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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

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現在の歯科技工の作業環境に適した高効率リバーナー脱臭装置「AIR GUARD SP」の商品化
SKメディカル電子株式会社 技術開発グループ 係長 林 宜澤

■目次

■はじめに

歯科技工の作業環境を考える上で、鋳造用リング焼却時に発生する、有毒ガスによる環境汚染への対策は、重要なテーマです。
アンモニア(NH3)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの、刺激臭や毒性を伴うガス(表1)が技工室内へ排出されないように再燃焼、脱臭する装置がリバーナー装置です。
そしてこの度、脱臭と排気の最適化を徹底追及し、さらに省エネも実現した高効率リバーナー装置「AIRGUARD SP」(図1)を開発しました。

  • リングファーネス用リバーナー「AIR GUARD SP」
    図1 リングファーネス用リバーナー「AIR GUARD SP」
  • フルオートリングファーネス「SRF850LX」
    フルオートリングファーネス「SRF850LX」
  • 発生する有毒ガスの例
    表1 発生する有毒ガスの例

■背景

鋳造材料の変遷等により、より効率的な環境対策の必要性が増しています。

*リン酸塩系埋没材
近年、歯科鋳造用合金としてコスト的に優れたCo‑Cr合金など、融点の高い非貴金属系合金が、多用されるようになりました。
高融点の合金の場合、一般的に耐熱温度の高いリン酸塩系埋没材がよく使用されます。また、貴金属系でも融点が1100℃と高いポーセレン焼き付け用合金などでも同様にリン酸塩系埋没材が使用されます。
このリン酸塩系埋没材は加熱硬化の際、主成分のリン酸アンモニウムが分解されリン酸マグネシウムが生成され、その過程で大量のアンモニアガスが発生します。そして、そのアンモニアが空気中の酸素と反応し、毒性の強い窒素酸化物を生成するという点も、安全な作業環境を確保する上で、重大な課題となっています。
さらに、ごく短時間に大量のアンモニアを発生する急速加熱対応型リン酸塩系埋没材の普及も対策の重要性をアップさせています。

*石膏系埋没材
クリストバライト系等の結合材として、石膏を含有する埋没材は、硬化の際に有毒ガスを発生することはありませんが、高温で石膏の主成分CaSO4が分解すると、亜硫酸ガス等が発生することがあります。

*歯科用ワックス
歯科技工上最も用途が広い材料のひとつがワックス(表2)です。インレー、クラウン、ブリッジなどのパターン作製に常用されるインレーワックス。そしてシートワックスは金属床用パターンとして、紐状ワックスはスプルー線として常用されています。
また、金属床には補助的にインレーワックス、パラフィンワックス、ユーティリティワックスなどを使用する場合もあります。
このワックスの主成分である炭化水素が燃焼すると、水と二酸化炭素が発生します。ただし、狭いファーネス内で焼却するため、酸素が不足し不完全燃焼が起こり易く、それによって一酸化炭素(CO)が発生してしまいます。
通常、鋳造用リングのワックスを焼却するには、歯科技工用リングファーネスが使用されます。
一度に多数の鋳造用リングを焼却する場合、ワックスの蒸気や燃焼で生じるガスのため、臭気が技工室内に充満することがあります。
また、埋没材の硬化体が焼却炉内で加熱される時に大量のアンモニアガスと水蒸気を生成し、さらに他の有害ガスの発生もあります。
これらの問題の対策として、一般的に脱臭装置、局所排気装置および換気扇等を設けた部屋で作業は行われます。
今回の「リバーナー脱臭装置」は、リングファーネスに装着することにより、アンモニア、一酸化炭素、窒素酸化物等の有毒ガスの分解や鋳造用リング焼却時に生じる臭いの脱臭をする装置です。

  • 発生する有毒ガスの例
    表2 ワックスの種類と用途例

■開発の狙い:脱臭効率のアップと省エネ(ecoタイプ)の共通キーワード「最適化」

現代の歯科技工環境に即した、急速加熱型リン酸塩系埋没材に対応できる脱臭性能を備えるとともに、徹底した効率の最適化により、低消費電力を実現したリバーナーの開発を目標としました。
まず最初に基本性能および製品仕様を決めるうえで、リングファーネスから排出されるガスをいかに効率良くリバーナーに取り込み、またリバーナー燃焼室内での再燃焼・脱臭性能が最適な条件で処理されるためのガスの流路をどう確保するのかという課題の検討から着手しました。
つぎにリバーナーから排出されるガスが効率よく浄化されているかを測定するために、ガス検知管にて種々のガス濃度の測定を繰り返し計測しましたが、ガス検知管の計測数値は下がっていってもやはり人の鼻による感応検査では満足のいく結果はなかなか得られませんでした。
これらの実験を幾度となく繰り返し最終的に、ガス吸入→再燃焼→脱臭→浄化ガスの排出というスムーズな流れが実現でき、併せてヒーターの消費電力もおさえることができました。

■性能と特長

今回、当社で開発した新製品“高効率リバーナー「AIR GUARD SP」”は、適切な燃焼室と特殊な白金触媒の採用により、埋没材焼却時に発生する大量のガスを効果的に処理します。以下に、本体部分を中心とした性能技術について説明します。

*“高効率リバーナー「AIR GUARD SP」”の特長
焼却処理の空間が従来品より広くなって、急速型埋没材の大量のガスに対応できます。燃焼室は低天井型の横形タイプの燃焼空間を採用しています。
横形タイプが良好な性能となる要因は流入ガスの温度低下が少ないため、再燃焼効率が良くなります。また、触媒への流入温度も高く保持できます(図2)。
当社仕様の白金触媒を用い、ガスとの接触効率を良くするため、セラミックボールに白金をコーティングした形状を採用し、結果的に高い脱臭能力が得られました。また、触媒室サイズを広く浅くしてガスの流出をスムーズにしたので、脱臭効率(表3図3)がアップしました。
従来機種よりも約25%ダウンの低消費電力化に成功したecoタイプのリングファーネス用リバーナーです。

  • 構造図
    図2 構造図
  • アンモニア脱臭効果の当社比較試験結果
    図3 アンモニア脱臭効果の当社比較試験結果
  • 脱臭効果比較
    表3 脱臭効果比較

■おわりに

以上に述べたように、鋳造用リング焼却時の不快な臭いの抑制や有害物質ガス等の除去など作業環境の改善に「AIR GUARD SP」は威力を発揮します。
また、今回の新製品「AIR GUARD SP」と当社製のリングファーネス「SRF850LX」とを連動してご使用していただくと、より一層その能力を発輝いたします。
快適な歯科技工環境に貢献する「AIR GUARD SP」は脱臭性能や有毒ガス処理能力向上と省電力を両立した画期的なリバーナーであるだけでなく、使用する白金触媒の減量化にも注力し、その意味でもeco製品と言えます。

参考文献
  • ・“歯科鋳造の話”(井田一夫著)
  • ・“化学物質の危険・有害便覧”(中央労働災害防止協会編、平成10年版)
  • ・J. Meulenbelt et al : Acute nitrous oxide intxication : clinical symptoms,pathophysiology and treatment, Nath. J. Med., 37, 132‑138, 1990.