東京都台東区 大谷歯科クリニック
院長 大谷一紀 7、8年前まで私の医院では審美的な要求が高い方をはじめ、特別な理由をお持ちの患者さんに限ってオールセラミックによる審美修復をお薦めしていましたが、最近では患者さん側にもメタルフリー診療への理解が深まったこともあり、ジルコニア前装クラウン(以下、PFZ)によるオールセラミック修復を選択するケースが増えています。ただPFZの場合、適した色を出すために歯質の切削量が増えてしまい、MIの観点からも生活歯などには応用しづらいケースがあったことも事実です。
例えば、支台歯の状態が良く、できるだけ抜髄を避けたいケースの場合、これまではPFZではなくポーセレンジャケットクラウンを選択することが多かったのですが、PFZほどの強度はないため症例によっては適応できませんでした。しかし、今後販売予定の「ノリタケカタナジルコニア HT」のように高い透光性と強度の両立が可能な材料ならば適応症例も増えると思われます。
私自身、PFZでここまで繊細に歯の色を表現できることを実感して以来、大谷歯科クリニックではファースチョイスとしてお薦めする機会が増えています。
また、今回クラレノリタケデンタルから発売された「ノリタケカタナジルコニア ML」では、従来のジルコニア製品に比べて透光性が向上したこと、4層の自然なグラデーションが付与されたことで、より自然な色が再現できるようになり、さらに多くの適応症が考えられるようになってきました。
これまでコスト面の問題から、特に下顎の臼歯、上顎の小・大臼歯までは、ハイブリッドセラミックスを選択する患者さんが多かったのですが、長期的にみた場合、咬合面の摩耗が気になります。
今後の経過観察を慎重に行う必要はありますが、モノリシックで口腔内における経年的変化や摩耗が少ない材料という意味では、“ハイブリッドの費用で選択できるセラミック”という位置づけで、臼歯の審美修復にも積極的に使っていけるものと期待しています。
歯科技工士
湯浅直人 従来のノリタケカタナジルコニア(KT、KD)と比較して「ノリタケカタナジルコニア MLおよびHT」の透光性は高くなりました。これらを用いれば、今までのフルジルコニアクラウンのように不透明度が高すぎて色が全く調和しないといった状況は多少軽減されると思われます。
さらに「ノリタケカタナジルコニア ML」はディスクそのものが濃度の異なる4層グラデーション構造となっており、完成したクラウンもより天然歯に近いグラデーションが付与されます。
これは今までエクスターナルステイニングもしくは完全焼結前の着色により付与しなければならなかった部分ですから、この工程が省ける可能性があるという意味では理想に近づいたと言えます。
実際に何度か臨床応用したところ、「A Dark」が比較的調和しやすい状況が多いと感じています。具体的には、透明度の高い天然歯ではなく、若年代の天然歯のようにエナメル質が明るい天然歯に調和しやすいでしょう。
しかし、支台歯や目標歯の色の条件によっては当然調和させることが困難な症例もありますので、高度な色の調和が望まれる症例においては、調整範囲の広い「カタナジルコニアフレーム+セラビアンZR(PFZ)」の適応が第一選択となります。
また、「カタナジルコニアフレーム+セラビアンZR(PFZ)」を適応する症例においても、今後販売予定の「ノリタケカタナジルコニア HT」のように高い透光性を有したフレームが使用できることは大きなアドバンテージとなります。
石灰化の進んだ透明度の高い天然歯を模倣しなければならない症例や、形成量が大きくとれない生活歯の症例(図7〜12)ではより透光性の高いフレームが必要になりますので、強度を犠牲にせずこれを実現するHTには期待しています。