DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

CLINICAL REPORT
ダイアグノデントペンによるう蝕のメジャーリング
中川 孝男

■目次

■はじめに

視診や触診の感覚を使って、う蝕を診査することは有効な手段の1つである。しかし感覚に頼るため初心者と熟練者の診査に差が出る。診査では正しい検査方法を行えば、誰でも同じ結果が得られる再現性が必要である。診査、診断、治療の流れの中で診査が正しくなければ、治療の方向性に誤りが生じる危険性がある。
AL‑SEHAIBANY, WHITE & RAINEYの「鋭利な探針によるう蝕病変部の検出の信頼性は25%である」の報告もある。探針よる検査は脆弱なエナメル質を破壊すると共にプラークをう蝕の深部に送り込むことになり、エナメル質の再石灰化の機会を奪うことになる。
X線写真によるう蝕の診査ではROCK WP, KIDD EAM.が「象牙質で2~3mm以上の深さ、ないしは頰舌径の1/3の長さの病変でなければ、X線写真での検出は困難である」と報告している。デンタルのX線写真では重積像となるため、う蝕以外の健康な部分も写り込み、う蝕を小さく見せる。
ダイアグノデントは信頼性も高く便利なう蝕検査器で、ドイツやアメリカでは数年前より発売されており好評である。ダイアグノデント ペンと従来のダイアグノデントとの違いはコードレスでコンパクトになっていること、そして隣接面用のチップが追加されたことが挙げられる。今回はダイアグノデント ペンの使用法とキーポイントについて解説する。

■ダイアグノデント ペン

ダイアグノデントはドイツのUlm大学のHibst、スイスのLussiらとKaVo社が開発したう蝕検査器で、それを発展させた物がダイアグノデント ペン(図1)である。
従来器を大幅に小型化しているが、ペンと言うよりハンドピースを一回り大きくした形態である。従来器(ダイアグノデント)が単3乾電池を5本必要であるのに対して、ダイアグノデント ペンでは1本だけになっている。
ダイアグノデント ペンの先端部に取り付け、歯に接触させる部分がサファイア製(従来器はガラス)のライトプローブで2種類用意されている。一つは咬合面の裂溝用(図2)で、先端は平坦で約1mmの直径になっている。他の一つは隣接面用のライトプローブ(図35)で、先端は隣接面に挿入し易いように近心と遠心面の部分に面取され、片側が鋭角でもう一方が鈍角の尖った楔状の形態をしている。
ライトプローブの本体への留め金の部分に赤い点と黄色い点が対称にあり、赤い点の方が鋭角でこの部分でのみ測定可能である。隣接面に挿入する際には、近遠心の方向性があり、赤い点をリングカフの方向に向けた時は手前の歯の遠心面を測定することになる。黄色い点をリングカフに向けると奥の歯の近心面を測定することになる。
ダイアグノデント ペンは咬合平面に対して水平に使用する必要がある。すなわち隣接面用のライトプローブは下部鼓形空隙を形作る隣接歯の近心面と遠心面の測定に使用する。
診査に使用するレーザーは655nmで1mWのパルス波の赤色レーザーを使用している。このレーザーはレーザーポインターに使用するダイオードレーザーと同じ光である。
このレーザー光が歯に当たり、反射した光(反射蛍光)は本体に入る。700~800nmスペクトラム領域において、蛍光強度は健全歯質よりもう蝕の歯質の方が大きくなることを利用している。そのため蛍光物質の入った物に対して良く反応する。例えば白い繊維には反応は少ないが、蛍光物質の入った繊維(色の付いた服)では反応が大きく出る。
ダイアグノデント ペンはそれ単体で、測定から測定値の表示まで可能である。しかし、臼歯部や隣接面の計測を行いながらディスプレイの測定値を見ることは困難である。そのためセットとして赤外線受信機内蔵の外付けのディスプレイ(図6)が用意されている。
ダイアグノデント ペンには、赤外線の送信機が標準装備され、測定値のMOMENTとPEAKを外付けのディスプレイに表示することができるため便利である。赤外線の送受信器は、テレビのリモコンと同じで障害物がない限り1.5mくらいの到達距離がある。しかし、指向性があるため、外付けのディスプレイの裏に回ると受信できなくなるので、必ず被験者の方向にディスプレイを向ける必要がある。

  • ダイアグノデント ペンの写真
    図1 ❶ライトプローブ ❷リングカフ ❸ON OFFスイッチ ❹セーブボタン ❺±ボタン ❻ MENUボタン ❼ディスプレイ
  • 裂溝用ライトプロープの写真
    図2 裂溝用ライトプロープ
  • 隣接面用ライトプローブの写真
    図3 隣接面用ライトプローブ
  • 隣接面用ライトプローブの黄色い点がある側の写真
    図4 隣接面用ライトプローブの黄色い点がある側では測定できない。
  • 隣接面用ライトプローブの赤い点のある側の写真
    図5 隣接面用ライトプローブの赤い点のある側からレーザーが出て、測定可能である。
  • 外付けのディスプレイの写真
    図6 外付けのディスプレイ

■キャリブレーション(校正)と0セッティング

2台の測定器で同じ時間に同じ物を計測した時、誤差の範囲を越えて測定値が違っている場合や、1台の測定器でも測定する度に値が異なる場合、それらの測定値は意味をなさない。キャリブレーションはそれぞれの測定器の読みずれを把握し、共通の測定基盤を作る行為である。
ダイアグノデント ペンでは従来品のダイアグノデントに比較して簡単にキャリブレーションできるようになっている。① スタート/ストップ ボタンを押して電源をONにする(図7)。
② MENUボタンを押して(図8)、装着しているライトプローブとディスプレイに表示している番号(裂溝用:1、隣接面用:2)を±ボタンを使って、合わせる。
③ セーブボタンを押すと(図9)、初めMOMENT 0PEAK 0 が表示され、次にライトプローブ番号、キャリブレーションマークと初期設定したセラミックリファレンスの番号の前にCが付いて表示される(図10)。
④ セラミックリファレンスの中央部にライトプローブを接触させる。
⑤ キャリブレーションが成功すると、セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される(図11)。失敗するとERROが表示される(図12)。
隣接面用のライトプローブではセラミックレファレンスとアダプターを装着する(図13)。MENUボタンを押してライトプローブ番号を±で2に合わせ、セーブボタンを押す。アダプターの小さい穴に隣接面用のライトプローブを通して、セラミックリファレンスに接触させる。キャリブレーションが成功すると、セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される(図14)。
測定の前には、患者ごとに0セッティングする必要がある。健全な歯面にライトプローブを接触させライトカフ部を押すと、「ピー」と音が鳴り、ディスプレイにMOMENT 0 PEAK 0が表示される。患者個々の健全歯質が0セッティングされ、測定が可能となる。

  • スタート/ストップ ボタンを押す
    図7 スタート/ストップ ボタンを押して電源をONにする。
  • MENUボタンを押す
    図8 MENUボタンを押してキャリブレーションを呼び出す。
  • セーブボタンを押す
    図9 セーブボタンを押すと初めMOMENT 0 PEAK 0が表示される。
  • キャリブレーションマークと初期設定したセラミックリファレンスの番号の前にCが付いて表示される
    図10 キャリブレーションマークと初期設定したセラミックリファレンスの番号の前にCが付いて表示される。
  • セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される
    図11 キャリブレーションが成功すると、セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される。
  • 失敗するとERROが表示される
    図12 失敗するとERROが表示される。
  • セラミックレファレンスとアダプターを装着する
    図13 隣接面用のライトプローブではセラミックレファレンスとアダプターを装着する。
  • セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される
    図14 キャリブレーションが成功すると、セラミックリファレンス番号がMOMENT PEAK に表示される。

■臨床診査

初めてダイアグノデント ペンで診査をする患者には抜去歯牙を用いて測定のデモ(図15)をする。測定値の有効性について説明し、理解させる必要がある。口腔内を診査して、歯石、プラークの存在は蛍光性を示し誤った測定値となるため、測定の前にはスケーリングとプラークコントロールを終わらせる必要がある。
ダイアグノデント ペンに裂溝用のライトプローブを装着してキャリブレーションと0セッティングを行い、測定を開始する。う蝕の好発部位である裂溝や窩の部分は丁寧に測定する。ダイアグノデント ペンは歯の2mmの深度まで測定することができるため、コンタクト部のう蝕も辺縁隆線付近を測定することにより見つけることが可能である。全体的なう蝕の状況を知る意味から初めに裂溝用のライトプローブで測定してから、次に隣接面用のライトプローブに交換して隣接面部を測定している。
測定値はその数字により蛍光性の強さを示しているのであって、必ずしもう蝕の大きさを示しているわけではない。測定時に誤った測定値を生じてしまうものには、プラーク、歯石、コンポジットレジン充塡、エナメル質減形成、テトラサイクリン着色歯、不適合な修復物・補綴物のセメントライン、等が挙げられる。また、う蝕のない部分をエナメル質で0セッティングしても露出した歯根を測定すると必ず測定値は30を越えることになる。健全な歯根の部分にライトプローブを接触させて、リングカフを押し0セッティングすることをお勧めする。
測定後、測定値は全て記録し、リコールの度に測定してデータを残す必要がある(図16)。測定値はあくまでもデータなので治療の決断は歯科医師の診断が重要である。
測定値0~13は健全歯である。測定値が14~では全てチャートに記入して、リコール時に前回の測定値と比較して予防を継続するか、治療をするかを選択する。測定値が14~29ではエナメル質は再石灰化の可能性がある。再石灰化させるにはバイオフィルムを検出し破壊することが重要である。
染色液を用いてバイオフィルムを確認して、歯ブラシや補助的清掃道具を用いて除去する。再度染色して、取り残しの場所を確認し除去する。ラバーカップでエナメル質の表面を滑沢することにより唾液による再石灰化を促進する。さらにラバーカップで除去できない叢生歯のある歯列、小窩裂溝、歯間部、補綴物の間隙などには、エアーフローを用いてバイオフィルムを除去する。3DSでフッ素を塗布して積極的な予防を行う必要がある。
30~は再石灰化が不可能とされている(図1719)。X線写真を撮影し、う蝕の進行状況を確認後(図20)、最小侵襲治療を行う。エナメル質を切削後にはう蝕検知液を用いてう蝕部分を染め出し、染め出されたう蝕のみを除去する(図2125)。う蝕を除去後に象牙質の部分をダイアグノデント ペンで測定しても0セッティングした条件が違うため誤測定になる。
私がこの装置を使用して感じることは、自分の視診がどれだけう蝕を見落としているかを痛感することである。ダイアグノデント ペンで測定すると測定値が30~になるのに本当にこの場所にう蝕が存在するか不安を感じる。ただその全てで、う蝕が存在した。

  • 抜去歯牙を用いて測定のデモをする写真
    図15 初めてダイアグノデント ペンで診査をする患者には抜去歯牙を用いて測定のデモをする。
  • 測定したデータ
    図16 測定後測定値は全て記録し、リコールの度に測定してデータを残す必要がある。
  • 症例1:術前の写真
    図17 症例1:術前。4の遠心面が疑わしい。皆さんはここを自信を持って削れますか?
  • PEAKが77の数値になった写真
    図18 4の遠心面を測定すると、PEAKが77の数値になった。
  • エナメル質を削り、軟化象牙質をある程度除去したところでう蝕検知液で染め出したところ
    図19 エナメル質を削り、軟化象牙質をある程度除去したところでう蝕検知液で染め出したところ。
  • レントゲン写真
    図20 症例2:「左下の奥歯が甘い物を食べると凍みる」を主訴で来院された初診の患者。レントゲン写真。
  • 咬合面、隣接面の写真
    図21 5の咬合面、隣接面には疑わしい所はない。隣接面用のライトプローブの向きに注意( 5の遠心面を計測する時は、赤い点は手前にする)。
  • 歯間部に隣接面用のライトプローブを挿入した写真
    図22 56の歯間部に隣接面用のライトプローブを挿入。
  • PEAK値が82、現在測定している部位が80(MOMENT)
    図23 PEAK値が82、現在測定している部位が80(MOMENT)である。
  • スプーンエキスカで除去する写真
    図24 エナメル質を切削するとう蝕が存在していた。スプーンエキスカで除去。
  • 軟化象牙質を除去後、確認のためう蝕検知液で染め出して、う蝕を取り除いた写真
    図25 軟化象牙質を除去後、確認のためう蝕検知液で染め出して、う蝕を取り除く。

■おわりに

X線ではある程度の大きさにならないと判断できない。エナメル質を壊す危険性があるため探針も使用できない。この状況でう蝕を経過観察、予防、治療の選択は困難である。
私達GPがう蝕を科学的に測定できる測定器はダイアグノデントと今回発売されるダイアグノデント ペンのみである。欧米ではペリオ用のライトプローブも発売されており、歯肉縁下の歯石も測定することも可能である。
前述したように歯科医師がう蝕を見つける能力はう蝕の総数の25%で、ダイアグノデント ペンを使用することで90%になる。う蝕の探知能力が65%上がることは、歯科医師にとっても、国民の健康にとっても良いことである。