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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
Er:YAG Laser Erwin AdvErL Evo臨床情報
原宿デンタルオフィス(東京都渋谷区) 山﨑 長郎 山﨑 治

■はじめに

歯科治療の大枠は、実質欠損を伴う硬組織の修復即ち充填、補綴治療と細菌感染に起因するカリエス処置及び歯周治療、根管治療等である。このうち後者において様々な治療が存在し実践されているが、これらの治療の中で、ここ数年レーザー治療は、度重なる改良により急速に発展し普及がなされてきた。一口にレーザーといっても様々な種類が存在するが、それぞれの特徴により用途も異なる。
今回紹介したいのは、Er:YAG Laser Erwin AdvErL Evoである。
当院でレーザーを歯科治療に取り入れたのは10年程前である。最初はNd:YAGレーザーで、その後CO2レーザーも導入し、かなりの症例に対応してきた。しかしながら、それぞれのレーザーに対する効果、メカニズムに関して疑問を持ちつつ使用し続けてきたのが本音である。
歯周、インプラント等の長期的な経過観察時に使用してかなり良い結果を得てきたことを踏まえ、もう一度本格的にレーザー治療を見つめ直し、きちんとした形で臨床の様々な局面に応用し、その治療結果を真摯に受け止めようと思ったことが今回の導入のきっかけであった。

■Er:YAG Laser Erwin AdvErL Evoの特徴

当院では、前述したように数種類のレーザーを使用しているが、今回紹介するEr:YAG レーザーの最大の特徴は、組織表面吸収型のレーザーであり、CO2レーザーの約10倍、Nd:YAGレーザーの約15,000~20,000倍も水に対して特異的に吸収特性を持つことである。水分を含んだ生体組織に対する蒸散能力が高く、熱の発生が少ないため「痛み」が非常に少ないということが挙げられる。患者の「痛み」を軽減することは、双方にとり大きなメリットである。また、Er:YAG レーザーは、蒸散する反応が照射部位の表層に限定されるため、他のレーザーと比較して透過光による組織深部への影響が少なく安全に使用できる(図1)。これは、インプラント周囲にも安全に応用できると言える。一般的に、レーザーの使用用途として、軟組織に対する簡単な外科処置・歯周治療・インプラント処置・根管治療など様々な応用を思い浮かべるが、水に対して吸収特性を持つEr:YAG レーザーは、高い硬組織蒸散能力を持つため、硬組織に対しても他のレーザーと比較して蒸散能力に長けている。当院で以前使用していたレーザーでは、う蝕の窩洞形成は実用レベルでは限界を感じていたが、Er:YAG レーザーではこの特徴を利用し、無痛的なう蝕の選択除去にも応用が可能である。
よって、Er:YAG レーザーの特徴を最大限にいかした応用法としては、①硬組織への応用②インプラント周囲炎の治療への応用③歯周治療、再生療法などへの応用が期待されると私は考えている。
もちろん、従来通りの歯科治療への応用も可能であり、それぞれの用途に応じてチップが多数用意されているため(18種類)、日々の臨床においても様々な局面で応用しやすいのも特徴である。
今回は、Er:YAG Laser Erwin AdvErL Evoを導入し、まだ使用歴としては短いが、当院でのレーザーの応用法を症例を交えながら簡単にご紹介したい。

  • 図1‑a
    図1‑a
  • 図1‑b
    図1‑b
  • 写真1
    写真1 初診時咬合面観。自発痛はなく、たまに冷水痛があるとのことだった。
  • 写真2
    写真2 C400Fを使用し、無麻酔にてカリエスを除去した。
  • 写真3
    写真3 術後咬合面観。術中痛みもなく、処置が行えた。

■硬組織への応用

硬組織の蒸散能力に長けていることは前述したが、カリエス処置にも応用できる。従来は、タービンやエンジンのハイパワーのもので切削していくが、レーザーを使用することのメリットとしては、無痛的な罹患歯質の選択的除去である。2008年の保険改正により「う蝕歯無痛的窩洞形成加算」の算定が可能なったのは周知の事実である。
<カリエス>
カリエス処置での応用のポイントは、チップの特徴を理解することである。同じパワーで出力した場合、細いチップは狭く深く、太いチップは広く浅く削れる特性を持つ。また、45°に傾斜させて照射(山本敦彦先生のリサーチによる)すると象牙細管内容物の移動は最も少なくなるため、無痛的に処置できる。
写真1は初診時の咬合面観で、遠心部にカリエスを認め、冷水痛がたまにあるとのことだった。C400Fのチップを使用し無麻酔にて窩洞形成を行った(写真2)。この後は、通法に従いCR充填を行い終了とした(写真3)。

■軟組織への応用

軟組織に対する応用としては、口内炎、歯肉弁切除、小帯切除、メラニン色素除去など様々である。Er:YAG Laser Erwin AdvErL Evoでこのような軟組織治療を行った場合は、特徴である熱の発生を抑えられるため非常に治癒が早く、術中、術後ともに痛みが少ないという利点がある。このような、「歯肉を切る」というイメージを連想させる処置は、いくら処置することの有用性を説明しても、なかなか施術させてもらえない場面は臨床的には多い。実際に患者に説明をすると、一番多く聞かれることは「痛いですか?」という質問である。このような時にレーザーを用いて無麻酔で術中、術後の痛みを軽減し処置できることは、非常に大きいメリットであると筆者は考えている。
今回は、口内炎と歯肉弁切除への臨床例を紹介する。
<口内炎>
口内炎は、通常は1週間程度で自然に完治するが、口内炎ができる場所や個数によっては、摂食障害になることが多い。レーザーを用いると短時間で効果的で摂食障害の期間を数日であるが短くすることができる。
患者は、矯正治療中に上顎左側の頰小帯付近に口内炎による疼痛を訴えて来院した(写真4)。
口内炎で使用するときのポイントは遠くから近くに照射するように移動し、表面が軽く白くなるまでの短い照射時間にすることである(写真5)。長く照射し表面が白くなりすぎると術後疼痛が起こることがあるので注意が必要である。
<歯肉弁切除>
次に歯肉弁切除の臨床例であるが、患者は、19歳の女性で下顎左側7番の遠心部の疼痛が主訴で来院した(写真6)。レントゲンや歯周検査を行うと特に大きな骨吸収は認められなかったが、たまに痛くなるとのことだった。このように不完全な萌出の場合、不潔域となり炎症症状をおこすことがあるため、レーザーを使用することにより、安全に歯肉を切除し形態を整え清掃性を向上させることが有効である。
使用時のポイントは、チップに角度をつけ(写真7)、一度に切除するのではなく複数回で切除することである。また、歯肉弁をピンセット等で把持しながら切除するとテンションがかかり施術しやすくなり、さらに、歯肉の下にある歯牙にも誤照射しにくくなる。術中は無麻酔で行い、術後疼痛もなく患者への負担も最小限にとどめることができた(写真8)。

  • 写真4
    写真4 術前写真。比較的大きな口内炎があり、摂食障害を認めた。
  • 写真5
    写真5 術中写真。あまり白くならないように距離をコントロールしながら照射する。
  • 写真6
    写真6 術前咬合面観。不完全萌出があり、自発痛を認めた。
  • 写真7
    写真7 チップに角度をつけ照射する。複数回に分けて歯肉弁を切除する。
  • 写真8
    写真8 術後1週間の状態。治癒も良好で術後疼痛もなかった。
  • 写真9
    写真9 術前の状態。近心に深いポケットを認めた。

■歯周治療の応用

Er:YAG レーザーの応用で効果的な分野は歯周治療である。歯周治療において一番大切なことは、起炎物質の除去による炎症抑制である。つまり、歯肉縁上、縁下の徹底的なプラークや歯石除去である。
従来法だと超音波スケーラ-やハンドインスツルメントを用いたSRPで処置を行うが、ポケットが深くなると器具の到達性の困難さやスキルの有無によりテクニックセンシティブになりやすい。特に根分岐部病変の処置においては、その複雑な形態により不良肉芽組織の除去は困難を極める。
手用器具で掻爬できる領域は制限され、また超音波スケーラーなどのチップを挿入できたとしても肉芽組織に到達しないことがある。しかし、レーザーは光が到達すれば掻爬可能となるため、各チップの特徴を理解して使用することでより効果的に肉芽組織を除去できる。また、注水下であれば、硬組織に対しても安全に使用でき、マイクロエクスプロージョン(微細水蒸気爆発)の効果により、オープンフラップの場合には明視下において不良肉芽をより確実に除去することができる。これらの有用性を考慮し、応用できる歯周治療は、歯石除去、歯周ポケット掻爬、不良肉芽除去、膿瘍切開など多岐にわたる。今回は、不良肉芽除去、膿瘍切開の臨床例を紹介する。
<不良肉芽除去>
患者は、上顎左側6番の欠損と7番の歯肉の腫脹と違和感で来院した。6番欠損部に対してはインプラント治療の計画を立案し、7番は通法通り、徹底したスケーリング・ルートプレーニングで経過を観察することとした。インプラントを埋入し治癒期間中に再評価したが、初診時より症状は改善したがプロービング値は6mm(写真9)で非外科的なデブライドメントでは困難と考え、2次手術時に7番のデブライドすることとした。
オープンフラップすると近心の骨欠損は、レントゲン像よりも骨欠損は大きく、炎症性不良肉芽が確認された。ここで、レーザーを使用し不良肉芽の除去を行う(写真10)。このような観血処置では、マイクロエクスプロージョンの効果により、非常に骨面が見やすく処置しやすい。肉芽除去のポイントは、常にチップを動かし、エネルギーを一点に集中させないことと、歯面への垂直方向の照射は避けることである。また肉芽が多い場合は、骨面と肉芽の境界に照射すると一塊で除去できる(写真11)。この時根面の殺菌も同時に行えるので非常に有用性がある応用法である。
この症例は3壁性の骨欠損で、根面の清掃と確実な不良肉芽の除去を拡大鏡下にて確認でき、骨再生が期待できたので骨補填剤をいれずに通法に従い縫合し経過を観察することとした(写真12)。
<膿瘍切開>
次の症例は、膿瘍切開への応用である。メンテナンス時に上顎右側6番の辺縁歯肉の腫脹を認めた症例である(写真13)。前の臨床例のような深いポケットでなかったが、プラークコントロールの不良により歯肉が腫脹することがある。もちろん、切開だけでは問題解決にはならないが、排膿路を確保することにより内圧が減少し、圧痛や自発痛が軽減される。このような症例でレーザーを応用することにより、切開と膿瘍部の殺菌が期待でき、治癒の促進を促せる。
使用時の注意点としては、気腫を防ぐためエアーチップの角度を鋭角にし、少しずつ切開する。また、膿瘍の大きさに応じて開口部を大きくするためチップの直径の考慮することである。排膿路が確保できたら気腫を防ぐためエアーを止め、膿瘍内の掻爬は既存組織のダメージを考え最小限とすることである(写真14、15)。

  • 写真10
    写真10 6相当部のインプラントの二次ope時に掻爬を行った。
  • 写真11
    写真11 掻爬終了時。レーザーを使用することにより、確実な掻爬、殺菌が期待できる。
  • 写真12
    写真12 術後2週間。術後疼痛もなく、違和感も消失した。現在経過を観察中である。
  • 写真13
    写真13 76の歯間部に歯肉膿瘍を認めた。
  • 写真14
    写真14 無麻酔にて切開し、排膿路を確保し、通法に従い、掻爬、殺菌を行った。
  • 写真15
    写真15 術後1週間の状態。炎症症状は落ち着き、違和感も消失した。

■終わりに

レーザー治療といえば、初めて導入した当時はなんにでも応用でき、まるで「魔法の杖」のように比喩されていた。しかし、ここ数年でエビデンスを含め、レーザーの特性やその応用方法が確立してきたように思える。ここで大切なことは、何にでもレーザーを照射すれば良くなるというわけではなく、しっかりとした診断と適切な従来のアプローチを行った上で補助的にレーザーを使用することにより高い相乗効果が期待できるということを忘れてはならない。
歯科治療において、絶対になくてはならないものではないが、あると必ず有用性を体感できると私は考えている。レーザー治療は、限りない可能性が秘められていて、今後多分野で応用され治療効果を挙げるに違いないと確信している。
また、本稿では触れなかったが、インプラント治療が一般的になった今、術後の問題としてインプラント周囲炎への対応が急務となっている。今後、インプラント周囲炎のEr:YAGレーザーの応用は、非常に期待できる分野として注目を浴びるであろう。そして、臨床的なエビデンスが確立され、患者に有益なリカバリー方法が確立されることに期待を込めて本稿を終わりとしたい。

参考文献
  • 1) Hale GM, Querry MR:Optical Constants of Water in the 200‑nm to 200‑microm Wavelength Region. Appl Opt 1973 ;12 :555‑563.
  • 2) 山本敦彦:レーザー歯科治療を再考する.the quintessence. Vol.29 No.11/2010‑2515.
  • 3) 山本敦彦:“Er:YAGレーザーの可能性を探る、Er:YAGLaserによるう蝕歯無痛的窩洞形成法について”.モリタ Dental Magazine125 別冊.

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