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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
ダイアペン・ダイアガンを用いた根管充填法
澤田デンタルオフィス 澤田 則宏

■ 根管充填の目的

根管形成によりキレイにした根管内に再び細菌感染が起きないように根管系を緊密に封鎖することが根管充填の目的の一つである。一方、根管形成では根管内を完全に無菌化できるわけではない。根管形成でファイルがあたる部分は根管系の80%程度にしか過ぎないと言う報告もある1)。根管側枝や根尖分岐に入りこんだ細菌は化学的洗浄を併用して無菌化をはかるわけであるが、完全に取り除けない細菌も存在する。完全に取り除くことができなかった細菌が悪さをしないように、側枝や細管内に封じ込める(entomb)というのも根管充填のもう一つの目的である。
従来の根管充填では、ガッタパーチャとシーラーを用いた根管充填法が広く行われている。ガッタパーチャだけでは根管壁との封鎖性を確立できないため、ガッタパーチャと根管壁との間にはシーラーが必須である。様々なシーラーが開発されているが、昨今の歯科材料学を考えれば、接着性レジン系シーラーが今後は主流になっていくと思われ、根管内で複雑なステップを必要としない接着性レジン系シーラーが望ましい2)。

■ 根管充填法の選択

どの根管充填法を選択したとしても、臨床成績に差はでない3)。大学で学生にまず教える側方加圧根管充填でも、多くの症例で良好な予後が得られる。しかし、内部吸収や樋状根管などの症例に側方加圧根管充填を行うと、内部吸収窩や樋状根管のイスムス部分はシーラーで満たされることになる。シーラーは前述のようにガッタパーチャと根管壁の間の封鎖性を得るために使用するものであり、ガッタパーチャの代わりに根管内を充填するものではない。つまり、このような症例では根管内でガッタパーチャを加熱軟化し、できるだけガッタパーチャの占める容積が大きくなるような根管充填法を選択する必要がある、ということになる(図1、2)。
加熱軟化ガッタパーチャ根管充填法は、内部吸収窩やイスムスにガッタパーチャを送り込むことができるというメリットがある一方、根管充填の深さをコントロールするのが難しいというデメリットがある。加熱軟化ガッタパーチャ根管充填法のいくつかは、根管充填が極端にアンダーになったり、根管充填材を根尖孔外に溢出させてしまうことがあり、その根管充填法をマスターすることは容易ではない。
今回紹介するダイアペンとダイアガンを用いた根管充填法は、加熱軟化ガッタパーチャ根管充填法のメリットを活かしながら、デメリットである根管充填材の溢出などを未然に防ぐことができる根管充填法として、世界中の歯内療法専門医が行っている根管充填法の一つである。

  • 左上第一大臼歯の根管充填の写真
    図1 左上第一大臼歯の根管充填 術前のエックス線写真で口蓋根管に内部吸収が認められる(a)。加熱軟化ガッタパーチャ法により内部吸収窩にもガッタパーチャを緊密に充填した(b)。
  • 左下第二大臼歯の根管充填の写真
    図2 左下第二大臼歯の根管充填 術前のエックス線写真から樋状根管であることが予想された(a)。根管充填1年後のエックス線写真。樋状根管のイスムス部分にもガッタパーチャが緊密に根充されており、根尖の透過像も消失している(b)。
  • ダイアペンの写真
    図3 ダイアペン。
  • ダイアペンの写真
    図4 ダイアペンの赤いボタン(矢印)を押すとチップの先端が設定温度まで上昇する。
  • ダイアペンのチップの写真
    図5 ダイアペンのチップ。
  • 表1 ダイアペンチップのサイズ
    ダイアペンチップのサイズの表
  • エンドウエーブ用ガッタパーチャの写真
    図6 エンドウエーブ用ガッタパーチャ。
  • ダイアペンの先端温度の設定部分の写真
    図7 ダイアペンの先端温度の設定。写真は筆者が使用しているモード。Fのチップを用いて、Low(170度)の設定となっている。
  • ダイアペンのチップの写真
    図8 ダイアペンのチップは60度ずつ変化させて、6段階で差し込むことにより様々な方向への加圧が可能となる。
  • ダイアガンの写真
    図9 ダイアガン。

■ ダイアペンの特徴(図3)

ダイアペンの赤いボタンを押すとチップの先端が設定温度まで急速に上昇し、赤いボタンを離すと先端の温度は速やかに下降する(図4)。根管内に試適したガッタパーチャポイントに、このダイアペンのチップを熱しながら、作業長の数ミリ手前まで挿入する。熱せられたガッタパーチャは根管内の隅々にまで行き渡り、緊密な根管充填が可能となる。
ダイアペンのチップには、XF、F、FM、M、MLと5種類の太さがあり、根管の太さによってチップを選択する(図5)。チップのサイズは表1のようになっているが、筆者はもっぱらFを愛用している。
ダイアペンの先端温度は、3段階で設定が可能である。Lowは170度、Mediumは200度、Highは220度の設定となる。使用するガッタパーチャにもよるが、エンドウエーブ用ガッタパーチャ(図6)を使用するなら、Lowの設定で十分と思われる(図7)。
また、ダイアペンのチップは60度ずつ回転させて差し込むことができる(図8)。上顎と下顎、右側と左側というふうに、患歯の位置によりチップ先端の角度を変えることにより、術者が無理な姿勢を取る必要がなくなる。

■ ダイアペンの特徴(図9)

ダイアガンはコードレスタイプで、とてもコンパクトな設計となっており使い勝手がよい。下顎臼歯部の根管充填の際に、ダイアガンを持ち替えたときにもコードが邪魔をすることがない。
複根管歯の根管充填など、ダイアペンとダイアガンを頻繁に持ち替えることがある。そのような場合、ダイアガンはいちいち充電器に戻さなくても自立してくれるので、どこにでも置くことができる。充電器がすぐ手の届くところにあるわけではないので、独り立ちしてくれることにより、チップの先端が折れたり、汚染したりする心配がなく非常に便利である。
ダイアガンの温度も160度、180度、200度の3段階で設定することが可能である(図10)。また、スイッチを入れると設定温度まで速やかに上昇する。従来の器械だと設定温度まで上昇するのを待つ時間にイライラしたものだが、このダイアガンでは20秒程度で設定温度まで上がってくれるので、使用する際に電源を入れ忘れていたり、スタッフが気を利かせて早めに電源を入れていたために自動オフとなってしまっていたとしても、術者にはほとんどストレスがかからず設定温度まで上昇してくれる。細かいことかもしれないが、嬉しい配慮の一つである。
従来の器械では、大臼歯の根管充填を行う際に、熱くなったネックの部分(図11)が患者の口唇に触れて「熱い!」と言われることがあった。ダイアガンはこの部分の温度が高温にならないため、第二大臼歯の根管充填でも無用な心配をすることがなくなった。これも臨床医にとっては嬉しい機能である。
また先端の向きを360度自由に変えることが可能である(図12)。大臼歯の頰側根管と口蓋根管を充填する際に、術者の腕を無理な方向に上げたりすることなく、先端の向きを変更することで根管充填が可能である。
このようにダイアガンは従来の機器の問題点を解決した新しいタイプの根管充填器として多くのメリットを持ち合わせている。

  • ダイアガンの温度設定表示部の写真
    図10 ダイアガンの温度設定。写真は200度の設定となっている。
  • ダイアガンのネック部分の写真
    図11 ダイアガンのネック部分は高温にならないので、口唇のやけどなどを心配する必要がなくなった。
  • ダイアガン先端の写真
    図12 先端の角度を360度自由に変えることができる。

■ ダイアペンとダイアガンを用いた根管充填法の手順

ここでは筆者が行っているダイアペンとダイアガンを用いた根管充填法を紹介する。

  • *根管形成終了時に使用したファイルの号数とテーパーを参考にし、スケールを用いてガッタパーチャポイントの先端を切り(図13)、根尖でタグバックを感じるようなポイントに調整する。タグバックを感じるポイントを試適することが、この後の根管充填での失敗を未然に防ぐことになる。
  • *十分なテーパーを与えていない根管に、太いテーパーのガッタパーチャを挿入すると、根尖より手前でタグバックを感じてしまうことがあるので注意する(図14)。このようなことがおきないようにするために、根管形成終了時に使用したファイルのテーパーより若干細めのガッタパーチャポイントを選択するのも一案である。もしそのときに根管内の隙間が多くなるようであれば、スプレッダーを用いて側方加圧充填用のアクセサリーポイントを1、2本入れるのもよいだろう(図15)。
  • *調整したポイントの先端にシーラーを付け根管壁を均一に濡らす。扁平な根管などではシーラーを根管壁に塗布するのに時間を要することがある。
  • *ポイントを試適したら、ダイアペンの先端を熱しながら、1〜2秒で作業長の3mm手前まで挿入する。ダイアペンのチップにもラバーストップをつけておき、ラバーストップが基準面より3mm浮いているようであれば、先端は作業長の3mm手前まで入っていることになる(図16)。
  • *作業長の3mm手前まで入れ、そこでチップの先が冷却されるまで10秒間保持する。この10秒間で加熱軟化したガッタパーチャの収縮を補償する。
  • *再びチップの先端を1秒ほど加熱し、チップ周囲のガッタパーチャを少し軟化させ、ダイアペンのチップを引き抜く。このときタグバックを得られない状態のポイントを試適しているとチップと一緒にガッタパーチャがすべて抜けてしまう。
  • *チップを抜いた根管内のガッタパーチャをコールドプラガー(図17)を用いて根尖方向にしっかり加圧する。
  • *この時点で、根尖3mmが根管充填された。
  • *ダイアペンのチップを引き抜いた後の根管上部を緊密に充填するため、次にダイアガンを使用する。
  • *すでに根管充填された根尖3mmのガッタパーチャ上部にダイアガンの先端をあて、充填したガッタパーチャ上部を少し軟化させる。
  • *ダイアガンのトリガーを引き、根管上部にガッタパーチャを積層するように緊密に充填する(図18)。適宜コールドプラガーを用い、ガッタパーチャの収縮を補償するように何回かに分けて根管口まで充填するのが緊密な根管充填のコツである。
  • *筆者は歯内療法専門医であるので築造処置は行わないが、この時点で築造のことも考え、ポストスペースを残しておいてもよいだろう。
  • ガッタパーチャを任意の号数に設定する穴の写真
    図13 スケールの設定した穴から飛び出したガッタパーチャを切除すると先端を任意の号数に調整することができる。
  • 根管形成のテーパーが不十分な場合の図
    図14 根管形成のテーパーが不十分だと、根尖より手前(矢印)でタグバックを感じてしまい、ダイアペンを使用した際にガッタパーチャが抜けてきてしまう。
  • 根管形成のテーパーより若干細めの場合の図
    図15 根管形成のテーパーより若干細めのガッタパーチャを試適すると根尖で確実にタグバックを感じることができるが、根尖付近で少し隙間があいてしまうので、スプレッダーを用いてアクセサリーポイントを1、2本入れておくのも一案である。
  • ラバートップで到達位置を測定する図
    図16 ダイアペンのチップにつけたラバーストップの先端が基準面からどのぐらい浮いているかで、チップ先端の位置が作業長から何mm手前まで到達しているかがわかる。
  • Sコンデンサーの図
    図17 Sコンデンサー。片側はNi-Ti、もう一方はステンレススチールのプラガーとなっている。
  • ダイアガンによる根管上部の根管充填の図
    図18 ダイアガンによる根管上部の根管充填。
  • ダイアペンとダイアガンによる根管充填のレントゲン写真
    図19 ダイアペンとダイアガンによる根管充填。

■ まとめ

ダイアペンとダイアガンを用いた根管充填を行うことにより、複雑な根管系にガッタパーチャをより緊密に充填することが可能となる(図19)。また従来の加熱軟化ガッタパーチャ根管充填法に比べると、根管充填材の到達度のコントロールも容易になる。
根管充填法により成績に差はでないと報告されているが、より確実な根管充填を従来の側方加圧根管充填法と同様もしくは短い時間で行え、しかも側方加圧根管充填でカバーできない根管にも充填することが可能となるのであれば、この方法をマスターするべきだと考えるのは筆者だけではないだろう。

参考文献
  • 1) Peters OA: Current challenges and concepts in the preparation of root canal systems: a review, J Endod, 30(8):559-567, 2004.
  • 2) 田中利典: 新しいセルフエッチング接着性レジン系シーラーメタシールSoftの特徴と臨床応用, Dental Magazine:30-33, 2013.
  • 3)Peng L, Ye L, Tan H, Zhou X: Outcome of root canal obturation by warm gutta-percha versus cold lateral condensation:a meta-analysis, J Endod, 33(2):106-109, 2007.

デンタルマガジン 147号 WINTER