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DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
特集 CBCTの有効性 歯内療法におけるCBCT(3DX)の有効性
西本歯科医院 泉 英之

■はじめに

CBCTの登場はインプラントなどの外科領域だけではなく、歯内療法にも大きなインパクトを与えた。
近年の研究から、デンタルで発見できる根尖病変の割合はコーンビームCT(以下CBCT)より低く、これまで報告されてきた歯内療法の成功率はデンタルで評価されてきたため、実際の成功率は30〜40%低下する可能性があることがわかっている1、2)
同様にデンタルは根管数の発見率も低く、歯内療法におけるCBCTの特徴が次々と明らかになっている。しかし、根尖病変や根管の見逃しが減るからといって、スクリーニングとして全ての症例にCBCTを撮影することは被曝量の観点からは行ってはならず、適応症の選択が必要になる。

■被曝量の問題

CBCTと被曝量の問題を必ず配慮し、被曝量を上回る利点がある場合のみCBCTを使用すべきである。
the American Association of EndodontistsとtheAmerican Academy of Oral and Maxillofacial Radiologyが合同でCBCTの適応症について声明を発表しており、歯内療法におけるCBCTの適応症の目安になる3)(図1)。
しかし、これはあくまで一つのガイドラインであり、実際は撮影範囲や線量は機種により異なるため、個々のケースで十分に吟味する必要があり、一般的には被曝量を上回る利点がある場合に適応症となる。

  • CBCT
  • 図1 the American Association of Endodontistsとthe American Academy of Oral and Maxillofacial Radiologyによる歯内療法におけるCBCT適応症の声明。
    図1 the American Association of Endodontistsとthe American Academy of Oral and Maxillofacial Radiologyによる歯内療法におけるCBCT適応症の声明。

■歯内療法に適切なCBCTの選択

歯科用CBCTは医科のCTよりも実効線量が少ないと言われる場合があるが、必ずしもそうではない。機種、特に撮影範囲と照射線量によって大きく異なるため、注意が必要である4)
歯内療法を行ううえでは、治療対象が1歯であることがほとんどであり、狭い撮影範囲を選択できる機種であれば被曝量を減らせる。同時に、歯内療法を行ううえでは、根尖病変の有無だけではなく、細い根管や、歯根膜腔の拡大の有無を確認できることが望ましく、インプラントよりも高精細な画質が求められる。
筆者は、モリタ社製3DXを日常臨床で用いているが、4cm×4cm、下顎臼歯、90KV、3mA、180°の条件で撮影を行った場合の実効線量は約20μSvであり、D感度フィルムを2枚撮影した場合とほぼ同じ被曝量になる(図2)。

■デンタルとCBCTの根尖病変発見率

根尖病変の発見率の違いを調べたEstrelaらの行った臨床研究、Accuracy of cone beam computed tomographyand panoramic and periapical radiographyfor detection of apical periodontitis. J Endod2008;34:273–279.を紹介する2)
<目的>
・エックス線写真による根尖性歯周炎の評価の違いを調べること
<方法>
・歯内感染のある歯、1508本
・前歯、小臼歯、大臼歯を含む
・94.5%が治療済
・CBCT、パノラマ、デンタルを比較
・感度、特異度、陽性反応適中率、陰性反応適中率を計算
・ROC分析を行った
<結果>
図3、4に示すように、デンタルの特異度(病気でない人のうち陰性と出る割合)はCBCTとほぼ同じであるが、感度(病気の人のうち陽性と出る割合)はCBCTの半分である。
根尖部にエックス線透過像を認める場合に本当に病変である確率(陽性反応的中率)は、デンタル、CBCTともに高く、根尖病変である可能性が高い。しかし、エックス線透過像を認めない場合に本当に病変が無い確率(陰性反応的中率)は、有病率が高くなるほどデンタルでの見逃しが増える。(感度と特異度は検査自体の特徴であり、実際の臨床では有病率に左右される陽性反応的中率と陰性反応的中率を用いることになる。詳細は専門書を参照されたい。)
筆者の臨床経験では、既に歯内療法がしてあり何らかの理由で再治療を検討する場合、デンタルの陰性反応的中率は低いと感じる(症例1を参照)。

■デンタル偏心投影の追加はCBCTの代わりになるか

CBCTが登場する以前は、3次元的な根管の状態を把握するために通常の2等分法に加え、偏心投影を行い、2枚のデンタルフィルムから頭の中で3次元イメージを構築してきた。
もし、デンタル2枚撮影することでCBCTと根尖病変の診断精度が同じであれば、代用できるかもしれないが、現在のところそれを示す臨床研究は無い。人工的な根尖病変を用いたラボの研究によると、偏心投影を加えたデンタル2枚での根尖病変の診断精度はCBCTより低い結果となっている5)

■CBCTの有無は治療方針と治療結果を変えるか

EBMの観点、特に臨床疫学的な視点からCBCTが歯内療法に有効かを証明するには、CBCTを用いた場合とそうでない場合を比較したRCTが必要であるが、そのような臨床研究は行われていない。
そのため、先に述べたようなガイドラインをひとつの基準にすることが望ましい。筆者はこれまでの臨床経験から、「失活歯の再修復治療を行う際、再歯内療法を行うかどうかを判断したい場合」も患者と相談のうえCBCTが適応になると考えている。
<症例1>(図5)
図5は567のクラウンに2次う蝕を認め再治療が必要になった症例である。
まずはデンタルのみの所見から、歯内療法を行うかどうかを判断してから、CBCT像を見てほしい。デンタルからは明らかな根尖病変を認めなかったが、患者にデンタルの感度を伝えたうえで将来の急発率や再治療の可能性、CBCTの被曝量を伝えたところ、CBCTでの診査を希望した。
その結果、56 近心根、遠心根に根尖病変を認め、再治療を行うことになった。
この症例のように、CBCTは失活歯の再修復治療を行う際、再歯内療法を行うかどうかの判断に影響を及ぼし、治療結果も変える可能性がある。
このようなケースにルーチンでCBCTを撮影すべきではないが、患者の歯科医療に対する価値観や後に高額な補綴を行うかどうかによって、CBCTによる診査診断を検討すると良いだろう。
日々、再修復にともない、歯内療法の再治療を行うかどうかを判断しなければならない一般臨床医にとってCBCTは有用であり、修復後の思いがけないトラブル、特に根尖性歯周炎の見逃しによる急発を避けることができる。

<症例2>(図6)
6の咬合痛を主訴に来院した。この症例もまずデンタルのみの所見から、治療方針を考察した後、CBCT像を見てほしい。デンタルからは、6 遠心根に根充材が認められず、根尖部に透過像を認める。しかし、口腔内診査では6も、他の歯も強い打診痛を認めず診断に迷ったため、CBCTを撮影した。
その結果、根尖病変にみえる透過像は口蓋根を抜根した骨吸収像であり、遠心根には透過像を認めず歯根膜腔を認めた。また、口蓋側に骨吸収像を認め、歯周炎の急発と診断した。
このようなケースはまれであるが、CBCTが治療方針を変える結果となった。

  • 図2 デンタルフィルム2枚と3DXを4cm×4cmで撮影した場合の実効線量はほぼ同じである。
    図2 デンタルフィルム2枚と3DXを4cm×4cmで撮影した場合の実効線量はほぼ同じである。
  • 図3 CBCTに比較し、デンタル、パノラマでは根尖病変を検出する割合が低い。
    図3 CBCTに比較し、デンタル、パノラマでは根尖病変を検出する割合が低い。
  • 図4 歯種に関係なく、デンタルの感度はCBCTの約半分である。
    図4 歯種に関係なく、デンタルの感度はCBCTの約半分である。
  • 図5a、b 4567 に2次う蝕があり再修復を行う。デンタルでは根尖病変を認めず、歯内療法を行うべきか迷う。
    図5a、b 4567に2次う蝕があり再修復を行う。デンタルでは根尖病変を認めず、歯内療法を行うべきか迷う。
  • 図5c 3DXによる水平断。
    図5c 3DXによる水平断。
  • 図5d
    図5d 5の前頭断。根尖病変を認める。
  • 図5e 6近心根の前頭断。根尖病変を認める。
  • 図5f
    図5f 6遠心根の前頭断。根尖病変を認める。
  • 図5g 矢状断。
    図5g 矢状断。5 6近心根、遠心根に根尖病変を認める。再治療を行うことになった。
  • 図5h 術後デンタル。
    図5h 術後デンタル。
  • 図5i 術後デンタル。
    図5i 術後デンタル。
  • 図6a
    図6a 6根尖部にエックス線透過像を認める。
  • 図6b 3DXによる水平断。
    図6b 3DXによる水平断。
  • 図6c 矢状断。
    図6c 矢状断。
  • 図6d
    図6d 6近心頰側根の前頭断。根尖病変を認めない。
  • 図6e。
    図6e 6遠心頰側根の前頭断。根尖病変を認めない。

■おわりに

これまでCBCTの歯内療法における有用性を述べてきたが、ルーチンにスクリーニングとして撮影を行うべきではなく、常にリスクとベネフィットを天秤にかけ、CBCTを撮影した場合とそうでない場合に治療結果が変わるかを検討するべきである。
今回は2症例の報告であるが、他にも歯内療法に有効な適応症がある。適切な症例に低被曝・高精細のCBCTを用いれば、歯内療法の診断と治療方針が変わり、成功率を高め、患者QOLの向上に役立つと考えている。

参考文献
  • 1)Paula-Silva FWG, Hassan B, da Silva LAB, Leonardo MR, WuM-K Outcome of root canal treatment in dogs determined by periapicalradiography and cone beam computed tomography. Journalof Endodontics 35, 723–6.
  • 2)Estrela C1, Bueno MR, Leles CR, Azevedo B, Azevedo JR.Accuracyof cone beam computed tomography and panoramic andperiapical radiography for detection of apical periodontitis. JEndod. 2008 Mar;34(3):273-9.
  • 3)http://c.ymcdn.com/sites/www.aaomr.org/resource/resmgr/Docs/AAOMR-AAE_postition_paper_CB.pdf
  • 4)岡野友宏、新井嘉則、関健次、Jaideep Sur. 放射線画像診断の最近の進歩―歯科用コーンビームCTの有効性―. 日本歯科医師会雑誌vol62
  • 5)Soğur E1, Gröndahl HG, Baksı BG, Mert A. Does a combinationof two radiographs increase accuracy in detecting acid-inducedperiapical lesions and does it approach the accuracy ofcone-beam computed tomography scanning? J Endod. 2012Feb;38(2):131-6.

デンタルマガジン 150号 AUTUMN