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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Risk Management
予期せぬ事故からスタッフを守りながらさまざまな形状の汚染物を効率よく洗浄・消毒・滅菌
京都府亀岡市医療法人成幸会 いずみ歯科医院 泉 要佑

「スタッフの幸せなくして患者さんの幸せはのぞめない」。平成7年の開業の時から私が常に肝に銘じている言葉です。針刺し事故や手洗いによる洗浄時の事故など、スタッフは日々の業務においてどこで事故を起こすかわかりません。消毒に関してもステリハイドを大量に使うなど、これまでかなりコストをかけてきました。近年、院内感染対策が盛んに言われるようになり、柏井伸子先生の著書を読んでステリハイドによる殺菌だけでは不十分であることに気づいたことと、スタッフを事故から守るという面から自動洗浄器も必要なことがわかってきました。
そこで昨年11月、同じ亀岡市内に診療所を移転すると同時に、院内感染予防対策を強化するため、ウォッシャーディスインフェクター「WD-150」とプレポストバキューム式オートクレーブ「BC-17」を導入しました。
決めた理由はいろいろありますが、国産品への信頼という部分が大きいですね。万が一故障した時にも、対応がスピーディで診療にかかる負担も少なくてすみますし、取り扱いの際にもタッチパネルが日本語で表示されるので誰にでも使いやすいということも判断基準の1つでした。
設置については、モリタの営業マンと設計の段階から何度も打ち合わせして、どうしたら効率よくシステマティックに汚染物を洗浄、滅菌、保管できるかを徹底的に考えました。そのおかげで満足いく洗浄・滅菌エリアに仕上がっています。導入して良かった点は何よりスタッフが洗浄の際にケガをしないことです。このメリットは非常に大きいと感じています。当初、手洗いの方が早いこともあって、スタッフは器材を導入することでプロセスが煩雑になることを嫌がっていましたが、院長としては、やはり身体を守ってあげたいと訴えて納得してもらいました。
導入を決めてからは、スタッフとともに柏井伸子先生のセミナーを受講し、世界のスタンダードについて知識を得ることができましたし、器材を使っていかに効率的な感染予防システムを構築するかについて院内で何度も話し合いました。実際の運用に関しては主任スタッフをこのプロジェクトのチーフに任命し、チーフを中心にスタッフ全員が何事も納得したうえで進めています。器械の導入の時こそ私も打ち合わせに参加しましたが、あとは全てチーフに任せています。いずみ歯科では何事も「報告しあう」文化ですので、スタッフの失敗などはすべてチーフに報告が集まります。「隠す」文化になると後で取り返しのつかない事態につながる可能性もありますから、医院内を風通し良くしておくことは大事なことだと考えています。
システムが稼働して半年ほど経過しましたが、滅菌に関しては、「BC-17」導入前からオートクレーブ滅菌を頻繁に行っていましたので、実は目に見える変化は感じません。ただ、特にハンドピースなど複雑な形状の製品の場合、以前は中まできちんと洗浄・滅菌ができているかとても疑問でしたが、それが解消されたことは特筆すべきことでしょう。これからは国内においてもヨーロッパの厳しい規格に準拠したオートクレーブが主流になっていくだろうと感じています。
今回の感染予防設備について、患者さんへのPRは特にしていません。確かにアピールすれば患者さんへの受けは良いのかもしれませんが、患者さんが知っていようがいまいが、やらないといけないことですから。でもこれだけ徹底して対策しているといえば、増患の大きな要素にはなるでしょうね。
Appleの創業者スティーブ・ジョブズはコンピュータの見えない部分までこだわって美しくつくるという信念で超一流の製品を生み出しました。私たちも患者さんに見えるところだけを気にするのではなく、見えない部分にもコストをかけ誠意をもって取り組めば、患者さんに自信を持って堂々と言えるでしょう。そうすれば自分の中にあるものが変わってくる。「見えないところで自分がどれだけやっているか」という心の中の重しとでも言えばいいでしょうか。そうした心構えは医療現場において、今後ますます必要になってくると強く感じています。

  • 最奥から廃棄物の分別・洗浄・メンテナンス・滅菌・保管へとシステマティックに配置された洗浄・滅菌エリア。
    図1 最奥から廃棄物の分別・洗浄・メンテナンス・滅菌・保管へとシステマティックに配置された洗浄・滅菌エリア。
  • ウォッシャーディスインフェクター「WD-150」の操作パネル。多彩なモード設定が可能。
    図2 ウォッシャーディスインフェクター「WD-150」の操作パネル。多彩なモード設定が可能。
  • 洗浄するインスツルメントをセット。ハンドピースは専用のアダプターに収納し、内部まで洗浄する。
    図4 洗浄するインスツルメントをセット。ハンドピースは専用のアダプターに収納し、内部まで洗浄する。

空いた時間を患者さんとのコミュニケーションに活用

チーフ
村田 美由紀
器械洗浄の方が手洗いに比べて精密で安全です。今までは凝固した血液などの場合、入念に手で洗っても取れない汚れもありましたが、それも現在は解消しました。スタッフを守ることは患者さんを守ることに繋がるという院長の言葉の意味が今ではよく理解できます。操作の面ではボタン1つですべてやってくれますから簡単です。最初に見たときは思っていたより大きいので驚きました。水圧のパワーで隅々までキレイに洗浄されていく様は見ていて面白く、「洗えてるなー」と頼もしく感じます。また槽内のLEDライト色が変化し、現在の工程を教えてくれるので、今がどの段階かすぐわかるのもありがたいです。セットには多少時間はかかりますが、手洗いに比べればずいぶん時間に余裕ができ周りに気を配ることができるようになりました。

  • パネルを確認しながら洗浄から乾燥までボタン1つで操作。
    図5 パネルを確認しながら洗浄から乾燥までボタン1つで操作。
  • プレポストバキューム式オートクレーブ「BC-17」の操作パネル。器具に合わせて滅菌モードを選択。
    図3 プレポストバキューム式オートクレーブ「BC-17」の操作パネル。器具に合わせて滅菌モードを選択。
  • プレポストバキューム式のオートクレーブは複雑な形状の器材でも十分な滅菌が可能。
    図6 プレポストバキューム式のオートクレーブは複雑な形状の器材でも十分な滅菌が可能。

デンタルマガジン 149号 SUMMER