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Dental Talk
「Highフロー」から「Super Lowフロー」までフロアブルレジンの特性を活かしたMI臨床 ― 私たちが辿りついた診療スタイル ―
日本大学歯学部保存学教室修復学講座教授 宮崎 真至
横浜市開業 鶴見大学歯学部非常勤講師 秋本 尚武
浜松市開業 東京医科歯科大学非常勤講師 田代 浩史

■はじめに コンポジットレジン修復の現状


「フロアブルレジンは掛け値なしにこれからの臨床を変えていく材料と言えると思います。」
日本大学歯学部 保存学教室修復学講座 教授
宮崎真至 先生
宮崎今回は、MIの概念に即したCR修復を中心にお話しいただきたいと思います。お二人とも毎日の臨床は、やはりCR修復による治療が多いのでしょうか?

秋本大きなクラウン等はもちろん間接法を用いますが、通常はすべてCR修復です。メタルインレーはほとんどやっていません。

宮崎現在でも昔のコンポジットレジンをイメージして敬遠なさる先生方も多くいらっしゃるようですね。

田代私たちの世代はかなり安心感を持っていますが、それよりも先輩の先生方は相当勇気が必要なようですね。

宮崎みっちりメタルインレーを教え込まれていますからね。でも、そうした先生方も、「やっぱり歯は削らない方が良い」、ということは理解しておられます。ですので、私たちは、材料の進歩をはじめ、「頭では分かっているけども実際に使うには抵抗がある」、という部分をもっと広げていかなくてはと感じています。

秋本その一方で、“CR充填=簡単”という考え方にも注意が必要です。う蝕病巣の除去を例にとると、検知液を使うという最も重要な部分を疎かにしてしまう先生方も多いようです。それはやはりCR充填に関して“手軽で簡単にできる”というイメージが一人歩きしてしまっているからなのでしょう。本来は基本をきっちりやっていくことで初めて長期にわたって安定するというところが認識されていないので、そのことは繰り返しお伝えするようにしています。

田代私は、CR充填のケースで何を使って窩洞形成するかというテーマに関して、「スプーンエキスカベーターで頻繁に交換しながら常に切れのいいものを使っていくのがベストでは?」と提案しますが、すべてのケースでそういうことはできないという意見もあります。さらに、う蝕を除去した後の接着に関しても、残念ながら開業医の先生のお考えは、“いかに短い時間で簡単に”、という方向にシフトしているように感じます。ですので、講演等では、“1層目のコンポジットレジンをいかに歯に接着させるか”に注力して、さらにフロアブルレジンの使い方や照射器の当て方等について解説し、「そこさえきちんとしておけば、あとは何とかなります」とお話しすることがよくあります。

宮崎スプーンエキスカベーターにはいろんな形状や大きさ、アングルがあります。それだけう蝕病巣の除去に苦労しておられるとも言えると思います。例えば、う蝕円錐の形態を考慮して、デンティン-エナメルジャンクションの病巣をエナメル質を残しながら取っていくためには、いろんな形状でしかも切れ味の良いスプーンエキスカベーターを使う必要があります。私たちはプロフェッショナルとして、このような“道具へのこだわり”はとても大切なことだと思います。検知液で染め出した後、どんな道具を使ってどの部分まで除去していくのかを常に考えておくことが大事なポイントです。

■フロアブルレジンの適応範囲とその使い分け


「CR修復はう蝕除去を徹底することで初めて長期にわたって安定することができるのです。」
横浜市開業 鶴見大学歯学部非常勤講師
秋本尚武 先生
宮崎次にコンポジットレジン、特に最近活況のフロアブルレジンについてお話しいただきたいと思います。

秋本先生は臨床の中でどういったイメージでお使いですか?

秋本ここ数年はフロアブルの方が多いぐらいですね。「クリアフィル マジェスティ ESフロー」もSuper Lowタイプが出てからさらに使い勝手が良くなりましたね。特に流れないタイプが出てきてからはいろいろな症例で多くなっています。流れないタイプは私にとって衝撃的でしたし、「これは臨床で大切なものになる」と強く感じました。

宮崎お二人とも臨床の中で、通常のペーストレジンとフロアブルレジンは明確に使い分けされているのですか?

田代使い分けています。現在の臨床では8対2くらいの割合でフロアブルです。ただ、それは窩洞の中のボリュームをフロアブルで8割、最終のエナメル部分のみペーストで充填という使い方が多くて、特に臼歯の場合はほぼ100%そういう使い方です。前歯の場合は歯冠の3分の2より下の切縁以外の部分はESフローだとかなり明度が出るので、隣接は単体でつくってしまいます。切縁部分だけはESフローの上にエナメル色をのせるといった感じです。5級窩洞や楔状欠損はフロアブルのみですので、手に取る機会はフロアブルが8割、使用量の比率もそれくらいです。

秋本私の場合は臼歯の2級窩洞や辺縁隆線のところにもできるだけフロアブルを使っています。今後フロアブルが主流になってきた時に、教えられるようにテクニックを身につけたいので…。最近は物性も良くなって、特にESフローの場合は表面滑沢性がとても良いので、うまく詰められて形態修正がなければ、研磨せずにそのまま終わっても良いくらいです。

宮崎ただ、コストが気になるという声もあるようです。田代先生のご意見はいかがですか? また、フロアブルにもたくさん種類がありますが製品選択の決め手になるポイントはどこでしょうか?

田代私は製品選択に経済的観点が入ってくると純粋な気持ちで製品を選べなくなりますので、材料費は考えないようにしています。開業医の先生方がコストダウンすべきところを考えるとすれば、例えば紙コップのような消耗品は安くても良いですが、レジン材料などはコストダウンの対象から外した方が良い。そのバランスを医院ごとに考えていかなければいけないと思います。お話に戻って“フロアブルレジンは何を選ぶか”ですが、一度使ってみて実感してみないと正直使い勝手は分かりません。難しいことかもしれませんが、1度買ってみるか、展示会などで試してみることが良いと思います。

宮崎デンタルショー等をうまく利用して、いろんな製品に触って確かめてみることをお勧めしたいですね。秋本先生はこれまで材料の開発に携わってきて、ESフローについて、他社製品との違いや3つのバリエーションの使い分けについて、臨床的なサジェスチョンはありますか?

秋本最初にLowタイプが出たときは、ユニバーサルなペースト性状になっていたので、それを工夫していろいろな症例に対応していましたが、私としてはもう少し流れない方が良いと思ったので、その旨をメーカーに伝えました。ですので、Super Lowタイプが出たときに、「他社製品と競合できる土俵に来たな」、と感じました。数ある製品の中で、シリンジからの出しやすさや、出しながら充填するような操作性の面でも、ESフローは切れが良いし、押し出しやすさも良い、とても使いやすいと感じています。

宮崎確かに臼歯部充填が1本でできるというのは魅力的ですし、私も気に入って使っています。通常のペーストで咬合面をつくるよりもフロアブルでつくっていく方が慣れるとうまくいくことはセミナーをしていても実感します。フロアブルで臼歯部咬合面をつくっていくと、皆さんけっこううまくできるんですね。ESフローはツヤが出るし、操作性も良いし、もちろん臼歯部に耐え得る機械的な強度も持っています。さらに3種類のフロー性状があって、色調のバリエーションも十分です。これは掛け値なしにこれからの臨床を変えていくようなコンポジットレジンと言えると思います。

田代私の場合、Lowフローを使う場面が最も多いのですが、Super Lowフローは意外に少なくて、むしろHighフローが最近かなり多くなっています。例えば前歯の離開症例の場合、マトリックスを手指で保持した状態で非常に狭い空間にフロアブルを注入したときに、LowフローよりもHighフローのほうが本当に弱い圧力でサーッと広がってくれます。ですので、狭小空間への馴染みというか広がりの均一さ、これは本当に良いなと思っています。

宮崎確かに離開度が少ないほど離開症例は難しくなります。それを考えると、Highフローはそうした症例にかなり影響力が高いと言えますね。あとは2級の側室のところも、臨床的な安心感からいうと、隅々まで流れるHighフローとの相性が良いですね。この三種三様のものをいかに使い分けていくか、逆にそれを使いこなせるからこそ、今のMIに即した臨床ができる、そんな感じがしています。

■私たちが辿りついた診療スタイル


「現在では臨床のおよそ8割にフロアブルレジンを使っています。」
浜松市開業 東京医科歯科大学非常勤講師
田代浩史 先生
宮崎最後に、9月に開催される特別講演会のテーマにもつながりますが、現在のご自分の診療スタイルに辿りついたきっかけについて伺いたいと思います。

秋本一つは、pd診療スタイルでしょうか。Dr.ビーチの講演と実習を受けて、「こんな診療スタイルがあるんだ」と大きな衝撃を受けたこと。あとは日本歯科大新潟の元教授 加藤喜郎先生のラバーダムテクニックです。当時、CR充填にラバーダムをかける先生など誰もいなかった頃に、加藤先生がラバーダムをしておられるのを見て、「どうやったらこんな上手なラバーダムができるんだろう?」と非常に驚きました。さらに総山孝雄先生にう蝕検知液について直接お話を伺うことができて、“このスタイルでいこう”と決めました。今でこそMIの概念は浸透してきましたが、総山先生はその当時からもうMIを言っておられましたから…。それからラバーダムを含めてCR充填を練習しながらひたすら臨床成績を取る毎日、そのスタイルをここまで続けて来たという感じです。

田代私は恩師の田上順次先生が最初の臨床経験で、アシスタントとして、田上教授のチェアサイドでバキュームを持つところからが歯科医師としてのスタートでした。そこで行われている診療は非常に斬新で、楽しそうに診療なさっている姿がとても印象に残っています。その結果、圧倒的にCR修復を中心とした治療が多くなっていきました。最初は“CR修復を自費診療で”、とは考えず、できるだけ保険で白くきれいに詰めることに注力していました。それから5年、6年と経過するうちに、「処置した症例がこのぐらいは持つんだ」ということが分かってきました。そして、直接法のほうが自分でフォローしやすいし、長持ちすることを実感するようになりました。その後「いかにその精度を上げるか。それをきちんとチャージできるか」を意識して、現在の私の診療スタイルにつながったと思っています。

宮崎お二人のお話を伺って、あらためて「人との出会い」そして「材料との出会い」の大事さについて実感しました。“より高い精度で”、“もっと患者さんのために”、“限られた時間の中で最高のパフォーマンスを”、という高みを求めて探しあてた材料との出会い。その2つの出会いが先生方の診療スタイルを創っていったと言えそうです。これから人や材料との新たな出会いもあることでしょう。今後もまだまだ変化を続け、良い方向に進化していく、今回のお話でそんな期待と予感を強く感じることができました。本日はありがとうございました。

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