DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
クリアフィル トライエスボンド NDを用いた接着性審美修復
国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 山田 敏元 / 杉崎 順平 / 田島 賢一

■目 次

■はじめに

クラレ社によりレジンボンディング材が開発され、故総山孝雄、東京医科歯科大学名誉教授、日本学士院会員の臨床応用指導によって、クリアフィル ボンドシステムFという製品がモリタ社により発売されて以来、はや30年が過ぎようとしている。
初期の製品ではフェニールPという機能性モノマーが用いられていたが、その後の改良により、現在では、より分子量の大きなMDPが導入されている。また既に初期の製品よりリン酸水溶液によるトータルエッチング法と相俟って本邦における臨床家の圧倒的支持を得て、レジン修復に広く用いられてきた。その臨床性能は、機械的保持形態無しに高い口腔内保持率を示し、それまでのレジン修復の窩洞形態をも根本的に一新する画期的なものであり、現在広く臨床で唱えられているMI(ミニマムインターベンション)の先駆をなすものであった。
その後、可視光線重合システムの採用により、クリアフィル フォトボンドが開発され、さらに広く臨床家に用いられることとなった。また一時期、コンポジットレジンペーストの窩洞粘着性を向上させるため、低粘性のレジンペーストを加えて、3ステップとしたクリアフィル ライナーボンドが開発市販された。次いでその後、セルフエッチング機能を持たせ、窩洞処理の後に水洗を必要としない、世界初となる2ステップのクリアフィル ライナーボンドⅡが開発市販された。この時も先のトータルエッチング法のクリアフィル ボンドシステムFと同様、東京医科歯科大学の保存修復学教室を除いて、他の歯科大学の教職にある臨床家からはエナメル質壁のエッチング効果が小さいなどの大きな非難が起こったが、今回も同様に本邦における臨床家の圧倒的支持を受け、広く臨床に用いられるようになった。
さらに本邦を含め、世界の歯科材料会社から、類似のセルフエッチング レジンボンディングシステムが開発市販され、最近ではレジンボンディング材といえば、セルフエッチング レジンボンディングのことを指すまでになっている。
クラレ社は、ライナーボンドⅡ、ライナーボンドⅡΣを同じく2ステップのクリアフィル メガボンド(国外ではクリアフィル SEボンド)に発展させ、その後さらに改良を加えて、1ステップのクリアフィル トライエスボンドを開発するに至った。これらのセルフエッチング レジンボンディングシステムの歯質接着性能は、従来の引張り接着強さで20MPaを越え、世界の基礎、臨床を問わず研究者の間では、メガボンドの性能がディファクトスタンダード(ゴールドスタンダード)として、いまだに認められている。
最近、クリアフィル トライエスボンドの臨床上のさらに有利な特徴を、一段と強めたクリアフィル トライエスボンドNDが開発市販された。本論では、このクリアフィル トライエスボンドNDの特徴と、臨床応用について概説した。

■クリアフィル トライエスボンドNDの特徴

1)クリアフィル トライエスボンドNDは、セルフエッチングプライマーとボンドの機能を併せもつ1ステップの1液型レジンボンディング材であり、窩洞形成終了後、水洗乾燥した窩洞壁面に十分塗布し20秒間処理する。
次いで強めのエアーブローを5秒間行い薄く延ばす。光照射は従来のハロゲンランプで10秒間、プラズマアークでは5秒間行う。
2)クリアフィル トライエスボンドNDの硬化したボンド層の厚さは5~10ミクロンとなっており、均一な膜層を形成することができる。
3)クリアフィル トライエスボンドNDは、ボンドを採取後、遮光下で7分まで使用可能であり、1回の採取で3~4窩洞の修復処置を同時に行うことができる。
これは特殊なクラレ社の分散技術により、親水性成分と疎水性成分の相分離を起こさないように設定しているからである。
4)クリアフィル トライエスボンドNDは、ポーセレンボンドアクチベーターとの混和によりポーセレン修復物の補修修復に用いることができる。すなわち、シランカップリング処理とボンディング操作を同時に行うことができる。

■クリアフィル トライエスボンドNDを用いた接着性審美修復の臨床

最初にクリアフィル トライエスボンドNDとクリアフィル マジェスティLVを用いた前歯部露出根面のう蝕の複数歯同時修復の実際について図111に示す。
1回のボンド採取で十分に3歯の修復が問題なく行われた。
図1218に前歯部メタルボンド修復歯の歯頸部根面露出に伴う複数歯の補修修復の症例を示す。
本症例では、トライエスボンドNDとポーセレンボンドアクチベーターの混和物がボンディング材として用いられた。
図1921には前歯部3級窩洞の症例が、図2225図2628にそれぞれ臼歯部2級と1級の審美修復の症例を示す。

  • 左側前歯部3歯の露出根面のう蝕の術前写真
    図1 左側前歯部3歯の露出根面のう蝕の術前。
  • 通法に従ってMIダイヤモンドポイントによって窩洞形成する写真
    図2 通法に従ってMIダイヤモンドポイントによって窩洞形成。
  • 窩洞完成写真
    図3 窩洞完成。
  • クリアフィル トライエスボンドNDの塗布する写真
    図4 クリアフィル トライエスボンドNDの塗布。3窩洞同時処理。
  • 光照射する写真
    図5 20秒処理後、比較的強めのエアーブローの後、10秒光照射。
  • クリアフィル マジェスティLVを充塡する写真
    図6 クリアフィル マジェスティLVの充塡(A3.5)。
  • 光照射する写真
    図7 光照射20秒。
  • 光照射終了後の写真
    図8 光照射終了。
  • 仕上げを行う写真
    図9 仕上げ。
  • 研磨する写真
    図10 研磨。
  • 修復完了後の写真
    図11 修復完了。極めて自然で審美的な修復が短時間のうちに完了した。
  • 右側前歯のメタルボンド修復歯の歯頸部根面露出とう蝕の症例写真
    図12 右側前歯のメタルボンド修復歯の歯頸部根面露出とう蝕の症例。
  • 窩洞形成写真
    図13 通法に従って窩洞形成。
  • トライエスボンドNDとポーセレンボンドアクチベーターの混和物によりボンディング処理後の写真
    図14 K‑エッチャントにより2、3秒処理の後、トライエスボンドNDとポーセレンボンドアクチベーターの混和物によりボンディング処理。
  • オペーカーの塗布と光照射後の写真
    図15 オペーカーの塗布と光照射。オペーカーは重合深度が浅いので十分に光照射。
  • クリアフィル マジェスティの充塡後の写真
    図16 クリアフィル マジェスティの充塡(OA2)。
  • 仕上げ後の写真
    図17 仕上げ後。
  • 研磨後の写真
    図18 研磨後。
  • 前歯部3級の症例の術前写真
    図19 前歯部3級の症例の術前。
  • 窩洞完成後の写真
    図20 窩洞完成。
  • 修復終了後の写真
    図21 修復終了(マジェスティA3)。
  • 下顎小臼歯部2級の症例の術前の写真
    図22 下顎小臼歯部2級の症例の術前。
  • 窩洞完成後の写真
    図23 窩洞完成。
  • コンポジタイト3Dによるマトリックスの挿入写真
    図24 コンポジタイト3Dによるマトリックスの挿入。
  • 修復終了の写真
    図25 修復終了(マジェスティA3)。極めて審美的な修復が完成された。
  • 下顎大臼歯部1級の症例の術前写真
    図26 下顎大臼歯部1級の症例の術前。
  • 窩洞完成後の写真
    図27 窩洞完成。
  • 修復終了の写真
    図28 修復終了(マジェスティA3)。極めて審美的で自然な修復が完成された。

■まとめ

歯頸部の楔状欠損、臼歯部咬合面など、日々の臨床では往々にして複数歯の窩洞を同時に修復処置を行うケースに遭遇することが多い。このような場合、トライエスボンドNDは非常に有効に用いることができる。
一般的にセルフエッチング レジンボンディング材は、溶液採取後、比較的早期に使用しない場合には相分離を起こし易いなど欠点が認められたが、本材はこのような欠点を有せず、まさに理想的なシステムと言える。
クリアフィル トライエスボンドNDが、本邦の歯科臨床で益々多用され、国民の口腔健康の増進に役立つことを願って稿を閉じる。

参考文献
  • 1) 編集代表 山田敏元:接着性コンポジットレジン修復の基礎と臨床. ヒョーロン・パブリッシャーズ, 東京, 2007.