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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
根管充填用接着性レジンシーラーの必要性 ―メタシールSoftの活用―
岐阜県恵那市開業 林 正規

■目 次

■根管充填の目的

根管充填には様々な方法や材料が適用されるが、その目的は長期的な根管封鎖である。根管封鎖は根管充填用シーラー(以下、シーラーと略す)が担っており、シーラーを根管壁の隅々まで密着させるためのコア材として根管充填用ガッタパーチャ(以下、ガッタパーチャと略す)が用いられる。
しかし、従来のシーラーは硬化収縮がおきるので、シーラーの占有体積はできるだけ小さいほうがよい。加圧根管充填が推奨された理由もその点にある。つまり、ガッタパーチャを加圧し緊密に充填することでシーラーを根管壁と密着、勘合させ、根管全体の封鎖性を向上させてきた。その反面、過度の加圧によって根管壁に微小な亀裂が入り、これが治療後の垂直性歯根破折の一因となっていたことは否めない。
近年、開発された接着性レジンシーラーは、根管象牙質壁に接触すると成分中のモノマーが浸透重合して接着層を形成するため、軽度加圧によりシーラーを根管壁に接触させることで根管を封鎖することが可能となった。
本稿では、新しく開発されたメタシール Softについて、臨床応用を含めて解説したい。

■抜髄・感染根管治療の基本構成

歯内疾患における根尖歯周組織の治癒は、根管内の「病原の除去処置」によって導かれ「二次感染の防止処置」がこれを保持する(図1)。「病原の除去処置」とは、根管の拡大形成による細菌や壊死組織の機械的除去ならびに根管薬液洗浄による化学的除去のことで、根管内細菌の減少により根尖歯周組織が治癒に向かう。
また、隔壁、ラバーダムおよび仮封といった治療中の「二次感染の防止処置」が、治癒に向かうための環境を保持する。さらに、根管貼薬は、根管内に残存した細菌が、次のアポイントまでの間に再増殖するのを防ぐ目的で貼薬される。そして、臨床症状や瘻孔の消退などにより根尖歯周組織が治癒に向かったと診断された場合に根管充填を行う。
根尖歯周組織の治癒は根管充填によって直接導かれるわけではない。根管充填は治癒に向かった根尖歯周組織の再発予防処置である。

  • 図1 根尖歯周組織の治癒は根管内の「病原の除去処置」によって導かれ、「二次感染の防止処置」がこれを保持する。根管充填は二次感染の防止処置の一つである。
    図1 根尖歯周組織の治癒は根管内の「病原の除去処置」によって導かれ、「二次感染の防止処置」がこれを保持する。根管充填は二次感染の防止処置の一つである。

■根管充填の役割と現状

根管充填には再発予防処置としての3つの大切な役割がある。
1. 歯冠側からの漏洩(coronal leakage)の防止
歯冠側からの漏洩実験では、緊密な加圧根管充填がなされたとしても、垂直加圧根管充填および側方加圧根管充填の封鎖性に差がなく、従来のシーラーによる封鎖では、水や唾液は3日で、口腔内細菌は約2ヵ月で歯冠側から根尖孔外へと漏洩・通過することが知られている1)
つまり、根管充填後の不備な仮封および修復物の脱離などにより歯冠側からの漏洩がおきた場合、現状では2ヵ月程度の短期的封鎖能しかないことになる。

2. 根管内残存細菌の長期的封じ込め
根管系の形態は複雑であるため、切削器具や有機質溶解剤で根管内のすべての細菌や壊死組織を除去することは困難である。
また、感染根管では象牙細管内の数100μmにまで細菌が侵入しているので、根管系から細菌をすべて除去することは不可能である2)

3.根尖孔からの組織液の侵入防止
従来のシーラーは組織液に溶ける性質があるため、根尖孔からの漏洩は継時的に進むことが想定され、象牙細管内に残存した細菌の封じ込めが困難な状況となる可能性が高い。
また、炎症が存在する場所には血流を介して細菌が集積することが知られており(アナコレーシス)、根尖性歯周炎では血行性に細菌感染がおきる可能性がある。

■接着性レジンシーラーメタシール Softの特徴

上記の根管充填に求められる3つの役割を満たし、長期的な根管封鎖を実現するための封鎖材として、生体安全性が高く、接着・封鎖性能に優れた接着性レジンが最適と考えられる。
先に開発された接着性レジンシーラー・スーパーボンド根充シーラー(サンメディカル)は、根管充填材としての極めて優れた性質を有していたが3)、前処理が必要で、従来の根管充填法とは全く異なる方法での充填であり、また、再治療時における除去が困難であるという欠点も併せ持っていた。
そのため、誰もがもっと簡単に使える接着性レジンシーラーの開発が望まれ、今回、その要望に応えてメタシール Soft(サンメディカル)が開発された(図2)。
メタシール Softの主な特徴は下記の3点である。
1)従来のシーラーと同じく、練板紙上で粉と液を混和する形態である。
2)接着阻害剤である次亜塩素酸ナトリウムを適用した根管壁でも前処理の必要がなく、従来のシーラーと同じ使い方で接着できる。
3)硬化してもゴム状であるため、手用ファイルで除去できる(図34)。
メタシール Softの開発により、従来の加圧根管充填手技を変えることなく、根管壁にシーラーを接着させ封鎖性を向上させることができるようになった(図56)。さらに、本材は重合収縮はするものの、収縮により接着層は破壊されない。
また、メタシール Soft自体が主根管充填材となり得るので、従来のようなガッタパーチャによる緊密な加圧の必要はなく、シーラーを根管象牙質壁の隅々まで接触させるだけの目的で、軽い力で圧接すればよい。

  • 図2 メタシールSoftのセット内容①粉 ②液 ③計量スプーン④練板紙 ⑤遮光カバー⑥エンドノズル(ノズル、プラグ、ストップリング)
    図2 メタシールSoftのセット内容
    ①粉 ②液 ③計量スプーン ④練板紙
    ⑤遮光カバー ⑥エンドノズル(ノズル、プラグ、ストップリング)
  • 図3 メタシールSoftは硬化してもゴム状である。
    図3 メタシールSoftは硬化してもゴム状である。
  • 図4 メタシールSoftは硬化後に手用ファイルで除去できる。
    図4 メタシールSoftは硬化後に手用ファイルで除去できる。
  • 図5 メタシールSoftはレジンタグおよび樹脂含浸象牙質を形成して根管象牙質壁と接着する。
    図5 メタシールSoftはレジンタグおよび樹脂含浸象牙質を形成して根管象牙質壁と接着する。
  • 図6 メタシールSoftはガッタパーチャの表層を溶かして融合し硬化するので、ガッタパーチャとの界面に漏洩がおきない。
    図6 メタシールSoftはガッタパーチャの表層を溶かして融合し硬化するので、ガッタパーチャとの界面に漏洩がおきない。

■メタシール Soft使用上の注意点

1.メタシール Softの操作時間
粉と液を練板紙上で混和した後、付属の遮光カバーで遮光すれば30分間は硬化しない(図7)。遮光しなければ操作時間は3分程度である。
また、付属のエンドノズルを使う場合、先端を遮光すれば15分は硬化しないが、遮光しなければ5分程度でエンドノズルのスリット部が硬化する。複数根管を充填する場合には遮光するとよい。
なお、根管充填直後にレジン光照射器の光をあてると根管口部の本材表層を固めることができる。

2.メタシール Softの填入
根管内へのメタシール Softの填入には、エンドノズルを使うと便利である(図8)。根管中央部まで入れば本材の濡れは良いので、ガッタパーチャで根尖まで送り込める。
垂直加圧根管充填にも応用できるが、過度の加熱は本材を変性させるので注意を要す。

3.ガッタパーチャポイントの挿入
根尖孔外に溢出したレジンシーラーは吸収されないので、これを防ぐために、根尖におけるメインポイントのタッグバックは必ず確認しなければならない。
また、ガッタパーチャポイントは500g程度の軽い力で加圧し、複数本挿入することを推奨する。

4.ポスト形成
根管内全体が硬化するのに60分程度はかかるので、ポスト腔の即日形成は避けたほうがよい。
また、硬化したメタシール Softはゴム状なので、ポスト腔形成時にピーソーリーマーなどでガッタパーチャを巻き込んで引き抜かないように注意する。

  • 図7 メタシールSoftは付属の遮光カバーで遮光すれば30分間は硬化しないが、遮光しなければ操作時間は3分程度である。
    図7 メタシールSoftは付属の遮光カバーで遮光すれば30分間は硬化しないが、遮光しなければ操作時間は3分程度である。
  • 図8 付属のエンドノズルにメタシールSoftを填入し、根管内に移送すると便利である。エンドノズル先端にはスリットが入っており、本材は根尖方向ではなく側方へと押し出される。
    図8 付属のエンドノズルにメタシールSoftを填入し、根管内に移送すると便利である。エンドノズル先端にはスリットが入っており、本材は根尖方向ではなく側方へと押し出される。

■メタシール Softを用いた臨床例

<症例1>
図912に本材を用いた側方加圧根管充填の臨床例を示す。
患者は42歳女性で患歯は左側下顎第一小臼歯。自覚症状はないが、根尖を取り巻くX線透過像を認めた(図9)。
治療開始当日に旧根管充填材を除去し作業長測定、根管形成および根管薬液洗浄をおこなった(図10)。
1ヵ月後、2回目の治療時に本材を用いて側方加圧根管充填を完了した。すでに根尖病変の縮小傾向が認められる(図11)。
根管充填後3ヵ月半の予後観察では、根尖病変は消退し良好な治癒経過を示している(図12)。
<症例2>
図1320に本材を用いた垂直加圧根管充填の臨床例を示す。
患者は78歳女性で右側上顎中切歯の歯冠破折により来院(図13)。
診査の結果、生活歯で自覚症状はなく正常歯髄と診断したが、補綴的な理由から便宜抜髄を選択した。
初回治療時に抜髄、作業長測定、根管形成および根管薬液洗浄を終了した。
患者の体調不良により2ヵ月後の2回目治療時に作業長測定のテストファイルおよび根管充填をおこなった。
本症例ではポスト腔を確保するため、根尖部根管のみを垂直加圧により充填した(図1420)。

  • 図9 左側下顎第一小臼歯の術前X線写真。根尖を取り巻くX線透過像を認める。
    図9 左側下顎第一小臼歯の術前X線写真。根尖を取り巻くX線透過像を認める。
  • 図10 ファイル試適時のX線写真。頰舌的に2根管を認める。
    図10 ファイル試適時のX線写真。頰舌的に2根管を認める。
  • 図11 メタシールSoftを用いて側方加圧根管充填を完了した。すでに根尖病変の縮小傾向が認められる。
    図11 メタシールSoftを用いて側方加圧根管充填を完了した。すでに根尖病変の縮小傾向が認められる。
  • 図12 根管充填後3ヵ月半の予後観察では、根尖病変は消退し良好な治癒経過を示している。
    図12 根管充填後3ヵ月半の予後観察では、根尖病変は消退し良好な治癒経過を示している。
  • 図13 78歳女性の右側上顎中切歯の術前X線写真。歯冠破折により来院した。
    図13 78歳女性の右側上顎中切歯の術前X線写真。歯冠破折により来院した。
  • 図14 作業長測定確認のファイル試適時の口腔内写真。
    図14 作業長測定確認のファイル試適時の口腔内写真。
  • 図15 作業長測定確認のファイル試適X線写真。
    図15 作業長測定確認のファイル試適X線写真。
  • 図16 根尖孔外にレジン系シーラーを溢出させると吸収されないので、溢出を防ぐために、根尖におけるメインポイントのタッグバックは必ず確認しなければならない。
    図16 根尖孔外にレジン系シーラーを溢出させると吸収されないので、溢出を防ぐために、根尖におけるメインポイントのタッグバックは必ず確認しなければならない。
  • 図17 メタシールSoftは練板紙上で粉と液を混和する。
    図17 メタシールSoftは練板紙上で粉と液を混和する。
  • 図18 6~7mmに切断したメインポイント先端を、シルダープラガーの先端を火炎で温めて直結し、メタシールSoftを塗布する。ポイント先端からシリコンストッパーまでの距離を作業長に合せる。
    図18 6~7mmに切断したメインポイント先端を、シルダープラガーの先端を火炎で温めて直結し、メタシールSoftを塗布する。ポイント先端からシリコンストッパーまでの距離を作業長に合せる。
  • 図19 そのまま根管に挿入し、500g程度の加圧力でシリコンストッパーの位置まで垂直加圧する。歯冠側のポイント断端はヒートキャリアーで加熱軟化し、プラガーにて加圧する。
    図19 そのまま根管に挿入し、500g程度の加圧力でシリコンストッパーの位置まで垂直加圧する。歯冠側のポイント断端はヒートキャリアーで加熱軟化し、プラガーにて加圧する。
  • 図20 根管充填直後のX線写真。ポスト腔は確保されているので、メタシールSoftの接着層を破壊することなく暫間被覆冠が作成できる。
    図20 根管充填直後のX線写真。ポスト腔は確保されているので、メタシールSoftの接着層を破壊することなく暫間被覆冠が作成できる。

■おわりに

メタシール Softは、象牙質接着により歯冠側からの漏洩を阻止し、根管全体の封鎖性を向上させることができる。また、除去性にも優れているので、根管充填が苦手でも安心して使える接着性レジンシーラーとして有用であると考える。

参考文献
  • 1) Torabinejad M, Ung B, Ketterring JD: In vitro bacterial penetrationof coronally unsealed endodontically treated teeth.J Endod, 16:566-569, 1990
  • 2) Ando N, Hoshino E: Predominant obligate anaerobes invadingthe deep layers of root canal dentin. Int Endod J,23:20-27,1990
  • 3) 林 正規:臨床理工講座“密着から接着へ‐歯科用根管充填シーラー「スーパーボンド根充シーラー」.日本歯科評論9:109~113,2006

デンタルマガジン 147号 WINTER