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ダイアグノデント ペン ペリオプローブの特長

愛知学院大学歯学部保存修復学講座 教授 千田 彰 / 准教授 冨士谷 盛興

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目 次

DIAGNOdent pen(ダイアグノデント ペン)にペリオプローブが登場

歯のう蝕の検査機器として一定の評価と実績をもつDIAGNOdent pen(ダイアグノデント ペン)の歯周ポケット内用に開発されたPerio Probe(ペリオプローブ)がいよいよ日本の臨床に紹介された(図1)。
このプローブは、ダイアグノデント ペン本体に、咬合面や隣接面のう蝕検査用のプローブと同様に取り付けて使用する(図2)。
ダイアグノデント、ダイアグノデント ペンはいずれもHibstの研究1)に基づいて開発されたレーザー蛍光強度測定診断器であり、波長655nmの半導体レーザー(赤色)を被検査体(歯質)に照射し、その歯質から反射した蛍光の強度を測定して歯質の性状を判断する。
初めに開発されたダイアグノデントは、本体とハンドピース部がファイバーで接続されたが、ダイアグノデント ペンは、本体とハンドピースが一体化され、操作スイッチ類とディスプレイもハンドピースに設けられた。また本体・ハンドピースとワイヤレスで接続されるディスプレイにも瞬時に測定値を送ることができる。もちろん今回紹介しているペリオプローブを用いた場合も、このディスプレイに測定値を表示できる(図3)。
ダイアグノデントのプローブは、いずれも波長655nmのレーザーを被検査体に導き(照射し)、同時に被検査体からの蛍光を本体の強度測定装置へと導くことになる。いずれのプローブもきわめて小さく、細いものなので、これらにレーザーと蛍光を各々直線的かつ正しく導光するには均質な材料で高い技術を以て加工しなければならない。
ダイアグノデント ペンの優れた性能はこれらのプローブによって支えられているともいえる(図4a)。
隣接面う蝕検査用プローブ(隣接面用プローブ)はプローブ先端にフルミラー構造をもち、きわめて精細・精巧なものであるが、ペリオプローブの場合は、他のいずれよりもより細く、長い。またプローブ内にレーザー照射用の光路と被検査体から得られる反射蛍光用のものを別々にもつことから外見よりも一層精巧な装置である。
いずれのプローブも測定歯面や歯石から反射した蛍光を本体の強度解析装置まで導く(図4b)。

  • 図1 新たに紹介されたペリオプローブを取り付けたダイアグノデント ペン。
    図1 新たに紹介されたペリオプローブを取り付けたダイアグノデント ペン。
  • 図2 ペリオプローブは、従来のう蝕用プローブと同じようにペン本体に取り付けて使用する。
    図2 ペリオプローブは、従来のう蝕用プローブと同じようにペン本体に取り付けて使用する。
  • 図3 ダイアグノデント ペンとそのディスプレイ。測定値(モメント値、ピーク値)を本体とは離れたディスプレイで確認することができる。ペリオプローブを使用した場合も使用できる。
    図3 ダイアグノデント ペンとそのディスプレイ。測定値(モメント値、ピーク値)を本体とは離れたディスプレイで確認することができる。ペリオプローブを使用した場合も使用できる。
  • 図4a ダイアグノデント ペンのプローブ。左から咬合面う蝕検査用(裂溝用プローブ)、隣接面う蝕検査用(隣接面用プローブ)、新しいペリオプローブ。
    図4a ダイアグノデント ペンのプローブ。左から咬合面う蝕検査用(裂溝用プローブ)、隣接面う蝕検査用(隣接面用プローブ)、新しいペリオプローブ。
  • 図4b いずれのプローブも精細な構造をもち、照射レーザー、蛍光を各々別の光路をもつ。
    図4b いずれのプローブも精細な構造をもち、照射レーザー、蛍光を各々別の光路をもつ。

ダイアグノデント ペンおよびペリオプローブでできること

ダイアグノデントは、う蝕検査用機器としてヨーロッパを中心に紹介され、高い評価を得た。ヨーロッパのいくつかの大学での共同臨床研究(マルチセンター研究)で、う蝕の検出感度、非う蝕の検出感度(う蝕ではないという判定…特異度)のバランスが最もよく、う蝕診断に優れた効果をもつと高い評価を得ている2)
また同じくヨーロッパを中心に、このダイアグノデントによるう蝕または歯石の探索機能をKaVoのEr:YAGレーザー、KEY Ⅲレーザーに組み込みこれらを探索しつつ、Er:YAGレーザーでう蝕除去、歯石除去を行うことがすでに行われてきている。日本ではKEY Ⅲレーザーそのものが未承認機器であるため、これらはあまり知られてはいないが、ダイアグノデントによるう蝕、歯石探索能力がヨーロッパでは信頼され、高く評価されていることを示すものである。
著者らがかつて研究した結果3)によれば、ダイアグノデントの測定結果は象牙質アパタイトの結晶粒径にも相関していると考えられる。したがってペリオプローブをポケット内に深く適応(挿入)して用いれば、ダイアグノデント ペンは石灰化物である歯石に対しても、当然その存否や石灰化の程度に応じた反応を示すものと考えられる。さらに咬合面や隣接面と同様に、ポケット内にある根面のう蝕も検知することができるので、これまでは探針による触診によってのみ検査してきたポケット内(とくに深部)の状況が、X線被曝などの恐れなく把握できる。
すなわち、これまでの咬合面う蝕(裂溝用)と隣接面う蝕(隣接面用)プローブにペリオプローブが加わったことでダイアグノデント ペンの適応範囲が著しく広がった。とくに歯石の探索ができることになったことは、単に「歯石を発見できる」というだけではなく、う蝕の進行や抑制効果を「モニターして疾患を管理する」というこれまでのダイアグノデント ペンの効果と同様に、歯周疾患の管理、メンテナンスにまで守備範囲を広げ、予防管理やメンテナンスに重きを置く臨床家の強い味方になる。

ペリオプローブはどのように使用するのか

基本的にはう蝕検査用のプローブ(裂溝用プローブ)と同じ要領で付属のキャリブレーション用プレートを用い、まず事前のキャリブレーション(較正)を行う。このキャリブレーションは機器の較正であり、「使用する日ごと」程度に実施する。う蝕検査用の場合のように患者ごとに健康歯質に照射して実施するキャリブレーションは必要ない。
まずペリオプローブを本体先端に挿入し、メインスイッチを2秒間長押しして電源を入れる。つぎにメニューボタンを押し、スタートボタンを押した後にキャリブレーション用のプレートに90°の角度でプローブを当てる(図5ab)(詳細は取扱説明書を参照)。
*初診時(継続的な通院が途切れた場合も含め)
実際の測定に当たっては、表1に示すように清掃、スケーリング、洗浄をまず実施する ダイアグノデント ペンを使用しなくても視認、触知できるような歯石、汚れは予め除去、清掃する。その後測定に入り、とくにポケットが深い部分については測定前のスケーリングで歯石が除去できたのか否かを判定するという目的をもって念入りに測定する。
*再診時あるいはリコール時
再診時の使用方法も初診時と同様であるが、初診時(前回)の検査結果を対照・対比させて検査することにより、検査時間を短縮できるほか、患者に関心を持たせることができ、以降の患者管理に有効である。

  • 図5a ダイアグノデント ペン本体のスイッチ(ボタン)とディスプレイ。
    図5a ダイアグノデント ペン本体のスイッチ(ボタン)とディスプレイ。
  • 図5b ペリオプローブのキャリブレーションは、裂溝う蝕用のプローブを用いた場合と基本的に同じである。
    図5b ペリオプローブのキャリブレーションは、裂溝う蝕用のプローブを用いた場合と基本的に同じである。
  • 表1 ダイアグノデントペンの使用法
    表1 ダイアグノデントペンの使用法
  • 表2 ダイアグノデント ペンとペリオプローブによる測定結果と対応
    表2 ダイアグノデント ペンとペリオプローブによる測定結果と対応

使用(測定操作)上の注意点

・ペリオプローブは細く、長く、脆いので破折させないように!
ペリオプローブは、他のプローブと同様、レーザー照射用と反射蛍光用光路をきわめて細いファイバーに併せ持つ精密な「光学」部品である。ペリオプローブは、なかでも長く、細いため「破折」させてしまう危険性がきわめて高い。決して「横」に傾けないようにし、「縦」方向へのポケット出し入れをしつつ、挿入角度を維持しながらポケット内を移動させるようにする。
ダイアグノデント ペン本体は、プローブに比べるとはるかに重いので、少々であっても本体を不用意に傾けると、「てこの原理」でプローブにはきわめて大な荷重が加わる。測定中は常に「軽いタッチ」を心がける(図6)。
・プローブ(とくに先端部)の汚れに注意する!
レーザー照射口であり、蛍光の入射口であるプローブ先端が血液、歯垢、歯石で汚れていると、正しい測定値が得られない。プローブを歯肉溝に挿入、上下してもモメント値に変化がない場合は、汚染されていることを疑う。汚染物は、水あるいはアルコールで少し濡らしたガーゼなどで清拭して取り除く(この際もプローブに不用意に力が加わらないようにする)。

  • 図6 ペリオプローブは他のプローブよりも長く、細いため破折の危険性が高い。本体自体の重みもあって「傾ける操作」で簡単に破折する。とくに歯間部を測定する時には注意する。
    図6 ペリオプローブは他のプローブよりも長く、細いため破折の危険性が高い。本体自体の重みもあって「傾ける操作」で簡単に破折する。とくに歯間部を測定する時には注意する。

ダイアグノデント ペン+ペリオプローブをより効果的に使用する

う蝕の検査に使用する場合も4)、ダイアグノデント ペンを単に「う蝕・う窩探索器」としてだけ使用するのであれば、如何にも非効率的である。この機器の最大の特長は、測定結果が客観的で再現性に優れ、さらに測定値が数値化されていることである。この特長を活かすためには、① 継続的な測定をし、② 疾患の(患者の)管理に利用し(すなわち疾患のリスクが取り除かれた後もこれらが制御されているかを継続的に診ていく)、③数値化された測定結果を患者に示し、指導する。
以上はいずれも患者に定期的な通院を指示する根拠になり、患者の自発的な定期来院を促す。
つまりダイアグノデント ペンは、疾患および患者管理に利用していくべきものであり、「痛くなったら歯医者に行く」、「検診で受診を指示されたから行く」というような「野戦病院」「対症療法」の歯科治療には適していない。患者・疾患管理型の医療、オーダーメード医療、ホームドクター医療の中にこそダイアグノデント ペン、ペリオプローブを活かすことができる(図79)。

  • 図7a 患者は75歳の男性患者で35年以上に亘り、受診している。最近は歯周の管理を中心に3ヵ月間隔でリコールしている。ペリオプローブを用いて検査した。
    図7a 患者は75歳の男性患者で35年以上に亘り、受診している。最近は歯周の管理を中心に3ヵ月間隔でリコールしている。ペリオプローブを用いて検査した。
  • 図7b 比較的管理が行き届いているが、根面う蝕が見られるようになり、歯石などの検査とポケット内のう蝕の検査も必要になった。左上1番口蓋側の根面う蝕。
    図7b 比較的管理が行き届いているが、根面う蝕が見られるようになり、歯石などの検査とポケット内のう蝕の検査も必要になった。左上1番口蓋側の根面う蝕。
  • 図7c 清掃後、ポケットが深い部位を中心にペリオプローブを用いて歯石と根面のう蝕を検査していく。歯軸に対して平行に、歯面に軽く沿わせてポケットに挿入していく。
    図7c 清掃後、ポケットが深い部位を中心にペリオプローブを用いて歯石と根面のう蝕を検査していく。歯軸に対して平行に、歯面に軽く沿わせてポケットに挿入していく。
  • 図7d プローブをポケット内に軽圧で挿入していき、モメント値を確認しつつ、ピーク値を得る。結局左上5番の遠心ポケット内にもう窩を認めた(ピーク値45)。
    図7d プローブをポケット内に軽圧で挿入していき、モメント値を確認しつつ、ピーク値を得る。結局左上5番の遠心ポケット内にもう窩を認めた(ピーク値45)。
  • 図8a 患者は33歳男性で、叢生と口呼吸をもち、プラークの沈着が著しいハイリスクの患者であり、定期的な衛生指導を行っている。ペリオプローブで測定してみた(左上1番:ピーク値27)。
    図8a 患者は33歳男性で、叢生と口呼吸をもち、プラークの沈着が著しいハイリスクの患者であり、定期的な衛生指導を行っている。ペリオプローブで測定してみた(左上1番:ピーク値27)。
  • 図8b 舌側転位している左上2番には歯冠唇面にもプラークの蓄積が著しいが、ポケット内のプラークも著しく、ピーク値は52であった。
    図8b 舌側転位している左上2番には歯冠唇面にもプラークの蓄積が著しいが、ポケット内のプラークも著しく、ピーク値は52であった。
  • 図8c エアースケーラーで洗浄後、若干出血が見られたものの再度測定した結果、測定値はピーク値で23を示した。
    図8c エアースケーラーで洗浄後、若干出血が見られたものの再度測定した結果、測定値はピーク値で23を示した。
  • 図9a 患者は23歳男性で、「歯茎が気になる」と来院した。念のため訴えの部位の下顎前歯部のX線写真を撮影した。鮮明ではないが縁下歯頸部に歯石らしきものを認めた。
    図9a 患者は23歳男性で、「歯茎が気になる」と来院した。念のため訴えの部位の下顎前歯部のX線写真を撮影した。鮮明ではないが縁下歯頸部に歯石らしきものを認めた。
  • 図9b ペリオプローブを用い、周囲の部位も含め測定したが、右下3番では02(左)、2番では56のピーク値を示した(右)。
    図9b ペリオプローブを用い、周囲の部位も含め測定したが、右下3番では02(左)、2番では56のピーク値を示した(右)。
  • 図9c これらの部位を測定値を参考にしてスケーリングを行い再測定した。ピーク値は04に減少した。図右上がスケーリング前、下がスケーリング後。
    図9c これらの部位を測定値を参考にしてスケーリングを行い再測定した。ピーク値は04に減少した。図右上がスケーリング前、下がスケーリング後。

まとめ・・人々の心豊かな健康を支える歯科医療に必要なツール

繰り返しになるが、ダイアグノデント ペンは患者、疾患管理型の新しい歯科医療に取り組む診療所にこそ必須な機器である。とくにペリオプローブが紹介されたことにより、歯周の健康管理にダイアグノデント ペンをより有効に活用できることになった。
ホームドクターとしてこれらのメンテナンスに取り組んでいる臨床家や歯科衛生士には大きな味方になるであろう。考え方が逆かもしれないが、筆者はこのダイアグノデント ペンなどの新しい検査・診断機器の開発と発展が、日本の臨床を新しいステージへと導くと期待している。

参考文献
  • 1) Hibst R: Optische mesmethoden zur Kariesdiagnose, ZWR, 108, 50‑55, 1999.
  • 2) Lussi A: 新しい咬合面齲蝕検出法, 歯界展望, 95(6), 1285‑1295,2000.
  • 3) Suzaki A, Arimoto N, Matsui O, Senda A, Saruwatari L: A fundamentalstudy on clinical application of laser caries diagnosis‑ The detective effectof DIAGNOdent on crystal size of apatite in human dentin, Abstracts ofthe International Conference on Dentin/Pulp Complex, 2001.
  • 4) 千田 彰, 冨士谷盛興: ダイアグノデントペンを活かす, デンタルマガジン, 134, 14‑17, 2010.

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