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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
多目的超音波治療器ソルフィーFの臨床応用
北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座 歯周・歯内療法学教室 菅谷 勉

■1. はじめに

超音波スケーラーが臨床に用いられ始めた頃は、歯肉縁上の大きな歯石を除去するための道具にすぎなかったが、その後の発展に伴って活用の場面は広がっている。とくに歯周治療と歯内療法では、診療の効率化だけでなく治療成績の向上につながることから、今や日常臨床に欠かせない機器となっている。このたび発売された多目的超音波治療器ソルフィーF(図1)は、チップの種類を豊富に具え、パワーレンジも1~25と従来のソルフィーと比べかなり幅広くなり、多様なニーズに応える製品となっている。
ソルフィーFの最大の特長は、根管長測定器が内蔵されていることである。根管長測定器が内蔵されている超音波治療器は世界で唯一であり、チップ先端が歯根膜に近接、到達すると音と数値で知らせてくれるため、根管洗浄時や根管形成時に根尖部まで精度の高い処置が可能となる。また、歯根破折を根管内から治療するのにきわめて有効で、抜歯適応とされてきた歯の多くを救うことが可能となっている。
また、外付けボトル式の給水システムを装備した仕様も選択でき、コンセントさえあればユニットに給水コネクターが設置されていなかったり、往診など診療室でない場所でも注水下での使用が可能である。しかも、従来の製品に比べてサイズが小さくなっており、直径15cm程度のスペースがあればブラケットテーブルに載せて使用することができる。通常は左手にバキュームやミラーを持っているので、術者の右側に装置が置けるとスリーウェイシリンジとの持ち替えやパワーの変更などの動作が行いやすく、作業効率が向上する。

■2. 歯周治療

(1)歯肉縁上スケーリング
大きな歯石の除去に使用するチップには、定番のユニバーサルチップのほか、先端の断面形状が台形のものや半円形のものがあり、効率性と歯面損傷に配慮して選択が可能となっている。先端部の断面が三角形のユニバーサルチップS1は除去効率を優先しており、断面が半円形のスケーリングチップS4は歯面に損傷が生じにくい。断面が台形のスケーリングチップS3はその中間的な特性である(図2)。歯石除去効率や歯面へのダメージは、チップを歯石に押し当てるときの圧やパワーの設定で異なるため、各自の好みでチップを選べば良い。ライト付き仕様も選択できるので、無影灯の光が直接とどかない部位でも視野は明るく、ストレスなく歯石除去ができる。ランプはLEDなので切れる心配はほとんどない。
(2)2つのパワーモード
ソルフィーFにはノーマルモードとソフトモードの2つのパワーモードがある。ソフトモードでは、超音波スケーラーのチップを歯面に強く押し当てて負荷がかかると振動が弱くなり、ノーマルモードでは、チップに負荷が加わった時でも振動が減衰しにくい。スケーリングでは、この2つのパワーモードを使いこなすと効率良く処置できる。
一般に、超音波スケーラーで多量の歯石を除去する時、最初はパワーを強めにし、チップを歯石に強めに押し当てて効率よく歯石を除去する。そのまま、大きなパワーで使用していると、直接歯面にチップが触れた時に痛みや不快感を与えるので、歯面が見えてきたらパワーを下げて軽圧で触れるようにして細かい歯石を除去する。ノーマルモードでは、チップを歯石に押し当てる力のコントロールだけで、この調整がある程度可能となる。まず、チップが歯面に直接触れても大きな不快感を与えず、細かい歯石が除去できる程度のパワーに設定する。このパワーでは大きな歯石はなかなか除去できないので、チップを強めに歯石に押し当てるとパワーが低下せずに除去効率が上がる。これは、強く押し当てるにしたがってパワーが上がっていく感覚に近い。大きな歯石が除去できたら、軽圧で細かい歯石に触れることで、歯面への損傷や不快な振動を軽減して繊細な処置が可能となる。使い慣れると、パワーの設定を変更しなくても歯石に押し当てる力の調整で効率的なスケーリングが行える。知覚過敏があって振動が大きく強く加わると痛みを訴える場合などに有効である。
(3)歯肉縁下スケーリング
歯肉縁下スケーリングではルートプレーニングチップP5が便利である。ポケットプローブと類似の形態であり(図3)、ポケットへの挿入もプロービングと同様に無理なく行え(図4)、深いポケットの底部まで無麻酔での処置が可能である。慣れてくると超音波振動しながらでも根面の粗造感を触知できるが、最初のうちはチップが振動しているとわかりにくいので、振動を止め、ポケットプローブで歯肉縁下歯石を診査するのと同じ要領で、根面をチップ先端で探り、歯石を触知したらそこにチップをあててフットスイッチを踏み歯石に振動を加えるとよい。
歯石が固く大きいときは、まず少し強めにチップを押し当てながら歯石を除去する。歯石が除去できたら、次に根面全面に付着しているプラークと微小な歯石を軽圧で取り除く。それにはまず、プロービングと同じ要領でポケット底部までチップを挿入し、ポケット底部から歯冠側に向かってチップを動かすとよい。慣れてくるとチップを振動させていてもポケット底部で止めることができるが、不慣れだとポケット底部を突き刺しやすいので、最初のうちは振動を止めてプロービングするようにポケット底部まで挿入し、それからフットスイッチを踏んでチップを振動させる。チップは歯軸と垂直方向に2mm程度の幅で動かし、先端で根面をこするようにしながら歯冠側に引き上げていく(図5)。歯肉辺縁部まできれいにできたら2mm横に移動してポケット底部までチップを挿入し、同様に歯冠側に向かって根面をきれいにしていく。これを繰り返して歯根全周のプラークを取り除く。プラーク除去のために歯冠側からポケット底部に向かってチップを進めると、ポケット底部を突き刺し痛みを与えるが、ポケット底部から歯冠側に向かって行えば、痛みはプロービングと同程度ですむ。また、超音波スケーラーのチップの振動は先端が最も大きく後部では小さいので、先端部のみが臨床的に有効な振動をしていると考えてよい。そのため、先端部を根面に接触させて、このように動かすことが必要となる。また、ルートプレーニングチップP5はチップが細いので叢生のある狭い歯間部にも使いやすい。

  • ソルフィーFの写真
    図1 ソルフィーF
  • 歯肉縁上スケーリングに使用する主なチップの写真
    図2 歯肉縁上スケーリングに使用する主なチップ
    断面形状の違いによって歯石除去の効率性と歯面へのダメージが異なる。
  • ポケットプローブとルートプレーニングチップP5の写真
    図3 ポケットプローブとルートプレーニングチップP5
    ルートプレーニングチップP5はポケットプローブと形状が似ており、歯肉縁下への挿入がプロービングと同様の感覚で行える。
  • ルートプレーニングチップP5による歯肉縁下スケーリングの写真
    図4 ルートプレーニングチップP5による歯肉縁下スケーリング
    歯根の幅が狭い下顎前歯の唇側の深いポケットでも、ポケット底部まで無麻酔でスケーリングが行える。
  • 歯肉縁下でのチップの動かし方の図
    図5 歯肉縁下でのチップの動かし方
    ①まずポケット底部まで入れ、2mm程度の幅で横に動かしながら、チップ先端で根面をこするようにして、歯冠側に引き上げていく。
    ②2mm幅で根面がきれいにできたら、その横に移動してポケット底部までチップを挿入し、同様に歯冠側にむかって根面をきれいにしていく。
  • 分岐部用超音波チップ ペリオポイントPP2RとPP2Lの写真
    図6 分岐部用超音波チップ ペリオポイントPP2RとPP2L
    分岐部探針よりやや湾曲が大きい方が近遠心根の分岐部側面に接触させやすい。

(4)根分岐部のスケーリング
多根歯の分岐部に歯周炎が進行した場合、ハンドスケーラーは分岐部の幅に比べて先端の刃部が大きいため、挿入もできなければ適切な角度で根面に当てることもできず、十分なスケーリング、ルートプレーニングは行えない。その反面、超音波スケーラーでは分岐部根面に接触さえできればプラークや歯石を除去することができるので、分岐部探針に類似した形態のチップが有効である。分岐部のプロービングでは水平方向にどれだけ入るかを主体に診査するため、プローブ先端が根面に接触していなくても大きな問題はないが、分岐部根面のスケーリングではチップ先端を分岐部根面に接触させることが必須である。また、分岐部病変が水平方向だけでなく根尖方向にも進行していれば、近遠心根の分岐部側根面にもチップを届かせなければならない。それには分岐部探針よりやや湾曲の大きいペリオポイントPP2R(PP2L)が使いやすい(図6)。チップを水平方向に挿入するだけでは分岐部のプラークが線状に除去されるのみなので、多方向から分岐部内に挿入することが大切である(図7)。また、分岐部では単根歯と異なりチップ先端が根面に接触している感覚がわかりにくいので、どのように挿入したら分岐部根面全面にチップ先端を接触させられるか、抜去歯や模型でトレーニングをしてから使用した方がよい。
分岐部病変では根面がきれいになって炎症が消失しても歯肉退縮が起こりにくく、分岐部病変が残存することが多いが、定期的に分岐部内のプラークを取り除くことによって、長期間悪化を阻止できる症例も稀ではない。そのためには分岐部根面に到達性の良いペリオポイントPP2R(PP2L)を使いこなすことが大切である(図8)。
(5)根面の平滑化
超音波スケーラーは刃物ではないため、軟らかいものを切削したり根面の凹凸を平坦化することは難しい。そのため、超音波スケーラー使用後にハンドスケーラーでルートプレーニングすると、軟化したセメント質が除去されてくることがあり、超音波スケーラーの性能が向上したとは言え、ハンドスケーラーを手放すことはできなかった。
このたび発売されたキュレットチップP1(図9)は、断面が台形でエッジ部分が鋭利になっているので、超音波振動していると効率良く根面の切削が可能である。ハンドスケーラーと異なり軽圧で接触させればよいので、労力は格段に軽減される(図10)。根面の平滑性はハンドスケーラー使用後に近い感触が得られるが、切削中に平滑になったかどうかの感覚はハンドスケーラーの方がわかりやすい。また、チップを根面に強く押し当てると食い込んで深い傷を作ってしまうので、軽圧で使用すること、さらに根面との角度をハンドスケーラーよりやや小さめにすることが必要である。キュレットチップP1は手用スケーラーのようにシャンクを根尖に向けてポケットに挿入すると、歯肉の抵抗で振動が減衰したり適切な角度で根面に当てることができなかったりして、根面が十分に削れなかったり根面に強く圧が加わって削りすぎたりすることがある。このような場合にはチップ先端を根尖方向に向けて水平ストロークの要領で使うと良い(図11)。
(6)メンテナンス
歯周炎のメンテナンスでは、歯肉縁下のプラークを定期的に取り除くことが重要となる。とくにポケットの深い部位では、患者自身によるブラッシングだけではポケット内の細菌叢を悪化させないようにコントロールすることは難しく、歯科医師や歯科衛生士によるポケット内のプラークコントロールが必要となる。
ポケット内のプラークを除去するためには、洗浄だけでは根面に付着しているプラークは除去できないため、根面全面を超音波チップで接触することが必要となる。そのためには、ポケットプローブに似た形状のルートプレーニングチップP5が使いやすいが、歯冠部の豊隆が大きい部位では、まっすぐで長いチップはポケット底部まで入れることは難しい。このような部位にはぺリオチップP2が有効である(図12)。このチップは全長が短くわずかに湾曲があるため、歯冠の豊隆をよけて挿入することができ、臼歯部の隣接面などで使いやすい(図13、14)。しかし、全長が短いため深いポケットではチップの方向が分かりにくくなるので、チップ先端が根面から離れてしまわないように、注意しながら用いることが必要である。
ぺリオチップP2やルートプレーニングチップP5など、歯肉縁下で使いやすいチップは細くなっているため、大きなパワーで力を入れると破折する危険性がある。また、ハンドピースに装着したまま床に落下させるとチップが変形し、そのまま使用していると力を入れなくても破折することがある。とくに細いチップはパワーを守って軽圧で使用することが大切である。

  • 分岐部根面へのチップの当て方の写真
    図7 分岐部根面へのチップの当て方
    分岐部の超音波スケーリングでは水平方向に挿入するだけではなく(中央)、近心から遠心に向けたり(左)、遠心から近心に向けたりして(右)、分岐部根面全面に触れるようにする。
  • 6 頰側分岐部のスケーリングの写真
    図8 6頰側分岐部のスケーリング
    1~2度の分岐部であれば、分岐部用チップをうまく使うと、炎症を消失させてそのままメンテナンス可能になる症例は多い。
  • 根面の切削が可能なキュレットチップP1の写真
    図9 根面の切削が可能なキュレットチップP1
    断面が台形でエッジ部分で根面の切削が可能である。
  • キュレットチップP1によるSRPの写真
    図10 キュレットチップP1によるSRP
    ハンドスケーラーと同様の使用法で良いが、根面には軽圧で触れることが重要である。
  • キュレットチップP1の効果的使用法の写真
    図11 キュレットチップP1の効果的使用法
    シャンクを根尖にむけて挿入すると歯肉の抵抗が強い場合、水平ストロークの要領で使用する。
  • ポケットプローブとぺリオチップP2
    図12 ポケットプローブとぺリオチップP2
    ぺリオチップP2は、ポケットプローブと同程度の太さで歯肉縁下への挿入が容易である。全長が短いので6mmを超えるような深いポケットの底部には届きにくいが、メンテナンス時にポケット内のプラーク除去に効果的である。
  • ぺリオチップP2の効果的使用法の写真
    図13 ぺリオチップP2の効果的使用法
    ルートプレーニングチップP5は、歯冠の豊隆が大きい部位(ab)では歯冠にチップが接触して(黒矢印)ポケットを大きく広げないと(赤矢印)ポケット底部まで挿入できないため、ポケット底部まで挿入することは困難である。ぺリオチップP2では歯冠の豊隆部をよけてポケット底部まで無理なく挿入できる(cd)。
  • ぺリオチップP2を用いたメンテンスの写真
    図14 ぺリオチップP2を用いたメンテンス
    歯冠の豊隆が大きい部位では、ポケット内のプラーク除去に効果を発揮する。
  • 根管充填材除去用アンカーチップE10の写真
    図15 根管充填材除去用アンカーチップE10
    先端が円錐形になっており、ガッタパーチャを粉砕しながら除去するため、古く硬化したガッタパーチャや固い糊剤も除去できる。

■3. 歯内療法

(1)仮封材除去
根管治療で仮封材を除去するのに超音波スケーラーはたいへん有効である。とくに水硬性仮封材は練和する必要がなく仮封するには便利であるが、長期間経過すると硬くなって探針では除去できずタービンが必要になる。硬くなった水硬性仮封材を除去するには、ユニバーサルチップS1などを用いてノーマルモードに設定し、最初は仮封材に強く押し当て効率的に除去し、髄腔壁の細かい仮封材の除去は軽圧で行うと振動に伴う不快感を最小限にできる。
Tek内面の仮着材を除去するときも軽圧で接触するだけで良いので、レジンの薄い部分を壊す危険性が少ない。
(2)根管充填材の除去
①根管上部から中部の除去
日常の臨床で、根管治療時の根充材除去には多大な時間を費やしており、最も効率化したい治療の一つである。ソルフィーFのアンカーチップE10は先端が円錐形になっており、根管充填材の除去に威力を発揮する(図15)。非注水下で用いると、チップが秒速数ミリの速度でガッタパーチャ内を根尖方向に進んでいく(図16)。とくに古くて硬いガッタパーチャや硬く硬化した糊剤根充材は、ゲイツグリッデンドリルやピーソーリーマーなどの回転切削器具ではなかなか除去できないが、このチップは根充材を粉砕しながら除去するので効率が良い。
アンカーチップE10は盲目的に行うと根管壁にステップを作る危険性があるので、根充材の砕片で根管内が見えなくなってきたら、注水して超音波洗浄し、チップが根充材に接触していることを確認しながら使用することが大切である。また、根管壁にチップが食い込むと破折しやすいので、慣れるまではソフトモードでパワーを少し下げ、軽圧で使用した方が安全である。
根管が円形の場合は回転切削器具でも除去できるが、偏平や樋状になっている場合は根管壁に根充材が残りやすい。超音波では根管の形態に左右されず、しかもコントラヘッドがないので根管内を見ながら作業できるため、見える部位に根充材を取り残すことはない。肉眼では根管口付近しか見えないが、拡大鏡やマイクロスコープを併用すると根管の深い位置まで取り除くことができる。
②根管下部の除去
アンカーチップE10の先端は直径0.6mmあり、根充材の直径がこれより細い場合には、超音波用エンドファイルやダイヤファイル(図17)など細いものを使用する。細いチップやファイルでも不用意に用いると根管壁にステップを作るので、下部根管の根充材を超音波チップで除去するにはマイクロスコープが必須となる。アンカーチップE10同様、注水をOFFにしてガッタパーチャを粉砕しながら根尖方向に進め、切削粉がたまってきたら注水して超音波洗浄を行う。根尖孔付近までガッタパーチャを除去していくと、チップが根尖孔から突き出すことを心配しなければならないが、ソルフィーFは根管長測定器を内蔵しているため、チップ先端が歯根膜に近接したことを知らせてくれる(図18)。
根管長測定を併用するためには口角部に対極をかけるだけでよい。超音波チップ先端と頰粘膜とのインピーダンスを計測してメーター指示値が表示されるので、ファイルで電気的根管長測定を行うのと同様に、超音波チップが根尖方向にすすむと指示値が「Apex」に近づいていく。超音波振動しながらでも計測可能であり、さらにメーター指示値が任意の設定値に達すると自動的に超音波振動を停止するアピカルストップシステムがあるので、根尖孔を過剰に切削する危険性が低い。
メーターの基本特性はルートZXミニやデンタポートZXと同じで、メーター指示値0.5で根尖狭窄部のわずかに根尖側を指しているが、この位置まで超音波振動しながらチップを進めると根尖狭窄部を少し切削することになる。誤差も考慮して安全に使用したい場合には、アピカルストップを1.0や1.5などややアンダーな値に設定するとよい。また、根尖部まで根管充填されている場合は、ガッタパーチャが残っている間は通電しないためメーターはほとんど動かず、チップが根尖孔に達する直前に急激にメーターが動き始めるので、根尖部付近では慎重に使用しないと歯根膜を突き刺すことになる。
ガッタパーチャを溶解剤で溶かしながらファイルで除去する従来の方法では、溶けたガッタパーチャが根管壁に塗布され、完全に除去するには多大な時間を費やさなければならなかった。しかし超音波で除去すると根管壁に残ることなく、汚染した根管壁も同時に切削できるので、根管充填されている歯の再根管治療はきわめて効率的となる(図19)。なお、超音波エンドファイルダブルなどの長くて細いチップを用いる場合、ノーマルモードで根管壁に強く接触するとチップ先端が破折する危険性があるので、使い慣れるまではソフトモードで使用した方が安全である。
(3)根管の拡大
樋状の根管や偏平な根管では、手用ファイルによる通常の根管拡大方法では十分に根管壁を切削することは困難である。ニッケルチタンファイルは湾曲根管には適しているが、このような根管には不向きであり、超音波による根管拡大が効果的である。根管上部はルートキャナルチップE1、根管下部ではマイクロスコープ下で超音波エンドファイルを用いて切削すると、根管壁の全周から汚染歯質を除去できる(図20)。
根管下部で根管が癒合している場合にも有効性が高い(図21)。ソルフィーFを用いてマイクロスコープ下で切削を行うと、根尖近くで癒合している場合でも癒合部より歯冠側の歯質を切削でき、根尖部付近の汚染歯質除去が確実に行える。根管長測定器が内蔵されているので根尖部を穿孔したり、不必要に根尖歯周組織に機械的刺激を与える心配も少ない。これまで治療が困難であったこのような症例は、ソルフィーFとマイクロスコープを組み合わせることで、成功率が大きく向上する。
なお、このような根管では根管充填に適した根管形成は難しく、ガッタパーチャを用いた加圧根管充填では十分な封鎖性が得られない。このような場合には、根管形態に影響されずに封鎖可能なスーパーボンド根充シーラーが有効である。
(4)根管洗浄
超音波装置による根管洗浄はすでに高い評価があり、広く臨床応用されている。しかし超音波ファイルを根尖部まで挿入しなければ、もっとも肝心な根尖部付近が十分に洗浄できない。超音波ファイルにストッパーを取り付けても、振動すると容易にずれるため信頼性が低く、根尖部付近は不十分になりやすかった。ソルフィーFでは電気的根管長測定が可能なので、超音波洗浄しながらチップを根尖方向に進めていくと、チップ先端が歯根膜に近づくにしたがって、根管長測定時と同じようにメーター指示値が「Apex」に近づいて行く。アピカルストップ機能を用いれば、根尖孔を誤って拡大しすぎる心配がなく、根尖孔直前まで根管洗浄が可能となる。ただし、振動は停止してもそのまま根尖方向にチップを進めれば、根尖歯周組織を突き刺して痛みを与えるので注意が必要である。また、金属の隔壁が装着されていると電流が漏洩しやすくメーター指示値は不安定になる。
次亜塩素酸ナトリウムを根管に満たして超音波振動を加える方法も有効な洗浄法であるが、次亜塩素酸ナトリウムを根管に満たしたときに根尖部に気泡があると、超音波振動を加えても根尖部は洗浄できない。次亜塩素酸ナトリウムは電導性が高いため、根尖部まで気泡がなければソルフィーFのチップ先端が薬液に触れたときにメーター指示値が少し動くので、根尖部に気泡が入っていないことを確認しながら洗浄できる。

  • アンカーチップE10によるガッタパーチャ除去の写真 アンカーチップE10によるガッタパーチャ除去の写真
    図16 アンカーチップE10によるガッタパーチャ除去
    古く硬いガッタパーチャも容易に粉砕でき、溶解剤を使用した場合と異なり根管壁に溶けたガッタパーチャが残ることはなく、超音波洗浄すると根管壁から残らず除去できる。
  • 超音波エンドファイルとダイヤファイルの写真
    図17 超音波エンドファイルとダイヤファイル
    超音波エンドファイルは先端が#25、長さは19mm(シングル)と28mm(ダブル)である。
  • ソルフィーFの根管長表示の写真
    図18 ソルフィーFの根管長表示
    超音波チップが歯根膜に近づくとメーター指示値が低下するので、チップ先端位置が把握しやすい。設定したメーター指示値に達すると超音波振動が停止するアピカルストップシステムは、設定値を変更できる。
  • 超音波エンドファイルによる根尖部のガッタパーチャ除去の写真 超音波エンドファイルによる根尖部のガッタパーチャ除去の写真
    図19 超音波エンドファイルによる根尖部のガッタパーチャ除去
    5オートストップシステムを使用すると、設定値に達するとチップの振動が停止するため、根尖部の機械的刺激は最小限で根充材が除去でき、汚染した根管壁も同時に切削できる。
    • ソルフィーFによる樋状根の感染根管治療の写真1
    • ソルフィーFによる樋状根の感染根管治療の写真2
    図20 ソルフィーFによる樋状根の感染根管治療
    初診時、7の根尖部に骨吸収がみられる。ソルフィーFとアンカーチップE10、超音波エンドファイルで根充材の除去と感染歯質を除去した。このような形態の根管は回転切削器具や手用ファイルでは拡大困難である。3ヵ月後、根尖部骨吸収に改善がみられ、スーパーボンド根充シーラーで根管充填した。2年後、根尖部透過像は消失し経過は良好である。
    • 2根管が交通している症例のソルフィーFによる感染根管治療の写真1
    • 2根管が交通している症例のソルフィーFによる感染根管治療の写真2
    図21 2根管が交通している症例のソルフィーFによる感染根管治療
    初診時、8の根尖部に骨吸収がみられる。根管の交通が確認でき、ソルフィーFに超音波エンドファイルを用いて癒合部より上部の歯質を切削すると偏平な1根管となり、根 尖部には汚染歯質が残存していた。6ヵ月後、根尖部の透過像は消失している。

■4. 垂直歯根破折

(1)垂直破折歯根の炎症の原因と治療の基本
近年注目されている垂直歯根破折は長年抜歯の適応とされてきた。しかし、歯根が垂直に破折した場合に生じる歯周組織の炎症は、根管や破折線に増殖した細菌が主な原因であることが明らかとなり、破折線に感染した細菌を取り除き、破折間隙を接着して封鎖することで保存可能になる症例は多い。
垂直歯根破折の治療法は大きく分けると2つの方法がある。一つは抜歯して破折面の汚染歯質を削って接着後に再植する方法で、もう一つは根管内から破折線を切削して感染を取り除き、接着性レジンセメントを流し込む方法である。根管内から処置することができれば、再植が難しい多根歯や外科処置を避けたい患者にも応用でき(図22)、抜歯や再植に伴う歯根の破折や根吸収なども避けられ、適応症例を拡大することが可能となる。
(2)破折線の切削と洗浄
破折線を根管内から切削するには、タービンなどの回転切削器具ではヘッドや注水で破折線が見えず、切削できても切削幅が広くなって接着が難しくなるため、破折線を見ながら切削可能な超音波治療器が有効である。その際にチップ先端と歯根膜の距離を検出しながら切削が可能なソルフィーFはきわめて効果的である。
破折線の切削は歯根膜に達するまで行いたいが、破折間隙を過剰に広げてしまってレジンセメントと歯根膜が接する面積が拡がると、ポケット上皮が下方増殖しやすくなって深い歯周ポケットを形成する危険性が高くなる。ソルフィーFは根管長測定器が超音波治療器に連動しているため、チップ先端が歯根表面に達する直前に振動が停止し、削りすぎて破折間隙が過剰に広くなるのを防止できる(図23~25)。チップは破折間隙を最少の幅で切削できることから超音波エンドファイルやダイヤファイル(図17)を用いている。
(3)破折間隙の接着
破折線をソルフィーFで切削して汚染歯質を除去するとともに、レジンセメントが流入可能なスペースの形成ができたら、生体親和性の高いスーパーボンドで接着を行う。出血や排膿がある場合には水酸化カルシウム製剤等を貼薬して仮封し、炎症の消失を待ってから破折間隙の封鎖を行う。これは、根管治療で根尖歯周組織の炎症が改善したら根管充填を行うのと同様の概念である。根管をスーパーボンドで満たし、破折間隙にレジンセメントを流入させると同時にポストを挿入して築造を同時に行うが、スーパーボンドを適正な流動性で使用すれば、破折線から歯周組織内に溢出する心配はほとんどない(図26)。
(4)破折部に限局したポケットのメンテナンス
垂直破折では破折線周囲の歯根膜が失われていると、炎症は消失しても限局的な深い歯周ポケットが残ることがある。この場合には歯周炎患者と同様にポケット内に炎症が生じないよう、定期的にポケット内のプラークを除去することが重要となる。とくに歯根破折では幅の狭い限局的なポケットが残ることがあるため、ポケット内に挿入しやすいチップが豊富に揃っているソルフィーFはメンテナンスにも大いに役立つ。

    • 根尖性歯根破折の口腔内接着症例の写真1
    • 根尖性歯根破折の口腔内接着症例の写真2
    図22 根尖性歯根破折の口腔内接着症例
    初診時、根尖部から近心歯頸部に骨吸収がみられる。補綴物を除去すると近遠心根とも根尖から歯頸部近くまで破折線が認められた(矢印部)。ソルフィーFに超音波エンドチップを用いて破折線を切削、水酸化カルシウムを貼薬、1ヵ月後、骨吸収に改善が見られたので、スーパーボンドで破折線を根管内から接着した。2年後、骨 吸収は消失して良好に経過している。
  • ソルフィーFを用いた破折線の切削と色素侵入試験の写真
    図23 ソルフィーFを用いた破折線の切削と色素侵入試験
    抜去歯を破折させ、破折線を根管内から切削して接着した切削側では、破折線に色素がほとんど入らなかったが、切削せずに接着した非切削側では根管付近まで色素侵入がみられた。
  • アピカルストップ設定値と破折線への色素侵入量のグラフ
    図24 アピカルストップ設定値と破折線への色素侵入量
    ソルフィーFのアピカルストップシステムを用いて破折線を切削、接着すると、破折線を切削しない場合に比較して破折線への色素侵入は著しく低下し、口腔外で破折歯根を接着する場合に近い封鎖性が得られた。
  • ソルフィーFによる破折線の切削の写真 ソルフィーFによる破折線の切削の写真
    図25 ソルフィーFによる破折線の切削
    4のポストを除去すると頰舌側に破折線が見られた(矢印)。ソルフィーFのオートストップシステムを用いて破折線を根管内から切削すると過剰に切削することなく、破折線の感染除去と接着スペースの確保が行える。ポスト接着により破折線を接着して封鎖し4ヵ月後、エックス線写真で骨吸収などはみられない。
  • 口腔内接着後に再植した症例写真 口腔内接着後に再植した症例写真
    図26 口腔内接着後に再植した症例
    初診時、舌側のプロービングデプスは6mmで、破折線をソルフィーFで切削、水酸化カルシウムを貼薬した。1ヵ月後、骨欠損の改善は不十分でポストの印象は舌側が浸出液のため破折線が十分に採得できていない。接着後も舌側のプロービングデプスは10mmあったため、再植を行った。抜歯した歯根の頰側はほぼ過不足なく封鎖できているが、舌側は根面に歯石様沈着物があり、炎症が消失せず浸出液が破折間隙に浸入していたために破折間隙の封鎖が不十分になったと考えられた。破折間隙をスーパーボンドで接着して再植後、骨欠損は消失、プロービングデプスは3mmに改善し、経過は良好である。

■5. まとめ

このたび発売されたソルフィーFは、臨床での多様なニーズに応え、多目的で使用できる超音波装置として他にはない優れた機能をもつ製品となっている。搭載されている機能をフルに活用することによって、治療精度の向上と効率化だけでなく、抜歯適応とされてきた歯を救うことにも役立つものと思われる。