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TRENDS

「クリアフィルトライエスボンド ND」 について

クラレメディカル株式会社 歯科材料事業部

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■目次

■はじめに

現在の歯科治療において、コンポジットレジンを使用しての充塡修復は日常的な症例となり、各社から多くのコンポジットレジンならびにボンディング材が開発され、臨床使用がなされている。
クラレメディカルでは、1978年に「クリアフィル ボンド システムF」(現在は販売終了)を発売して以来、歯科医師の先生方からのニーズに応えるべく、製品の改良を行ってきた。
リン酸エッチングを用いたトータルエッチングから、現在では、セルフエッチング型のボンディングシステムへと進化し、その代表的な製品である「クリアフィルメガボンド」(以下「メガボンド」)は国内外で高い評価を得ている。
「メガボンド」以降もプライマーに抗菌性モノマー、ボンドに表面処理フッ化ナトリウムを配合した「クリアフィル メガボンドFA」、1ステップタイプの「クリアフィル トライエスボンド」、1ステップデュアルキュア型の「クリアフィル DC ボンド」を開発し、様々な臨床用途・ニーズに対応する製品を展開している。
そしてこの度、「クリアフィル トライエスボンド」をリニューアルしたセルフエッチングボンド「クリアフィルトライエスボンド ND」(以下「ND」)を発売する(図1)。

  • クリアフィル トライエスボンド ND 単品
    図1 クリアフィル トライエスボンド ND 単品

■「クリアフィル トライエスボンドND」の特徴

Ⅰ. セルフエッチングボンドに求められる機能を1ボトルで実現

歯質への接着を確立するためには①エッチング(スメアー層の溶解・歯質の脱灰)、②プライマー(モノマーの浸透、接着性モノマーの拡散)、③ボンド(脱灰された歯質のコーティング)というステップが必要である。
「メガボンド」に代表される2ステップのセルフエッチングシステムでは、①②のエッチングとプライマーの機能をセルフエッチングプライマーに集約している。
さらに、1ステップボンドでは①②③の機能を1ボトルに集約している。
しかし、1ステップボンドには、液材の分離という課題がある。①②のセルフエッチングプライマーの働きをする組成が親水性であるのに対し、③のボンドの働きをする組成が疎水性であるため、例えるならサラダドレッシング中の水と油のように均一に分散せずに、分離をしてしまうことが原因である。
「ND」では成分を均一に分散する技術により、容器中、塗布時、処理時のいずれにおいても液材の分離が生じない工夫がなされている。その結果、親水性成分(セルフエッチングプライマー機能)と疎水性成分(ボンド機能)が、一緒に歯質に浸透することで、歯質の脱灰、接着性モノマー・架橋性モノマーの浸透が均一に行われ、安定した樹脂含浸層の形成が期待される(図2)。

  • クリアフィル トライエスボンド NDの機能
    図2 クリアフィル トライエスボンド NDの機能

Ⅱ. 安定した操作余裕時間

「ND」は溶媒にエタノールを採用することにより、液材を採取7分後(遮光下、25℃)まで使用が可能である。滴下後の使用可能時間が長いため、複数歯の症例に用いることも可能となっている(図3)。
※ボンド滴下後の遮光にはクリアフィルシリーズのボンディング材のセットに付属の遮光板により、容易に遮光ができる(図4)。

  • 採取直後と採取7分後の歯質への引張接着強さ(牛歯象牙質)
    図3 採取直後と採取7分後の歯質への引張接着強さ(牛歯象牙質)
  • 遮光
    図4 遮光

Ⅲ. 各操作ステップにおける「ND」の特性

・液材の粘性
「ND」はややトロッとした液性状を有している。この液性状により、ペンキを壁に塗るように、窩壁などへも液材が留まることで、セルフエッチングプライマーの機能を行う歯面処理のステップ(塗布後の20秒間処理)において、脱灰やモノマーの浸透などを窩洞内で満遍なく行うことが可能となっている(図5)。

・セルフエッチングプライマーとボンドの成分が一緒に歯質へ浸透
前述のように「ND」は親水性成分(セルフエッチングプライマー機能)、疎水性成分(ボンド機能)が分離せず、均一に分散された状態で歯質の脱灰、接着性モノマー・架橋性モノマーの浸透が行われることで、安定した樹脂含浸層の形成が期待される(図6)。

・薄膜(5~10μm)で強度の高いボンド層
「ND」はボンド層を強圧エアブローにて乾燥することで、水・エタノールが揮発し、5~10μmの薄膜なボンド層が得られる。この特性は前歯部の小窩洞など、ボンド層に薄膜を要求されるケースなどで、より効果的であると考えられる(図78)。
また、ボンド中にフィラーを含有しており、光重合を行うことで、強度の高い被膜が形成される(図9)。

  • 窩洞への塗布 混和皿に採取し、スポンジ小片等で窩洞に塗布する。※適度な粘性を有しているので、液が窩壁に留まる。
    図5 窩洞への塗布
    混和皿に採取し、スポンジ小片等で窩洞に塗布する。※適度な粘性を有しているので、液が窩壁に留まる。
  • 20秒間処理 ※セルフエッチングプライマー処理(歯質の脱灰・接着性モノマーの浸透)などが行われる。
    図6 20秒間処理
    ※セルフエッチングプライマー処理
    (歯質の脱灰・接着性モノマーの浸透)などが行われる。
  • ボンドのエアブロー 強めのエアブローで5秒以上飛散しないようにバキュームで吸引しながら、薄く伸ばすようにしっかりと乾燥させる。※ボンド中の水、エタノールが揮発することで、約5~10μmの薄膜なボンド層が得られる。
    図7 ボンドのエアブロー
    強めのエアブローで5秒以上飛散しないようにバキュームで吸引しながら、薄く伸ばすようにしっかりと乾燥させる。※ボンド中の水、エタノールが揮発することで、約5~10μmの薄膜なボンド層が得られる。
  • SEM写真
    図8 SEM写真
  • 光照射 乾燥後のボンド層に光照射を行うことで高強度な被膜を作る。
    図9 光照射
    乾燥後のボンド層に光照射を行うことで高強度な被膜を作る。

Ⅳ. ポーセレン、硬質レジンの口腔内リペアにも使用可能

「ND」は別売の「クリアフィル ポーセレンボンド アクチベーター」(以下「アクチベーター」)との等量混和により、ポーセレンや硬化した硬質レジンに対して化学的に接着するシランカップリング材として使用できる。
作用機序としては、「アクチベーター」に「ND」を加えることによって、「アクチベーター」が「活性化」される。
また、「ND」と「アクチベーター」との混和液はシランカップリング材としてだけでなく、歯質接着性も有することから、前装冠が装着された後、歯肉退縮などにより、根面が露出した症例においても歯質・ポーセレン・金属の混在面への処理を一括して処理を行うことが可能である(図10)。

  • クリアフィル ポーセレンボンド アクチベーター
    図10 クリアフィル ポーセレンボンド アクチベーター

Ⅴ. 接着力

「ND」はエナメル質・象牙質、各種修復材料に対して、バランスの良い高い接着性を有している。
また、リン酸エッチングを使用するシステムと比較し、歯質の脱灰量が少ない、マイルドな脱灰で接着するシステムである。つまり、従来のリン酸エッチングが機械的な維持にも比重を置いたシステムであったのに対し、接着性モノマーMDPによる歯質(アパタイトなど)との優れた化学結合を活用したシステムであるといえる(図11)。

  • 歯質への引張接着強さ(牛歯)
    図11 歯質への引張接着強さ(牛歯)

Ⅵ. 使いやすさを考慮した容器・包装

「ND」ではボトルに使用ステップの概要について記載。処理時間などの確認が行いやすいデザインを採用。また、セット箱を組みかえることで、収納に便利なトレイとして使用可能である(図1214)。

  • ボトルの表記
    図12 ボトルの表記
  • クリアフィル トライエスボンド ND 収納トレイ
    図13 クリアフィル トライエスボンド ND 収納トレイ
  • クリアフィル トライエスボンド ND セット
    図14 クリアフィル トライエスボンド ND セット

■まとめ

「クリアフィル トライエスボンド ND」はユーザーフレンドリーな操作性で、高い接着性を発揮するセルフエッチングボンドであり、上記のような様々な特性を有した製品である。先生方の臨床の一助となることを期待している。

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