京都府長岡京市
ふじわら歯科クリニック
院長 藤原康則 ジルコニアによるオールセラミック治療を積極的に臨床に取り入れるようになって6、7年が経過しました。
私自身、取り入れた当初から、歯肉退縮などのトラブルもなく比較的順調に経過していましたが、例えばパッシブフィットを獲得できる従来のメタルボンドに匹敵するような適合を求めた場合、これまでのオールセラミックではそこまで要求するには厳しい部分がありました。もっとも私はマテリアルの問題よりも支台歯形成のコンディションによるところが大きいと常々考えていますから、様々に起こるトラブルに関しても、まずは歯科医師自身のスキルの問題を疑うべきと自問しています。
ただ、近年のCAD/CAM技術の進歩は目覚ましいものがあり、ジルコニアの普及とも相まってメタルボンドに匹敵する適合を得ることも難しくなくなってきました。
さらにここ数年来続く貴金属価格の高騰や、金属アレルギーの問題など、患者さんの方からメタルフリーによる修復を求められることも多くなっています。そうした流れを受けて、最近では私の医院でもメタルボンドの症例はあまり見られなくなり、オールセラミックによる修復治療がメインになっています。
ジルコニアというマテリアルに関しては、歯科医療に応用されるようになってあまり時間が経っていませんから、長期的な経過を見ていく必要はありますが、チタンに変わってインプラントのフィクスチャーに応用され始めるなど、生体親和性が高く、現在もっとも注目されている材料と言っても過言ではないでしょう。
さらに、従来から言われている利点の他に、ポーセレンと比較してプラークの付着が少ないといった報告も見られるようで、今後の可能性という面からも楽しみな材料ですね。
そこで、このたびクラレノリタケデンタルから新たに発売された「ノリタケカタナジルコニア ML」ですが、これまでジルコニア最大の課題とも言える透光性が大幅に改善されたことにまず驚きました。
天然歯をできるだけ削らずに残すことを大前提と考えた場合、少ないクリアランスの中で自然な透明感を出していかなければなりません。
しかし、従来のジルコニア製品ではどうしてもうまく表現できず、全体的にのっぺりと平坦な見え方になってしまいがちでした。
ところが「ノリタケカタナジルコニアML」では、その高透光性に加えて、エナメル層から象牙質、さらに歯頸部まで自然な4層のグラデーションがつけられていて、余計な着色工程が不要なうえ、色ムラの心配もありません。
研磨するだけで臨在する天然歯と遜色がない程度の色調が表現できるので、そのままフルジルコニアクランとして応用できるのがいいですね。
ただ、ジルコニアの研磨に関しては注意が必要です。研磨が不十分で、面が粗造なままだと対合のエナメル質を削ってしまうことに繋がります。ですから咬合調整の後はラボに一回バックして再研磨してもらうのが一番確実ですし、口腔内で研磨するのであれば、ジルコニア仕上用研磨材などを使って入念に研磨する必要があります。
このことは実は私も最近まで知りませんでしたので、まだご存じない先生もいらっしゃると思います。この点にご注意いただければ、ジルコニアはとても使いやすく可能性に満ちた材料ですから、私もさらに積極的に応用し、活用範囲を広げていきたいと考えています。