スマートフォン版サイト

DENTAL MAGAZINE デンタルマガジン

Clinical Report
特集 CBCTの有効性 Veraviewepocs3Dで診る歯科治療
大阪市開業 濱本歯科口腔外科クリニック 院長 濱本 和彦

■はじめに

筆者が卒業した1995年には、まだ大学病院にもCTはありませんでした。卒後、大阪歯科大学口腔外科学第2講座に入局し数年後に、ようやく学内でCT撮影が可能となりました。当時は腫瘍や蜂窩織炎など重度の炎症、骨折、顎変形症の手術などの撮影が主であり、いつも解剖のカラーアトラスを見ながら読影していたことを記憶しています。
その後、インプラント治療が急速に普及しCTはインプラント治療の術前診断には必要不可欠になりました。そして、歯科用CTが開発され一般歯科臨床にも応用されるようになり、今まで単純X線写真ではわからなかった歯根周囲の異常や、顎骨内の異常を発見できる可能性が飛躍的に向上しました。
たとえば、根管充填後のデンタルX線写真では根尖を越えていないと思われても、抜去歯牙を見ると根充材は根尖を越えていることもあります(図1)。これは、根尖孔が必ずしも根尖にあるわけでないからで、X線写真だけでは判定することができないからです。このように、適切な診断を行うためにはデンタルX線写真だけでは限界があります。

  • 図1 上顎左側第一小臼歯、矯正治療のため抜歯を行った。デンタルX線写真では根充材が根尖を超えているようには見えない。しかし抜去歯牙の根尖では根充材が根尖を超えて充填されていた。
    図1 上顎左側第一小臼歯、矯正治療のため抜歯を行った。デンタルX線写真では根充材が根尖を超えているようには見えない。しかし抜去歯牙の根尖では根充材が根尖を超えて充填されていた。

■歯科臨床に対応できる歯科用CTは?

では、どの歯科用CTでも的確な診断が得られる画像を撮影できるのでしょうか?答えはNOだと思います。
インプラントの術前診断では残存骨の高さ、幅、下顎管の位置、上顎洞の状態などの判断が主になっていると思われますが、歯科臨床での診断には少なくとも、薄い皮質骨でも見える、海綿骨の骨梁構造が見える、下顎管壁が見える、根管が見える、骨と歯牙の境界が見えることが必要と思われます。
残念ながら患者さんの個体差によりすべての要件を常に満たすCTなど存在しませんので、可能な限り見えるということが必要になります。
また、パノラマとCTの兼用機では構造上、患者さんの体動やCT本体の揺れによりアーチファクトが発生しやすくなります。この点についての配慮もモリタのパノラマとCT兼用機Veraviewepocs 3Dは世界でも高い水準を有し、導入後の定期的なメンテナンスにより常に安定した撮影が行えるばかりか、CT画像をつくるためのソフトウェアが最新になり、メンテナンス毎に撮影した画像がより鮮明になっていることに気づきます。
これはこの製品の特筆すべき特徴であり「10年使用しても常に最新機種に引けを取らないものを!」のコンセプト通りのものだと思います。
今回はVeraviewepocs 3Dで撮影した実際の症例を供覧します。

■症例1

下顎左側4部頰側歯肉の疼痛を主訴に受診。デンタルX線写真を撮影したところ、4歯根近心にX線透過像がみられた(図2)。
偏心投影していないが、約25%に2根管がみられることから、未治療の舌側根管の可能性が考えられた。
コアを除去し軟化牙質を除去すると舌側に根管口が確認できた(図3)。視野が十分確保できる部位では、マイクロスコープが無くても直視下、拡大鏡だけでも根管口明示は可能な場合が多い。
筆者は根管治療においては、複雑な根形態が推測される、歯根破折を疑う場合など、治療上必要に応じて術前撮影するようにしている。
また、複雑な根を有する歯牙の根管治療や根尖に明らかな透過像がみられた症例などでは術後CT撮影することもある。CT撮影の適応症は本来確立されるべきなのかもしれないが、現在のところ明確にはできないと考えられる。
今回、術後CT撮影を行ったところ、根尖まで分岐した2根管がみられ、確実に根管充填できていることが確認できた(図4)。

  • 図2 下顎第1小臼歯は2根管存在することもある。デンタルX線写真では偏心投影で撮影すれば確認することもできるが、常に2根管あるかもしれないと頭の中になければ見落としてしまう。
    図2 下顎第1小臼歯は2根管存在することもある。デンタルX線写真では偏心投影で撮影すれば確認することもできるが、常に2根管あるかもしれないと頭の中になければ見落としてしまう。
  • 図3 マイクロスコープが無くても部位によれば根管を探すことは可能と思われる。未治療の舌側根管がみられた。
    図3 マイクロスコープが無くても部位によれば根管を探すことは可能と思われる。未治療の舌側根管がみられた。
  • 図4 CT写真。青枠が舌側、黄枠が頰舌的中央、赤枠が頰側を示す。
    図4 CT写真。青枠が舌側、黄枠が頰舌的中央、赤枠が頰側を示す。

■症例2

下顎左側4の自発痛と強い咬合痛を主訴に受診された。頰側歯肉は発赤、腫脹していた。X線写真では根尖にX線透過像がみられた。
抗菌薬と鎮痛薬内服投与と咬合調整を行い、消炎後根管治療を行った(図5)。
以前はX線透過像を有する根管治療時には水酸化カルシウム製剤を根尖から出すように治療をしていた。もちろん経験的に臨床経過が良いと考えていたためである。しかし、根尖側の皮質骨が消失している場合など、骨外に製剤が漏出してしまうこともあり、かえって予後が悪くなる場合もあるため、最近は行っていない。
治療開始3ヵ月後、根尖部の水酸化カルシウム製剤はX線学的にほとんど吸収され、症状も消失していたため、再拡大し根管充填を行った。治療経過をCTで観察したところ、治療開始時の冠状断では、歯根周囲のX線不透過像は特に遠心側へ5の近心までに拡大していた。
3ヵ月後の根管充填時、透過像の縮小がみられた。6ヵ月後には骨梁構造の改善もみられた(図6)。矢状断ではより骨梁構造の改善は明瞭に観察できた(図7)。軸断では治療開始時に見られた、根尖の透過像と頰側の皮質骨の吸収はエンドぺリオの病態に近いと考えられたが、6ヵ月後には改善し、特に頰側の皮質骨の改善は予想外であった(図8)。
この症例では、歯科治療に必要と考えられる歯科用CTの要件としての歯牙と骨の境界が描写される、海綿骨の骨梁が描写される、頰側の薄い皮質骨が描写される画像が得られたことで、治癒の過程が明確に観察できた。

  • 図5 左より治療開始時、水酸化カルシウム製剤貼薬時、治療開始3ヵ月後の根充時のデンタルX線写真。
    図5 左より治療開始時、水酸化カルシウム製剤貼薬時、治療開始3ヵ月後の根充時のデンタルX線写真。
  • 図6 CT写真(冠状断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。
    図6 CT写真(冠状断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。
  • 図7 CT写真(矢状断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。
    図7 CT写真(矢状断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。
  • 図8 CT写真(軸断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。
    図8 CT写真(軸断)。左より治療開始時、根充時、治療開始6ヵ月後の根充時。

■症例3

上顎左側6頰側の歯肉腫脹を主訴に受診、疼痛などはない。某大学病院で上顎左側7の根管治療を受けていたが、上顎左側6頰側の歯肉に腫脹が生じたためCT撮影を受けるも原因不明といわれたとのこと。
治療開始時のデンタルX線写真では上顎左側7近心にX線透過像がみられた。6にはインレー修復がされており、2次カリエスを疑う以外に問題になる所見はみられなかった。CTを撮影したところ、矢状断では7近心のX線透過像は6の歯根中隔にまで拡がっていた。上顎左側洞粘膜は肥厚していた(図9)。冠状断と軸断では7近心根近心面からX線透過像は6の歯根中隔をとおり、6近心遠心根の間まで拡がっていた。6近遠心根中央の皮質骨は消失していた。
根管治療が進むにつれX線透過像が存在した部位に海綿骨様の構造がみられるようになり、頰側の皮質骨が改善していた(図10)。
この症例を通じて、瘻孔は時として複雑な場合があり、原因歯を特定することが難しい症例では歯科用CTが有効であることを経験した。

  • 図9 左上:治療開始時デンタルX線写真。右上:治療開始時CT写真(矢状断)。下左:根充後CT写真(矢状断)。下右:治療後6ヵ月CT写真(矢状断)。
    図9 左上:治療開始時デンタルX線写真。右上:治療開始時CT写真(矢状断)。下左:根充後CT写真(矢状断)。下右:治療後6ヵ月CT写真(矢状断)。
  • 図10 CT写真(冠状断と軸断)。左より術前、根充時、治療後6ヵ月。軸断は6の近心根と遠心根の中央(赤線)を示す。
    図10 CT写真(冠状断と軸断)。左より術前、根充時、治療後6ヵ月。軸断は6の近心根と遠心根の中央(赤線)を示す。

■症例4

上顎左側1の唇側歯肉の腫脹を主訴に受診。デンタルX線写真で根尖に透過像がみられた。根管治療が必要である旨説明するが、本人は現在の歯冠修復を気に入っており、歯根端切除術で治療を希望された。
局所麻酔下に根尖から約3mmで根を切断し、逆根管形成用超音波チップを用い根管形成後、MTAセメントで逆根管充填を行った。
術後9ヵ月のデンタルX線写真では根尖の透過像は縮小しているように見えた(図11)。冠状断で治療経過をみると、根尖切除されX線透過像になっていた部位は徐々にX線不透過が増し、9ヵ月後には骨梁構造がみられた(図12)。
矢状断では術後9ヵ月で根尖の骨梁構造と唇側の皮質骨の形成がみられた(図13)。
根尖切除後の唇側の骨形成はデンタルX線写真では確認できない。
今回の症例では金属のポストが入っていないため、アーチファクトの影響がすくないこともあり、唇側の薄い皮質骨の形成も明瞭に確認できたと思われた。

  • 図11 術前、術後のデンタルX線写真。
    図11 術前、術後のデンタルX線写真。
  • 図12 CT写真(軸断)。左上は術前、右上は術直後、左下から順に術後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月を示す。
    図12 CT写真(軸断)。左上は術前、右上は術直後、左下から順に術後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月を示す。
  • 図13 CT写真(矢状断)。左上は術前、右上は術直後、左下から順に術後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月を示す。
    図13 CT写真(矢状断)。左上は術前、右上は術直後、左下から順に術後3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月を示す。

■症例5

上顎左側7の咬合痛を主訴に受診。破折を強く疑いCTを撮影した。明らかな破折線はみられなかったが、口蓋根の周囲にX線透過像がみられた。上顎洞粘膜も肥厚しており、予後不良と考え抜歯となった。
このように、抜歯して破折していたことに気づくことも少なくない(図14)。CTでも破折線が必ず確認できるわけではないため診断に苦慮することがある。

  • 図14 術前CT写真と抜去歯牙。口蓋根が頰舌的に破折していた。
    図14 術前CT写真と抜去歯牙。口蓋根が頰舌的に破折していた。

■症例6

歯周病が気になるため受診。初診時パノラマX線写真で下顎左側56根尖にX線透過像がみられた(図15)。透過像は下顎管に近接していた。現状を説明したところ、処置を希望された。
CTでは56根尖部に境界明瞭なX線透過像がみられたが、近接する下顎管は連続的に確認できた(図16)。術後知覚異常を考慮し開窓術を選択した。
局所麻酔下に56抜歯と歯間、歯槽中隔の骨を削除、のう胞は骨より剥離が容易であったため、結果的には摘出し開放創とした。
術後CTで経過観察を行ったところ、術後1年半では矢状断で、海綿骨梁の形成が確認できた。軸断でも骨梁と歯槽頂部の皮質骨の形成がみられた(図17)。特に下顎骨内の病変は舌側の皮質骨が厚い場合が多く、X線写真では透過性が低下するため適切に診断することができない場合もあるため、CTでの定期的経過観察は必要と思われた。

  • 図15 初診時パノラマX線写真。
    図15 初診時パノラマX線写真。
  • 図16 術前CT写真。矢状断と軸断。
    図16 術前CT写真。矢状断と軸断。
  • 図17 CT写真(矢状断と軸断)。上:術直後、下:術後1年半。
    図17 CT写真(矢状断と軸断)。上:術直後、下:術後1年半。

■症例7

上顎左側8の上顎洞迷入歯根の抜歯依頼で受診。上顎8の水平埋伏歯の抜歯は、上顎洞底の皮質骨がほとんどない場合が多く、歯牙が洞内に迷入する可能性が高い。
初診時パノラマX線写真では上顎左側67根尖付近の上顎洞内に8が迷入していることが確認できた。CT撮影したところパノラマX線写真で確認できなかった、分割された歯根が上顎洞前上方に確認できた。
インプラントのフィクスチャーなどが迷入した場合、立位もしくは座位であればX線写真通りの位置に存在し、水平位になれば上顎洞後壁に移動すると講習で聞くこともあるが、上顎洞粘膜が肥厚しており、粘膜内に取り残されていた場合は移動しない場合もある。
静脈内鎮静および局所麻酔下に犬歯窩より開洞し歯冠を摘出、歯根部は盲目的であるが湾曲した鉗子を挿入し、肥厚した上顎洞粘膜ごと摘出した(図18、19)。術直後に根尖などの残存が無いことをCTで確認した。
術後1週間で上顎洞粘膜の肥厚は増大していた。術後1ヵ月で口腔上顎洞瘻孔閉鎖術を行った。術後3ヵ月で上顎洞粘膜の肥厚がほぼ消失していること、および上顎洞瘻孔が薄い皮質骨で閉鎖されていることが確認できた。犬歯窩の皮質骨はこの段階では確認できなかった(図20)。

  • 図18 初診時パノラマX線写真と術中写真および摘出した歯牙。
    図18 初診時パノラマX線写真と術中写真および摘出した歯牙。
  • 図19 術前CT写真。矢状断、冠状断、軸断で観察。上顎洞粘膜の肥厚とパノラマX線写真では確認できなかった上方にある分割された歯根が確認できた。
    図19 術前CT写真。矢状断、冠状断、軸断で観察。上顎洞粘膜の肥厚とパノラマX線写真では確認できなかった上方にある分割された歯根が確認できた。
  • 図20 CT写真。左上は術直後、右上は術後1週間の矢状断、下に術後3ヵ月目の矢状断、軸断を示す。
    図20 CT写真。左上は術直後、右上は術後1週間の矢状断、下に術後3ヵ月目の矢状断、軸断を示す。

■症例8

下顎左側8抜歯中断後の抜歯依頼で受診。パノラマX線写真で根形態が複雑であることが中断となった原因であると思われた(図21)。
下顎智歯部周囲の皮質骨は頰舌ともに厚いためX線の透過性が低下するとともに、特に歯根形態が複雑であるとX線写真上で根の外形を確認できない場合が多い。
このような症例は正常に萌出していても、抜歯に時間を要することがあるため、筆者は必ずCTを撮影し歯根の形態、7遠心の状態、下顎管壁の存在を確認している。
CT撮影を行ったところ、8は頰側と舌側に2根あり、その中央に下顎管が走行していることを確認できた。下顎管の上壁は消失しており、舌側根は扁平で、根尖付近でやや舌側に湾曲もしくは突起を有しているようにみえた(図22)。
局所麻酔下に根分岐部を慎重に近遠心的に分割し、頰側および舌側根をそれぞれ脱臼させ抜去した。抜歯窩には下歯槽神経血管束が露出し走行していたが、直接損傷はなく異常出血などみられなかった(図23)。
術後のCTをMPR画像で連続的に観察したところ、遠心側で下顎管が確認できたが、抜歯窩中央では下顎管は消失しており、近心でまた下顎管が観察できた(図24)。
基本的に下顎管の上方は海綿骨と接しているため皮質骨は薄く、下方は皮質骨に接しているか近接しているため、比較的厚いと考えられる。
下顎管壁の確認はインプラント治療などで重要であるが、軸断では確認が困難な場合が多い。筆者は近遠心的に確認できる場所から、矢状断で下顎管の下壁を探しながら見ていくと、確認しやすいと考えている。 

  • 図21 初診時パノラマX線写真
    図21 初診時パノラマX線写真。
  • 図22 CT写真。左上の冠状断で黄線は頰側、赤線は歯根間中央、青線は舌側であり、下にそれぞれの矢状断を示す。右上は軸断。
    図22 CT写真。左上の冠状断で黄線は頰側、赤線は歯根間中央、青線は舌側であり、下にそれぞれの矢状断を示す。右上は軸断。
  • 図23 術後口腔内写真と抜去歯牙:抜歯窩に下顎管より露出した下歯槽神経血管束がみられる(矢印)。分割して抜去した歯根内面に神経血管束の走行に沿う歯根形態が確認できる。
    図23 術後口腔内写真と抜去歯牙:抜歯窩に下顎管より露出した下歯槽神経血管束がみられる(矢印)。分割して抜去した歯根内面に神経血管束の走行に沿う歯根形態が確認できる。
  • 図24 抜歯直後の軸断連続断層写真。上方左より遠心からの断面を示す。下顎管壁が消失していることが確認できる。
    図24 抜歯直後の軸断連続断層写真。上方左より遠心からの断面を示す。下顎管壁が消失していることが確認できる。

■まとめ

今まではX線写真で病変がみつからなければ、心因性の疼痛などと診断する風潮があったと思われますが、歯科用CTにより今までわからなかった病変を発見することも少なくありません。
このことは患者さんにとって大きな利益になると考えられます。また、歯科医の技術向上にも貢献すると考えられます。
その反面、低被曝といえども被曝に関しては常に注意が必要であることは言うまでもありません。医院経営においては直接的な収入増に直結させることは難しいと思われますが、間接的には必ず利益になると考えています。

月間のアクセスランキング TOP5

まだデータがありません。

デンタルマガジン 150号 AUTUMN