患者様は32歳女性、主訴は右上臼歯部の違和感で、当院に通院する患者様からの紹介で来院した。全身的特記事項はない。病態から侵襲性歯周炎と診断した。
本患者はブラキシズムが原因と思われる外骨腫が多く存在するが、デンタルレントゲンやパノラマレントゲンでは正確な骨の状態は分からない。
しかし、コーンビームCT(当診療所ではベラビューエポックス3Dを用いている)による3次元画像診断では、欠損を含む骨の状態が正確に術前診断できる。図4左上7部はパノラマレントゲンでは上顎洞病変や分岐部の骨欠損状態は読影が困難であるが、3次元画像診断では骨欠損状態がよく分かるのみならず、上顎洞粘膜が肥厚していることも確認ができる。
初診の時点では同歯は電気歯髄診断で8/10程度で歯髄保存も検討したが、上顎洞炎を併発していること、3次元画像上から口蓋根の付着が全くないことの2点を鑑み、抜髄することとした(図4)。
術前のボリュームレンダリング画像から頰側の骨隆起と上顎結節部に移植に用いることのできる十分な骨組織があることが確認できたため、同部の骨組織を採取してグロースファクターを併用して自家骨移植をすることとした。
術後6ヵ月の3次元画像では著しい骨様組織の再生像を認め、上顎洞粘膜の肥厚も治癒したことがわかる(図5)。同歯はⅢ度の分岐病変であり、従来の診断基準では抜歯あるいは口蓋根の抜根が必要である。
このような基準になるのは根分岐部のデブライドメントの完遂が不可能であるためであるが、3次元画像診断をもとに、術野到達性のよいEr:YAGレーザー+新型チップと拡大視野装置他の併用により、このような難易度の高い症例の再生治療も予知性が高くなりつつある。
レーザーの使用については後の項で述べる。他の3歯の第二大臼歯遠心部骨欠損も同様な方法で再生治療を行い、治療は奏功した(図6)。

  • レントゲン写真
    図3 左右上下顎第二大臼歯遠心部に垂直性の大きな骨欠損を認める。
  • CT画面
    図4 左上7は口蓋根と頰側遠心根にかけ、3度の分岐部病変を認める。同歯は感染による歯内歯周病変が原因と考えられる歯性上顎洞炎を併発しており、CT画面上で上顎洞粘膜の肥厚を認める。
  • CT画面
    図5 再生療法治療部位口蓋側には一部骨欠損を認めるものの、3度の分岐部病変はレントゲン的な再生によって硬組織で満たされている。上顎洞粘膜の肥厚も改善を認める。
  • 術前術後の比較写真
    図6 同患者の術前術後の比較。4本の第二大臼歯は全て再生療法によって硬組織で満たされている。今後、確定的外科処置(骨外科処置をともなう部分層弁による歯肉弁根尖側移動術)を行う予定である

■サイナスリフト、垂直GBRのリスクアセスメントとしてコーンビームCTを用いた症例

(症例2:図7~11
患者様は72歳女性、主訴は咀嚼障害で、固定性の補綴物を非常に強く希望された。
インプラント治療を適応するにあたり、パノラマレントゲンから垂直的骨増生が必要であり、サイナスリフトと垂直GBRを計画した。
図8は、左上臼歯部のコーンビームCTによる3次元画像である。サイナスリフトを行う場合、時として側方開窓部位上顎骨に後上歯槽動脈が走行することがあり、この部位をさけて開窓することが必要である。
術前の3次元画像で黄色矢印部に後上歯槽動脈の走行する骨孔を認め、ちょうど側方開窓部位に相当してしまうことが術前に診断された。 従来、骨が薄い場合は強いライトを当てるなどして血管を透かして診断しながら骨削除を行っていたが、術前にコーンビームCTを用いて画像診断することで、予め血管走行を把握し、安全にこの部位を避けて開窓後に上顎洞底を拳上することができた。
術後も血管損傷をしていないことが確認された(図10)。現在、骨再建外科は奏功し、インプラント埋入も終え骨結合を待っている状態である。

  • レントゲン写真
    図7 患者様はインプラントを強く希望され、埋入に先行して左右臼歯部のサイナスリフトと垂直GBRが計画された。
  • 左上臼歯部のコーンビームCTによる3次元画像
    図8 左上臼歯部のコーンビームCTによる3次元画像。黄色矢印に後上歯槽動脈の走行する骨孔を認める。ちょうど側方開窓部位に相当してしまうことが術前に診断された。
  • 上顎洞底を拳上した写真
    図9 術前の画像診断であらかじめ脈管系を避けて安全に開窓し、上顎洞底を拳上することができた。
  • 術前と術後の上顎洞の状態写真
    図10 術前と術後の上顎洞の状態。血管損傷をすることなく、安全にサイナスリフトと垂直GBRが行えた。
  • レントゲン写真
    図11 サイナスリフトおよびGBR9カ月後にインプラントを埋入し、現在オッセオインテグレーションを待つところである。

■第一大臼歯分岐部にEr:YAGレーザーを用いてデブライドメント後に再生療法を行った症例(症例3:図12~24

臼歯部分岐部病変の肉芽組織除去は困難であり、特に分岐部の幅が狭い症例では掻爬不可能なことも多い。キュレットなどの手用器具では掻爬できる領域が制限され、またエンジン等の回転機器や超音波スケーラー等の細いチップが分岐部に挿入できたとしても、肉芽組織に接触しなければ掻爬できない。また、これら機器はヘッドが大きく、治療部位を確認しながらの施術は困難であり、注水量も多いので大臼歯部は明視が困難であった。
しかしながら、レーザーは光が到達すれば掻爬可能であり、Er:YAGレーザーは注水下であれば硬組織に対して安全に使用できるため、明視下での処置が可能である。
アーウィンアドベールおよび側面+直線方向照射 が可能なチップPS600Tの組み合わせでは、分岐部肉芽を一塊で除去することが可能である(図12)。
Er:YAGレーザーは水(H2O)への吸収が高いため生体組織に対する蒸散能力が高く、しかも表層のみに起こり、軟組織にも骨などの硬組織にも安全に使用することが可能なことが特長である。
再生療法時におけるアーウィンアドベールの応用に当たっては、肉芽組織除去、骨整形、皮質骨穿孔などに適している。
本症例のように、従来の基準ではⅢ度の分岐部病変は抜歯または歯根分割やヘミセクションが外科適応であり、再生療法の適応ではない。再生療法の適応でない理由は、前述の如く根分岐部のデブライドメントが完遂不可能だからである。
しかし、本症例では術前の口腔内写真より十分な角化組織が存在し、歯肉弁で骨移植部位が確実に閉鎖できること(図13)、術前の3次元画像で明らかであるように、両隣在の歯槽骨頂が分岐部頂より高い位置にあり、閉鎖的な再生の場が得られること(図14)、加えて本レーザーと新型チップにより確実に分岐部のデブライドメントが可能なことから再生療法を選択した。
再生療法において、デブライドメント、再生の場(Scaffold)、細胞とシグナル因子に加え、オペの手技として重要なことは、歯肉弁の内縁上皮を適切に除去することである。
内縁上皮が除去できなければ如何に歯肉弁を歯冠側に移動したとしても、上皮性の付着となるか、歯肉の退縮を起こしてしまう。内縁上皮の除去は、従来のメスを使う方法ではテクニックセンシティブであり、時にパーフォレーションしたり、除去のしすぎで角化歯肉が少なくなってしまう。
我々はアーウィンアドベールと軟組織用側面照射チップ(S600T)を使うことで、マイクロメスの代わりに歯肉溝切開と歯根面のデブライドメントを兼ねて切開し、内縁上皮を蒸散させることで除去している。
その後、新型の側面(軟組織)および直線(硬組織)照射併用照射チップ(PS600T)を用いて分岐部の肉芽組織を分岐部底部の骨から一塊として掻爬して摘出している。
摘出後は各種拡大視野装置を用いて分岐部を明視し、感染性沈着物の除去完遂を確認してから再生療法を行っている(図19~22)。
経過は良好であり、術後4ヵ月では歯肉の位置は術前と同程度でリセッションは認めていない。硬組織に関しては分岐部には骨様の不透過像を認め、今後も注意深く観察する予定である。

  • チップの写真
    図12 歯周治療では、用途に合わせチップを選択する。特に、再生療法時にはPS600Tが有効である。
  • 術前の写真
    図13 症例3術前。再生療法をするに十分な角化歯肉と歯間乳頭の存在を認める。分岐部は露出していない。術前の適切な歯周基本治療で発赤や腫脹などがないことに注目。
  • 3D画像
    図14 コーンビームCTをボリュームレンダリング画像で3Dで見たもの。分岐部の頂部は隣在する歯槽骨頂より低い所に位置する。
  • コーンビームCTによる分岐部の断層写真
    図15 コーンビームCTによる分岐部の断層写真では、骨欠損は下に凸(コンベックスシェイプ)で、閉鎖的空間である再生療法の場を作りやすい形態であることが分かる。
  • アーウィンアドベール使用中の写真
    図16 アーウィンアドベールのチップは先が細く、狭くて深い分岐部にも十分挿入可能である。タービンのようにヘッドがないため視界を遮らないことに注目。
  • PS600Tを挿入した写真
    図17 同、PS600Tを挿入したところ。
  • 分岐部肉芽組織を除去する写真
    図18 スルスルと麺類を引き抜くような感じで分岐部肉芽組織が容易に除去できる。
  • 分岐部に骨補塡材とグロースファクターを混和したものを充塡する写真
    図19 分岐部に骨補塡材とグロースファクターを混和したものを充塡する。
  • 分岐部への充塡を終えた写真
    図20 分岐部に充塡を終えたところ。
  • 頰側歯根露出部に補塡材を移植した写真
    図21 頰側歯根露出部にも補塡材を移植した。
  • 縫合後の写真
    図22 縫合後。
  • コーンビームCTによる3次元画像診断写真
    図23 コーンビームCTによる3次元画像診断。分岐部の骨様組織の再生は順調なようである。
  • 術前と現在の口腔内写真
    図24 術前と現在の口腔内所見。リセッション等は認めない。骨移植によって頰側の厚みが増していることに注目。

■まとめ

症例1~3を通じて言えることは、これまで見えない世界がコーンビームCTの出現によって“見える世界”に突入したことである。これまでもマルチスライスのCT画像で3次元的な画像を捉えることは可能であったが、コーンビームCTとは画像の精度が全く異なる。
また、見えることによって、予めどのような再生療法を選択するのか、切開線の設定はどうするかが診断でき、そのことが見えるところに到達する機器の登場を生み、その機器のうちの一つがアーウィンアドベール+各種チップであろう。
21世紀になって10年目を迎えようとしているが、本当の意味で21世紀の歯科革命は、冒頭に述べた3種の神器であるCT、レーザー、拡大視野装置を使えるような思考回路を持つ、即ちパラダイムシフトを受け入れることであろう。