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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
クリアフィルマジェスティESフローの臨床応用
タカハシデンタルオフィス 高橋 登

■目次

■はじめに

直接CR充填は、一般歯科医が日常臨床にて最も頻繁に取り組む治療行為の一つである。基本的な処置ではあるが、高い精度で治療が施されれば、患者の受ける恩恵は大きく、さまざまある歯科治療のなかでも優れた治療オプションと言えるだろう。
昨今、医療関係者の間で「MI ; Minimal Intervention」の概念が急速に普及しており、符合するように直接CR充填の適応範囲も急速に広がりを見せている。
直接CR充填において中心的な役割を果たすボンディングシステムとコンポジットレジンは、歯科界において最もマテリアルイノベーションが盛んな分野のひとつであり、優れた治療材料が続々とマーケットに新規投入されている。
今回、新規フロアブルレジンとしてクリアフィル マジェスティ ESフロー<クラレノリタケデンタル(株)>の販売が開始された。同社はボンディングシステムの分野においてはこの20年業界をリードする立場にあったが、コンポジットレジンにおいても注目すべき技術が応用された商品を輩出することに成功した。
本稿において、クリアフィル マジェスティ ESフローの特徴を解説し、ケースレポートをご紹介したい。

■クリアフィルマジェスティ ESフローにおける新技術

コンポジットレジンはおおまかにフィラー、マトリックスと両者を接合する接着層から構成されている。
今回クリアフィル マジェスティ ESフローのフィラーには、サブミクロンガラスフィラーと球形クラスターフィラーが採用されている(図1)。その恩恵によって業界トップクラスの表面滑沢性を獲得するに至っており、メーカーによれば無研磨充填処理が可能となっている。
無研磨状態での表面滑沢性を視認するために、簡単なテストを行ってみた。クリアフィル マジェスティESフローと各社フロアブルレジンを半球状に採取し、それぞれ光重合・硬化させたサンプルを無研磨にて流水下で歯ブラシで1000回刷掃してみた。
処理後、各サンプルを比較視認してみると、クリアフィル マジェスティ ESフローの表面滑沢性が優れていることを確認することができた(図2)。
また、他の改良点としてフィラーとマトリックスを接合する接着層の改良に成功したとアナウンスされている。この技術はコンポジットレジンの物性と耐久性に貢献する可能性があり、筆者は大きな期待を寄せている。試しに半球状に採取したフロアブルレジンを光重合し、そのサンプルをスカルペルで削ってみると、クリアフィル マジェスティ ESフローの表面はわずかに傷をつけるのがやっとであった。これは改良点が複合的にコンポジットレジンの物性向上に貢献していることを伺わせる(図3)。

  • クリアフィル マジェスティ ESフローを構成するサブミクロンガラスフィラーとクラスターフィラー。
    図1 クリアフィル マジェスティ ESフローを構成するサブミクロンガラスフィラーとクラスターフィラー。
  • 各種フロアブルレジンを採取し光重合後、そのまま無研磨にて流水下で歯ブラシにて1000回刷掃。矢印で示したクリアフィル マジェスティ ESフローは良好な表面滑沢性を示している。
    図2 各種フロアブルレジンを採取し光重合後、そのまま無研磨にて流水下で歯ブラシにて1000回刷掃。矢印で示したクリアフィル マジェスティ ESフローは良好な表面滑沢性を示している。
  • クリアフィル マジェスティ ESフローを光重合後、スカルペルにて削ってみる。わずかに傷をつけるのがやっとである。
    図3 クリアフィル マジェスティ ESフローを光重合後、スカルペルにて削ってみる。わずかに傷をつけるのがやっとである。

■クリアフィルマジェスティ ESフローの臨床応用

臼歯咬合面充填における無研磨のクリアフィル マジェスティ ESフローが示す挙動(表面性状変化・色調変化・形態保持)について観察するため、う蝕に罹患したボランティアの6 を治療対象歯として選択した。
患歯には近心隣接面にう蝕を認め、咬合面には不良充填物を確認した(図4)。局所麻酔後、ラバーダムアイソレーションを行い、感染組織の除去と窩洞形成を行う。ボンディング処理にはクリアフィルボンド SE ONE を使用した(図56)。
ボンディングを光重合後、プレカーブ付きのトランスルーセントマトリックスを近心隣接面に設置し、クリアフィル マジェスティ ESフローにて近心隣接面窩洞を充填、光重合した。
隣接面における光周りの制約などを考慮して光重合は十分な時間を確保する。
続けて咬合面窩洞、頰面溝窩洞をクリアフィル マジェスティ ESフローにて充填した。無研磨での観察を行いたいというテストの目的から、咬合調整も行えないので、正確な咬合状態を付与するように注意深く咬頭形態を再現した。咬合面の付形には繊細な形状の探針が用いられた(図7)。
形態付与が完了したらコンポジットレジンの光重合を行う。再度重合時間を十分に確保する。
咬合面は無調整・無研磨での予後を確認するために、わずかな過充填部を残し、そのまま終了とした。
一方、近心隣接面部における歯質とCRの境界部のオーバーフィリングは形態修整、研磨を行った(図8

  • 6 術前(鏡像)。近心隣接面に冷水痛を伴うう蝕、咬合面に不良充填を認める。患者にケースレポートの目的を説明し、協力を得る。
    図4 6 術前(鏡像)。近心隣接面に冷水痛を伴うう蝕、咬合面に不良充填を認める。患者にケースレポートの目的を説明し、協力を得る。
  • クリアフィルボンドSE ONE。重合率を向上する光重合触媒を採用している。
    図5 クリアフィルボンドSE ONE。重合率を向上する光重合触媒を採用している。
  • 窩洞形成後、クリアフィルボンドSE ONEにてボンディング処理を行う。
    図6 窩洞形成後、クリアフィルボンドSE ONEにてボンディング処理を行う。
  • クリアフィル マジェスティ ESフローにて充填。探針を用いて咬合面の形態付与を行っている。
    図7 クリアフィル マジェスティ ESフローにて充填。探針を用いて咬合面の形態付与を行っている。
  • 治療直後。下顎第一大臼歯近心隣接面、および咬合面の修復に採用されたことにより、今後、十分な機能圧に晒され、経過を観察する。咬合面は実験的に調整・仕上げ研磨を行っていない。
    図8 治療直後。下顎第一大臼歯近心隣接面、および咬合面の修復に採用されたことにより、今後、十分な機能圧に晒され、経過を観察する。咬合面は実験的に調整・仕上げ研磨を行っていない。

■観察結果

治療6ヵ月後に形態、色調、咬合状態など確認した。歯列の中でも最大級の機能圧がかかる第一大臼歯の咬合面において、無研磨のフロアブルレジンがどのような挙動を示すか興味深いところであるが、6ヵ月間の観察期間において、劣化を確認することはできなかった。色調、咬合状態は良好、チッピングなど認められず、表面性状においては充填直後を凌駕する滑沢性を呈していた。
図910において歯冠とコンポジットレジン充填部の色調関係に相違が認められるが、充填直後にエナメル質が乾燥するために生じる変化であり、実質的に変化は認められない。極めて良好な経過と言えるだろう。

  • 6ヵ月後の口腔内の状態。咬合接触状態を確認するために咬合紙をマーキングに用いている。 充填直後と比較して良好な状態を維持しており、表面性状に関しては、治療直後より滑沢性を増している。
    図9 6ヵ月後の口腔内の状態。咬合接触状態を確認するために咬合紙をマーキングに用いている。 充填直後と比較して良好な状態を維持しており、表面性状に関しては、治療直後より滑沢性を増している。
  • 同じく直視方向からの写真。審美的にも良好な経過を確認できる。
    図10 同じく直視方向からの写真。審美的にも良好な経過を確認できる。

■おわりに

筆者は個人的には、数分ですむ形態修整・研磨の行程を省くことに臨床的な意義があるとは考えていない。
本ケースは新規フロアブルレジンの特性を確認する目的のために、実験的に無研磨にて経過を観察したものである。
今回のケースは臨床的問題こそ起きてはいないが、若干のオーバーフィリングが放置されており、研磨が可能な部位においては、是非、研磨処置を行って頂きたいと考えている。その前提で考察すると、短い観察期間であるが結果としては良好な経過を確認することができた。もちろん研磨を行った他のケースを観察した結果も良好であり、研磨を行うことに問題はない。
実際にファインのダイヤモンドポイントなどでクリアフィル マジェスティ ESフローに対して形態修整を行っている際に感じる感覚は、コンポジットレジンを削っている感じとは違い、より固い物質を想起させられる。この感覚はクリアフィル マジェスティ ESフローにおける新規フィラーの採用と接着層の改良によって、圧縮強度や曲げ強度などの機械的指標で評価できないCRの臨床的物性が強化されたものと想像している。
さらに耐久性においても性能が向上していることに大きく期待するものである。臨床的には10年程度の観察期間を経て明らかにされるだろうが、さらなる調査報告によって良い結果が示されることを楽しみに待ちたい。

デンタルマガジン 146号 AUTUMN