DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

TRENDS
『若年者のための歯肉炎ケア歯ブラシ「DENT.EX systema genki j」のプラーク除去と歯肉炎改善効果』
市村 光先生(フローラデンタルクリニック 院長)
藤原 僚子 衛生士(フローラデンタルクリニック)
奥 美恵子衛生士(フローラデンタルクリニック)

■目 次

■はじめに

近年、歯周病は成人だけが罹患する歯科疾患ではなく、小学生や中学生にも歯肉炎が増加しており、解決すべき課題と認識されている。保護者による仕上げ磨きを卒業する8歳前後から、大人用歯ブラシを使い始めるようになる15歳位までの年齢層は、一般的にきちんとブラッシングができず、プラークコントロールが十分でない。この時期はブラッシングへの意識の未熟さ、混合歯列期で凹凸の複雑な歯並びでブラッシングの難しさなどから、歯肉炎やう蝕のリスクが高まる時期である。
厚生労働省の平成17年の調査結果1)から、5~9歳で38.9%、10~14歳で51.2%の子供が歯周病の初期症状である歯肉の何らかの所見があり、歯周疾患に罹患している。このような理由から、きちんとブラッシングができない8歳から15歳位までの若年者でも、歯肉炎治療や予防ケアがしっかりできる歯ブラシが望まれている。
今年2月にDENT.EX systema genki j<製造:ライオン歯科材(株)>(図1)が発売されることになった。このsystema genkiシリーズの歯ブラシは、幅広ヘッドで接触領域が広く、歯面と歯頸部・歯肉が一緒に磨け、磨き残しが少なくなる。また、高度テーパード毛であるため、腫れた歯肉にも痛くなく、使用感も優しい歯ブラシ2)であり、歯周ポケットコントロールにも効果があると訴求されている。今回、若年者の歯肉炎ケア用に開発されたDENT.EX systema genki jが小学生や中学生の歯周疾患治療や歯肉炎罹患率の低下に役立つのではないかとの期待から、本歯ブラシのプラーク除去効果と歯肉炎改善効果を臨床的に評価したので報告する。

  • 図1 DENT.EX systema genki j
    図1 DENT.EX systema genki j

■観察方法

来院患者で、使用テストの協力に同意してくださる5名の患者(DENT.EX systema genki j使用グループ3名、対照歯ブラシ;DENT.EX kodomo 11S使用グループ2名)を被験者とした。使用開始前にPMTCを半分の歯(1/4顎ごとに2部位)に実施し、歯にプラークが付着していない状態を評価のスタートとした群と、残り半分の歯はPMTCを実施しなかった群とに分け、当該各歯ブラシを使用してもらい、染め出し後のプラークの付着状況と歯肉炎の状態を経時的に観察した。観察期間は約20日間とし、5日おきに来院、診査、観察した。
各被験者のブラッシング方法を統一するため、歯ブラシの使用前にスクラッビング法によるブラッシング指導を行った。毎日、朝晩食後3分間で指導通りのブラッシングを続けることとし、歯磨剤はCheck-Upkodomo マイルドフルーツ<ライオン歯科材(株)>で歯ブラシ植毛部の長さ分の使用を指示した。
(1)歯面へのプラーク付着程度の観察方法
①ペンスコープ<(株)モリタ製作所>(図2)を用いて、口腔細菌バイオフィルムを撮影3)
②プラーク染め出し後の口腔内写真から画像解析:来院時の口腔内写真でプラークの付着状況を定量化するため、メディカルニッコールレンズ付デジタルカメラを用いて撮影し、対象とした前歯部唇面について2値化によりプラーク付着率を抽出した。その後、対象歯面全面積とプラーク付着面積をキーエンス社VH-8000を用い計測4)し、プラーク除去率を算出した。
③O’Learyのplaque control record(PCR)
(2)歯肉炎の臨床的評価方法
①Löe & Silnessのgingival index(GI)

  • 図2 ペンスコープ
    図2 ペンスコープ

■観察結果

(1)プラーク除去効果
プラークの付着状況の変化について、ペンスコープを用いて観察した代表的な臨床例を図36に示す。
弱い橙色に蛍光発色している部位のプラーク付着は、2回目から5回目までの15日程度の長期の使用で、DENT.EX systema genki jを使用した患者の方が、対照歯ブラシを使用した患者と比較して、歯頸部、歯間部のプラーク除去効果が大きい傾向があった。
次に、予めPMTCを実施し、歯にプラークが付着していない状態をスタートとした部位において、画像解析による経時的なプラーク除去率を図7に示す。この結果から、DENT.EX systema genki j使用群は、比較的長期間の使用で徐々にプラーク除去率(%)の減少傾向が認められたが、ラウンド毛歯ブラシである対象歯ブラシ使用群は、減少傾向にばらつきがあった。
一方、PMTCを実施しない状態をスタートとした部位のプラーク除去効果については、両群とも明確な傾向は認められなかった(図8)。
さらに、プラーク付着の評価として、全歯面を対象にO’LearyのPCRを用いた結果を図9に示す。この結果からも、DENT.EX systema genki j使用群は、比較的長期間の使用で徐々にプラークの減少傾向が認められたが、対象歯ブラシ使用群は、一定の減少傾向は認められなかった。
また、PMTCを実施した部位でのPCRの経時的変化をみたところ、DENT.EX systema genki j使用群で使用期間の経過とともに徐々にスコアが減少する傾向がより明瞭に認められた(図10)。しかし、対照歯ブラシ使用群では、PCRスコアが低下しない傾向があった。
(2)歯肉炎改善効果
歯肉炎の状態変化について、、代表的な臨床例を図1114に示す。
この図から、DENT.EX systema genki j使用被験者の1回目の初診時に歯間乳頭部歯肉と唇側辺縁歯肉部に発赤、腫脹および易出血性部位が観察された(図11)が、使用20日間(5回目)で一部を除いてその炎症症状が改善されている(図12)。
一方、対照歯ブラシ使用被験者では、1回目の初診時に認められた同様の歯肉の炎症症状が、使用20日間(5回目)でも改善傾向が少なく、歯頸部の残存プラーク付着部に接する歯肉の炎症が認められる(図1314)。
歯肉の炎症の程度は、全歯面での観察ではLöe & SilnessのGIで評価した結果、DENT.EX systema genkij使用群と対照歯ブラシ使用群との著明な差は認められなかった(図15)。
一方、予めPMTCを実施し、歯にプラークが付着していない状態をスタートとした部位の経時的なGI値の変化を1回目の初診時のGI値を100%とし、各1回目のGI値に対する2回目以降のGI値を百分率換算し評価してみた(図16)。
DENT.EX systema genki j使用群では、3回目までにGI値の改善傾向が認められたのに対し、対照歯ブラシ使用群では、GI値の一定の改善変化を示さない傾向があった。

  • 図3 systema genki j(2回目)
    図3 systema genki j(2回目)
  • 図4 systema genki j(5回目)
    図4 systema genki j(5回目)
  • 図5 対照歯ブラシ(2回目)
    図5 対照歯ブラシ(2回目)
  • 図6 対照歯ブラシ(5回目)
    図6 対照歯ブラシ(5回目)
  • 図7 画像解析によるPMTC後のプラーク除去効果
    図7 画像解析によるPMTC後のプラーク除去効果
  • 図8 画像解析によるのPMTC未実施のプラーク除去効果
    図8 画像解析によるのPMTC未実施のプラーク除去効果
  • 図9 全歯面のPCRの経時変化
    図9 全歯面のPCRの経時変化
  • 図10 PCRの経時変化(PMTC部位)
    図10 PCRの経時変化(PMTC部位)
  • 図11 DENT.EX systema genki j(1回目)
    図11 DENT.EX systema genki j(1回目)
  • 図12 DENT.EX systema genki j(5回目)
    図12 DENT.EX systema genki j(5回目)
  • 図13 対照歯ブラシ(1回目)
    図13 対照歯ブラシ(1回目)
  • 図14 対照歯ブラシ(5回目)
    図14 対照歯ブラシ(5回目)
  • 図15 全歯のGI値の経時的変化
    図15 全歯のGI値の経時的変化
  • 図16 GI値変化率の経時変化(PMTC部位)
    図16 GI値変化率の経時変化(PMTC部位)

■DENT.EX systema genki j 使用症例

患者は、13歳女性、特記すべき既往歴なし、当院にて1年10ヵ月前より全顎的矯正治療を始めている。現在まで、本人持参による市販の歯ブラシにてセルフケアとブラッシング指導を続けてきたが、プラークコントロールが改善されなかった。
このため、図17に示すように、歯間乳頭部と辺縁歯肉の炎症改善が困難であった。2色染め出し液を用い、プラークを明示した結果(図18)、赤く染め出された比較的新しいプラークよりも、青く染め出された古いプラークの範囲が広く歯面前面と矯正用ブラケット周囲の沈着が著明であった。このため1日2回朝晩、食後3分間のDENT.EX systema genki j使用をスクラッビング法にて始めてもらった。
その後、使用20日目では、図19のように辺縁歯肉の炎症が改善傾向を示し、染め出し後も青染した古いプラーク部領域が著明に減少した(図20)。短時間のブラッシングでも広い範囲でかつ隙間の狭いところでも容易に毛先が挿入されるため、比較的長期の使用で、刷掃効率が高いと推測される。また、歯肉への感触が優しく、ブラッシング時の歯肉炎部への刺激が小さく、出血も少ないことから、本人はブラッシングが楽になったと述べている。この症例では、プラークコントロールに対するモチベーションの向上にも効果があったものと考えられる。

  • 図17 DENT.EX systema genki j使用(初診時)
    図17 DENT.EX systema genki j使用(初診時)
  • 図18 DENT.EX systema genki j使用(初診時;2色染め出し)
    図18 DENT.EX systema genki j使用(初診時;2色染め出し)
  • 図19 DENT.EX systema genki j使用(5回目)
    図19 DENT.EX systema genki j使用(5回目)
  • 図20 DENT.EX systema genki j使用(5回目;2色染め出し)
    図20 DENT.EX systema genki j使用(5回目;2色染め出し)

■考察

プラーク除去効果を簡便に把握するため、ペンスコープを用いた観察では、歯周病関連バイオフィルム中の細菌代謝産物のポルフィリンに照射された400nmの可視光線に対し、励起ポルフィリンが600~630nmの橙色蛍光発生するのを捉え、接写近接撮影で1~2歯単位での観察には、簡便であり、染め出し液利用による方法より染色後の水洗による影響を受けることなくプラークの付着を、正確に観察することができた。
すなわち、ペンスコープでの観察では、隣接面や歯頸部でのプラーク付着層が厚い場合の正確な観察ができ、プラーク層の厚いときの隣接面や歯頸部などの狭い隙間のプラーク除去効果がDENT.EX systema genki j使用が対照歯ブラシ使用よりも刷掃効果が大きい傾向がみられた。
プラーク染め出し後の前歯唇側歯面の画像解析によるプラーク付着の分析では、PMTC実施後の部位においてDENT.EX systema genki j使用のプラーク除去率が一定の改善傾向にあったのに対し、対照歯ブラシ使用では減少傾向にばらつきが大きかったのは、1歯面全体からプラークの付着を評価しているので、隣接面や歯頸部の隙間のプラーク層の厚い部分のプラーク除去が、長期の使用でDENT.EX systema genki jの方が徐々に確実に行われたためと推察される。
PMTC未実施部位では、プラーク付着層がより厚く、部位により厚さも付着強度も様々であったため、両歯ブラシ間の除去効果に明確な差がみられなかったと推察した。
次に、O’LearyのPCRによる評価では、全歯面対象にしたPCRスコアが経時的に一定の減少傾向が認められなかったのは、歯肉辺縁部のプラークは全歯面への1回のブラッシング時間が3分間では、プラーク層が厚いとDENT.EX systema genki j使用において除去しきれない可能性が考えられる。
対照歯ブラシ使用では、狭い隙間のプラーク除去効果がやや低いため、長期使用でも一定の減少傾向がみられなかったものと推察される。
一方で、PMTCを実施した部位のPCRの経時的変化が、DENT.EX systema genki j使用群では長期使用で一定の減少傾向が認められたのは、PMTC後再度付着したプラークは、層も比較的薄く、歯頸部や隣接面に付着したプラークでも高度テーパード毛により、容易に除去されたものと推察される。
歯肉炎改善効果に関しては、代表的な臨床例の写真にあるように、DENT.EX systema genki jによる歯肉辺縁と歯間乳頭部の炎症改善に効果があったのは、歯肉溝、歯周ポケットおよび歯間部の隙間の狭い部位に、対照歯ブラシよりもプラークコントロール効率が良かったためと考えられる。また、PMTCを実施した部位でのGIがDENT.EX systema genki j使用により安定した減少を示し、対照歯ブラシでは、一部GIの減少が安定しなかった。このことは、適切なPMTCを予め実施することで、プラーク層が薄くなり古い付着性のプラークの少ない環境をつくり、ここでは、DENT.EXsystema genki jにより、隙間の狭い部位でのプラークが効率的に除去されて、歯肉の炎症改善状態を持続できたと思われる。
高度テーパード毛歯ブラシのプラーク除去効果に関する研究は既に行われており、高度テーパード毛歯ブラシは、今回対照歯ブラシとして使用したラウンド毛歯ブラシよりも、プラーク刷掃効果が有意に高いことが確認されている5)
この利点を最大限に生かし、今回の8~15歳をターゲットにした歯ブラシが開発されたが、植毛の長さ(約10mm)、幅広のヘッドの形状から、成人や高齢者など解剖学的にも形態が適切な使用条件や口腔環境があると考えられる場合、年齢層を超えた使用が可能な歯ブラシと考えられる。また、高度テーパード毛を植毛した歯ブラシの使用感についても、歯ブラシ毛の挙動解析の結果、歯肉に優しいことが報告されている6)
今回の評価でも、被験者の各来院時に口頭によるアンケートで歯ブラシの使用感についてたずねると、DENT.EX systema genki jでブラッシングした3名は「気持ちが良い」、「チクチクしない」、「使いやすい」などの感想を述べていて、良好な使用感であることが確認されている。このように歯肉に優しい磨き心地であることが、毛先の適切な歯面への接触を維持し、1回の使用時間を長くできたため、確実なプラーク除去が行われたと考えられる。
また、若年者の手の大きさに合わせた形に把持部が設計されているため、歯面への毛束の圧接強さが適切で一定となるようである。
臨床症例に示したように、DENT.EX systema genki jは、プラークコントロールが困難なケースでも、歯肉への接触感、手のひらへの密着性の向上による歯面への一定の圧接力で安定したブラッシングストロークが得られ、プラークコントロールの改善とともに、ブラッシングへのモチベーションの向上に効果があったと考えられる。高度の歯肉炎、重度の歯周炎など、他の歯ブラシではブラッシング時の歯肉の疼痛を訴えるケースに対しても、使用効果が期待できるであろう。

■まとめ

今回の臨床研究を通じて、幅広ヘッドと高度テーパード毛で、接触領域が広く、歯面、歯頸部および歯間部が一緒に磨け、効率のよい歯肉炎の改善が可能であり、高度テーパード毛は、炎症による浮腫性、易出血性および疼痛感受性の高い歯肉にも刺激が少なく、痛みの少ない使用感の優しい歯ブラシであるため、患者のプラークコントロールモチベーションの高揚に役立つことが把握できた。
すなわち、DENT.EX systema genki jは、
①一度に広範囲の歯頸部・歯間部のプラーク除去に優れているため、歯肉の炎症も効率よく軽減できる。
②8~15歳の歯肉炎患者は、ブラッシング時に痛みを感じるとブラッシングのモチベーションが極端に下るが、本歯ブラシの優しい磨き心地は、モチベーション低下を回避することができる。
③ブラッシングへの意識の未熟さや混合歯列期で凹凸の複雑な歯並びに十分対応できる。等、若年層の歯肉炎罹患改善に有効なツールであると示唆された。
ライオン歯科材(株)がこのようなターゲットを絞った分野への歯ブラシのアイテムを導入したことで、各歯科医院でのよりきめ細かなオーダーメイドの口腔ケア処方手段が可能になるであろう。今後も、より一層のオーダーメイド医療と予防のための製品開発に期待するところである。

参考文献
  • 1) 厚生労働省:歯科疾患実態調査(2005年).
  • 2) 宮下英一郎、他:LDA Research 16「DENT.EX systema genki」、歯界展望、Vol.107 No.4:666-671, 2006.
  • 3) 武内博朗、他:口腔内カメラを用いたバイオフィルム検出̶2.光学的手法による歯周病関連バイオフィルムの検出方法の検討、the QuintessenceVol.24 No.3 : 574-579, 2005.
  • 4) 市村光:TRENDS学術リポート 歯科用美白歯磨剤「Brilliant more」の臨床的ステイン除去効果.Dental magazine No.128:18-21, 2009.
  • 5) 藤川謙次、他:高度テーパード毛を植毛した歯ブラシのプラーク除去効果に関する研究.日歯周誌36(1):206-214,1994.
  • 6) 伊藤龍、他:非線形有限要素法による歯ブラシ毛の挙動解析.日歯周誌36(1):188-196,1994.