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診療参加型臨床実習を進化させ次代のIT教育基盤を構築する患者ロボットシミュレーションシステム
朝日大学歯学部口腔機能修復学講座歯冠修復学分野教授 平田 健

■目 次

診療参加型臨床実習を進化させ次代のIT教育基盤を構築する患者ロボットシミュレーションシステム

朝日大学歯学部 口腔機能修復学講座 歯冠修復学分野 教授 平田 健一
朝日大学歯学部
口腔機能修復学講座
歯冠修復学分野
教授
平田 健一
診療参加型臨床実習への飽くなき追究と実践。それこそが朝日大学歯学部の歯科臨床教育のITインフラ構築を推進してきた基幹エンジンだ。歯学生のやる気と才能を引き出しながら全人的な成長を見守る。試行錯誤を重ねつつ何度も訓練・改善をフィードバックして結果を生み目標へ近づく。Plan(計画)→Do(実践)→Check(評価)→Act(改善)の4サイクルをスパイラル・アップし、継続的に臨床実習の成果を血肉化する。この教育ポリシーを継承したのが、患者ロボットシミュレータのシムロイドと統合型臨床シミュレータのクリンシムだ。朝日大学歯学部がチャレンジする歯科臨床実習シミュレーションシステムの可能性に迫った。

■診療参加型臨床実習を先駆け実習用デンタルシミュレータを日本で初導入。

1971年に開設された岐阜歯科大学が朝日大学と改称されたのは1985年。
「未来の国際社会を切り拓く社会性・創造性・人間性に富む医療人の育成」をビジョンに掲げ、基礎教育系・専門教育系・臨床教育系を体系化した6年一貫教育システムを採用、高い倫理観と人間への深い洞察力とともに、専門的な知識・技能を身につけた歯科医師の育成にひたすら努めてきた。
対話型の基礎ゼミやアーリーエクスポージャーの実践である病院見学などの早期臨床実習を手始めに、基礎歯学科目と臨床歯学科目の連携を強めるカリキュラム編成、全身医学やpd診療システムに根ざした包括的な歯科医学教育の実践をめざしている。
特にユニークなのは、診療参加型臨床実習を通して、インフォームド・コンセントの能力を養い、歯学生が医療チームの一員として指導医のもとで診療業務を分担しながら、技能・知識・態度・思考法やチームワークの重要性を学び、安全管理能力や危機管理能力、医療事故の防止や感染予防対策への知識も体得してきた点だろう。
しかも、進歩の著しい最新の歯科医療の技術革新に先鞭をつけるために、1993年に国内初となる歯科臨床実習用デンタルシミュレータ(SAT-V)をいち早く導入、歯学生のシミュレーション実習に先駆的な役割を果たしてきたことは特筆される。
2002年にはコンピュータ160台をITルームに設置、教育インフラのIT化をさらに推し進めた。2005年からは共用試験(CBT・OSCE)を実施し、歯学生のモデル・コア・カリキュラムの到達度を客観的に評価している。この不断の実践こそが、朝日大学ならではの先進性の証だ。

■臨床に強い歯科医師の育成を後押しするシムロイド&クリンシムのシステム力。

歯科臨床教育の数々の成果を結実させ、臨床現場と市民・患者・地域をつなぎ、pd診療システムの普及にも貢献しつつ、多士済々の歯科医師を輩出してきた朝日大学。
創立から42年目の2013年、その進取の気性はさらなるイノベーションに着手することになった。
「この10年間、歯学部は教育課程の再編成とシステム化を意欲的に進めてきました。ゴールは卒前・卒後研修の強化・高度化によって生涯研修へとつながる臨床に強い歯科医師の育成です。そのシステム化の先陣を切ったのがシムロイドとクリンシムの導入です」。
pd診療システムの推進に多大な尽力を果たされている平田健一教授だが、歯科臨床教育に注がれる情愛はひたすら熱い。
昨夏、附属病院2階のシミュレーション実習室に、コミュニケーション・スキルを習得できる患者ロボットシミュレーションシステムのシムロイド1台、保存・修復・形成の基本ポジションの訓練やクリンシム試験のための自己学習など、総合的な技能スキルを習得できるクリンシム10台、窩洞・支台歯の形状の定量的・客観的な評価を行うサーフレーサー、マイクロスコープを導入。実習・評価・自己学習をトータルに実践できるトレーニング環境が完成を見た。

■世界へ広めたい、次世代へ伝えたい。卒前・卒後研修から生涯研修へのロードマップ。

「ずっと推進してきた診療参加型臨床実習の先進システムをここに集約できました。シムロイドとクリンシムを融合した5〜6年生の卒前研修にも、シムロイドが支援する臨床医の卒後研修にも大いに期待を寄せています。とりわけ医療面接をアシストできるシムロイドの特質を活かせば、人の固有感覚に寄り添ったpd診療システムの真髄に触れる白熱した実習スタイルも夢ではありませんね」。
朝日大学の強みは臨床教育にとどまらず、国際交流やグローバル・コミュニケーションの領域でも先駆けている点だろう。
ニューヨーク州立大学バッファロー校歯学部を皮切りに、オカンポ記念大学歯学部、中山医学大学、北京大学口腔医学院、メキシコ州立自治大学、フンボルト大学歯学部と姉妹校協定を結び、カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部、トゥルク大学歯学部、シエナ大学歯学部と文化学術交流協定を取り交わし、交流を深めている。
昨年は、北京大学口腔医学院の実習生たちがシムロイドを初体験、実習生たちの大反響を呼び、臨床実習へのモチベーション・アップや学術交流につながった。
今後は英語圏だけでなく、シムロイドの音声認識ソフトが多言語圏へ拡充されるのが待ち望まれる。
また、恒例のオープンキャンパスで来校した全国の高校3年生たちがクリンシムを使って切削体験をするなど、次世代へのインセンティブとなるパブリシティ活動にも力を入れている。
診療参加型臨床実習がかなえられる。実習・評価・自己学習をトータルに行えるシステム力がある。生涯研修に橋渡ししつつ、pd診療システムが実感できる。
次代のIT教育基盤を構築しながら、やる気と才能を引き出すシミュレーション教育の新たなパラダイムシフトを拓く朝日大学歯学部。その未来に目映いほどの陽光が降り注いでいる。

  • 21年前に実習用デンタルシミュレータを日本で初導入。臨床教育を切り拓くリーディング・アカデミーの貢献度は多大だ。
    21年前に実習用デンタルシミュレータを日本で初導入。臨床教育を切り拓くリーディング・アカデミーの貢献度は多大だ。
  • シミュレーション実習室にシムロイド、クリンシム、サーフレーサー、マイクロスコープを搭載した万全の実習環境を整備。
    シミュレーション実習室にシムロイド、クリンシム、サーフレーサー、マイクロスコープを搭載した万全の実習環境を整備。
  • 5〜6年生の卒前研修にも臨床医の卒後研修にもシムロイドを活用。医療面接のコミュニケーション・スキルやpd診療システムを習得できる有用性にも注目したい。
    5〜6年生の卒前研修にも臨床医の卒後研修にもシムロイドを活用。医療面接のコミュニケーション・スキルやpd診療システムを習得できる有用性にも注目したい。
  • 左は窩洞・支台歯の形状を定量的・客観的に評価するサーフレーサー、右は臨床実習シナリオをプログラミングするシムロイドのGUIサーバ。
    左は窩洞・支台歯の形状を定量的・客観的に評価するサーフレーサー、右は臨床実習シナリオをプログラミングするシムロイドのGUIサーバ。

デンタルマガジン 148号 SPRING