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知覚過敏抑制材「ティースメイト ディセンシタイザー」について

クラレノリタケデンタル株式会社 技術本部 畑中 憲司 / 石原 周明

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目 次

はじめに

知覚過敏を訴える患者は近年増加しており、来院患者の10~25%に達するとの報告がある1、2)。シュウ酸系、レジン系、グルタルアルデヒド系など幾つかのタイプの知覚過敏抑制材が知覚過敏症の治療に使用されているが、効果の持続性や組織への為害性3)について、さらなる改善が望まれている。
この度、開発した「ティースメイト® ディセンシタイザー」<クラレノリタケデンタル(株)>は、リン酸カルシウム技術を用いた自己硬化型の知覚過敏抑制材である。
知覚過敏症を抑制するメカニズムは、ハイドロキシアパタイトによる象牙細管の封鎖である。この封鎖物は、歯質と同様の成分(エナメル質の97%、象牙質の70%はハイドロキシアパタイト)であるため、口腔内で安定であり、かつ、生体に対して親和性が高いものである。
「ティースメイト® ディセンシタイザー」は、リン酸カルシウム技術の採用により、上記の要望に応えるアパタイト系知覚過敏抑制材として開発された。

  • ティースメイト® ディセンシタイザーセットの写真
    図1 ティースメイト® ディセンシタイザーセット
  • 歯髄内圧が負荷された象牙質に対する封鎖性(牛歯象牙質)の写真
    図2 歯髄内圧が負荷された象牙質に対する封鎖性(牛歯象牙質)
    • 硬化物のX線回折分析のグラフ
      図3 硬化物のX線回折分析
    • エナメル質マイクロクラックに対する封鎖性(人歯エナメル質)の写真
      図5 エナメル質マイクロクラックに対する封鎖性(人歯エナメル質)
    • 人工唾液に長期浸漬後の象牙細管封鎖状態(牛歯象牙質表面)の写真
      図4 人工唾液に長期浸漬後の象牙細管封鎖状態(牛歯象牙質表面)
    • 合着材併用時の接着性のグラフ
      図6 合着材併用時の接着性
  • 自己硬化型のリン酸カルシウム技術の図
    図7 自己硬化型のリン酸カルシウム技術

製品開発

1)構成品
「ティースメイト® ディセンシタイザーセット」(図1
セットの構成品は、主材である「粉材」及び「液材」と、附属品である「混和皿」、「スプーン」、「アプリケーターブラシ」を組み合わせたものである。

2)使用用途
「ティースメイト® ディセンシタイザー」は、以下の使用用途における知覚過敏の抑制に使用できる。

  • ①歯ブラシ磨耗、歯肉後退、歯周炎、歯牙酸蝕等によって露出した象牙質の処置
  • ②機械的歯面清掃、スケーリング、ルートプレーニング後の象牙質の処置
  • ③漂白処置後の歯面の処置
  • ④コンポジットレジン修復や補綴治療等における形成象牙質の処置

3)使用方法
使用用途①②③についての使用方法は以下の通りである。使用用途④については、下記の「効果の確認」の後に、形成象牙質の清掃(水で濡らした綿球等で10秒拭く)を加える。

  • ①歯面清掃
  • ②液材と粉材の混和(15秒)
  • ③ペースト(スラリー)の擦り塗り(30秒)
  • ④水洗(余剰ペーストの除去)
  • ⑤効果の確認

※1回の処置で症状が改善しない場合には③~⑤を繰り返す。

4)「ティースメイト® ディセンシタイザー」の特長
①即効性
粉材と液材を混和して得られるペーストは、レジンを含まない無機系材料(リン酸カルシウム)が配合されたものである。患部に擦り塗ることによりリン酸カルシウムペーストが徐々にハイドロキシアパタイトに転化していくことによって、象牙細管を直接封鎖して即効性を示す(図2)。
②効果の持続性
象牙細管を封鎖したペーストは口腔内で約30分後には硬化する。その後、象牙細管内で安定なハイドロキシアパタイトになるため(図3)、効果が持続し、知覚過敏の再発を抑制する(図4)。
③エナメル質マイクロクラック封鎖
本製品は、歯質表面に残ることなくエナメル質マイクロクラックのみを封鎖するため、漂白処置後の審美性を損なうことなく、漂白処置後の知覚過敏を抑制する(図5)。
④形成象牙質に対する接着性
本製品は、擦り塗り後の余剰ペーストが水洗で簡単に除去できるため、処置後の患部に材料による厚みが生じない。このため、術後の知覚過敏抑制を目的に、コンポジットレジン修復やインレーやクラウン等の補綴治療を行う前に、本製品にて処置しても修復材料の接着性に影響しない(図6)。
⑤生体親和性
生体への親和性の高いリン酸カルシウムを用いていること、ペーストのpHは約10と弱アルカリ性であることから、歯質および歯肉に対してやさしい材料である。このため、従来製品では処置時に注意を要する歯肉縁下や歯間部に対しても、安心して使用できる。
これらの特長を有する「ティースメイト® ディセンシタイザー」は、治療効果が高く、生体親和性のある知覚過敏抑制材であると言える。

5)自己硬化型のリン酸カルシウム技術
基本技術となる自己硬化型のリン酸カルシウム技術(リン酸カルシウムの水和硬化反応)に、① 塩基性無機系硬化促進剤、② 無機系流動性改質剤、③ リン酸カルシウムの微細化の技術を加え、自己硬化型リン酸カルシウム技術を確立した(図7)。
この技術の開発により、基本技術と比較して、ペースト性状の安定化、硬化時間の短縮、ハイドロキシアパタイト生成促進及び象牙細管封鎖性の安定化を実現し、知覚過敏抑制材としての性能を向上させることができた。

まとめ

今回発売した「ティースメイト® ディセンシタイザー」は、即効性、効果の持続性および生体親和性を兼ね備えたアパタイト系知覚過敏抑制材であり、上記のような様々な特性を有した製品である。今後の先生方の臨床にお役立ていただければ幸いである。

参考文献
  • 1) Schuurs AH, Wesselink PR, EijKman MA, Duivenvoorden HJ. Dentistsʼ views on cervical hypersensitivity and their knowledge of its treatment. Endod Dent Traumatol 1995; 11:240‑4.
  • 2) Gillam DG, Bulman JS, Eijkman MA, Newman HN. Dentistsʼ perceptions of dentin hypersensitivity and knowledge of its treatment. J Oral Rehabil 2002;29:219‑25.
  • 3) G Dondi Dall, R Lorenzi, M Anselmi, V Opisso. Dentin desensitizing effects of Gluma Alternate, Health‑Dent Desensitizer and Scotchbond Multi‑Purpose. American journal of dentistry 1999;12:103‑6.

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