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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
ソルフィーFを用いた歯内療法
吉岡デンタルオフィス 吉岡 隆知

■目 次

■1. はじめに

多くの歯科医師が歯科用顕微鏡が開く新しい歯内療法の世界に興味を持っているだろう。新しい世界への扉は開くだろうか。歯科用顕微鏡を手に入れてもうまく使いこなせない、何を見ればよいかわからないという声が少なからず聞こえてくる。歯内療法のために歯科用顕微鏡を使いこなすには知識と技術が必要である。歯と根管の解剖学的形態、歯根破折、歯根吸収、石灰化などの病理学的変化を診断し、適切な道具を使って問題点を解決していかなければならない。これはなかなか容易なことではない。
根管治療時には多かれ少なかれ象牙質の削除が必要で、削りすぎずに目的を達成する安全な方法が求められる。タービン、マイクロモーター、手用器具だけでは不足で、歯科用顕微鏡下での超音波装置が不可欠である。超音波装置は一般的には歯周治療での使用頻度が高いと思われるが、歯科用顕微鏡下での歯内療法では象牙質切削、仮封材・セメント・築造の除去、根管内破折ファイルの除去、根管洗浄、および逆根管治療などで多用される。昨年、モリタから発売されたソルフィーF(図1)では新形状のチップが豊富に揃っており、難易度の高い処置でも行うことができる。超音波チップは従来のソルフィーやユニットに内蔵されたソルフィーでも使用できる。

  • ソルフィーF
    図1 ソルフィーF

■2. 使用例

超音波装置の最も一般的な用途はスケーリング、仮封除去、歯面・象牙質窩洞面の清掃であろう。鎌形のユニバーサルチップ(S1)の他にペリオチップP4・P5、エンドチップE1、などが用いられる。以下、チップの名称とコードは(株)モリタ製作所作成のチップガイドに基づき記載した。
図23に根管象牙質切削などの根管治療一般に使用できる代表的な超音波チップを示す。図4はアンカーチップE10で、チップ先端は矢じりのような形である。ガッタパーチャ除去、象牙質切削に威力を発揮する。

  • 根管治療に有用なエンドチップM(EH3)に装着した超音波用エンドファイルダブル。
    図2 根管治療に有用なエンドチップM(EH3)に装着した超音波用エンドファイルダブル。
  • 各種チップ。左より、エンドチップE2、エンドチップE4、ペリオチップP4、エンドチップE1。
    図3 各種チップ。左より、エンドチップE2、エンドチップE4、ペリオチップP4、エンドチップE1。
  • アンカーチップE10。チップ先端は矢じりのような形である。ガッタパーチャ除去、象牙質切削に威力を発揮する。
    図4 アンカーチップE10。チップ先端は矢じりのような形である。ガッタパーチャ除去、象牙質切削に威力を発揮する。

1)レジンコア除去
エンド系のチップは最大パワー値を超えて使用すると折れやすい。アンカーチップ(E10)のメーカー指定の最大パワー値はソルフィーFで5、ソルフィーで0.5となっている。無理せず、丁寧に扱えば、それぞれ10、1.5でも使用可能であるが、それぞれ15以上、3以上で使用すると図5のようにすぐ折れてしまう。折れたチップは直ちに廃棄するのではなく、充填されたレジンコアの除去用チップとしてリサイクルするとよい。折れたどのチップも「除去用チップ」として利用できる。一度先端が折れたチップは最大パワー値の制約はあまりなく、大きいパワーでも使用でき、効率的にレジンを除去できる。振動はチップの長さに依存するので、折れ方によってはほとんど振動しないこともある。その場合は廃棄するしかない。なお、折れずに使用できた場合であっても徐々に摩耗してだんだん振動しなくなり、結局使えなくなる。超音波チップは消耗品である。通常レジンの除去用に使用すると超音波チップの摩耗が顕著なため、新品チップの使用は躊躇してしまうが、先端が折れたチップであれば心配せずに使用できる。
ファイバーポストを用いて築造されたレジンコアの除去は困難に感じるかもしれないが、除去用チップを使用すると容易で歯質を余計に削除せずにすむ。メタルコア除去よりもむしろ簡単かもしれない。大まかにダイヤモンドポイントなどで削っていき、レジンが薄くなってきたら顕微鏡下で除去用チップを使用する。ファイバーポストは図6のように繊維状に破壊される。使用時に注水はほとんどしない。超音波振動の熱でレジンが破壊されていく。あまり連続的に無注水で使用すると過熱しすぎて歯周組織が損傷してしまうので適度に注水した方がよい。
歯質と同系色のレジンは除去されたかどうかの識別が困難である。除去用チップをあてるとレジンは黒粉となって飛散するか、接着が破壊されて一塊として脱落する。図7は遠心頰側根管を覆う残留レジンコアである。除去用チップでレジンを除去して、象牙質をほとんど傷つけることなく根管口を発見できた(図8)。

  • 使い古したアンカーチップE10。推奨パワー値を超えた設定で使用したために容易に折れた(A)。折れたチップ(B)は充填されたレジンコアを除去するのに再利用できる。
    図5 使い古したアンカーチップE10。推奨パワー値を超えた設定で使用したために容易に折れた(A)。折れたチップ(B)は充填されたレジンコアを除去するのに再利用できる。
  • 54歳女性の上顎左側第一大臼歯の再根管治療。クラウンに穴を開けて髄腔開拡をした。図4のチップを用いてファイバーポストとレジンの築造を除去中。
    図6 54歳女性の上顎左側第一大臼歯の再根管治療。クラウンに穴を開けて髄腔開拡をした。図4のチップを用いてファイバーポストとレジンの築造を除去中。
  • 口蓋根管と近心頰側根管を見つけ、遠心頰側根管を探索中。当該部にはレジンが残っていた。
    図7 口蓋根管と近心頰側根管を見つけ、遠心頰側根管を探索中。当該部にはレジンが残っていた。
  • 超音波チップで歯質を削除することなく、レジンを除去し、遠心頰側根管を発見した。
    図8 超音波チップで歯質を削除することなく、レジンを除去し、遠心頰側根管を発見した。

2)ガッタパーチャ除去
アンカーチップ(E10、図4)の主たる用途はガッタパーチャ除去である。再根管治療でガッタパーチャが見えたら注水せずにガッタパーチャ内にチップを挿入していく(図9)。熱でガッタパーチャは軟化し、破砕されていく(図10)。振動の有無にかかわらず矢じりの部分でガッタパーチャ塊を引っかけて根管から外に取り出すことができる。細い根管のガッタパーチャはファイルなどで従来通り除去する。アンカーチップの使用によりガッタパーチャ除去の処置時間は大幅に短縮できるだろう(図11)。

  • 59歳女性の上顎左側第一小臼歯の再根管治療。アンカーチップをガッタパーチャ内部に挿入して振動させる。
    図9 59歳女性の上顎左側第一小臼歯の再根管治療。アンカーチップをガッタパーチャ内部に挿入して振動させる。
  • 根管口部のガッタパーチャは着実に除去されていく。矢じりの部分に引き上げられるので根管からの剥離も容易である。
    図10 根管口部のガッタパーチャは着実に除去されていく。矢じりの部分に引き上げられるので根管からの剥離も容易である。
  • ガッタパーチャを除去し、洗浄した後の根管。
    図11 ガッタパーチャを除去し、洗浄した後の根管。

3)破折ファイル除去
超音波用エンドファイルダブル(図2)は根管治療では用途の広いチップである。他のチップに比べて先端が細く、全長は長いので深くて細い部分をピンポイントで切削することができる。イスマス、フィンの形成、未発見根管の探索などに有効である。エンドファイルダブルは細いために視野を妨げず、最も長いエンドチップE2(図3)よりも深い部位では使いやすいかもしれない。プレカーブをつけると湾曲の先にアクセスさせることも可能である。
破折ファイル(図12)がある時はその周囲象牙質を削除しながら除去を試みる。根管壁の薄いところは避けながら、下顎大臼歯であれば破折ファイルの頰側と舌側を中心にチップを使用する。破折ファイルの食い込みをはずすことができればファイルは根管口の方に浮き上がってくる(図13)。除去後にはデンタルX線写真で確認する(図14)。破折ファイルに直接超音波振動を加えると、二次破折を引き起こすことがあるので注意が必要である。

  • 58歳女性の再根管治療。下顎右側第一大臼歯遠心舌側根管に折れ込まれたファイル。超音波用エンドファイルダブルを使用して除去を試みた。
    図12 58歳女性の再根管治療。下顎右側第一大臼歯遠心舌側根管に折れ込まれたファイル。超音波用エンドファイルダブルを使用して除去を試みた。
  • 根管口に飛び出してきたファイル。この破折ファイルを根管から取り出せばよい。
    図13 根管口に飛び出してきたファイル。この破折ファイルを根管から取り出せばよい。
  • 術前(A)とファイル除去後(B)のデンタルX線写真。ファイル除去操作による根管拡大はほとんどなかった。
    図14 術前(A)とファイル除去後(B)のデンタルX線写真。ファイル除去操作による根管拡大はほとんどなかった。

4)根管探索
根管口の探索は顕微鏡下で超音波チップを用いて行う処置としては最もよく行われる。未処置の根管がどこにあるのか知らないと探索はできないが、3DX(モリタ)などのCBCTで確認してから行うとより安全である。上顎大臼歯近心頰側根、下顎大臼歯近心根には根尖部透過像を発見することが少なくないが、その多くは未処置根管が原因となっている。
上顎大臼歯近心頰側根で最初に見つかる根管(MB1)の口蓋側に、50%以上の頻度でいわゆるMB2が存在する。肉眼での探索ではMB2は見つかりにくい(図15)が、顕微鏡下でエンドチップE1、E4、ペリオチップP4などを用いて所定の部位の象牙質を削除して見つけることができる(図16)。所定の部位とはMB1から連続する線状の部分である。ここは扁平な根管が圧平されたところである。MB2は根尖部でMB1と合流することも多いが、独立している場合(図17)は病変の原因となりやすいので、処置しなければならない。

  • 37歳女性の再根管治療。上顎右側第一大臼歯近心頰側根管の探索。MB1は術前から処置されていたが、MB2は未処置であった。
    図15 37歳女性の再根管治療。上顎右側第一大臼歯近心頰側根管の探索。MB1は術前から処置されていたが、MB2は未処置であった。
  • エンドチップE4を用いてMB2(矢印)を探索。黒い線はイスマス。
    図16 エンドチップE4を用いてMB2(矢印)を探索。黒い線はイスマス。
  • 根管充填確認のための正放線(A)と偏遠心撮影(B)。MB2は歯根中央部で分岐していた。
    図17 根管充填確認のための正放線(A)と偏遠心撮影(B)。MB2は歯根中央部で分岐していた。

5)PUI
近頃、根管洗浄は歯内療法の手技の中で最も注目されている。陰圧を用いて安全に根尖部まで根管洗浄する方法(irrigation with negative pressure)はiNPニードル(iNP-40、iNP-60、モリタ)を用いて行われるが、これと併用して有効なのがPUI(Passive ultrasonic irrigation)である。PUIは根管形成後の根管内にNaClO溶液を満たし、細いチップを根管壁に触れないように設置して低出力で溶液に振動を加える方法である。
図18は感染根管治療の例で、歯髄腔が狭窄していたため、タービンで天蓋だけを除去するのは困難であった。顕微鏡下で残存天蓋をペリオチップP4で削除した。根管形成後に根管および髄腔内にNaClOを満たし、同じチップをソルフィーだと0.5、ソルフィーFだと5のパワー設定で振動を加えた(図19)。超音波のキャビテーション効果により溶液内より多数の白い泡が出現する。この操作を何度か繰り返すと根管内がきれいになり、当初ほどは白濁しなくなってくる。iNPニードルで最終洗浄を行うと、根管に汚染物質は見られなくなり新鮮な象牙質を顕微鏡下で視認できる(図20)。
ソルフィーFには電気的根管長測定機能が搭載されている。対極を口唇に取り付けて、根管洗浄を行うことによりPUIの最中にも電気的根管長測定によるメータ値が表示される。このメータ値は洗浄液やチップ先端の位置を示す。つまり根管洗浄中に洗浄液やチップ先端が根尖から溢出していないことをモニタリングできるのである。
このような方法により複雑に広がる樋状根管でも隅々まで洗浄されるため(図21)、空洞となった根管内に根管充填材として用いたシーラーとガッタパーチャが充填される(図22)。イスマスのような薄い部分も洗浄されるために根管充填材が入り込み、デンタルX線写真では薄い不透過像として観察することができる。

  • 47歳女性の下顎右側第一大臼歯の感染根管治療。顕微鏡下で残存天蓋を超音波チップで削除した。
    図18 47歳女性の下顎右側第一大臼歯の感染根管治療。顕微鏡下で残存天蓋を超音波チップで削除した。
  • 超音波のキャビテーション効果によりNaClO溶液内に白い泡の塊が出現する。根管内の洗浄が進むと、白濁しなくなってくる。
    図19 超音波のキャビテーション効果によりNaClO溶液内に白い泡の塊が出現する。根管内の洗浄が進むと、白濁しなくなってくる。
  • 根管洗浄が終わって根管充填直前。高い清掃効果が認められた。
    図20 根管洗浄が終わって根管充填直前。高い清掃効果が認められた。
  • 40歳女性の下顎左側第二大臼歯の感染根管治療。根管は狭窄しており、ファイルは3ヵ所に入っただけであった。イスマスはPUIとINPでの洗浄で処置した。
    図21 40歳女性の下顎左側第二大臼歯の感染根管治療。根管は狭窄しており、ファイルは3ヵ所に入っただけであった。イスマスはPUIとINPでの洗浄で処置した。
  • 根管充填するとイスマス内にも根管充填材が広がって充填されていた。
    図22 根管充填するとイスマス内にも根管充填材が広がって充填されていた。

6)逆根管窩洞形成
逆根管治療用に発売されているチップの形態には各社とも大きな違いはない。ソルフィー用のチップも同様(R1、R2、R3R、R3L)であるが、特徴的なのは径の細いレトロファイル(RF1D、RF2D、RF3RD、RF3LD)というチップが用意されていることである。チップ先端にダイヤモンドコーティングされているもの(図23)とされていないものがある。エンドチップM(EH3)に装着して小さなパワーで使用する。ダイヤモンドコーティングされている方が切削能力は高い。元々のステンレススチール製レトロファイルが十分に細く、ダイヤモンドの粒状も細かいのでコーティングによる径の増加はそれほどではない。大きなパワーで使用するとすぐ折れるので小さなパワーセッティングが必要であるが、十分な切削能力を有するので問題ない。
逆根管治療は主根管だけに行うのではない。側枝が見つかればもちろん処置が必要である。根尖を切除してイスマスが出現するとやはり逆根管窩洞に含める必要がある。しかし歯根の頰舌径が狭いので通常のチップでは残存歯質が薄くなりすぎる。イスマスは元々紙のように薄い構造をしているので、レトロファイルを使用すると適切な細い窩洞形成が可能である(図24)。上顎第一大臼歯近心根のMB2が病変の原因となることは先に述べたが、逆根管治療でも問題となる。イスマスを含めて適切に処置することでよい結果が得られる(図25)。

  • 逆根管治療に使用するレトロファイル。通常のレトロチップより細い逆根管窩洞形成が可能。エンドチップMに装着して使用する。
    図23 逆根管治療に使用するレトロファイル。通常のレトロチップより細い逆根管窩洞形成が可能。エンドチップMに装着して使用する。
  • 55歳女性の下顎第一小臼歯。瘻孔のために逆根管治療を行った。未処置の舌側根管とイスマスをレトロファイルで逆根管窩洞形成。
    図24 55歳女性の下顎第一小臼歯。瘻孔のために逆根管治療を行った。未処置の舌側根管とイスマスをレトロファイルで逆根管窩洞形成。
  • 38歳男性の上顎第一大臼歯。瘻孔のために逆根管治療を行った。術後に瘻孔は消失し、術直後の根尖部透過像(A)は1年6ヵ月後に消失している(B)。
    図25 38歳男性の上顎第一大臼歯。瘻孔のために逆根管治療を行った。術後に瘻孔は消失し、術直後の根尖部透過像(A)は1年6ヵ月後に消失している(B)。

■3. まとめ

超音波チップはここで紹介した用途の他にも髄腔開拡の補助、根管形成、イスマスの探索など根管治療に広く利用できる。
ソルフィーFの特徴としてその洗練されたデザインが挙げられる。液晶の視認性が高く、それぞれのボタンは軽いタッチで反応する。4種類のパワーモードを記憶でき、チップを交換する度にパワー設定を変える必要があってもその操作は容易である。超音波機器は、電源、ハンドピース、フットペダル、給水ホース、と多数のコードが出てくるが、ソルフィーFの背面にすっきりと収まっている(図26)。
電気的根管長測定器としては、メータの振れが安定しているように感じる。他機種ではやや不安定な振れをすることがあっても、ソルフィーFではそのような現象は少ない。
エンドチップM(EH3)に装着するエンドファイルダブルは根管深部の処置にきわめて有用であるが、他のチップに比べて安価で、消耗品として使いやすい材料である。ダイヤファイルはこれらにダイヤモンド粉がついているが、逆根管窩洞形成用チップとは異なり、切削効率は高くならない。超音波チップは先端の振動で象牙質を削るので側面に付着したダイヤモンドの効果はあまり体感できない。従来からのファイル形状のチップもラインナップされているが、折れやすいので注意が必要である。
ソルフィー用の超音波チップ一式、および超音波装置としてソルフィーFは歯科治療で多目的に使用でき、診療室の装備にお勧めできる一品である。顕微鏡下できっと新しい世界の扉を開いてくれる。

  • ソルフィーFの背面。多数のコードがすっきりと収まっている。
    図26 ソルフィーFの背面。多数のコードがすっきりと収まっている。

デンタルマガジン 149号 SUMMER