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接着性根管充填用シーラー「メタシール Soft」について
サンメディカル株式会社 研究開発部 大槻 晴夏 / 小里 達也

■はじめに

コンポジットレジンや補綴物を歯質に接着する際にはボンディング材やレジンセメントが用いられているが、これら材料には当然のごとく歯質接着性が付与されており、その耐久性が材料を選定する上で重要視される。このように歯冠部の修復治療において歯質接着性は材料特性の一つとして必要不可欠であるのに対し、根管治療においては未だに歯質との接着性を有しないユージノール系やノンユージノール系並びに水酸化カルシウム系のシーラーをガッタパーチャポイントと組み合わせた密着による根管充填が主として行われているのが現状である。また、次亜塩素酸ナトリウム等の根管洗浄剤では根管内部を完全に無菌化することは極めて難しいこともあり、現在の根管治療では再根管治療のリスクを低減させることは困難であると考える。
このような経緯から、弊社はモディファイド・シールド・レストレーションの概念に基づいて根管内部に残留した細菌をレジンで封じ込めることによって無害化し、さらには抜髄後の脆弱した歯牙を補強するべく根管充填用シーラーにも歯質接着性が必要であると考えた。結果、2005年に4‑META/MMA‑TBBレジンであるスーパーボンドの技術を応用した「スーパーボンド根充シーラー」を、また米国では2007年から4‑METAを配合したセルフエッチングタイプの「MetaSEAL」(欧州では製品名「Hybrid Root SEAL」)を接着性根管充填用シーラーとしていち早く発売してきた。
しかしながら、これらシーラーはレジン系であるが故に硬化後のシーラーの硬度が高く、万が一の再根管治療の際には除去が困難であろうとの指摘を度々受けてきた。根管象牙質を確実に接着封鎖することによって再根管治療に繋がるリスクは接着性を有しないシーラーを併用するよりも低減すると推測されるが、術者側からすれば不確実性を伴う根管治療の予後を考えると除去可能なシーラーでなければ不安が払拭できないと考えるのも当然である。
そこで、「MetaSEAL」で培った弊社独自の重合開始剤の技術を活かし、レジン系でありながら硬化後もファイルなどの根管拡大器具にて除去可能な接着性根管充填用シーラー「メタシール Soft」を開発するに至った。
※除去しきれない先駆細菌叢を接着性レジンによる樹脂含浸層で封じ込める方法

■製品構成

製品構成を表1に示す。「メタシール Soft」(図1)は「MetaSEAL」の技術を踏襲し、接着性モノマーである4-METAを配合した粉液練和タイプのセルフエッチング系シーラーである。そのため、専用の歯面処理を必要とせずにリキッド(図2)とパウダー(図3)を均一に練和して使用する。また、構成品の一つである「エンドノズル」は専用のシーラー移送器具として開発したもので(図4)、複雑な形状を呈した根管にも確実かつ容易にシーラーを填入することが可能となる。

    • 表1 製品構成
      製品構成の表
    • セット構成の画像
      図1 セット構成
    • リキッドの画像
      図2 リキッド
    • パウダーの画像
      図3 パウダー
    • エンドノズルの画像
      図4 エンドノズル
  • 重合収縮の発生する方向の図
    図5 重合収縮の発生する方向

■「メタシール Soft」の特長

「メタシール Soft」にはTBBと同様の特性をもつ弊社独自の重合開始剤を採用している。この技術により、根管内部に多少の水分が残存していても重合不良を起こすことなく、さらに根管象牙質との界面側から重合が開始されるため重合収縮による間隙が界面部に発生しないように設計した(図5)。
主な特長を下記1~6に示す。

1. 万が一の再根管治療時に除去が容易
新規の長鎖モノマーと三井化学(株)の技術によるポリマーを配合することにより(図6)、接着性レジンでありながら硬化後も柔軟性を有した特異な性質を付与させることに成功した。図7および図8で示したとおり、その硬化体はゴム弾性があり、根管拡大器具であるファイルやリーマー等で容易に切削が可能である。

2. 従来型シーラーと同様の操作方法
「メタシール Soft」は市販の酸化亜鉛/ユージノール(ノンユージノール)系シーラーと同様に、リキッドとパウダーを練和して使用するだけの簡単な操作方法である(図9)。
シーラーの操作可能時間は遮光下にて約30分であるため余裕を持って操作でき(表2)、ガッタパーチャポイントやレンツロ等にもよく馴染むため(図10)、根管充填の術式も従来法にて行える。

  • シーラー硬化体の様子
    図6 シーラー硬化体の様子
  • シーラーの硬化体を指で曲げた様子
    図7 シーラーの硬化体を指で曲げた様子
  • 根管模型に充填し硬化したシーラーをファイルで切削している様子
    図8 根管模型に充填し硬化したシーラーをファイルで切削している様子
  • 使用方法の図
    図9 使用方法

3. 専用の歯面処理材不要で良好な歯質接着性を発揮
リキッド成分には接着性モノマーである4-METAと水を配合してセルフエッチング能を付与しているため、専用の歯面処理材は不要である。さらに親水性のシーラーであることから、浸潤した根管象牙質でも確実に浸透して良好な接着性能を得ることができる(図11)。
また、ガッタパーチャポイントとも良好に接着することから(図12)、シーラーを介して根管象牙質からガッタパーチャポイントまでを一体化させたモノブロック構造により、緊密な接着封鎖によって細菌の侵入を抑制できる。

4. 次亜塩素酸ナトリウム処理後の歯面でも影響なし
一般的に、接着性レジンは次亜塩素酸ナトリウム処理後の歯面では重合阻害が引き起こされる。その一例として弊社の「スーパーボンド根充シーラー」は次亜塩素酸ナトリウム処理を施した歯面に適用する際には、次亜塩素酸ナトリウムの酸化作用を中和するために還元作用を持つ「アクセル」による処理が必須となる。
「メタシール Soft」は還元作用を有した独自のアミノ酸系重合開始剤を採用したことにより、次亜塩素酸ナトリウム処理後の歯面でも重合が阻害されることなくレジンタグと樹脂含浸層の形成による良好な接着が可能となる(図13)。

5. 光重合による即日形成が可能
デュアルキュアタイプのシーラーであるため充填後に光重合させることにより、その表層を硬化させることができる。光照射時間と硬化深度の関係を示す(図14)。
光照射することによって瞬時に硬化被膜を形成させることで即日形成でき、コロナルリーケージの抑制も可能になる。

6. 専用の移送器具による確実な根管充填が可能
「メタシール Soft」による接着封鎖を最大限発揮させるにはシーラーを根管内部へ緊密に充填することが最も重要である。構成品にはシーラーを根管へ容易に移送するための「エンドノズル」が含まれている。この「エンドノズル」にシーラーを填入し、セントリックス社製のC‑Rシリンジ®と組み合わせて使用することにより(図15)、根管に挿入して押し出すだけでシーラーを迅速且つ緊密に充填できる。「エンドノズル」の先端には特殊なスリット加工(図16、17)が施されており、シーラーの注入圧力が分散されて根尖孔外への溢出を軽減できる。また、付属のストップリングをノズルに装着することにより、作業長を確認しながら充填することも可能である。

  • 表2 操作可能時間
    操作可能時間の表
  • シーラーの様子
    図10 シーラーの様子
  • 歯質/シーラーの接合界面の画像
    図11 歯質/シーラーの接合界面(歯面処理:EDTA)
  • ガッタパーチャポイント/シーラーの接合界面の画像
    図12 ガッタパーチャポイント/シーラーの接合界面
  • 歯質/シーラーの接合界面の画像
    図13 歯質/シーラーの接合界面(歯面処理:EDTA→NaOCl)
  • 光照射時間と硬化深度のグラフ
    図14 光照射時間と硬化深度(PENCURE 2000使用)
  • セントリックス社のC‑Rシリンジ®の画像
    図15 セントリックス社のC‑Rシリンジ®
  • エンドノズル 先端部のスリットの画像
    図16 エンドノズル 先端部のスリット
  • エンドノズルからシーラーが押し出される様子
    図17 エンドノズルからシーラーが押し出される様子

■まとめ

今回開発した「メタシール Soft」は粉液を練和して充填するだけの簡単な操作方法でありながら、根管象牙質とガッタパーチャポイントに接着して根管全体を緊密に封鎖することを可能にした。
これにより、密着封鎖であった従来の治療方法から接着封鎖にシフトし、根管治療の臨床成績の向上に寄与するとともに、さらなる歯牙の延命に繋がることを期待したい。