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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
知覚過敏抑制材「ティースメイト®ディセンシタイザー」 -ハイドロキシアパタイトによる象牙細管の封鎖が実現した-
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 歯科保存修復学分野 教授 吉山 昌宏

■目 次

■はじめに

近年超高齢化社会に突入した我が国では、多くの生活歯を有する中高年患者が増加している。それに伴って象牙質知覚過敏症患者も増加しており、来院患者の10~25%に達するとの報告がある1)。またTVCMやNHK「ためしてガッテン」(著者が出演した)で特集され放映されたことから、国民の知覚過敏に対する認知度は急速に向上しており、有効性の高い知覚過敏抑制材への患者の期待は高まっている。
このような背景の下、世界中の歯科材料メーカーから、種々の知覚過敏抑制材が開発・市販されているが、有効性や持続性など問題点も多く、決定打が出ていないのが現状である。こうした状況の中、満を持して登場したのが、リン酸カルシウム技術を応用して開発された「ティースメイト® ディセンシタイザー」(クラレノリタケデンタル株式会社)である(図1)。

  • ティースメイト®ディセンシタイザー
    図1 ティースメイト®ディセンシタイザー

■知覚過敏の原因

象牙質知覚過敏症の原因としては、何らかの原因でエナメル質が消失して象牙質が露出し、象牙細管が開口することによって冷水刺激や冷気、擦過刺激が歯髄の末梢神経に伝達され、一過性の鋭い痛みが生じるというメカニズムが広く知られている1)
象牙質生検法を用いて露出象牙質の知覚過敏部を電子顕微鏡で観察した著者らの研究結果から、知覚過敏部では75%以上の象牙細管が開口しているのに対して、非知覚過敏部では80%以上の象牙細管が封鎖されていることが明らかとなった(図232)。さらに封鎖された象牙細管の内部には多数の病的ハイドロキシアパタイトが沈着していることも見い出された(図4)。
したがって、象牙細管の封鎖にはハイドロキシアパタイトが最適であることは10年以上前より予言されていたといえる。


  • 図2

  • 図3

  • 図4

■知覚過敏抑制材の除痛メカニズム

著者らは長年にわたり各種の知覚過敏抑制材の除痛メカニズムを検討してきたが、まとめてみると、①開口象牙細管の封鎖、②象牙細管内の組織液移動の抑制、③樹脂含浸層の形成があげられる(図53)
現在市販されているシュウ酸系やレジン系、グルタールアルデヒド系の知覚過敏抑制材は、いずれもこのメカニズムにより除痛効果を発揮しているが、課題が多いのも事実である(表1)。また既に歯髄炎に移行しており、治療効果が認められない症例も存在するので、歯髄炎との鑑別が重要である。

  • HYSの疼痛メカニズムの図
    図5 HYSの疼痛メカニズム ①象牙細管封鎖 ②組織液移動の抑制 ③樹脂含浸層の形成
  • 主な知覚過敏抑制材の種類および課題の表
    表1 主な知覚過敏抑制材の種類および課題

■ティースメイト®ディセンシタイザーの除痛メカニズムの特徴

ティースメイト® ディセンシタイザーは、米国で開発されたリン酸カルシウム技術を用いた自己硬化型の知覚過敏抑制材であり(図6)、その除痛メカニズムは、ハイドロキシアパタイトによる象牙細管の封鎖である。ハイドロキシアパタイトは象牙質の70%を占める成分であり、口腔内で安定であり、かつ生体に対して親和性が極めて高いものである4~6)。その除痛メカニズムの 特徴としては以下の通りである。
①即効性
患部にすりこむことによりリン酸カルシウムペーストが徐々にハイドロキシアパタイトに転化していくことによって、象牙細管を直接封鎖して即効性をます(図7)。
②効果の持続性
象牙細管内で完全なハイドロキシアパタイトとなるため効果が持続する(図8)。
③エナメル質マイクロクラック封鎖
歯質表面に残ることなくエナメル質のマイクロクラックのみ封鎖できるのでホワイトニング後の知覚過敏を抑制できる。
④形成象牙質に対する接着性
象牙細管封鎖後の余剰ペーストが簡単に除去できるので、本製品を用いた後にコンポジットレジン修復や補綴処置を行っても修復材料の接着性に影響しない(図9)。
⑤生体親和性
生体への親和性の高いリン酸カルシウムを用いており、ペーストのpHも約10と弱アルカリ性であることから、歯質および歯周に対して極めて安全である。そのため歯周治療に伴う知覚過敏に対しては最適といえる。

  • ティースメイト®ディセンシタイザーの硬化メカニズムの図
    図6 ティースメイト®ディセンシタイザーの硬化メカニズム
  • 象牙細管の封鎖状態の写真
    図7 象牙細管の封鎖状態
  • 耐久性の写真
    図8 耐久性 <条件:50℃;人工唾液浸漬、1, 3, 5ヵ月後>
  • 形成象牙質の処置後に併用した接着材料(ボンディング材)への影響<
    図9 形成象牙質の処置後に併用した接着材料(ボンディング材)への影響

■ティースメイト®ディセンシタイザーの使用用途

  • ①歯ブラシ摩耗、歯肉後退、歯周炎、歯牙酸蝕等によって露出した象牙質の処置
  • ②機械的歯面清掃、スケーリング、ルートプレーニング
    後の象牙質の処置
  • ③漂白処置後の歯面の処置
  • ④コンポジットレジン修復や補綴治療等における形成象牙質の処置

■ティースメイト®ディセンシタイザーの使用方法

使用用途①②③についての使用方法は以下の通りである。使用用途④については、下記の「効果の確認」の後に、形成象牙質の清掃(水で濡らした綿球等で10秒拭く)を加える(図10)。
①歯面清掃
②液材と粉材の混和(15秒)
③ペースト(スラリー)の擦り塗り(30秒)
④水洗(余剰ペーストの除去)
⑤効果の確認
※1回の処置で症状が改善しない場合には③~⑤を繰り返す。


  • 図10

■ティースメイト®ディセンシタイザーの臨床応用例

著者らはすでに10症例以上の知覚過敏症例に応用し、大変すばらしい効果を上げ患者様によろこばれている。その臨床応用例を紹介する。
<症例1>露出象牙質における知覚過敏の処置
知覚過敏を長年にわたり訴えている45歳女性。1年前よりレジン系抑制材を塗布してきたが症状が改善しないとの訴えがあり、ティースメイト® ディセンシタイザーを使用して処置した結果、症状が大きく改善した(図1113)。
<症例2>歯周治療中の知覚過敏の処置
歯周初期治療を終了した55歳女性。再度のスケーリング後に知覚過敏を発症した。レジン系抑制材の塗布を行ったが症状が改善しないため、ティースメイト® ディセンシタイザーを使用した結果、症状が消失した(図1416)。

  •  3 の歯肉が退縮し、歯頸部象牙質に冷水痛や冷気痛が生じている写真
    図11 3の歯肉が退縮し、歯頸部象牙質に冷水痛や冷気痛が生じている。
  • ペーストを30秒以上、擦り塗りしている写真
    図12 ペーストを30秒以上、擦り塗りしている。
  • 水洗後の写真
    図13 水洗後、エアーブローにより効果を確かめる。
  • スケーリング後の写真
    図14 スケーリング後に432に冷水痛が生じている。
  • ペーストを30秒以上、擦り塗りしている写真
    図15 ペーストを30秒以上、擦り塗りしている。
  • 水洗後の写真
    図16 水洗後、エアーブローにより効果を確かめる。

■まとめ

今回発売された知覚過敏抑制材「ティースメイト®ディセンシタイザー」は、従来の市販品とは全く異なり、リン酸カルシウム技術を用いた自己硬化型知覚過敏抑制材である。
レジン系の知覚過敏抑制材では歯周への影響が心配されるが、本製品ではハイドロキシアパタイトに転化することから、歯周に対して安心して使用できるという大きなメリットを有している。
また本材で知覚過敏を処置した後にコンポジットレジン修復を行っても、接着性に影響を与えないことは、臨床家にとって使用範囲が大きく拡大すると考えられる。今後の先生方の臨床にお役立ていただければ幸いである。

参考文献
  • 1) 池田英治:知覚過敏発症のメカニズム. 日本歯科理工学会誌. 29
  • 2) Yoshiyama, M., Masada, J., Uchida, A. & Ishida, H.:Scanning clectron microscopic characterization of sensitive vs. insensitive human radicular dentin. J. Dent. Res., 68:1498~1502, 1989.
  • 3) 吉山昌宏:象牙質知覚過敏の発症メカニズムとその予防と治療. 日本歯科医師会雑誌. Vol.63, No.11, 2011‑2.
  • 4) Brown, W.E. and Chow, L.C. : A new calcium phosphate setting cement, J Dent Res, 62, 672, 1983.
  • 5) 菅原明喜、L.C. Chow and 高木章三 : Calcium phosphate cementを応用した象牙質知覚過敏症の治に関する研究. 歯材器, 8(2) : 282‑294, 1989. 
  • 6) 菅原明喜 : 骨再生のテクノロジー改訂新版-骨再生の概念と臨床応用-. ゼニス出版, 2011.

デンタルマガジン 144号 SPRING