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私の臨床

天然歯のヘアラインクラックを鮮明に観察できる透照診に適した汎用歯科用照明器

東京都港区 内藤デンタルオフィス 院長 内藤 正裕

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東京都港区内 藤デンタルオフィス 院長 内藤正裕内藤 正裕東京都港区内 藤デンタルオフィス 院長

ほんとうの歯科治療を求めるデンティストセミナー「くれなゐ塾」を始めて22年になります。このセミナー塾は、詩人・三好達治の四行詩「はかなけれどもくれなゐの はなをたのみてまくたねや(儚い望みかも知れないが、紅色の花が咲くことを期待して、種を蒔いてみよう )にあやかり、歯科医療の新地平を拓きたいという私の願いを込めて開塾しました。
21世紀を迎えて以来、デンティストリーはますます専門化の様相を深めていますが、新しい技術や情報を安易に求めるだけでなく、地道な研究者と卓越した臨床家による検証を受けながら、洗練された歯科医療を実践すること、さらには将来の可能性を探りながらも、GP(general ractitioner)としての使命感を忘れず、臨床の最前線に立ち向かうことが大切と感じていました。それが開塾の強い動機になったと思います。
そのような目標を軸足に据え、「くれなゐ塾」では、20世紀後半の歯科医学と技工学を統括しつつ、新たな世紀を視野に入れ、最良の結果を得るための「治療の順序だて」を探究するために、咬合の概念から最新のテクニックまでを学びながら、臨床例に即した実践的なプログラムを組んでいます。
さて、ここ数年来、カリオロジーの研究が進捗し、新たな学説が発表されました。その論説を要約すると、エナメル質と象牙質の境界にタフツと呼ばれる微小なクラックが存在し、歯牙に過重がかかると、タフツのクラックがエナメル質の上層部に広がり、エナメル質表面に現れたクラックラインとプラークが遭遇した時に、カリエスが生じるとする仮説です。

  • ワールドワイドなコレクション、アンティークなインテリア。御影石のフロア、スポットライティングなど、風格を感じさせるエントランス。
    ワールドワイドなコレクション、アンティークなインテリア。御影石のフロア、スポットライティングなど、風格を感じさせるエントランス。
  • 診療室の傍らに設えられた豪奢重厚な書斎。
    診療室の傍らに設えられた豪奢重厚な書斎。

ここで重要なのは、カリエスの主因はプラークだけではなく、オーバロード(過重負担)によるマイクロクラックにもあるという点です。言い換えれば、不正咬合やブラキシズムが過重負担を招き、その結果、歯頸部に応力が集中して、エナメル質が微細な破片となって破断するとともに、被圧変位(加圧による歯牙の変形)により表層が剥離して、プラークが溜まる場が形成されるために、カリエスの発症につながるのです。つまり、歯頸部にあるカリエスの原因はプラークだけなのではありません。さらに強い応力が加わり続けると、エナメル質にStriation(横縞)が出現し、その力は容易に接着を破壊し、CR充填などは極めて短期間で剥離・脱落することが指摘されています。
さて、このような知見から、無影灯では光が届きにくい部位のマイクロクラックの観察・診査の重要性が浮かび上がってきます。健全なエナメル質と象牙質は半透明なので、う蝕に罹患した部分の結晶構造が破壊されると、光の乱反射によって光の透過性が弱まるために、暗いラインを観察することができるのです。
この透過光線を活用して、天然歯のヘアラインクラックを明視できるのが、汎用歯科用照明器「マイクロラックス トランスイルミネーター」です。
トランスイルミネーターの利点は、約30,000ルクスもの高照度・高輝度のLEDライトが見えにくい部位を明るく照らし、X線、マイクロスコープ、染出し液などでも発見できない天然歯のヘアラインクラックを鮮明に観察できることです。
特に、応力が集中する歯頸部や歯冠部では、入射光線が屈折して暗いラインが明瞭に観察できるので、ヘアラインクラックの発見が容易に行えます。したがって、咬合の不調和を知り、適正な咬合調整を図るためにも、トランスイルミネーターは必須のツールと言えます。
カリオロジーの新学説を知って以来、私が痛感しているのは歯科衛生士の役割の重要性です。つまり、う蝕の主因がプラークだけではなく、過重負担にもあるという観点に立って、歯科衛生士も咬合紙のマークを診ることを習慣づければ、歯科医師と歯科衛生士が連携して情報を共有化できますので、ヘアラインクラックや初期う蝕を発見できる可能性も頻度も飛躍的に高まるのです。そのためには、歯科医師も歯科衛生士も意識改革しなければならないでしょう。

  • 歯牙に加えられる応力のほとんど全ての徴候が見られる。右側に縦に走るクラック。エナメル質表面の波状紋とはサイズの異なった「うねり」のような横縞。エナメル表面の剥離と、そこから始まったう蝕。被圧変位の違うレジン充填と、辺縁性のう蝕。
    図1 歯牙に加えられる応力のほとんど全ての徴候が見られる。右側に縦に走るクラック。エナメル質表面の波状紋とはサイズの異なった「うねり」のような横縞。エナメル表面の剥離と、そこから始まったう蝕。被圧変位の違うレジン充填と、辺縁性のう蝕。
  • 第2小臼歯の遠心側のクラック。時間経過でステインが入り込みスジとして見えるが、もっと小さなクラックは肉眼で見ることはできない。
    図2 第2小臼歯の遠心側のクラック。時間経過でステインが入り込みスジとして見えるが、もっと小さなクラックは肉眼で見ることはできない。
  • ブラキシズムの強いケースの上顎中切歯。左下の斜走したクラックは着色しているので肉眼で見えるが、他のクラックはトランスイルミネーターのLEDのライトを使用しないと見えにくい。
    図3 ブラキシズムの強いケースの上顎中切歯。左下の斜走したクラックは着色しているので肉眼で見えるが、他のクラックはトランスイルミネーターのLEDのライトを使用しないと見えにくい。
  • 象牙エナメル境のエナメル質側にEnamel tufts(叢)が多数存在している。一種のヒビ状のものに見える。このTuftsは対合歯と出会う前から存在している。
    図4 象牙エナメル境のエナメル質側にEnamel tufts(叢)が多数存在している。一種のヒビ状のものに見える。このTuftsは対合歯と出会う前から存在している。
  • 図4の歯牙に力を加え続けると、小さなTuftsが赤矢印のように歯冠外方に伸びて行く。つまりクラックは外から内方へ向かって発生するのではない。Tuftsは一種のショックアブゾーバーとして働き、これが存在しないと咬合力でエナメル質は大きく割れ落ちてしまうのではないかという仮説がある。
    図5 図4の歯牙に力を加え続けると、小さなTuftsが赤矢印のように歯冠外方に伸びて行く。つまりクラックは外から内方へ向かって発生するのではない。Tuftsは一種のショックアブゾーバーとして働き、これが存在しないと咬合力でエナメル質は大きく割れ落ちてしまうのではないかという仮説がある。
  • 咬合干渉の存在する小臼歯。LEDの光量が強くないと歯冠部を通して歯牙のクラックは発見できない。また、光源が単球の方が、多球のライトに比べて光の干渉が少なく、屈折率の差がはっきりとする。
    図6 咬合干渉の存在する小臼歯。LEDの光量が強くないと歯冠部を通して歯牙のクラックは発見できない。また、光源が単球の方が、多球のライトに比べて光の干渉が少なく、屈折率の差がはっきりとする。
  • 二硅酸リチウムをコア材として、外側にセラミックを焼成したクラウンを切断してみた。焼成時に重力の影響を受けて、咬頭寄りに沢山の気泡が存在することがよく判る。これもトランスイルミネーターのLEDのライトでないと発見しにくい。
    図7 二硅酸リチウムをコア材として、外側にセラミックを焼成したクラウンを切断してみた。焼成時に重力の影響を受けて、咬頭寄りに沢山の気泡が存在することがよく判る。これもトランスイルミネーターのLEDのライトでないと発見しにくい。
  • セラミックのクラックは想像もできない時に発生する。特に高強度のジルコニアや二硅酸リチウムは温度の変化に敏感で、外装セラミックの焼成後にクラックを内在することがある。このクラックに気づかないままで装着すると、すぐに破折をしてしまう。
    図8 セラミックのクラックは想像もできない時に発生する。特に高強度のジルコニアや二硅酸リチウムは温度の変化に敏感で、外装セラミックの焼成後にクラックを内在することがある。このクラックに気づかないままで装着すると、すぐに破折をしてしまう。

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