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歯科充填用コンポジットレジン「クリアフィル マジェスティ ES フロー」について

クラレノリタケデンタル株式会社 マーケティング・営業本部 企画開発部

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■目次

■はじめに

近年のフロアブルレジンは材料性能の点で進歩を続けている。流動性が高いためにフィラー充填量が低く、その結果、機械的強度に劣るというフロアブルレジンに対するイメージを払拭するような理工学的特性に優れた製品が商品化されている。また、単に流動性の高いペースト性状のみならず適度に付形性を有するタイプ等、CR充填において従来ユニバーサルタイプ(粘土状のペーストタイプ)を適用してきた症例に対してフロアブルレジンがその代替として使用されるケースが増えていると推察される1、2)
このような状況下では、フロアブルレジンに要求される性能が高まっている。充填部位表層に適用されることは即ち、充分な機械的強度に加え、賦形性や操作性の良いペースト性状、修復歯への色調適合性、研磨後の光沢性など、これまでユニバーサルタイプに求められてきた要件がフロアブルレジンにも求められることになる3、4)
接着技術の進歩に伴うMIコンセプトの広がり、フロアブルレジンの性能向上、そして無駄が少なく短時間で効率的な診療を支えるフロアブルレジンの特長が相まって5、6)、CR充填におけるフロアブルレジンの選択頻度が今後も増していくと考えられる。
当社は2007年に「クリアフィル® マジェスティ® LV」を製品化した。高い機械的強度、ペースト操作性の良さを特長として、単にライニング材料としてのフロアブルレジンではなく充填修復材料における選択肢の一つとして本品を打ち出してきた。一方で発売後に得られた臨床家の評価から、例えば前歯歯頸部のCR充填など硬化物の光沢性を求める症例において、研磨に時間を要する点等が本製品の課題として見えてきた。
このような経緯から、「クリアフィル® マジェスティ®LV」の持つ機械的強度を保持しながらも優れた研磨性、光沢性の持続を開発目標に位置づけ「クリアフィル® マジェスティ® ES フロー」の開発を進めた。
本品は上記の開発目標を達成するに留まらず、ペースト操作性、機械的強度、色調適合性の点からバランスの取れた製品に仕上がっており、これらの特長について以下に解説したい。

■「クリアフィル® マジェスティ® ES フロー」を支える技術と特長

本品の技術的な特長に「新規の微小フィラーの導入」と「新規の表面処理技術の導入」が挙げられる。これらの技術と、そこから得られるメリットを以下にまとめた。

1)研磨性と光沢持続性
本品では微小な無機粒子からなる「サブミクロンガラスフィラー」および「クラスターフィラー」を導入した(図1)。前者が本品の主となるフィラーであり、1μmの1/10(サブミクロン)という微細なスケールであると共に、後者もまたナノサイズの粒子から構成される凝集体(クラスター)である。これらの小さなフィラー粒径によりレジン硬化物は滑らかな表面性状を得やすく、良好な研磨性の獲得が期待される。
図2は光照射によりペーストを硬化させ、アルコールを含むワッテで未重合層を拭き取った際のレジン硬化物の表面観である。高い光沢性があることがわかり、その後に続く研磨・つや出し時に得られる表面性状の潜在性の高さを推し量ることができる。
また、本品の光沢性レベルを示す一例に光照射によるレジン硬化後の光沢度の推移を示した(図3)。#600の耐水研磨紙で表面を粗糙化した状態からダイヤモンド砥粒を含むシリコンポイントを用い、20秒間の研磨後には約66%の光沢度が得られる。さらに、この研磨後の硬化物を40,000回の歯ブラシ摩耗試験にかけても光沢度は65%であり、初期と大差ないことからも微小フィラー導入の効果が窺える(図4)。
本特性は、例えば隣接面を含む症例など研磨しづらい箇所を含むCR充填において短時間で充填物の光沢性が獲得できることから、フロアブルレジンによる時間効率の良い治療を支える技術の一つと期待される。

  • クリアフィル マジェスティ ES フロー を構成する微小フィラー
    図1 クリアフィル マジェスティ ES フロー を構成する微小フィラー
  • 硬化物の表面観(未重合層拭き取り後)
    図2 硬化物の表面観(未重合層拭き取り後)
  • 研磨によるレジン硬化物の光沢度の推移
    図3 研磨によるレジン硬化物の光沢度の推移
  • CR硬化物表面の光沢感
    図4 CR硬化物表面の光沢感

2)ペースト性状
本品では上述の新規微小フィラーの配合量をコントロールすると共に新規のフィラー表面処理技術を導入している。このためフィラーとモノマーのなじみが向上しており、フロアブルレジンとして適度な流動性を確保しながらも賦形性を有し、かつ、糸ひきのないペースト性状に整えられている(図5)。開発初期にはサブミクロンサイズのフィラーのみから構成される組成も検討されたが、ペーストの糸ひきが著しく強まる傾向にあった。これは臨床家にとって操作上ストレスとなり、フロアブルレジンによる時間効率の良い治療を阻害する因子と考えられたため、種々の検討を経てサイズの異なる球状クラスターフィラーを適切な分量で配合することにより、滑らかな表面性状と研磨性を保ちながら糸ひきが抑制されたペーストを得るに至っている。
本品は最近のフロアブルレジンの中でローフロータイプ(低流動型)に分類される。一口にローフローと言ってもペースト硬さが製品によって異なり、本品では例えば紙パッドにペーストを押出した際、流動性は抑えながらも適度に表面が平坦化されるペースト性状としている。この性状は歯頸部やⅢ級窩洞における充填に適していると考える。
また、微小フィラーを主成分とするペーストでは得てしてシリンジからの吐出が重く感じる傾向にあるが、本品ではこの負荷を低減するため表面処理技術による組成物の点から、また、シリンジ容器形状の点から工夫がなされている。
歯頸部や隣接面を含む充填の症例で垂れることのない性状であること、また、シリンジからの充填時ないし探針で形態を整える際に糸ひきのない性状であることが、臨床家にとってストレスの少ないペースト操作性につながればとの思いで設計されている。

  • クリアフィル マジェスティ ES フローのペースト性状
    図5 クリアフィル マジェスティ ES フローのペースト性状

3)機械的強度
上述のフィラー表面処理技術は75 wt%のフィラー高密度充填にも寄与している。また、この技術によりフィラーへの表面処理剤の結合量が増し、光照射時の硬化性を高めている(表1)。その結果、曲げ強さ151MPa、圧縮強さ373 MPaを得るに至り、高い機械的物性を持つ「クリアフィル® マジェスティ® LV」と比較してもこの点で遜色ない数値である(図6)。
このことはフロアブルレジンの機械的強度に対する不安を払拭すると共に、前歯のみならず臼歯部充填への本品適用にも耐えうる強度と推察される。

  • 表面処理法の違いによる試作組成物のビッカース硬さ
    表1 表面処理法の違いによる試作組成物のビッカース硬さ
  • クリアフィル マジェスティ ES フローの機械的物性値 (a)曲げ強さ(b)圧縮強さ
    図6 クリアフィル マジェスティ ES フローの機械的物性値 (a)曲げ強さ(b)圧縮強さ

4)色調適合性
本品の色調(下記、構成品を参照)はVITA(ビタ)クラシカルシェードに適合した「クリアフィル® マジェスティ® ES‑2」において設定された色調に合わせている。また、上述のクラスターフィラーが光拡散性を有していることから充填物の色調が周囲の歯質になじみやすいと考えられ、さらには光照射に伴う硬化前後の色調変化をできるだけ抑える工夫がなされており、充填に際して臨床家のイメージ通りに色調再現されることが期待される。

■構成品

図7は「クリアフィル® マジェスティ® ES フロー」の構成である。レジン充填材の他、付属品に「ニードルチップ(N)」および「ニードルチップキャップ」が各々5個含まれる。シェードはA1, A2, A3, A3.5, A4, A6, B1, B2, XW,A2D, A3Dの全11シェードである。
VITA(ビタ)クラシカルシェードにない色調が含まれるが、A6はA4よりも濃色で高齢者の歯頸部の色調を、XWはブリーチング後の色調を意識して設定されている。またA2D・A3Dは従来の当社OA色よりさらに遮蔽性が高く濃い色調であることから、特に本品をライニングとして使用する際に、下地の色をできるだけ抑えたいケースでの適用を意図している。

※「VITA」はVITA Zahnfabrik,Bad Sackingen, Germanyの商標です。

  • クリアフィル マジェスティ ES フロー
    図7 クリアフィル マジェスティ ES フロー

■まとめ

今回発売した「クリアフィル® マジェスティ® ES フロー」は、研磨性と得られた光沢の持続性を特長の軸としながらも、ペースト操作性、機械的強度、色調適合性においてバランスの取れた製品に仕上がったと考えている。先生方の今後の治療において“使いやすいフロアブルレジン”としてお役立ていただければ幸いである。

参考文献
  • 1) 歯科機器・用品年鑑 2013年版, 173‑176, アール アンド ディー社,2013.
  • 2) 森上誠, 山田敏元 ほか, フロアブルレジンの使用頻度に関する臨床調査, B11‑1020, 134回歯科保存学会学術大会, 2011.
  • 3) 宮崎真至, コンポジットレジン修復のサイエンス&テクニック, 8‑19, 108‑116, クインテッセンス出版, 2010.
  • 4) 秋本尚武 ほか, 別冊 the Quintessence YEAR BOOK 2011 日常臨床で必ず使えるコンポジットレジン修復の一手, 14‑30, クインテッセンス出版, 2011.
  • 5) 猪越重久, 1からわかるコンポジットレジン修復, 84‑95, クインテッセンス出版, 2012.
  • 6) 田上順次, 宮崎真至, 松本勝利 編著, 日本歯科評論別冊 2012 コンポジットレジン修復のArt & Imagination, 184‑205, ヒョーロン・パブリッシャーズ, 2012.

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