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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

私の臨床
デンチャーフレームワークの適合は内面からピンポイントでシャープに削れるコバルトクロム用技工用カーバイドバー
奈良県奈良市有限会社デンタル・プログレッシブ代表取締役 奥森 健史

奈良県奈良市 有限会社デンタル・プログレッシブ 生まれ育った奈良の地で、主にデンチャーワークに特化したラボラトリーとして2000年にデンタル・プログレッシブを立ち上げました。両側歯列にまたがるような欠損範囲の大きな装置を鋳造で作ることが私の性に合っていると感じ、気がつけばデンチャーワークの奥深さにどっぷり浸かっていました。また、高価な自費の義歯を「すぐに合わなくなってしまった」と無念そうにタンスの奥にしまう母の姿を見て、「将来長く使える義歯を作ってやろう」と心に誓ったこともこの道に進んだきっかけです。
それから20数年、特にデンチャーについては、「比較的大きな装置ではあるが、高い精度で口腔内に調和していないとはじまらない」という思いから、鋳造精度を究めることに長い年月を費やしてきました。高い精度で立体化し、構築していくためには、まず手技的技法が重要と考えます。最近はCAD/CAMの出現で口腔内のプレパレーションが非常に良くなり、デンチャーワーク、クラウンワークにおいても印象精度が向上するなど、良い方向に向かっていると感じています。ただ、補綴のベーシックな手技をマスターすることなく、合理性や簡便性だけを求めることには疑問を感じます。
近年のCAD/CAMの進化には目を見張るものがありますが、主に合理性を追求してきた欧米諸国と日本がこれまで渡り合ってこられたのは、日本人の国民性として“手技的技法(手指の器用さ)”と、1つのモノにかける“こだわり”を大事にしてきたことが大きいと常々感じています。私はよく“New Conceptand Back to the Basic”という言葉を使いますが、まず材料の持つ特性を十分に発揮させることがテクニシャンの使命であり、基本をマスターした上で初めて新たな機器や技術を応用していくというのが本来の姿だと思っています。
さて、本題の『技工用カーバイドバー コバルトクロム用(エデンタ社)』の話に入ります。コバルトクロムは軽量で熱に強く硬さもあり、厚みを最小限にすることができますので、金属床、クラウン・ブリッジ等に適した材料として広く使用されています。ただ、吸い付くような高い適合性を求めて細かい部分を詳細に調整していくためには、切削器具の選択が重要なポイントです。
今まではエッジの立ったシャープなラインを求める際、カーボランダムポイントやダイヤモンドバーを主に使っていましたが、耐久性、価格面において満足のいくものではなく、切削器具の劣化・消耗により、切削面にシャープさを損なうことがありました。その点、この技工用カーバイドバーは数ヵ月間ほぼ毎日酷使していますが、切削力が落ちることもなく、耐久性に満足しています。さらに、金属床のような複雑な形態のものを鋳造する場合、模型にセットしても数ミクロン単位でどこかが必ず適合しない部分がありますが、それを調整していくために、ピンポイントでしかもシャープに削っていけることも利点と感じています。
また、金属床において違和感のない精密な適合調整を行ううえで最も重要なポイントは実は内面の調整にあります。一般的に外側(表面)を丁寧に調整しがちですが、本当の意味での適合は細かな内面調整なくしては得られないのです。そうした要求にも、この技工用カーバイドバーなら適確に応えてくれます。
規格は4種類あり、主に広範囲やフィニッシングラインの調整には#7227や#6927を、内面調整やマージン部の調整には#0727、その他連結部の調整等には#1727と、形態を使い分けています。私はこうした“使える”切削器具を用いてデンチャーワークにおいて、高い適合性を実現していきたいと、日々取り組んでいます。
生体は常に変化していきますから、再介入を念頭においた「次の一手」を含んだものを作っていかないといけません。まさに私がよく言う“Thinking Dental Technic”(考える歯科技工)です。装着して完了ではなく、装着してからが本当のスタート、その考えがクオリティの向上につながると信じて、これからもデンチャーワークの発展と患者さんの口腔健康維持に貢献していきたいと考えています。

  • <症例1> 図1 上顎の片側遊離端欠損症例におけるRPD(部分床義歯)の構造となるメタルフレームワークである。右側の臼歯部がすべて欠損となるこのケースでは、残存多数歯にわたる維持機構を求めるが、その適合精度も重要となる。
    図1 上顎の片側遊離端欠損症例におけるRPD(部分床義歯)の構造となるメタルフレームワークである。右側の臼歯部がすべて欠損となるこのケースでは、残存多数歯にわたる維持機構を求めるが、その適合精度も重要となる。
  • 図2 実際のポリッシングの技工作業であるが、鋳造体の“バリ”などを大まかに整えた後、12μの咬合フィルムを模型とフレームワークに介在させる。
    図2 実際のポリッシングの技工作業であるが、鋳造体の“バリ”などを大まかに整えた後、12μの咬合フィルムを模型とフレームワークに介在させる。
  • 図3 “メタルデンチャーワークのポリッシングは、内面から”という言葉は定説である。クラスプデンチャーの場合、鉤腕の先端は、アンダーカットを捉えているので印記されるのは当然である。むやみに削合しない。
    図3 “メタルデンチャーワークのポリッシングは、内面から”という言葉は定説である。クラスプデンチャーの場合、鉤腕の先端は、アンダーカットを捉えているので印記されるのは当然である。むやみに削合しない。
  • 図4 鉤歯に装着する時、まずマイナーコネクターの立ち上がりから、歯面に接触し適合していく。適合調整は、その奥のレスト部分から削合する。調整を2回行っても適合しない場合、そのフレームはエラーとなり再製作する必要がある。
    図4 鉤歯に装着する時、まずマイナーコネクターの立ち上がりから、歯面に接触し適合していく。適合調整は、その奥のレスト部分から削合する。調整を2回行っても適合しない場合、そのフレームはエラーとなり再製作する必要がある。
  • <症例2> 図5 前歯部はレストを連結し、臼歯部は軸壁を延長したマイナーコネクターとプロキシマルプレートのコンビネーションメタルフレームワークである。
    図5 前歯部はレストを連結し、臼歯部は軸壁を延長したマイナーコネクターとプロキシマルプレートのコンビネーションメタルフレームワークである。
  • 図6 艶出し前に再度、模型に戻した状態。シリコン系の研磨材で仕上げているが、その原型の整えたラインなどは、シャープに切削できる、エデンタ社の技工用カーバイドバーを用いて仕上げたものである。
    図6 艶出し前に再度、模型に戻した状態。シリコン系の研磨材で仕上げているが、その原型の整えたラインなどは、シャープに切削できる、エデンタ社の技工用カーバイドバーを用いて仕上げたものである。
  • 図7 シンギュラムレスト座とシンギュラムレストとの適合状態。
    図7 シンギュラムレスト座とシンギュラムレストとの適合状態。
  • 図8 マイナーコネクターからの立ち上がりと各レストの適合状態。
    図8 マイナーコネクターからの立ち上がりと各レストの適合状態。
  • 図9 シンギュラムレストのマージンラインのステップを#0727を用いて切削する。ここを肉厚に仕上げると歯面のレスト座と適合せず、舌面から空いてくる。
    図9 シンギュラムレストのマージンラインのステップを#0727を用いて切削する。ここを肉厚に仕上げると歯面のレスト座と適合せず、舌面から空いてくる。
  • 図10 あまりシャープに溝を入れすぎず、舌面の鼓形空隙を形成する。硬いコバルトクロムアロイでも、理想通りの形を得られる。#0727が最適であろう。
    図10 あまりシャープに溝を入れすぎず、舌面の鼓形空隙を形成する。硬いコバルトクロムアロイでも、理想通りの形を得られる。#0727が最適であろう。
  • 図11 高分子材料との境界となるフィニッシングラインの形成中の一コマ。硬いコバルトクロムアロイの粉塵が瞬時に拡散していることがお分かりであろう。#7227または#6927を使用。
    図11 高分子材料との境界となるフィニッシングラインの形成中の一コマ。硬いコバルトクロムアロイの粉塵が瞬時に拡散していることがお分かりであろう。#7227または#6927を使用。
  • 図12 カーバイドバーをメタルアップ部の面に沿わせ、均一に形成している一コマ。2度ほど撫でるだけで、カーボランダムポイントにはないシャープな面が得られている。筆者は、ミリングワークにも代用している。#1727使用。
    図12 カーバイドバーをメタルアップ部の面に沿わせ、均一に形成している一コマ。2度ほど撫でるだけで、カーボランダムポイントにはないシャープな面が得られている。筆者は、ミリングワークにも代用している。#1727使用。

デンタルマガジン 148号 SPRING